【インタビュー】下山武徳(SABER TIGER)、豪華ミュージシャンが客演した渾身のソロ・アルバムを発表

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多くの著名ミュージシャンからも、その類まれなる絶唱を称えられてきたSABER TIGERの下山武徳(vo)が、アコースティック・アルバム『WAY OF LIFE』(2019年11月)に続くソロ作品として、全編をエレクトリック・サウンドでまとった『THE POWER OF REDEMPTION』を5月13日にリリースした。山本恭司(BOWWOW)、石原愼一郎(EARTHSHAKER)、YUHKI(GALNERYUS)、SYU(GALNERYUS)、山下昌良(LOUDNESS)、寺沢功一(BLIZARD)、本間大嗣(元E・Z・O)、大内貴雅(元ANTHEM)、横関敦(元BRONX)、島紀史(CONCERTO MOON)、中村達也(BLINDMAN)など、本作には彼に縁のある錚々たるアーティストが楽曲提供/演奏で参加したことも大きな話題で、ヘヴィ・メタル・シンガーとしての下山の魅力を多彩に伝える作品に仕上がっている。これまでのキャリアを集約したとも言える濃密な内容は、多くのリスナーを頷かせるはずだ。

■憧れていた人たちが俺のために曲を書いてくれた
■夢のようなことが実現できた


――今回の『THE POWER OF REDEMPTION』は、『WAY OF LIFE』と対をなすアルバムと捉えてよいと思いますが、同じようにSABER TIGERのプロデューサーでもあった遠藤フビトさんからの提案によって制作がスタートしたんですよね?

下山武徳(以下、下山):そう、作らされた(笑)。でも、せっかくの機会だからね。ただ、当初は、阿部雄太郎くんというギタリストがほとんど曲を書いて、キーボードをYUHKIくん、タイコを原澤秀樹くん(ALHAMBRA)に固定して、ネオ・クラシカルな音楽性のアルバムにするヴィジョンだったようなんですよ。彼らにはもう声を掛けてあるからって。ただ、僕はそのコンポーザーの人を知らなかったし、誰のソロ・アルバムかわからないようなものを作ってもしょうがないでしょ。そこで、近年、一緒にプレイさせてもらっている親交の深い方々に曲を書いてもらったり、参加してもらったりしたほうが面白いものができるんじゃないかと話をしたんだよね。それからみなさんにお声を掛けさせていただいたところ、二つ返事でOKしてもらって、これだけの人が集まったと。

――ベテランから若手まで、誰が見ても豪華な顔触れですよね。

下山:そうだよね。たとえば、先輩方で言えば、僕は80年代は普通のロック・キッズだったので、10代の頃に憧れていた人たちが僕のために曲を書いてくれたり……夢のようなことが実現できたわけだよね。そこはテンションが上がりましたよ。

――そういった、かつてはファンとして観ていた、聴いていた方々とも、近年は様々なユニットなどでステージを共にしてきましたよね。

下山:うん。島くんや中村くんは同じ世代の仲間だから、もちろん声をかけやすいけど、先輩たちって、普通は声をかけづらいでしょ。一緒にいろんなところを廻ったりしているから、話もしやすかったんだよね。その意味では、タイミングとしてもよかったんだろうな。そういった関係性が築かれていなかったら、もっとビジネス的な側面が強くなってただろうし。作品の内容はもちろんだけど、人とのつながりというところが一番大事なんだよね。いろんなことを頑張って続けてきたからこそだけど、そこが具現化できただけで、このアルバムは僕としては大成功ですよ。

――その点では活動の集大成的な面もあるとは思いますが、それが一人や二人ではなく、これだけ多くの人と活動できているのは、客観的に見ても、シンガーとしての下山武徳への高い評価がなされているゆえですからね。

下山:まぁ、それはみなさんが僕の歌に価値を見出してくださってということなので、よかったんでしょうけど……僕はデビューが1998年(SABER TIGERのアルバム『BRAIN DRAIN』)でしょ。そのちょっと前からSABER TIGERのメンバーとして活動をし始めたけど、その頃にはCONCERTO MOON、BLINDMANの他にもたくさんバンドがいたよね。あれから20年以上経った今も残っているって、何か凄いなぁとも思ってね。しかも、この時代になって、島くんと中村くんが俺のために曲を書いてくれたり。先輩たちはもっと長いわけだよね。みなさんも続けてきて、今、ここにいる。そう簡単なことじゃないからね。

――今回のアルバムに参加した先輩ミュージシャンの中で、最初に共演したのは誰になるんですか? イベントでの対バンではなく、同じバンドでステージに立ったという意味ですが。

下山:山本恭司さんが一番古いかなぁ。最初は『HARD ROCK SUMMIT』だったんだけど、もう15年ぐらい前? 渋谷のAXで開催されたときに山本恭司さんのコーナーがあって、いろんな人が出てたんだけど、その中の一人として、主催者の方が呼んでくださって、2曲ほど歌ったんだよね。それが最初で、その何年か後に、今度はアコースティックで一緒にやることがあって。そのうちに恭司さんのライヴのゲストとして、出させていただけるようになったんだけど、二人で北海道とかを廻るようにもなってね。その次がSHARA(石原愼一郎)さんかな。SHARAさんとはHELL VOICE HELL GUITARというユニットを始めることになって。


――HELL VOICE HELL GUITARはどういう経緯でスタートしたんですか?

下山:向山テツさんの還暦を祝う誕生会があったんですよ。そのときに隣に座ってたのがSHARAさんとてらちん(寺沢功一)さんでね。その頃、僕はMARCY(西田昌史/EARTHSHAKER)さんと二人でアコースティック・ギターを持って各地を廻ったりしてたんで、「SAHRAさんも一緒にアコースティックやりませんか?」って、酔った勢いで言ったら、SHARAさんからも「ああ、ええよ」って酔った勢いで返ってきて(笑)。もう今年で6年目だからね。その後、てらちんさんとは、SHOW-CHU-ROCK~焼酎ロック~(というユニット)をやることになって。面白いものだよね。

――そもそもテツさんとはどのように知り合ったんですか? 昨今は札幌のホットタイムでよくライヴを行っていますよね。

下山:僕はもともとCoccoが好きだから、(彼女のサポートを務めていた)テツさんのファンでもあったんだけど、あるときテツさんがLOOKのヴォーカリストだった鈴木トオルさんとの活動で、北海道ツアーに来たんだよね。だから、ご挨拶に伺ったんだけど、そのときに北海道でテツさんのドラム・クリニックをやりませんかと提案してね。そしたら「わぁ、やろう!」って(笑)。そこでデモンストレーション用のバンドを作ろうよって話になって、「いいのを揃えておきますんで」と僕が声を掛けたのが木下昭仁(SABER TIGER)と浅野勇人(元FATIMA HILL)でね。それから実際にドラム・クリニックを開催したんだけど、テツさんともすごく意気投合して、仲良くなって。その後にさっき言ったパーティが下北沢であって、そこで一気にいろんな方とつながったんだよね。もちろん、SHARAさんとはその前から面識はあったけど、キッカケはそのときだね。実は僕は札幌でEARTHSHAKERの舞台に立ったことがあるんだよ。ベッシーホールでライヴがあって、アンコールのときに俺とあんぱん(鈴木政行/LOUDNESS)が呼ばれて、一緒に「Earthshaker」を演奏するっていう。マー師匠(山下昌良)と初めて会ったのも6~7年ぐらい前なんだけど、某パチンコメーカーの仕事で、社長が選りすぐったアーティストを集めたドリーム・バンドっていうのがあるんですよ。大当たりしたときに流れる曲を演奏するんだけど、その中に俺も入れてもらって。初めてやったのはRAINBOWの「Kill The King」だったね。そのときに関係者の人たちと食事ミーティングみたいのがあって、マー師匠とも飲んで、お話をさせてもらって、一緒に電車で帰ってきたっていう(笑)。それからの縁で、師匠もピンであちこち地方を廻るようになって、ヴォーカリストが足りないときは声をかけてもらうようになって。ゼッキー(横関敦)さんもそこで知り合った。懐かしいね。

■今、最高峰の音楽が、ロックがやれている
■ミュージシャン冥利に尽きるとしか言いようがない


――そういった個々の活動が、歌い手としての自分に影響を及ぼしたこともありますか?

下山:ありましたよ。これは精神論になっちゃうんだけど、一流の人たちって、人間性も一流なんですよ。ちゃんと音楽に対しての哲学があるわけ。それぞれ違うんだけど、命をかけて一つのことに、哲学を持って打ち込んでいる人の思想だったり、考え方だったり、人間性だったりって、すごく勉強になるんだよ。それを僕は何人もの人から吸収することができた。人間力ということだよね。一つ一つの動作とかに、ちゃんと意味があるんですよ。すべて自分が一番やるべきことに向いてるんだよね。ただがむしゃらにやってきて、こうやって、今、最高峰の音楽が、ロックがやれているというのは、ミュージシャン冥利に尽きるとしか言いようがないよね。

――今回、楽曲提供をしている方々には、それぞれ何かリクエストをしたりもしたんですか?

下山:いや、基本的にはしない。ただ下山が歌うという前提で曲を書いていただきたかったので。ホントは2曲ずつぐらい書いてもらうと、違うアプローチのものもくるだろうから、俺的にもっと楽しめたと思うんだけど……そんなことを言い始めると、CD1枚じゃ足りなくなっちゃうけどね(笑)。

――そうですね。恭司さんが書いた「Whisper In The Dark」は、先日、お二人の撮影現場に同行したとき、恭司さん自身がずっと流してましたよね。それほどご本人もお気に入りなんだと思うんですよ。

下山:ずっとかけてたよね(笑)。あの素晴らしい曲を書いていただいて……また演奏してくれたメンバーも凄いじゃないですか。

――ギターは山本恭司、ベースが山下昌良、ドラムが本間大嗣ですからね。

下山:うん。他の曲もそうだけどね、ある意味、日本版『STARS』的な(笑)。人選、割り振りについては、ライヴもセットで考えたんですよ。この顔触れの絵面を生で観たいなって。たとえば、山本恭司さんとマー師匠が同じ舞台で同じ曲を演奏するなんて、今までなかったことなんで。一緒にツアーを廻ったり、音を出させてもらってきたから、この音とこの音が混ざったら、どれだけ凄いかみたいな妄想で酒が飲めるわけですよ(笑)。ただ有名人をお金で雇って箔をつけましたみたいなソロ・アルバムは僕は嫌いで、そういうのだったらやらなくていいやと思ってたんだけど、僕の歌だからと言って参加してくださる。ここに最大の意味があるよね。

――どういう曲がそれぞれから上がってくるか、すごく楽しみだったでしょう?

下山:楽しみだったね。もちろん、奇をてらったようなことはしない人たちであるのはわかってたので、当然、正統派なわかりやすい曲が来るだろうなとは思ってたけど。

――最初に届いたのはどれだったんですか?

下山:何だったかなぁ。まぁ、唯一、面識がなかった阿部雄太郎くんは、僕のこともよく知らなかっただろうし、僕の声をイメージして曲を作ったのではないと思うんですよ。もともとあった曲なのか、一番早くもらいましたよね。彼はイングヴェイ・フォロワーというか、太田カツさん(ARK STORM)が大好きみたいで。これも出会いだし、実際にレコーディングのときには顔を合わせたんだけど、彼のような上手な若いギタリストを紹介できる機会になるならいいなと思いますよ。その次はやっぱり恭司さんの曲だね。恭司さんも「下山くんの声をイメージしたら、すぐに曲ができたんだよ」って言ってくれてたけど、30分ぐらいでできたらしいですよ。ご自分で仮歌も歌っている音源が送られてきて……それだけでも充分にカッコよかったんだけど。

――ご本人のライヴでも演奏されるかもしれませんね(笑)。YUHKIさんは「Future Of The World」と「Life After Life」の2曲を書いてますね。

下山:うん。「アニキ(下山)には絶対にバラードは歌って欲しい」と言ってたんだけど、ピアノのバラードってあまり歌う機会がないじゃないですか。(キーボーディストがいた)DOUBLE-DEALERがあった頃はともかく。その「Life After Life」もセンスがいいですよね。コードの使い方とかも、鍵盤弾きならではなのか、独特で……オシャレというのが適切かわからないけど(笑)。GALNERYUSとSABER TIGERって、プログレッシヴな部分であったり、近いところが実はあって。そこにはわりと学問としての音楽が垣間見えたりするんですよ。そういうのは僕も好きですから、「なるほど」と思いながら、楽しく歌いましたね。でも、やっぱりこういう方々って、小難しいんですよ、歌メロも。

――たとえば、オープニング曲になった「Future Of The World」は、確かに歌メロは通常のような……というとおかしいですが、よくある流れではないですね。

下山:でしょう? これは苦労しましたね。ここがギタリストと鍵盤の方のメロの組み立て方の差なんだな、面白いなと思ってね。だからすごく新鮮で刺激的で。勉強になりました。この曲ができて、ちょっと歌が上手くなった気がするもん(笑)。それからリズムだよね。多分、何の違和感もなく聞こえていると思うんだけど、実はかなり変わった譜割りなんですよ。俺はもともとフォーク・ギター弾き語りの男だから、そこが大変なんだよね。大抵の曲は3時間ぐらいで録れちゃうんだけど、この曲は2日に分けてもらった。そのリズムを体に入れるまで時間をくれと言ってね。

――それぞれ横関敦さんとSYUくんがギター、寺沢功一さんと原澤秀樹くんがリズム・セクションを務めてますね。

下山:SYUもいつか一緒にやれたらいいねと随分前から話してはいたんだけど、それが実現して嬉しいですよ。日本を代表する、素晴らしいギタリストですから、僕のソロ・アルバムの冒頭を弾いてもらって、とても光栄だしね。ゼッキーさんは、“Jet Finger”を速い曲で炸裂させるのかと思ったら、「バラード弾きたい」って言ってて(笑)。それも面白いなと思って、「Life After Life」をお願いして。テクニカルな高速プレイばかりにフォーカスが当たるけど、あの人はエモーショナルなギターがホントに素晴らしいんですよ。ロック・ギタリストらしいロック・ギタリストでね。いろんな最新鋭の機材を使うのではなく、いまだにコンパクト・エフェクターを1~2個とアンプだけで、あの音をガンって出す。僕はそういう人のほうが好きなのでね。

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