【連載】フルカワユタカはこう語った 第35回『実験』
▲with 荒井岳史(the band apart) / 2020.3.29@新代田FEVER
いつもこのコラムは推敲に推敲を重ねて、数時間、書いたり消したりを繰り返して仕上げている。が、今回は思いついた文章をひたすら一直線に書いてみた。
◆フルカワユタカ 画像
「実験」。
絵を描く時やギターを弾く時のように、直感的に文章を書くとどうなるのかという実験。
どうも最近の僕は作曲や執筆を論理的にやりすぎているのではという考察からの実験。
以下、休憩をはさんで30分弱で書きなぐったコラム。
いつもに比べかなり“とっちらかった”印象があり、読み物としては多少申し訳ないところもあるが、伝わるだろうかこのリズム感が。個人的には案外に好きな文章である。
がいかに。
※ちなみに、()内は要領を得ない箇所や誤解をうみそうな箇所に補足で後から書き足したもの。
▲フルカワユタカ自宅作業スペース
◆ ◆ ◆
右と左。
ポリティカルな話じゃない。
右脳と左脳の話。
人間の右脳と左脳はその役割が違うというのは有名な話で、右脳は音楽や空間把握、直感などに働き、左脳は言語や計算や論理、分析などに働く。
言い換えると右脳は感性で左脳は理性といったところか。
いかにも論理的情報処理の代表格とも思える将棋だが、以外にもプロの棋士達は右脳をフル活用しているらしい。
大事なのは論理的思考よりも盤上の空間把握能力やイメージ力なのだろう。
右脳は別名「音楽脳」とも呼ばれる。故に、言うまでもなく右脳が我々音楽家にもたらすものは大きい。
数年前、右脳を鍛えることで何か自分の音楽に影響が起こるか否かを確かめようと箸を持つ手を逆にしたことがある。
それが原因だったかわからないが、当時少しだけ時間にルーズになった。
逆に言えばそれくらいの変化しか自分では実感出来なかった。
という数年前の中途半端な実験を越えて、再度右脳の強化を、今度は相当な強化をしてみるという実験をここ2ヶ月ほど試みている。
実は今このコラム、(その実験の演習として)モーツアルトを爆音でかけながら(推敲無しの一方通行で)書いている。
僕に限ったことではないかもしれないが、僕は物を書くときは音楽を聴かない。いや、物を書く時に限らず、インタビューを受ける時、ラジオのゲストで喋る時、本を読むときも、とにかく何かしら頭で構文する時には音楽を聴かない。
正確には聴けない。
なんなら音楽に限らず、マネージャーがパソコンを打つ音が気になってインタビューを中断したこともある。
レコーディングでヘッドホンの片耳を外す場合、それは右耳だ。左耳でモニターする、つまり右脳。
だが、スマホをあてるのは右耳、つまり左脳だ。
モーツアルトを爆音で聴きながら書いている。
▲YouTube音楽バラエティ番組『いいYouだな TV』よりリモートセッション
いつもこのコラムは非常に時間をかけて言葉を推敲しながら、論理的に書き上げている。
(なので)書き上げるのに数時間かかる。
今日は(このコラムの準備運動に)朝から絵を描いて、速読をして、左手で食事をした。
そして今、爆音でモーツアルトを聴きながら文章を書いている。
とにかく直線的に書き進めている。推敲せずに、ただひたすら、絵を描く時のように音楽の旋律に合わせて、立ち止まらずに言葉を重ねている。
そう、僕は昔から絵を描くときは音楽を聴いていた。右脳左脳がどういう働きをしているかなんて知らない時からだ。
これは実験である。人生で音楽を聴きながら文章を書いたことはこれまで一度もないが、そんな僕がモーツアルトを爆音で聴きながらコラムを書いたらどういうものが仕上がるか、という実験だ。
今これを読んでいる人がいるということは、多少なりとも普段と違う、そして何かしら有益な実験結果が現れたということだろう(でなければ没稿としているはずだから)。
日本語は世界でも珍しい左脳言語であるらしい。これに類するものはポリネシアン語くらいだということだが、この辺のことを詳しく知りたい方は色々出てくるので是非ググっていただきたい。
これに対して英語というのは右脳左脳両方必要とするらしい。母音の認識が右脳で子音の認識が左脳。
何が言いたいかと言うと、日本語というのは(そもそもの)西洋音楽に(は)向いていないということだ。
外国人と外国語の組み合わせなら歌詞と音楽を右脳の大半で処理出来る。
のに対して、日本人は言語と音楽を同時処理出来ない。
使う脳が違うからだ。
メロディーと歌詞程度が(処理の)限界で、歌詞(の内容)を理解しながら、メロディーからアレンジ、ミックスの善し悪しなど全て同時に処理するようには、日本語は出来ていないのだ。だから日本の音楽は(ボディーランゲージが少ないなど、言語を重要とする文化もあいまって)ボーカルのミックスが異常にでかい。
いや、僕が言いたいのはだから日本の音楽が、日本のミックスがダメだということではない(断じて違うが、ここは本当に論理的文章が必要なため、モーツアルトの旋律の下では書けなかった。のでまた別途書きたい)。
むむむ、ここが今回一番僕の考察を書きたい伝えたい部分なのだが、先ほどからモーツアルトの旋律が気になって上手く書きたいことが書けない。
が、今日は読み返さないし、書き直さないと決めている。
ここまでかかった時間約20分。
一度休憩いたす(「いたす」ってなんだよ)。
失礼。
休憩より帰還。ここまでの書いたものも読み返さず続行を試みる。
まず、休憩が良くなかった。
インスタントコーヒーを飲みながら、ぼんやりと以後のコラムの展開を考え始めてしまった。
休憩直前に書いていた、日本詩が(西洋)音楽(を作る際に)にいかに不利か(繰り返す。否定的な話ではなく、むしろユニークな結果をもたらしているという話が本当はしたい)というくだりを論理的に組み立て始めてしまった。これではこの実験の意味がまるでないので、先ほどの章は完全に書きかけではあるし、誤解を受けるかもしれないが、あそこまでということで。
モーツアルトを爆音で聴きながら書いている。
▲Masayuki YamazakiオフィシャルYouTubeチャンネルより『LOW IQ 01』リモートセッション
そもそも僕はどっちなのだろう?
どっちなのだろうというのは右脳派なのか、左脳派なのかということだ。
もちろん音楽を生業にしているので、右脳派で”あって欲しい”。
絵を描くのは昔から得意だった。ということは右脳派であろうか。
だが、空間把握はあまり得意でない気がする。地図を書けばスタート地点とゴール地点の縮尺がいつも合わなくなるし、洋服を棚に上手に収納するのも、あまり得意ではない。
専攻は理系であるが、特に物理や数学の成績が良かったわけではなく、親兄弟が理系だからという理由で学科等を選んできただけだ。
本を読むのは早い方だと思う。将棋は得意だ。
文章を(論理的に)組み立てるのは(残念ながら)上手い方だ。
文章を書くことが好きかと言われればそうとも言えない。むしろ苦痛でさえあるときもある(←「文章を書くのが億劫である」ことが右脳派であることの必要条件ではないことに“書いてる時に”気づいていない一文だ)。
に対して、絵を描くことは昔から大好きだった。授業中はずっと落書きをしていた。
それにしても先ほどからモーツアルトが素晴らしい。
普段クラッシクをあまり聴かないが、(あらためてちゃんと聴くと)こんなに素晴らしいものなのか。
▲ファンコミュニティアプリ『fanicon』内での本人投稿絵画。タイトル「夜光船」
僕は幼少の頃、親の仕事の関係でドイツに住んでいたことがある。
2歳から3歳くらいの時だ。うっすらした記憶もある。
保育園に一度だけ行って号泣したきり行かなくなったこと。
トムとジェリーのアニメをみていたこと。
いつも車の中でヨーデルのような音楽がかかっていたこと。
高校に入ってツェッペリンを聴いた時に(瞬時に)衝撃を受けたわけ。
それまで学校で流行ってるJ-POPにまるで興味をもたなかったわけ。
普段聴く音楽が極端に洋楽に偏っているわけ。
が、ドイツに住んでいたことに多少なり影響して“いてくれたらいいなあ"とたまに思ったりする。
だってそうだとしたら(脳の発達期に受けた、言語や音楽の影響による)右脳的な何か(が原因)な気がするもの。
段々このコラムの趣旨が分からなくなってきたぞ。
血液型A型の人がB型に対して持っているコンプレックス的な話みたくなってきたぞ。
ちなみに僕はA型だ。そしてB型の奔放さが時に疎ましくときに羨ましくある。
血液型信者はA型に多く、不信心者はB型に多いらしい。が、B型はどこか自分がB型であることを誇らしげにしているふしがある。そもそも信じてないのにだ。
モーツアルトを爆音で聴きながらコラムを書いている。
▲フルカワユタカ自作me文字
(このような状況下で文章を書くには)どうやらここいらが限界のようだ。
それになんだかどっちでも良くなってきた。色々考えるのがめんどくさくなってきた。
(おや、)という思考はいかにも右脳的である(ではないか、喜ばしいことに)。
というパンチライン(をモーツアルトの旋律を聴きながらでも書けてしまうの)はいかにも左脳的である(残念ながら)。
◆ ◆ ◆
■『フルカワユタカと荒井岳史のアコライブ生配信』
open20:50 / start21:00
価格:490円
※the band apart荒井岳史との有料配信ライブをファンコミュニティアプリ「fanicon」内の配信機能を使用して開催。ファンコミュニティ会員以外もチケットの購入が可能。
▼公式ファンコミュニティ「星の降る町」
キャリア初となる公式ファンコミュニティ「星の降る町」開設。ファンコミュニティでは、新曲がいち早く聴ける他、ここだけでしか観られない会員限定の生配信ライブ、ここだけでしか見られない呟きや、オンラインギタークリニックなど、ツアーと併せて楽しめる様々なコンテンツに挑戦していく。
■コンテンツ内容■
・ここだけでいち早く聴ける新曲
・ここだけでしか呟かない、本人による投稿
・ここだけでしか見られない生配信ミニライブを月1〜2回程度開催予定
・本人によるオンラインギタークリニック
etc.
「星の降る町」入会ページ
■ベストアルバム『傑作選』
NIW 149 / 2,545円(+税)
▼収録曲
01. Yesterday Today Tomorrow ※録り下ろし新曲
02. コトバとオト feat.Base Ball Bear
03. クジャクとドラゴン feat.安野勇太 (HAWAIIAN6)
04. ドナルドとウォルター feat.原昌和 (the band apart)
05. 僕はこう語った
06. busted
07. days goes by
08. シューティングゲーム
09. slow motion (2020mix)
10. プラスティックレィディ
11. I don't wanna dance
12. サバク
13. next to you
14. too young to die
15. Beast
16. farewell
17. 密林 ※録り下ろし新曲
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