【インタビュー】「楽器が買えないわけじゃない」Nagie Laneが語る、アカペラ&シティポップ

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2018年に結成された、ネオシティポップバンド、Nagie Lane(ナギーレーン)。2019年1月よりYouTubeにオリジナル曲とカヴァー曲を投稿しはじめ、同年6月には初のミニアルバム『ナギービートで唄わせて』をリリース。調和の取れた美しいハーモニーを響かせるだけでなく、モデル、トリリンガル、アレンジャーなど多彩な才能が集結していることに加え、クオリティの高い映像作品などを意欲的に発信している5人組だ。

そんな5人のカヴァー曲のレコーディング現場に潜入し、インタビューを敢行。アカペラに持つポリシー、アカペラだからこそ可能な表現やそれがもたらす醍醐味、異なる才能を持った5人が集まった意外な経緯、最新作『Dramatique』での挑戦など、メンバーは様々な疑問に真摯に答えてくれた。

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■一生残るものだから

──まず、異なる経歴で、年齢もばらばらのみなさんが集まった経緯が気になりまして。

がっくん(B):もともと全員、違う大学のアカペラサークルに所属していて。アカペラのイベントで対バンする機会が多かったので、お互い顔見知りではあったんです。

バラッチ(Vo&Cho&Voice Percussion):それでがっくんとれいちょる(Vo&Cho)が、何人かで前身グループを組んで。

がっくん:それが3年くらい前かな。“シティポップ”という音楽性と、ひとつの大会を目指すために“new”という仮グループ名で結成したんです。無事に賞はいただいたんですけど、その後メンバーチェンジがいろいろとあって、Nagie Laneとして本格始動する前にこのメンバーを集めた発起人が脱退することになってしまって。発起人の子が抜けるにあたり、ボイスパーカッションならバラッチができるということで、一度5人でやってみたらうまくいって。それでこの5人でNagie Laneとしてスタートした、という感じですね。

▲がっくん

▲れいちょる


──なぜシティポップという音楽性だったのでしょう?

がっくん:僕はもともとブラックミュージックやジャミロクワイみたいなアシッドジャズ、最近だったらSIRUPさんが好きで。もともと自分の音楽の好みがシティポップにあるというか。

れいちょる:みんなほかにも好きなジャンルはあるんですけど、共通して好きなものがシティポップで。前身バンドの頃、シティポップを題材にしたアカペラグループは、特に学生ではほとんどいなかったんです。発起人の子はそこに着目してバラッチにオファーをして。

バラッチ:実は加入前に一度アレンジだけの依頼を受けたことがあって。その際に、シティポップがどんなものか調べてみたら、じつは自分の好きな90年代の渋谷系やはっぴぃえんどとか、シティポップの枠組みに入るものが多くて。だからアレンジのイメージも湧きやすかったんですよね。

れいちょる:発起人の子はおしゃれなことが好きだったので、流行のアンテナをつねに張っているようなメンバーで一緒にグループを組みたいと思ったんだと思います。“新しいことをしてみよう”って。だからグループ名も“new”だったんですよね(笑)。

──新しいものを作ろうという意志のもと結成されていると。みなさんの歌を聴いていて、すごく調和を大事にしている印象があったんですよね。それこそみなさんを集めた発起人の方がいなくなっても、チームワークを発揮できる理由も気になったんです。

バラッチ:綿密に話し合いはしますね。練習より話し合いのほうが長いこともあるくらい(笑)。お互いに正直に意見を言い合うようにしてます。

がっくん:Nagie Laneの中に、LINEグループが10個くらいあるんですよ(笑)。

みかこ(Vo&Cho):衣装、ライブ、練習予定、カヴァー曲の選曲……みたいに話す内容によってグループを変えてるんです(笑)。つねに意見交換ができるような環境にはしてますね。

ブリジットまゆ(Vo&Cho):お互い顔見知りで“一緒に歌ってみたい”とは思っていたけれど、もともとは意見を言い合える関係ではなかったんです。“少し音程が低い”とか、“リズムが16ビートのストレートになってない”とか、“音量が大きいよ”とか、そういうことを言えるようになったのは1年くらい経ってからかな。本当にどうしても勝ちたいステージがあって、そのために意見を言い合って、絆が深まっていった気がします。


──新作カヴァー曲のレコーディングを見学させていただいて、一人ひとりが妥協なく楽曲に向き合っている印象がありました。

れいちょる:1回世に出たら聴いてくれる人のものになると……やっぱり怖いというか、下手なものは出せないというか(笑)。

ブリジットまゆ:れいちょるは“一生残るものだから”っていつも言ってるもんね(笑)。

れいちょる:うん。うちらだけのものではなくなった瞬間から、なにを言われても仕方がないと思ってる。

みかこ:だからこそ自分の出来る限りの仕上がりにしたいしね。

バラッチ:そういう意識も活動を重ねるうえでじょじょに上がってきた感じだよね。

──レコーディングでも誰かのパートを指摘する前に、“自分のここが気になるからもう一度録りたい”と全員が率先して自分のパートを磨いていたところも、これまでの意見交換があってこそかもしれませんね。

れいちょる:何度録ってみても“もっとこうしたい!”がいっぱい出てきちゃうんです(笑)。

ブリジットまゆ:永遠に続いちゃうから、それをバラッチが“大丈夫だと思うよ”と言ってまとめてくれるって感じです(笑)。

──2019年からカヴァー動画をYouTubeにアップしていますが、最近話題になっているチャート上位の楽曲もあれば、「今夜はブギー・バック」や最新作『Dramatique』にも収録されている「LA・LA・LA LOVE SONG」など、90年代の楽曲もありと、幅広い年代の楽曲をシティポップアレンジになさっていると思います。





バラッチ:古今東西の楽曲をみんなで出し合って、“アカペラにすると映えそうだな”とか“シティポップとして表現できそうだな”と思うものを選んでいます。アカペラには滑らかなメロディが相性が良くて。最近の楽曲はラップっぽい歌や、メロディラインの方が言葉に合わせて動くものが多いので、それも90年代の曲が多い理由のひとつかな。インスピレーションが湧きやすいというか。

──hideのなかでも「LEMONed I Scream」をカヴァーするというマニアックなチョイスには驚きました。

バラッチ:僕の趣味です(笑)。でも僕のなかであの曲はシティポップの枠組みなんですよね。音楽好きの人がカヴァー曲の並びを見て、文脈や流れが感じ取れるものにはしたいとは思ってます。

れいちょる:「LEMONed I Scream」も突然楽譜をもらって原曲を聴いたときに“えっ!?”と思って。

みかこ:うんうん。原曲と全然アレンジが違うんだもん(笑)。バラッチあるあるですね。

──とはいえ、原曲を知っている人間としてはここは押さえてほしい!というところはしっかり決めるアレンジと歌唱だなと。「LEMONed I Scream」ならばサビ前からサビに入るみかこさんのメロディラインは重要な場所だと思うので。

みかこ:ありがとうございます(照)。ちょっとスウィングっぽいアレンジなので、最初の母音を伸ばす必要があって。バラッチは新しいアレンジを持ってくるたびに参考曲を教えてくれるんですけど、今回は特にそれを聴きながら練習を重ねましたね。

▲みかこ

バラッチ:アカペラはそもそもがカヴァー文化なので、“声だけで表現するとこんなふうになるんだ!”という驚きが聴いてくれる方々の喜びにもなっていると思うんです。「LEMONed I Scream」みたいにシングル曲ではない曲をカヴァーするのも“いい曲だから知ってほしい”という気持ちがあるし、これをきっかけに原曲を聴いてくれる人もたくさんいて。そういうサイクルがカヴァーの面白いところだと思いますね。

──そうですね。カヴァー曲のラインナップを見ているとプレイリストみたいで。

れいちょる:わたしたちは男性アーティストの楽曲も女性アーティストの楽曲もカヴァーするので、バラッチは原曲の良さも残しつつアレンジしてくれるし、わたしたちも原曲を聴くだけでなく、本家のアーティストさんの映像を観て“これをNagie Laneでやってみたらどうなるんだろう?”とイメージを膨らませたりしています。カヴァー曲は聴く人も気軽に入って来れると思うので、原曲の持つ魅力は大事にしてますね。

がっくん:カヴァー曲の動画を作る時も、Wikipediaやインタビュー記事を読んで、イメージを膨らませたりね。

れいちょる:うん。下調べはしっかりしないとね。「LA・LA・LA LOVE SONG」の動画を撮ってくれたのは、今も撮ってくださっているカメラマンさんなんですけど、“こういうふうにしたい”というイメージをカメラマンさんと意見交換しながら撮影しました。

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