【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vol.131「世界の美景『ロシア』~TAMAKI’s view(MONO)」

ツイート

旅とは元来特別なもの。だが、新型コロナウイルスの出現によって世界は一変してしまった。自由に空を飛び、自分の目で見て世界を知ることが難しい今、ワールドツアーで世界を渡りゆくアーティストに訪れたことのある国にまつわる話を聞かせてもらい、読者の皆さんと共に旅気分を味わいたいと思いつき、すぐに頭に浮かんだアーティストがいた。それは日本人バンドとして世界で最も多くのオーディエンスを獲得したバンドのひとつであるMONOのベーシスト、TAMAKIさんだ。


撮影◎Yoko Hiramatsu

■TAMAKI(MONO)
東京出身4人組インストゥルメンタル・ロック・バンドMONOのベーシスト。イギリスの音楽誌NMEで“This Is Music For The Gods.(神の音楽)”と賞賛されたMONOサウンドにおいて、ピアノ、鉄琴なども操る他、20周年を迎えてリリースした最新アルバム『NOWHERE NOW HERE』に収録の「Breathe」ではヴォーカルを初披露。これがバンド初の歌入り作品となって話題に。ライブでは華奢に映るその容姿からは想像もつかないような男前な弾きっぷりと美脚に魅了されるファン多数。

1999年のバンド結成以降、59か国もの国々を渡り歩き、文字通りに世界を舞台にしてきた正真正銘のライブバンドのメンバーであるTAMAKIさんが、旅先で見たもの、触れたものについて、当時のライブ写真やTAMAKIさんご自身が撮影したスナップ写真を交えてお届けするこの「世界の美景」を紹介する企画。三カ国目として話を聞かせてくれたのは「ロシア」だ。

   ◆   ◆   ◆

■「ロシア」基本情報


正式国名:ロシア連邦
首都:モスクワ
面積:約1707万km2(日本の約45倍)
人口:約1億4680万人(2017年)
民族:ロシア人80.9%のほか、180を超える少数民族から成る。タタール人3.9%、ウクライナ人1.4%、バシキール人1.2%、チュバシ人1.1%など(2010年調査)
国旗:上から白、青、赤の三色旗
(出展:地球の歩き方)

   ◆   ◆   ◆

──ロシアは謎のヴェールに包まれた国というイメージを持っていますが、実際にTAMAKIさんが感じているロシアの印象をお聞かせください。

TAMAKI:やっぱり北の雰囲気というか、笑わない国という印象がありました。イミグレーションが静かで怖いというのもありましたね。電車でベラルーシからロシアに入ったことがあるんですけど車内でイミグレーションを受けたことがあって。美しい女性の入国審査官がやってきて、ニコリともせずにパスポートをゆっくりと時間をかけてチェックしながら「この荷物はなんだ」と細かく聞かれて「楽器だ」とその都度答えたりして。もちろんビザも取っていくからそれを見せたりと、とにかく一般の乗客よりははるかに時間がかかります。

──機材も多いでしょうし、問題も起きそうですね。

TAMAKI:以前ほど大変ではなくなってきてはいますけど、過去にはロシア近隣の国でショーがあるのに入国できず、ショーがキャンセルになってしまったこともありました。楽器を売る目的で入国するんじゃないかと疑われて。

──それは酷い…。イミグレはさておき、ロシアのお客さんの印象はどうですか?

TAMAKI:寒い国の人たちはやはり表向きクールな印象がありますね。もちろんファンでいてくれているので熱い人たちなのだろうとは思っていますが。


▲ロシアのヴェニュー、ZAL(2018年)

──少し逸れますが、ロシア女性は可愛い子が多いような気がします。

TAMAKI:美人が多いよね。「綺麗、だけど笑わない」みたいな(笑)。クールビューティーというか。

──日本で言うところの奥ゆかしさとは真逆で、ただ黙っているだけで自信に満ちているように見える。プーチンが女性だったらきっとこうなんだろうなって思ってしまうような強さがありますよね。

TAMAKI:プーチンで思い出した!ロシアの空港ではプーチン柄のパンツや靴下が自販機でたくさん売っていて(笑)。

──ほほう。ロシア土産と言えばてっきりキャビアとマトリョーシカなのかと。

TAMAKI:マトリョーシカはね、すっごい可愛かったからロシア好きの友達へのプレゼントしようと買って帰ったことがある(笑)。一番大きいので5cmくらいで一番小さいのはほんとに小さいの。


──独特な文化ですよね。さて、TAMAKIさんがMONOのメンバーとして最初にロシアを訪れてから13年ほど経ちますが国としての変化はありましたか?

TAMAKI:大きく違いますね。目に見えるところでは、私、車のこと全くわからないんですけど一番変わって来ているような気がします。ロシアへ行き始めた頃はすでに2000年代なのに80年代(?)のようなカクカクした車が多く、そのせいなのか排気ガスがひどくて雪が真っ黒になっていたりもしていて空気が悪い印象があったけど、ここ最近は車も日本と同じような感じで空気も綺麗になっているように思います。


▲Photo by Nadine Shanshayskaya(Russia, 2015)

──これまでロシアでは何回くらいライブを開催してきましたか?

TAMAKI:かなり。いつ頃から行っているんだろう? 

──MONO公式サイトによると2007年11月にモスクワのIKURAクラブで開催されています。


▲Photo by Andy Lee(Russia, 2015)

TAMAKI:そうそう、最初のヨーロッパのツアー・マネージャーが付いた時に行ったはず。この時1本しかやってないってことはこれが最初かもしれない。2009年にも行ってるね。

──IKURAクラブとは、あのイクラですか?

TAMAKI:ロシアはキャビアとかイクラがポピュラーですよね。

──魚卵クラブ…。確かに語源はロシア語ですもんね。さて、通常ロシアでは何カ所でライブを開催していますか?

TAMAKI:モスクワとサンクトペテルブルクの2カ所です。プロモーターも最初の頃は「ショーが終わったらそのまま夜行列車に乗って行ってください」みたいな世知辛い感じだったんだけど、ここ数年は高速列車が開通してそれで移動できるようになったから、日本の新幹線ほどではないもののそれなりに快適です。


▲モスクワ・サンクトペテルブルク鉄道の高速列車「サプサン」

──それによって移動時間は大幅に短縮されましたか?

TAMAKI:かなり。ライブ後、夜はホテルで寝て次の日に移動できるようになったので大きな変化でしたね。以前の寝台列車では明け方になると小窓からロシアっぽい景色が見えたから「世界の車窓からみたいだね」って話していたりしていたのも嫌いじゃなかったんだけど、今は二都市間4時間くらいで着くんじゃないかな。


▲サンクトペテルブルク モスクワ駅


▲モスクワ・サンクトペテルブルク鉄道ホームにて

──ステレオタイプの質問ですが、ロシアはやっぱり寒いんですか?

TAMAKI:寒い。けど、私達が訪れた時はマイナス2、3度だったかな? 

──あら、そんなもんなんだ。

TAMAKI:昔は街中にある気温計見て「わ、マイナスだ。寒いな」って思ってたけど、今はそんなに感じない。すっごい寒いのは北海道。よく北海道に行くんですが今年の冬はマイナス25度とか体験したし、経験した中では国内の北海道が一番寒いね(笑)。ロシアも都市部にしか行ったことないからもっと寒いとこも行ってみたいな。ただロシアはずっと暗くて晴れてるのをあまり見たことがないです。大抵行ったら曇ってるか雨か雪。雪が残っている印象しかない。建物もいわゆるちょっと暗い感じだったりしてね。でも赤の広場とかの派手な建造物の印象は可愛い。ああいうところだけは派手だよね。

──突然あそこだけが極彩色な世界なんでしょうか?

TAMAKI:マンションやアパートも、時々ああいうテイストはあったりするかな。でもそんなに多くはないような気がします。夜のサンクトペテルブルクは建物がライトアップされているのがとても綺麗ですよ。


▲サンクトペテルブルグの夜の街並み

■「赤の広場」

──ロシアで観光したことはありますか?

TAMAKI:赤の広場には3回行ったことがあります。2018年にA Storm of Lightというアメリカのバンドと一緒に回った時、モスクワが最終日だったからそのメンバーやクルーたちと行って面白かったよ。


▲赤の広場

──建物の中に入ったことは?

TAMAKI:ありますよ。歴代の大統領のお墓があって、レーニンの遺体が冷凍保存してあるんだよね。だからセキュリティチェックはもちろんあるし、レーニンの遺体安置所では喋っても立ち止まってもいけなくて兵隊さんが警護してる。AMAKというサウンドガイがその兵隊さんを驚かそうとちょっかい出して、キッと睨まれて「しっ!」とかやられたんだけど、兵隊さんも若い子たちだから可笑しくてクスっと笑っちゃってたりして。それが可愛くてさ。兵隊さんの服着てるけど普通の若い男の子なんだなって思ったりしてね。


──冷凍保存された遺体を安置している国はどのくらいあるんでしょうかね。

TAMAKI:中国もだよね。毛沢東の遺体が安置されている方向に拝んでる人いたもの。ただ私たちはあまり観光に時間を割いたりはしないから、このときも時間がなくて大慌てで空港へ向かったの。この日に日本へ帰る予定だったから。


▲飛行機から望むロシアの夜景

──レーニンや毛沢東など、訪れた国の歴史上の人物や建造物についてメンバーと話をされたりもしますか?

TAMAKI:こういう話はYODAが詳しい。歴史に関して質問すれば、彼は大抵のことは教えてくれます。

──いつかYODAさんに特別ゲストとしてこの企画に参加してもらいたいですね。

TAMAKI:そうね、それもいいかもね。

■ロシアでの食

──ロシアの料理はいかがでしょう?

TAMAKI:ロシア料理って美味しいですよね。ピロシキとかボルシチも結構好きでいろいろ連れて行ってもらったこともありましたが、最近はヴェニューのケータリングでお寿司のデリバリーなど冷めても大丈夫なものにしてしまうことが多いかな。昔は居酒屋や日本食レストランに行ったりしたこともあります。日本食が多いよね、ロシアは。

──ロシアに限らず海外ツアーでは和食レストランへ行くことも多いですか?

TAMAKI:お寿司とラーメンは多いね。いろんな国の日本食を食べてみたけど不思議なものがいっぱい出てきたよ。ロシアでは“SOBA”って書いてあったから食べてみたのね。山口県名物の瓦そばみたいに瓦の上にのってきたんだけど、日本蕎麦をソースで炒めてて不思議な食べ物になってた。美味しいかどうかって言ったら不味いかなって(笑)。

──和食を掲げていながら日本と韓国が混在しているコリアンの方が営む店も多いですよね。それが悪いわけじゃないんだけど味とか概念がちょっとズレてたりする。

TAMAKI:コリアンテイストになってることが多いよね(笑)。ノルウェーでここ数年必ず行くラーメン屋さんがあるんだけど、そこは段々クオリティが上がってきていて味が良くなっていってるのよ。この前行ったら行列になってて美味しいの。その店は日本の文化を勉強していそうな「日本大好きです」みたいなのが滲み出ている現地の方がシェフでした。

──この写真は?

TAMAKI:楽屋のケータリングに用意されていたお酒ですね。

──左の白いものはフムス?

TAMAKI:そうそう。海外では必ずあるよね。ベジタリアンが多いからこれが必ず用意されてる。


▲楽屋のケータリング

──外タレのツアー中、地方では売っていないので冷凍のままクーラーボックスに入れて東京から運んだことがありましたよ。

TAMAKI:みんな好きだよね。Dahmはすごい好きよ。日本人というか他3人はあんまり食いつかないかも。

■酒はウォッカ


──この写真は?

TAMAKI:ウォッカ。赤の広場行ったときにみんなで飲もうよって頼んで。「寒いからみんなでウォッカ飲んであったまろう」って(笑)。

──やっぱりロシアではウォッカなんですね。

TAMAKI:そうね。ウォッカうまいぜって話で(笑)。ウォッカとキャビアの組み合わせは最高だね。あと写真にあるようなピクルス系も大好き。前回のツアーでは照明の女の子のスタッフと飲みに出たんだけど楽しかったよ。そのヨーロッパツアーの照明さんはウクライナ人で旅好きで、ロシアに来たから飲みに行くっていうから付いていったの。飲み方がウクライナと似ているのかピクルスとウォッカで乾杯して。日本酒と漬け物みたいなもんかな。


▲ロシアの酒の肴

TAMAKI:お酒もさ、南に行くとテキーラとか美味しい。でも買って日本に持って帰っても家では飲まなかったりするんだよね。お酒は全般的に好きなんだけど、そんなにテキーラが好きなわけではないからメキシコで買ってきたのがずっと残ってたりする(笑)。ジンは好きだから日本でも買って飲むけど、ウォッカは日本じゃそんなに飲まなくて、ロシアで飲むと美味しいなあって感じです(笑)。

──沖縄では美味しいオリオンビールが帰宅して家で飲むと「うっすいなあ」みたいな。

TAMAKI:それよ、それ。


▲ロシアの流儀、ウォッカ

──TAMAKIさんの好きなお酒は?

TAMAKI:何でも好きよ。日本酒もワインも焼酎もビールも。海外へ行くと他にも飲んだことのないものも沢山あるからなるべくその土地で飲めるものを試すことにしてます。ビールなら必ずその土地のクラフトビールを飲んだりしますね。

──お酒はその土地の文化にも通ずるものですし、知ると面白いですよね。では最後に、これまでに飲んだ中で一番美味しかったお酒を教えてください。

TAMAKI:クロアチアのワインが一番美味しかった! スロベニアのワインも美味しいね。

──そうですか! いつかワインの美味しい国の話も詳しくお訊きしたいです。

写真◎TAMAKI
取材・文◎早乙女‘dorami’ゆうこ

 ◆  ◆  ◆



MONO MONO Nowhere Now Here Cover Art

アルバム『Nowhere Now Here』
2019年1月25日(金)発売
Labels:Temporary Residence Ltd.(North America & Asia),
Pelagic Records(UK, Europe & Oceania)
Formats:CD, LP & Digital
1.God Bless
2.After You Comes the Flood
3.Breathe
4.Nowhere, Now Here
5.Far and Further
6.Sorrow
7.Parting
8.Meet Us Where the Night Ends
9.Funeral Song
10.Vanishing, Vanishing Maybe

◆アルバム購入
www.smarturl.it/mono-nnh
◆Single 1「After You Comes the Flood」
www.smarturl.it/mono-ayctf
◆Single 2「Breathe」
www.smarturl.it/mono-breathe
◆Single 3「Meet Us Where the Night Ends」
www.smarturl.it/mono-muwtne

◆MONOオフィシャルサイト◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
この記事をツイート

この記事の関連情報