【インタビュー】岡本真夜、25年変わらないもの

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岡本真夜が25周年記念ベストアルバム『25th Anniversary BEST ALBUM〜Thanks a million〜』の初回限定盤を6月10日にリリースする。

◆全曲紹介動画

ライブ映像やミュージックビデオ、デビュー当時の秘蔵の未公開オフショットを収録したDVDがパッケージされた今作は、彼女が歩んできた25年間の音楽人生そのものでもある。

「東京に行って歌手になる」と育ての親である祖父母の反対を押し切って上京した10代の頃。シングル「TOMORROW」がダブルミリオンの大ヒットとなった華々しいデビューの裏で抱えていた想い。念願のバラード「Alone」でシンガーソングライターとして初めて感じた手応え。さくらももことの衝撃的な出会い。コンセプトも曲の作り方もデビュー当時からまったく変わっていないと語る岡本真夜が音楽でエールを送り続ける原点とは?

   ◆   ◆   ◆

──自粛期間はおうちで過ごす時間が増えたと思いますが、岡本さんはどんな日々を過ごしていらっしゃいました?

岡本真夜(以下岡本):デザート作りにハマってましたね。ふだんは作ってもクッキーだったりパンケーキとか、年に1回、息子の誕生日にケーキを焼くぐらいだったんですが、自粛期間中に新しいスイーツに挑戦しようと思いまして、チーズケーキや抹茶の豆腐ケーキとか、なるべく簡単そうなものを選んで作っていました。

──美味しそう! 息子さんも喜ばれたのではないですか?

岡本:息子はもう大学生で離れて暮らしているのでケーキの写真だけ送りました(笑)。調子に乗って作りすぎてしまったせいか、ちょっと太ってきたので、いまはやめてますけどね(笑)。

──岡本さんは以前から素敵なバッグや雑貨を手作りされていますよね。

岡本:はい。デザートや雑貨やなにかしら日々、作っています。

──そんな中、25周年記念ベストアルバム『25th Anniversary BEST ALBUM〜Thanks a million〜』が5月13日にリリースされ、6月10日にはCDとDVDをパッケージした初回限定盤が追って発売されますが、映像のほうはどんな内容になっているのでしょうか?

岡本: DVDには「TOMORROW」(2015年<岡本真夜 20th anniversary Tour~
君だけのStoryがここに〜>)のライブ映像と6曲のミュージックビデオが収録されています。特典としてデビュー当時のどこにも出していない秘蔵映像も収録されているんですが、内容はデビューした年に2枚目のアルバムのジャケットをパリで撮影したときのオフショットが中心ですね。その5年後にもう1度パリに行く機会があったので、2つの映像が混ざった内容になっています。


──パリでのショットをあらためて見て、いろいろ思い出したり、なにか感じたことはありましたか?

岡本:(自分自身を客観的に見て)トロいというか、テンポがいま以上に遅くて、申し訳なかったなって、いろいろな意味で反省してしまいました(笑)。懐かしかったですね。

──岡本さんはデビュー当時から20年、30年のスタンスで活動し続けていくことを目標にされていたということですが、20才前後のときはなかなか先のことまで考えられなかったりする人が多いのではないかと思います。その強い決意はどこから生まれたものなのでしょうか?

岡本:あまり自己分析はしたことがないんですが、祖父母に育てられたという環境もあったのかもしれません。もう他界していますが、祖父は元警官で祖母は元教師という厳しい家で育ったので、もしかしたら、その中で教えられた感覚が自分の中にあったのかもしれないですね。

──“やりたいことがあるなら簡単にあきらめないで続けなさい”っていう教えがあったとか?

岡本:直接、言葉で言われたわけではないんですが、自分自身がそういうことを感じとっていたのかもしれないですね。子供の頃は歌手ではなくピアニストを目指していたんです。当時から音楽でずっと生きていきたいという明確な想いがあったことも重なってそう考えていたんだと思います。

──ちなみに歌手を目指してからは、どんな存在になりたいと思い描いていたんでしょうか?

岡本:漠然とですが、曲を書いていたので岡本真夜の世界観を崩すことなく、変わらずに20年、30年と活動していけるのがいちばんステキなんだろうなと思っていました。

──21才でデビューされて目標どおりの25周年を迎えられているってすごいことだなと思います。

岡本:でも、自分の中では「これができてない」とか、小さいことも含めて、まだ達成できていないことがいっぱいあるんです。そういう気持ちがこの先も続けていくことでプラスになればいいなと思っています。

──岡本さんが10代のときに「こんなふうになりたい」とリスペクトしていた女性アーティストというのは?

岡本:歌を始めたキッカケは DREAMS COME TRUEの吉田美和さんで、当時は邦楽を聴いていたんですが、東京に出た18~19才の頃に洋楽を聴くようになるんです。そのときシンガーソングライターのキャロル・キングを知ってピアノを弾きながら歌う姿がカッコいいって憧れていました。

──シンガーソングライター、岡本真夜さんのルーツですね。岡本さんの曲はときに落ち込んでいる人にやさしくエールを送り、切ないバラードでは女性の気持ちを癒してきたのではないかと思います。ベストアルバムの中で、活動の節目になった曲をピックアップして教えていただけますか?

岡本:大きなターニングポイントは3rdシングル「Alone」ですね。いちばんの代表曲というと「TOMORROW」だと思うんですが、私の中で大きい曲は「Alone」なんです。というのも、もともと曲を作るのも歌うのもバラードが好きなので、バラードでデビューしたいという想いがあったんですね。「TOMORROW」も作った当初はミディアムバラードだったんですが、ドラマ『セカンド・チャンス』の主題歌に決まったときにアップな曲にしてほしいというリクエストがあっていまの形になったんです。正直、当時はいろいろな方に聴いていただけて嬉しい反面、自分の中では違和感があって「バラードはいつ聴いてもらえるんだろう?」っていう葛藤がありましたね。

──「Alone」は好きな人の前で素直になれずに強がってしまった想いを綴った切ないラブソングですね。

岡本:やっとバラードを出すことができて、読みきれないぐらいたくさんの手紙を女性からいただいたんです。そこで初めてアーティストとして認められたというか、スタート地点に立てたような気がしたんですね。「Alone」で自分自身が前を向けたので節目になった1曲ですね。

──デビュー曲で大ブレイクしたのに岡本さんは悩みの中にいたんですね。

岡本:悩みというよりも自分の中ではバラードとして作った曲だったので不思議な感覚でした。とはいえ、「TOMORROW」をアップにしたおかげで、こうして25周年を迎えられていると思っているし、いろいろな想いがありますね。


──ほかに節目になった曲はありますか?

岡本:さくらももこ先生と共作した「アララの呪文」(2004年から2012年まで『ちびまる子ちゃん』のエンディングテーマとしてオンエア)です。メロディのプレゼンから始まった曲なんですけど、私が作った曲をさくらさんが選んでくださって歌詞を書いてくれたんです。メロディに“アララ カタブラ ツルリンコ ”という言葉が乗って戻ってきたときは「こんな言葉が出てくるんだ?」って衝撃を受けて、私が思い描いていた以上の作品になったことに感激しました。当時は爆笑問題(ちびまる子ちゃんwith爆チュー問題名義)のお2人が歌ってくださっていてツッコミが入ったり、コミカルで楽しい曲になったなって。自分の宝物のような曲なのでいまも大事に歌っています。

──曲を作り続けていらっしゃる中、作り方や心境が変わったという意味でのターニングポイントはありましたか?

岡本:作り始めたときから、自分の曲でみなさんが元気になったり、なにかに気づいたり、あたたかい気持ちになったり、心を動かせる曲を残したいと強く思っていたので、母になってスタンスが変わったということもなかったですね。コンセプトはデビューのときからずっと変わらないし、曲の作り方も変わってないんです。昔から基本的に楽器は使わずに頭の中に浮かんだメロディを鼻歌みたいに歌って作っています。

──コンセプトだけでなく作り方もブレていないんですね。先ほど吉田美和さんの話をしていただきましたが、岡本さん自身がリスナーとして曲に救われた、勇気づけられたという思い出があったら教えてください。

岡本:ドリカムさんはもちろんですが、学生時代にいちばん勇気づけられたのは今井美樹さんの「PIECE OF MY WISH」(1991年)です。自分を信じてあきらめないでという内容の歌詞なんですが、私は歌手になりたいという夢を祖父母から大反対されていたんです。それで落ち込んだこともあったんですが、「音楽がやりたいから絶対に東京に行く!」って反対を押し切って上京したんですね。その時期によく聴いて背中を押された曲です。

──いろいろなターニングポイントがいまの岡本真夜さんに繋がっているんですね。

岡本:最新シングル「旅人よ」(2020年)は歴史シミュレーションゲーム『三國志14』のエンディングテーマになっていますが、メロディに関しては15年前に作っていてストックとして眠っていた曲なんです。デモテープも存在していたんですが、これまでとは曲調も雰囲気も違うのでこのメロディが活かされる環境が整ったときに出したいってずーっと思っていたんですね。そのタイミングを待っていたら15年もかかってしまいました(笑)。なので、“やっと”という気持ちもあり、リリースできたことがすごく嬉しいですね。ほかにも眠っている曲はまだいっぱいあるんです。

──オリエンタルなテイストのある「旅人よ」は岡本さんの透明感のある声の重なり方がとても美しく心地いいし、新鮮でした。

岡本:嬉しいです。実はコーラスは半分ぐらい15年前のデモテープの音源を使っているんです。

──いまの岡本さんの声とミックスされているんですね。

岡本:そうなんです。


──曲調のみならず、ヴィジュアルもタイアップに合わせてウィッグにカラーコンタクトとかなりイメージチェンジされましたよね。

岡本:(笑)。これは今回だけですから。

──ファンの方のリアクションはいかがでしたか?

岡本:みんなビックリしてましたね。「どうした?」、「なにがあったんだ?」って(笑)。「旅人よ」は楽曲のタイプがいままでと違うので、どんな服を着たらいいのか、どんなジャケットにしたらいいのか絵が思い浮かばなかったんです。だったら、ゲームの世界観に思いきって寄せてしまおうと。あとは周年なので、いままでと違ったことをやってみようって。遊び感覚です。

──見た目的にも25周年最大のチャレンジですか?

岡本:(笑)そうなんです。

──「旅人よ」がベスト盤の最後に来ているということは、これから王道を軸にしつつ挑戦していくのかな? と想像したんですが。

岡本:そうですね。いろんなタイプの曲がストックされているので、バランスを考えながら小出しにしていきます(笑)。そういう曲たちを発信したいと思った時期もあったんですが、「TOMORROW」のイメージもあり、違う世界観の曲を表に出す勇気とタイミングがなかったんです。25年たって、これからはいままでよりチャレンジもしていきたいと思っています。


──いま現在は日本をふくめ世界が新型コロナウイルスで大変な状況にあり、未来を模索している時代です。岡本さん自身がネガティブにならないように心がけていることはありますか?

岡本:そうですね。私自身のリフレッシュ方法は旅に出ることなんですが、いまはできない状況にあるので、大事なことは自分が心を開ける人に弱音を吐くことだと思っているんです。ひとりでギリギリまで抱えてしまうと壊れてしまうので、誰かひとりでも心の中の言葉を聞いてくれる人がいたら、きっと楽になれると思うんですよね。昔はひとりで抱えこんでボロボロになって大変だったこともあったんですけど、大人になるにつれて、そういう強がりは必要ないんだなと思うようになりました。なにかあったら愚痴でもいいから話を聞いてもらうようにしています。

──ひとりで家にいると考えこんでしまいますが、電話でもSNSでもいいし、弱音を吐いたっていいんだよ、っていう?

岡本:はい。あと、私は“ま、いいか精神”を大事にして生きてますね。息子にも小学生の頃から教えてきたというか、私がそうだから伝染っちゃうんでしょうけど(笑)、失敗しても、思わぬ出来事に遭遇しても、“ま、いいか”で前を向く。起きてしまったことを悔やんでも仕方ないので、それを次に活かせるように気持ちを切り替える。そういうふうに心がけていますね。いまはコロナ禍で死活問題になっていたりと大変な状況ではあるんですが、“ま、いいか精神”プラスあきらめないことが大事かなと。

──自分も“ま、いいか”と思いがちです(笑)。

岡本:なんとでもなるんです(笑)。命があればなんでもできるし、やり直しだってできる。振り返らず前を見ることですね。

──ありがとうございます。「YELL〜君の声〜」や「Mother~あなたに花束を〜」など、岡本さんの曲には離れていても大切な人がそばにいて自分を強くさせてくれるというメッセージがこめられています。ひとりぼっちだと思わないことはハッピーの秘訣のひとつでしょうか?

岡本:昔から友達との会話の中のひとことだったりが支えになっていたのと、高知から上京して家族や友人と離れていた時間が長かったから、環境も歌詞に影響しているのかもしれないですね。それと音楽で誰かの役に立ちたいという気持ちが昔からあるので、孤独を感じている人にも音楽で寄り添える存在になりたいという想いがあるんだと思います。

──今後、考えていらっしゃることについても教えてください。

岡本:5月24日に予定していたアニバーサリーライブ(<岡本真夜 25th ANNIVERSARY Concert 2020 〜Thanks a million〜>)は一度中止にさせていただきましたが、いつか必ずなんとしてもやりたいと思っています。それまで時間があいてしまうので、配信ライブをお届けしたいと思っています。この先、作っていく楽曲は歌詞に関しては年齢とともに深みを増していけたらいいなと思っていますし、心に染みる、心に残る楽曲を1曲でも多く残せたら嬉しいですね。

取材・文◎山本弘子

『25th Anniversary BEST ALBUM〜Thanks a million〜』初回限定盤

2020年6月10日リリース
DISC(UHQCD)+DVD
MUCD-81022/3
¥5,000

[DISC 1]
1. TOMORROW
2. FOREVER
3. Alone
4. そのままの君でいて
5. Smile
6. ANNIVERSARY
7. 想い出にできなくて
8. Destiny
9. 365日のLove song
10. 君だけのStory
11. アララの呪文
12. YELL〜君の声〜
13. Happy Days
14. Mother〜あなたに花束を〜
15. 笑顔のおまじない
16. 旅人よ
[DISC 2]
1. TOMORROW(2015年岡本真夜20th anniversary Tour〜君だけのStoryがここに〜より)
2. 君だけのStory(MV)
3. YELL〜君の声〜(MV)
4. Happy Days(MV)
5. 笑顔のおまじない(MV)
6. ボクは太陽、キミは月(MV)
7. 旅人よ(MV)
8. 特典映像:デビュー当時のオフショット(未発表)


『25th Anniversary BEST ALBUM〜Thanks a million〜』通常盤

2020年5月13日リリース
DISC(UHQCD)
MUCD-81024
¥3,000

1. TOMORROW
2. FOREVER
3. Alone
4. そのままの君でいて
5. Smile
6. ANNIVERSARY
7. 想い出にできなくて
8. Destiny
9. 365日のLove song
10. 君だけのStory
11. アララの呪文
12. YELL〜君の声〜
13. Happy Days
14. Mother〜あなたに花束を〜
15. 笑顔のおまじない
16. 旅人よ


<岡本真夜 25th Anniversary online LIVE〜Thanks α million〜>

出演:岡本真夜(Vo / Piano)、伊藤ハルトシ(Guiter / Cello) 、Miz(Violin )、KAZCO(Chorus)
配信メディア:
イープラス「Streaming+」
※ご利用にはイープラスへの会員登録が必要となります。(入会金・年会費は必要ありません)
視聴開始:
7/12(日)17:00〜/アーカイブ:【ライブ終了後24時間】
※ライブは1時間30分以内です。
視聴券料金:¥3,000(税込)
視聴券(サポート500)¥3,500(税込)
視聴券(サポート1,000)¥4,000円税込)
視聴券(サポート1,500)¥4,500(税込)
※購入はイープラス会員IDに一枚まで(一枚で2端末まで同時視聴可能)
[サポートチケット]
今回、通常の視聴県と合わせてサポートチケットとして視聴券500円、1,000円、1,500円をプラスしたチケットを販売いたします、これまでのライブ活動が出来ない状況において、皆さまからの応援・ご支援は大きな力となります。ご賛同いただける場合には、今後の岡本真夜を含めたミュージシャン、ステージスタッフの活動資金とさせていただきます。なお、配信さるライブの内容はすべて同じで、配信に関する優劣、特典はございませんのでご了承ください。

チケット受付(先着):6月13日(土)12:00〜7月12日(日)23:00
受付専用:https://eplus.jp/mayo0712/

Streaming+に関する問合せ
https://eplus.jp/streamingplus-userguide/

主催:ドリーミュージック/ノイ
後援:J-WAVE
企画制作:ノイ

◆岡本真夜オフィシャルサイト
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