【インタビュー】首振りDolls birthday企画第2弾 ナオ編

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──ボーカリストとしての話も訊いていい? ナオが書く歌詞は独特で、感覚も感性もすごくいいものを持っていると思うんだけど、ナオが好む音楽と同じく、アンダーグラウンド要素が強かったりするよね。そこは、ナオの本棚と深い繋がりを感じるんだけど。

ナオ:俺の本棚、かなり変だし、気持ち悪いからね(笑)。ガロ系の漫画とか本当に好きだし。

──ジョニーがナオの本棚見て、“絶対こんなヤツとは友達にならん”って言ってたもんね(笑)。そんな2人が一緒にバンドをやっていること自体も不思議だけど(笑)。そもそも、ナオがサブカルチャーに興味を持ったキッカケは何だったの?

ナオ:叔父さんの影響だと思う。母方の叔父さんの本が、実家の押入れにいっぱいあったのを子供の頃に見つけて、それを読み漁ってたら、感覚がおかしくなっていったのを自分でも感じたんだよね。いわゆる特殊漫画というかサブカル雑誌みたいな。最初は、女の人の裸の写真が見れるからっていう興味本位でこっそり見てたんだけど、だんだんその不思議な世界に興味を持つようになってた自分が居て。小学校の5、6年生の頃かな。ちょっと変になっちゃった自分を感じたというか。でも、そこと並行してザ・スターリンとか好きだったから、だんだんと自分の好きな音楽とそのアンダーグラウンドな世界観が繋がっていったんです。丸尾末広さんを知ったのも、ザ・スターリンの『虫』っていうアルバムのジャケットだったピストル忍者の絵がキッカケだったし。そこからガロ系の漫画を漁るようになって、いろんな変な本とかも集めまくっていくようになって。音楽も、その頃ハイテクノロジー・スーサイドとか、いわゆる殺害塩化ビニール系のハードコアとか聴きまくってたから、そことそういう漫画とか本達がどんどん自分の中でリンクしていったんですよね。点と線が繋がりまくっていったんです。事務所に置いてある俺の本なんて、本当に一部ですもん。

──氷山の一角?

ナオ:そう。まさに氷山の一角! 本当に気持ち悪い本いっぱい持ってる(笑)。今も好きではあるけど、収集癖とかそういう映像とかを見まくっていた時期は過ぎたというか。もう今は見ないけどね。

──まあでもそういう時期に吸収したものは、ナオの血となり肉となってはいるからね。そういうところからインスパイアされた歌詞は多いの?

ナオ:そのままを歌詞にするとかはないけど、吸収はしてたと思うから、表現の一つとして自分の中にはあると思うよ。

──初期曲の歌詞は特に感じるけど、ナオの歌詞は文学的だったりするんだよね。

ナオ:かぶれてましたからね。「鏡地獄」も江戸川乱歩の『鏡地獄』を描いたものだし、「少女地獄」なんて、夢野久作の『少女地獄』を題材に、姫草ユリ子をモデルにして作詞したものだし、既存の物語にインスパイアされて書いた歌詞もあれば、ロックンロールに合った歌詞をそのままサウンドに乗せている時もあるしね。自分自身のことを歌っていたりする訳ではないというか、そういう感覚はあんまりないかも。

──自分の実体験みたいなのはないの?

ナオ:実体験にスパイスを加えた感じのものもあったりはするけど、そこに自分の好きな文学だったり、サブカルだったりアングラな世界観を散りばめていたりするかな。首振りDollsを始めて初めて作ったアルバム『首振人形症候群』(※2019年に『首振人形症候群〜REVISITED盤〜』として再発し現在発売中)の歌詞にある“壊したい”だの“奪いたい”だのっていうのは俺の言葉のままというか。そこをさらにドラマチックにするための脚色はあるけどね。文学の匂いをさせるときは、それ用の歌詞を書いてる。曲調に合わせて歌詞を書いてるからね。文学を乗せたいときは、ヨナ抜き音階が合うんです。和風のスケール構成。

──最近の曲で言うと、「バケネコ」(※最新スタジオライブアルバム『THE ROCKY GLAM DOLL SHOW』に収録)とかはそこに寄ってたりもするよね。歌詞の書き方も。

ナオ:そうね。サビは違うけど、AメロBメロはそうね。そういう個性は、自分の特徴でもあるのかなって思うかな。でもね、文学の匂いさせまくってた曲って、なかなかライブで盛り上がる曲って感じではないから、今はどうしてもライブで盛り上がる曲を作ろうとしちゃってる感じはあるのかも。ショーンのベースを最大限に活かしたいっていう感覚もあって。

──ライブって、盛り上がるのが良いとされているけど、それだけではないと思うからね。沈黙は金、じゃないけど、聴き入っているからこそ盛り上がりに欠けるということもあるし。首振りDollsの代表曲でもある「鏡地獄」も、ショーンのベースですごくばけたしね。どちらかというと聴き入る曲であっただろうに、今やライブでクラップが起こる曲に変化してるし。

ナオ:そうね。ショーンのベースの威力ってすごいのよね。だから怖がることはないのかもしれないんだけどね。どんな曲を作っても、昔の曲をやっても、今の首振りDollsの音になるし。

──そう。今の、ナオ、ジョニー、ショーンの首振りDollsの音になる。

ナオ:そう。それもあって、今、この期間中にめちゃくちゃ曲を作っているんだけど、俺の個性とされる昔の匂いのする曲もいっぱい作ってる。


──楽しみにしてるね。

ナオ:うん。ここ最近俺の曲をリード曲にしてなかったりするからね。この自粛期間でゆっくり音楽を聴く時間も持てたから、自分が好きだったものを漁り返してたりもしたし。やっぱり掘り返してみると、昔の歌謡曲とかって本当にすごいなって再認識させられてたりもするんですよ。再インプット中というか、再読み込み中って感じ。石川ひとみさんの「まちぶせ」とか本当にすごいなって思うからね。昭和の歌謡曲とか聴いてると、本当にすごいなって思う。歌い手の力もすごいし。歌詞も曲もすごい。

──石川ひとみの「まちぶせ」は本当にすごいよね。ちょっとストーカー的な怖さがあるのに、聴き手を“こんな風に一途に思われてみたい”みたいな感覚にさせてしまう魔力というか。

ナオ:そう。あんなに怖いこと歌っているのに可愛いからね。昭和の歌謡曲ってそうなんですよね。怖いくらいの感情を、聴き手にスゥッと入り込ませる感じで歌える歌い手の力も本当にすごいなって再確認したんです。そういう歌が歌える人って、選ばれた人だったんだろうなって思った。でも、これがまた70年代くらいになると、怖い雰囲気がそのまま表現されてたりするんですよ。りりィさんの「私は泣いています」とか、メロディもちょっと暗いですからね。でも、すごくロックなんですよね、歌い方が。絞り出すように歌ってる。だからこそ伝わるんだろうなって。ピンク・レディーの曲とか、すごくロックだと思う。バンドでやったらグラムロックっぽいと思うしね。本当にカッコイイなって。今、聴き返した時間の中で、歌い手の表現力っていうものにも注目しているんです。表現力でいうなら、研ナオコさんの「夏をあきらめて」もすごいなって思うんですよね。

──そうだね。堀江淳の「メモリーグラス」も良かったんだよね。あと、本当に引き込まれたのは、南佳孝「スローなブギにしてくれ (I want you)」。松本隆の歌詞世界も本当に素晴らしい。

ナオ:分かる。山口百恵さんとかも本当に惹かれる。宇崎竜童さんの曲もすごかった。若い女の子が大人びて見えるのも本当に不思議で。10代であの歌が歌えるって、すごい円熟してるなって。本当に改めて感動したりもして。アン・ルイス さんの「グッド・バイ・マイ・ラブ」も本当に可愛いですからね。あんな曲聴いちゃったら好きにならずにはいられない。ヤバイくらい可愛い。時代背景みたいなのも見えてくるのも良いんですよね。小坂恭子さんの「想い出まくら」とかも本当に時代を感じるんだよなぁ〜。

──いくつよ、ナオ(笑)。

ナオ:あははは。確実に同じ歳の人とは話し合わないタイプでしょ(笑)。でも、こんなにライブができない期間を経験するとは思っていなかったけど、この経験が活きるときって、この先絶対にあると思うからね。絶対に無駄にはしない。この環境すらもプラスに変えていきたい。5月15日の自分の誕生日に絵本を描いて売ったんだけど、ずっと絵本を描きたかったんだけど、なかなかそういう時間も取れなかったから、そういう時間を持てたのも、プラスとして考えたいし。そんな絵本ですら、ちょっと悲しい暗いお話になってるっていう(笑)。絵本の世界観なんかは、本当に自分そのものなんだろうなって思う。

──『猫海月』(絵本のタイトル)ね。悲しいけどあったかいお話だったね。

ナオ:うん。これも荒井由実さんの「ひこうき雲」的な感覚というか。死んじゃったんだけど、その子は幸せだった、みたいなね。死んじゃったけど、なりたいものにはなれたというか。ハッピーエンドではないけど、微妙な空気感を描きたかったんですよね。

──まさにナオの世界観だったね。

ナオ:うん。この先も歌詞の中にもそういう表現は出てくるだろうし。この期間に自分の好きだったものを漁って改めて対面したことで生まれてきた曲もあるから、楽しみにしててほしいです。

──じゃあ最後に。この先、ナオは、どんな風に音楽と向き合っていきたいと思っている?

ナオ:やっぱり自分はずっとバンドマンでいたいと思う。コロナでのこの経験は、絶対に無駄ではなく、すごく大きなことを教えてくれた時間でもあったと思うし、無駄にしちゃいけない時間でもあると思っていて。俺たち届ける側もお客さんも、今まで以上に1本1本のライブを大切に思うようになると思うし、なによりも、目の前で、生で演奏する、観る、ということの意味がどれだけ大切で、どれだけ価値のあることなのかってことを再認識するようになれると思うんですよね。首振りDollsとしては、音楽を愛する人達、生で音楽を感じたい人達に、生で音楽を届け続ける存在でありたいなと思います。俺の中でバンドって、怖い存在なんですよ。自分が好きで憧れてきたバンドは、怖い存在だったんですよ。近寄り難い怖さを持ってた。怖いぐらいの勢いとパワーをもらえる存在でもあったから。バンドって、ライブをしているときは、そういうパワーを放った存在じゃなくちゃいけないと思っているから。もちろん、ライブはみんなで楽しめる空間なんだけど、存在としてね。首振りDollsも、そんなパワーを持ったバンドでいたいですね。本当に1日も早くみんなに会いたい。本当に今、それだけかも。みんなに会える日が、1日も早く来ますように。その日のために頑張ります! みんなの笑ってる顔を生で見たいから。それまで、みんなも健康に気をつけて、また元気な姿を見せてね、って伝えたいです。

取材・文◎武市尚子



■リリース情報

■STUDIO LIVE DVD 3.22.202『THE ROCKY GLAM DOLL SHOW II』
6月25日リリース
¥3,500(税込)
首振りDolls online storeにて6月15日より予約受付中
約60分のライブ映像に、スペシャルインタビューとオフショット映像が収録された大満足の1枚! 未発表新曲もあり!

■STUDIO LIVE アルバム3.22.202『THE ROCKY GLAM DOLL SHOW』
発売中
(新MV「リトルサマーベリーオレンジミルク」収録アルバム)
¥3,000(税込)


■首振りDolls ライヴ情報

6月22日名古屋得三(one-man)
7月5日吉祥寺ROCKJOINT GB
10月2日下北沢SHELTER(振替公演)

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