【レポート】<FISHMANS ARライブ「INVISIBILITY」by 渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト(au 5G) >に見えた、全く新しい体験

ツイート

2020年6月14日(日)の深夜10時から、渋谷パルコ内にあるライブストリーミングスタジオ「SUPER DOMMUNE」にて、孤高のバンド“FISHMANS”を迎えたARライブ「INVISIBILITY」が行われた。

◆<FISHMANS ARライブ「INVISIBILITY」> 関連動画&画像

今回のARライブは、渋谷5GエンターテイメントプロジェクトとDOMMUNEがタッグを組んで行われたものである。au 5G(KDDI)による“5G時代の最先端テクノロジー”を活用した、スペシャルプログラムだ。去る5月19日にも、渋谷5Gエンターテイメントプロジェクトは「バーチャル渋谷」を立ち上げ、渋谷のスクランブル交差点付近を仮想空間上に再現した。そちらはいわゆる、VR(仮想現実)空間である。自分のアバターをリアルとは異なる空間に出現させ、自由に回遊する。「バーチャル渋谷」ではそのテクノロジーが用いられていた。

今回はAR(拡張現実)である。もうひとつ別の空間を作るのではなく、文字通り“今いる空間をベースに事物が拡張されてゆく”。その技術が使用されている具体例を挙げるならば、ゲームでは「Pokémon GO」、エンターテイメントならばPerfumeのライブ演出が最たるものだろうか。


そして今回のFISHMANSによる「INVISIBILITY」が、そこへ加わった。このARライブの前にはZAK(IAF)、宇川直宏(DOMMUNE)、塚田有那(Whole Universe)、橋本幸士(理論物理学者)、磯部洋明(宇宙物理学者)によるトークライブが行われたが、両者は密接に関係していた。“INVISIBILITY”、すなわち「見えないもの」だが、音楽はそもそもそういう類のものではなかったか? コロナ禍にあって、ほぼ全てのライブが無観客配信を余儀なくされている今、図らずも我々は原点に立ち返っている。そしてトークライブの際に宇川が言ったことが、現在の音楽シーンを、延いては社会を考える上で非常に重要ではないかと考える。そしてそれこそが、FISHMANSの元フロントマン佐藤伸治(故人)が歌詞として言い当てていたことでもある。

「縁、つまり他者との関係性においてでしか自己は存在し得ないのではないか。そしてそれは本来目に見えないものであり、AR的なものなのだと思う。FISHMANSのボーカリストだった佐藤君は90年代末に亡くなってしまったけれど、僕は今も彼がバンドの精神的支柱にいるような気がする」(宇川直宏)




「音楽は目に見えないものです」という、ZAKの言葉からライブがスタートした。「チャンス」から「いなごが飛んでいる」と、ファーストアルバム『Chappie, Don't Cry』に収録されている楽曲が立て続けに披露される。この時点で、ARやVRなどのカッティングエッジなテクノロジーがもたらす最大の恩恵のひとつに再発見があるのではないかと思い至った。これまでの芸術史を振り返っても、ルネサンス(再生)期があったように、技術の発展は我々の足元を照らし出す。宇川が言うように、佐藤伸治が書いた詩はどれも視覚的でありエキセントリックであり、“私とあなた”がいる。シュールレアリスムのように非合理な描写がありつつ、けれどもそこで描かれている人と人の関係性には輪郭がある。それはまさしくAR的であり、今回はそれを可視化することが目論見のひとつであったように感じられた。そして、テクノロジーの進歩が影響するのはビジュアルの表現だけではない。90年代と比較すると、そもそも配信技術が進化しているのだ。バンドサウンドそのものの再現性も非常に高く、ひとつひとつの音の粒が躍動しているようだった。ダブの空間的な音作りも活きていたし、それが更に視覚的な効果を増幅させていたような気がする。

手探りで構築されてゆく世界観がひとつの完成形を迎えたのが、10曲目の「救われる気持ち」であった。CDに付属する歌詞カードを読みながら、あるいは歌詞サイトを見ながら、この日のアーカイブ映像を鑑賞できる読者はぜひ該当ページへ飛んでいただきたい。灯籠のような明かりがスタジオの上部へ立ち込めてゆく様は圧巻で、同楽曲の短い歌詞世界を残酷なまでに美しく彩っていた。これは見方によっては、先述のPerfume以降のライブ表現であるように思われる。それはつまり、音楽よりも文字情報が前提として存在する点において。前段でFISHMANSの音楽の素晴らしさにも触れたが、やはり今回は言葉が重要であったのだ。詩が視覚的な情報として変換され、宙を舞う感覚。




「ナイトクルージング」、「夜の想い」でライブは大団円を迎えるが、この頃には既に現実とフィクションの境界線は曖昧になっていた。夜の深淵に宇宙を投射させ、そこに花火を打ち上げる。自室を暗くすると、そこは完全にSUPER DOMMUNEのスタジオだった。配信はライブ体験の代替品には決してならないが、「INVISIBILITY」の体験は全く新しいものであったのではないか。個人的には、ライブでなくドキュメンタリー映画を見終わったような心地であった。それも、今までような3次元の作品ではない。ARテクノロジーによって見えないものを可視化させ、無限に広がるパラレルワールドの一部を垣間見ることが出来た。つまり、文字通り次元を超える体験であったのだ。

もちろん、これは「バーチャル渋谷」とも異なる体験である。そして更にもうひとつ重要な点を付け加えておくと、ARのビジュアル表現がリアルタイムで生成されていたことだ。これはPerfumeのライブ演出にも共通することだが、恐らく“拡張された現実”が現実と同時に存在していなければ、多次元的な空間は成立しないだろう。リアルタイムで現実を拡張するのと、アフターエフェクトで映像を編集するのとでは、様相は全く違うものになる。

全体的に抽象度が高くなってしまい、この文章を読んでいただけているか不安になってきた。しかしこれは事実なのである。可能な限り写実的で、客観的な文章を心がけたつもりだ。イマイチ感覚として掴めない読者がいるとすれば、我々が立つ曖昧な“現在”が概念ごと変わろうとしているからである。

……まぁとりあえず、いっぺん次元を超えてみよう。考えが変わる。最後に念のため断っておくと、これはオカルティズムではない。徹頭徹尾、リアリティの話だ。

現在、さまざまなライブ配信プラットフォームが立ち上げられているが、「SUPER DOMMUNE tuned by au5G」は、最先端テクノロジーを活用した5G時代にふさわしい配信型スタジオとして規格外のエンターテイメントを今後も届けてくれることだろう。このプロジェクトが日本の文化都市、渋谷から始まったことを心から尊重したい。

Text:Yuki Kawasaki



<FISHMANS AR LIVE「INVISIBILITY」>

2020年6月14日(日)
出演:
FISHMANS(Dr、Vo:茂木欣一、Ba:柏原譲、Key:HAKASE-SUN、G:木暮晋也、G:dARTs、En:ZAK)
Presented by 渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト & SUPER DOMMUNE tuned by au5G

◆渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト オフィシャルサイト
◆FISHMANS AR LIVE「INVISIBILITY」詳細
この記事をツイート

この記事の関連情報