【メールインタビュー】シロとクロ、新作「宛名のない、」は「手紙の様な一枚」

ツイート

■手紙の様な一枚

──新作「宛名のない、」について、日野さんはInstagramで“恋の話だったり、友の話だったり、夢の話だったり。色んな気持ちを詰め込んだ手紙の様な一枚です”と書いてらっしゃいました。それをコンセプトに制作されたのでしょうか?

日野:実際に会話をしててうまく伝えられないことが歌になって、歌詞として伝えられると僕は常日頃思ってるんですけど、それが手紙の持つ“実際にうまく伝えられないことを文字に起こして伝える”という要素と似てるなあと思って。こういう回りくどさって人間味があってすごい好きなんです。なので今回そこをうまく絡めて手紙のような一枚を作れたと思ってます。

(※新型コロナウイルス感染症の影響により発売延期)

──表題曲「宛名のない、」は既発曲「Diving」の続編で、痛烈な後悔が綴られています。続編を作るということは、強い想いがあったということですよね。

日野:追いかける恋に燃えてしまうタイプで、「Diving」はその心情を歌った曲です。で、ちょっとイタイやつなんですけど、そんな恋に敗れた後の“切ない、寂しい”って感情がすごい好きで(笑)。意識して続編にしたつもりではなかったのですが、「Diving」で心底好きになった相手がいなくなって、そのあとの切なさや寂しさを描いたのが「宛名のない、」です。





──タイトルはPeople In The Boxの「鍵盤のない、」と関係はありますか?

日野:全然そこは意識してなかったです(笑)。ただ僕個人はPeople In The Boxはめっちゃ好きでした。まだ音楽に無知な中学時代に『Ghost Apple』ってアルバムをたまたま聴いて衝撃を受けたのを覚えています。

──続編である「宛名のない、」を作ったことで、日野さんの心境に変化はありましたか?

日野:ん〜、作品としてひとつ完結できた達成感はありますが、この曲を歌うときには過去のそういう出来事を思い出して少し悲しくなります(笑)。

──少し悲しくなるけど、恋に敗れた後の切なさや寂しさが好きという感情が勝るということですね(笑)。サウンド面で2曲をリンクさせたり対比させたりしようなどは考えましたか?

日野:なんの因果か、「Diving」も「宛名のない、」もサビ1発目のコードは同じなんですよね。カポしてるのでキーは違うんですけど。「Diving」は元気いっぱいみたいなサウンドだったので、真逆にしようと思って作りました。こっちは切なさいっぱいなサウンドですね。

太田:今作は「Diving」に比べてベースはかなり音数多めですね。「Diving」は遊びつつも全体をふくよかにするように心掛けましたが、今回は全体的な疾走感や切なさ、ポップさなんかに花を咲かすようなベースラインに仕上げてます。

阿部:実は「宛名のない、」はだいぶ前からほぼ完成した状態で出来てて、世に出すタイミングを待ってたんです。“疾走感はあるけど切ない曲”っていうまさに僕らの持ち味な曲だと思うのでアレンジはわりとすんなりいったような気がします。聴き手が自然とノれるアレンジにしたかったので、ドラムのキックとベースは裏拍を基調にしました。レコーディングでこのノリ出すのが結構難しかったですね。

──《あなた》への歌なのにもかかわらず、《宛名のない歌》と締めくくるところが意味深だと感じました。

日野:“あなたに届けたいけれど、もう届ける術がない、会えない”──そういう気持ちを《宛名のない歌》という言葉で表現しました。僕にとって音楽の宛先は、曲によって変わるのかもしれないです。恋人だったり、友達だったり、お客さんだったり。

──《君に歌うよ》と書かれている「カタスミ」は、シロとクロのエッジーな側面が出たトリッキーな曲です。どういう経緯で制作されたのでしょう?

日野:ジャンルレスな音楽をやりたいっていうのが自分のスタンスでもあるんですけど、自分が小さい頃に流行ってたミクスチャーロックっぽい曲がやりたいなと思って作りました。こういう曲はとにかく全パートが主役のつもりで作るのがいいと思っています。各パートせめぎ合うのが良さかなと。

太田:「カタスミ」はとにかく詰め込みましたね。奏法は指弾き、ピック弾き、スラップ全部詰まってて16部音符がかなり多めでカッコよさ重視です。自分で作っておきながら難しいです(笑)。是非コピーしてもらって他の人が弾いてる動画を観たいです!

阿部:僕はまず好き放題手数を詰め込みます。でも最終的には日野の歌がいちばん映える仕上がりにするので、好き放題入れたものから精査していく感じですね。こういう曲の場合は尖ったものを丸くする作業かもしれません。

──「カタスミ」は他者からの様々な心無い言葉や逆境を歌ってらっしゃると思うのですが、日野さんの歌詞はくよくよして悲しみに暮れている渦中ではなく、そこを抜けたあとに見える世界を描いている印象があります。

日野:言われてみればそうかもしれないです。ステージに立つ人間なので、どっちつかずなことを言うよりは、ハッキリと“こうだよ”と言えるほうがいいなと思って歌ってます。

──ハードな曲でも、日野さんの甘酸っぱい声質とちゃんと歌もの然としたボーカルがあるのが面白いコントラストですね。

日野:ありがとうございます。ボーカルを始めた当初は歌も下手で、周りから変な声と言われてかなりコンプレックスだったのですが、今はすごい個性的で強みだと思ってます。

──「欲張り。」は歌もの感と巧妙なアンサンブルがどちらも生きたミディアムナンバーだと感じました。「宛名のない、」と呼応する楽曲でしょうか?

日野:そうですね。リード曲「宛名のない、」とひとつの作品としてまとめるために句点をつけたりして、そのあたりはリンクさせてます。「欲張り。」で手紙を読み終わる、聴き終わるって感じです。僕らの曲は楽器の音を詰め込むスタイルなんですけど、この曲は歌をしっかり聴かせたかったので楽器の音は結構抜きましたね。

──「欲張り。」は音の隙間が心地よい、洒落ていてあたたかいアンサンブルが印象的でした。《貰ってばかり君からの手紙》というラインを見て、《君》はファンの方々のことなのかな、とも思いましたが、いかがでしょうか。

日野:この《君》はいつも応援してくれるお客さんのことです。ベタですが僕たちは音楽でしか返せないので、今回この曲を書きました。今の時代はLINEやメールで簡単に気持ちを伝えられますけど、やっぱり手書きの文字にはとてつもないパワーや想いがこもってると思うんですよね。お客さんがくださるファンレターもちゃんと読んでます。いつも元気と勇気をもらってますよ。

──表舞台に立っているとお手紙をもらう機会は多いですよね。太田さんと阿部さんはいかがですか?

太田:手紙をもらうのはとても好きですね、嬉しいです! よくファンの方や家族からもらうのですが、いつもお返しの手紙を書けずにいるので、いつかは返せるようになりたいです。

阿部:この時代でなかなか手紙のやり取りってないと思いますし、僕自身小学生以来書いてもないですが、ファンの方からもらうことがあって、それはめちゃくちゃ嬉しいですね。その人ならではの字の温かさとか癖とか見るのが好きです。一人ひとりに返すのは難しいけど、貰ったものはちゃんと取ってあります。まさに「欲張り。」の歌詞みたいな(笑)。

▲シロとクロ /「宛名のない、」

──今作を完成させて、バンドとして、プレイヤーとして、ソングライターとして、なにか新しい発見はありましたか?

日野:人は追い詰められると真価を発揮するんだなと思いました。「カタスミ」は当初間奏にギターソロはなかったんですが、ギター録り30分前にマネージャーさんから“渋いギターソロ欲しいな”と言われて死に物狂いで生み出しました(笑)。

阿部:今回のレコーディングはドラムの音作りを専門の方にお願いしたんですけど、今までより格段に良い音になって、それに伴ってメンバーもやりやすそうだったので、ドラムの音が良いとやっぱりみんな気持ちも乗るんだなって思いました。制作時、今まで以上にメンバー同士で他のパートのことにも意見を言い合ったんですけど、結果的にみんなとても気に入った仕上がりになったので良かったです。作り始めてから完成するまでにいろんな発見があったり実験的なことが成功したり、バンドとしてとても成長できました。

──ありがとうございます。今後対バンしたいアーティストや、音楽以外で挑戦してみたいことはありますか?

日野:それこそジャンルレスに、どんなアーティストともやりたいです。将来的には敬愛する大御所、先輩、同世代、後輩アーティストを迎えてリスペクトツーマンツアー(仮)的なものをやりたい。音楽以外では、将来的に絶対太りたくないので体を鍛えようかと(笑)。

阿部:対バンしたいアーティストは数えきれないくらいいますね! ただいろんなジャンルのバンドとやりたいので、そのうちcoldrainとかCrossfaithみたいなラウドなバンドとツーマンとかしたいねっていうのは前から話してます。音楽以外では料理が好きなので、その腕も磨いていきたいですね。そのうちメンバーにも食べさせたい(笑)。

太田:人生で初めて買ったCDがORANGE RANGEなので、対バンしてそのことを話したいです! 音楽以外に挑戦するなら体づくりをしたいです! 昔から姿勢が悪かったりして腰が痛くなってきたので、そろそろちゃんとした健康体になりたいです。

──そしてシロとクロと言えば、かねてから東京ドームでのワンマンライブが目標だと公言しています。バンドが目標に上げるのは、日本武道館か地元の大きな会場であることが多いので、なかなか意外なセレクトですね。

日野:日本武道館、横浜アリーナ、幕張メッセよりもデカくて、音楽詳しくない人にもすごさが伝わるのって東京ドームだなって思って。そしたら千樹も偶然東京ドームでやりたいって言ってて。“それなら東京ドームでやれるバンドになろうよ”って。

阿部:僕は中学生の時にX JAPANの東京ドームライブの映像を観て、その気持ちが芽生えました。他にも好きなアーティストが東京ドームでライブをする映像を観るたびに、みんなすごく特別な気持ちだとMCで話していて、僕のなかでも特別になりましたね。

太田:東京ドームに特別な思い入れとかはないし、まだ行ったこともないんですけど、昔から大きなステージに立ちたいという目標があって、なら東京ドームで!っていう感じですね。せっかくの大舞台のワンマンなのでステージセットや構成などこだわって最高のショーにしたいです。

日野:大物アーティストがやってるみたいに、マイク片手に歌いながら会場縦横無尽してキャーキャー言われたい!(笑)

阿部:僕はあれやりたいです、下からドラムセット出てくるやつ(笑)。やっぱりあれ、ドラマーの夢でしょう!

取材・文◎沖さやこ

2nd Single「宛名のない、」

2020年6月24日(水)発売
東京・TOWER RECORDS新宿店&渋谷店限定販売
SKCI-0001 ¥1,000(tax in)
流通元:PCI MUSIC
タワーレコード新宿店・渋谷店 ライブ会場限定販売商品
[収録曲]
1. 宛名のない、
2. カタスミ
3. 欲張り。

この記事をツイート

この記事の関連情報