【コラム】コロナ禍におけるV系バンド~BARKS編集部の「おうち時間」Vol.027

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新型コロナウイルスの影響が続くいま、ヴィジュアル系シーンでも従来とは違った動きが始まっている。一部ではあるが、その動向を以下にまとめてみた。

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まだ緊急事態宣言が出る前、ヴィジュアル系シーンで大きな話題となったのは、DIR EN GREYの無観客ライブ生配信。全国ツアー<TOUR20 疎外>の延期を受けて実施されたこの生配信では、6時間に渡りドキュメンタリー形式でライブを放送した。ライブパートでは本番と同様の映像も使用され、それが“無観客ライブ”とは思えないクオリティだった。いや、むしろ“無観客”といういつもと違った状況が、よりバンドに凄味を与えていたようにも思う。


その後、緊急事態宣言が出され外出自粛要請を受けて“おうち時間”が推奨されるようになると、ヴィジュアル系界隈でも過去のライブ映像の配信が行われるようになった。これは個人的にはとてもいい流れだと思っている。一般的に「ヴィジュアル系のライブ」と聞くと、ちょっと足を踏み入れづらい部分があると思う。しかしこうやって気軽にライブ映像を視聴できるようになったことで、そのハードルが下がることは間違いないだろう。「いつかライブでも見てみたいな」と思ってくれる人、つまり未来のヴィジュアル系ファンが増える機会になると嬉しい。



BugLugはちょっと趣向を変えて、「絆プロジェクト」なるものを始めた。これは「1秒でも多くみんなを笑顔にすること。笑顔がみんなのパワーになること」という主旨のもと、様々な企画を発信していくというもの。ファンと楽曲制作を行う、グッズのデザインを一緒に考える、など、今後の展開が楽しみなプロジェクトだ。日々、メンバーによる生配信も実施中だ。

ゴールデンボンバーは、コミュニケーションの手段がオンライン中心になったこの状況を受けて、テレワークやリモート飲み会の際に背景として使用できる背景画像を提供している。時勢にぴったりで、とても彼ららしい取り組みだ。

己龍、Royz、コドモドラゴン、BabyKingdomが所属するB.P.RECORDSでは、無観客ライブ配信を行い、その公演の模様をDVD化するためのクラウドファンディングを開始した。まさに“楽しみ”の先行投資。Royzの100万円コースでは、テーマパークで一日デートできる権利が用意されているなど、リターン内容も興味深い。己龍は1日で目標額の1,000万を軽々と超えているというのも驚きだ。

先の見えないこの状況において、直接的にバンドを支援できるツールがあるというのは強い。バンドが今まで通りの活動を続け、ファンが今まで通りに応援していくためにも大切なことだろう。

とはいえ“今まで通り”とはいかないのが、楽曲制作やミュージックビデオの撮影。そんな状況下で、ヴィジュアル系シーンでいち早くテレワークによる楽曲制作を行ったのがBAROQUE。レコーディングからマスタリングに至るまでの全工程をメンバーのみで制作した新曲「STAY」は4月25日に配信、ファン参加型のミュージックビデオも公開された。


そして惜しくも30周年イヤーの全国ツアーが延期となってしまったLUNA SEAも、発案からわずか2週間で新曲「Make a vow」を制作、完成させた。そして驚くべきは、メンバーがそれぞれのスマホの自撮りでミュージックビデオを作ったこと。普段は見ることのできない薄いメイクや私服姿での演奏姿を5人分組み合わせた、貴重な作品となっている。こういったスピード感や、臨機応変に対応しつつもしっかりと自分たちの世界観を魅せる手法は、新型コロナウイルス終息後のヴィジュアル系シーンの楽曲制作にも影響を与えるだろう。また、社会的な活動を始めたヴィジュアル系バンドもいる。まずlynch.は、ライブハウス支援企画を実施。ライブハウスへの恩返しのために新曲「OVERCOME THE VIRUS」を書き下ろし、オフィシャルサイトで販売。その全利益をこれまでに出演した全国すべてのライブハウスに分配・寄付している。

Dは「#Live House Never Die」と題して、音楽配信収益から全国のライヴハウスへの自動的な分配企画を実施している。これはDがこれまで出演した日本各地のライブハウスへそれぞれ楽曲を割り当て、該当楽曲の配信収益のうち10%を寄付するというものだ。Plastic Treeは使用しないままとなっているマスクを募り、本当に必要としている場所へ届けるマスクの寄付活動を行なっている。



そして寄付活動といえば、YOSHIKI。自身の運営する米国非営利公益法人501(c)(3)「YOSHIKI FOUNDATION AMERICA」を通じて、新型コロナウイルスを含む感染症や免疫疾患などを研究する日本政府管轄の医療機関である国立国際医療研究センターへ1,000万円の寄付を行った。そしてYOSHIKIをきっかけにその支援の輪が広がっていったケースも。

寄付活動以外にも、YOSHIKIは早い段階から新型コロナウイルスについて、世に警鐘を鳴らしてきた。世界で活躍するアーティストであるYOSHIKIがこうして率先して意見を述べてくれることに、大きな意味がある。それと並行して、期間限定で開設したブログにて「英会話レッスン」を始めたりセルフ生配信を行うなど、ファンを楽しませようとする活動も行なっている。

YOSHIKIは「エンターテイメント業界は元に戻れない場合のことも想定しておくべきなのかもしれない」と述べている。ヴィジュアル系バンドも、本項で挙げたようにこの1〜2カ月で新しい動き方を始めている。これまでに培ってきた考え方やスタイルは一度取り払わなければいけない段階にあるのだ。普通のロックバンドよりもきっと、より顕著に。そしてヴィジュアル系のファンひとりひとりも、「自分たちがいま何をすべきか」を考えて行動していかなければならない。もし「世の中が元に戻れなかった」としても、ヴィジュアル系という素敵な文化が、これからの未来にも明るく続いていくために。

文◎服部容子(BARKS)
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