【インタビュー】ZIGZO、岡本竜治×大西啓之が語るコロナ禍と12ヵ月連続リリース「毎月対峙できる喜びがある」

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■「The World Introduction」制作当時は
■解散するんじゃないか?という状態だった

──軸になるメンバーがいた上で、それぞれの思いも反映させるというバンドとして最良の形といえますね。そして、第2弾となる7月20日配信リリースには「The World Introduction」のリテイクが選ばれました。

大西:第2弾の候補は「The World Introduction」のほかにもう1曲挙がっていたんですよ。そのときに哲から「The World Introduction」を推す声があって。実は、「The World Introduction」を作った当時のZIGZOって、バンド存続の危機でもあったんですよ。つまり“解散するんじゃないか?”という状態。今もこの曲=危機感というイメージがあって、それが世の中の現状とリンクしているんじゃないかって哲の話を聞きながら感じたんです。哲が今の自分の心情を一番込めやすい楽曲ということでもありますよね。

岡本:俺は、「The World Introduction」が候補に挙がって“それメッチャいい”と思った瞬間、当時のレコーディング過程を思い出していたんですよね。と同時に、リテイクのアレンジをイメージしたことを覚えています。

──第一弾の「FOREVER YOUNG (2020ver.)」同様、メンバー全員がビビッときた選曲なんですね。では、リテイクするにあたって大事にしたことは?

大西:レコーディングは、まずSAKURAが自身のスタジオで思うがままにドラムを録るところから始まるんです。ドラムのデータが送られてきた後に僕がベースを入れて、それをもう一度SAKURAに戻す。そこから、SAKURAのプライベートスタジオでRYOと哲のギターと哲のボーカルを入れるという流れ。だから、ベースを録る時点では哲の歌がどうなるか見えない状態ではあるんです。でも、そこはライブで培ってきた感覚があるし、今回、哲はこう攻めてくるだろうなという予測もつけられる。その答え合わせができるという意味でも楽しみなレコーディングなんですよ。

岡本:リテイクは、ある意味真っ白な状態で行うレコーディングとは違って、ライブで育ててきた曲を録ることになるんですね。つまり、ライブの雰囲気をそのまま活かしつつ、“せっかく録るならこういう冒険もしてみたい”というイメージを明確に持ったうえで行うもの。だから、すごくスムーズだし、いつもは使わないギターを使ってみたりという挑戦も楽しいんです。

──ライブ感を活かしたサウンドですか?

岡本:それもあって基本的にギターダビングなし、ギター1本ずつ左右チャンネルに入れるだけで音像をまとめる方向にしたんです。だけど作業を進めていくうちに、もう1本ギターを入れたほうがいいかな?と感じる場所が出てきたので、バッキングの上に色付け的なフレーズを弾いたり。そういう判断はレコーディング現場で、メンバーと相談しながら決めています。柔軟さを活かして可能性は広げていきたいので。


▲12ヵ月連続配信リリース第二弾「The World Introduction (2020ver.)」

──ちなみに、「FOREVER YOUNG (2020ver.)」のミックスはSAKURAさんが手掛けたそうですが、今回は?

大西:僕がミックスをしました。なので、RYOと哲のギターレコーディングと、哲のボーカルレコーディングに、僕は立ち会わないようにしたんです。

──えっ!? ミックスをするのであれば逆に立ち会ったほうがいいような気がしますが。

大西:いや、前回のファン投票のリテイク盤のときもそうしたんです。というのは、みんながこだわったり苦労して録ったポイントを知っていると、ミックスのとき、そこに味付けすることに躊躇してしまうので。

岡本:なるほど。

大西:ただ、「The World Introduction」はずっとライブで演ってきているから、それぞれのプレイとか楽曲トータルの雰囲気はわかっていたので、ここは強調したいであろうところを尊重するようにしました。あと、SAKURAはミックスするときにあまり音を加工しないのに対して、僕は音をデフォルメしていくほうなんです。だから、「FOREVER YOUNG (2020ver.)」と「The World Introduction (2020ver.)」を聴き比べると、サウンドの印象がだいぶ違うかもしれない。僕は一回こねくりまわしてみるんです、いつも。

岡本:でも、仕上がったトラックはそんなふうには聴こえない。ナチュラルで迫力のある音になっているよね。

大西:僕がいつも目指しているミックスは、ステージ上に自分が立っているときに聴こえてくる音像というか、突き刺さる感じのサウンドなんです。普通はスタジオで鳴らしたときの良い音を目指すと思うんですけど、バンドがライブで鳴らしている音はもっと突き抜けている。事実、ステージ上ではやかましいくらい音が鳴っているわけで。楽器の音をデフォルメしたり、奥行きを出したり、分離を良くしたりすることで、ステージ上の感覚を味わってもらえるようにミックスで表現したいんです。

──ミックスの違いも楽しみのひとつといえますね。「FOREVER YOUNG (2020ver.)」と「The World Introduction (2020ver.)」を聴いて、今後のリテイクに対する期待が一層強まりました。

岡本:ZIGZOは7月から開催する予定だったツアーをコロナ禍の影響で中止して、アコースティックライブ (ZIGZO Tour 2020代替公演<ZIGZO、そのかわり!>)という形に代替えしたんです。完全体ではないけれど、ZIGZOが動き始める。リテイクのほうも次曲以降はある程度決まっていて、俺ら自身も楽しみにしています。世界情勢は日々変わっていますが、その中で自分達が感じることも当然のようにあって、それによってセレクトするリテイク曲も変わっていくだろうし。

大西:そういうことができるのは今の時代だからこそ。技術の進歩はあり難くて、レコーディングは各自の空き時間を活用してデータのやり取りで進めることができるし、宅録をスタジオ録音と遜色ないクオリティまで上げることもできる。さらにはその音源を鮮度の高いまま発表することもできるんです。つまり、12ヵ月連続リリースはそのときのZIGZOの心情や世間の状況を反映させたものになると思います。去年は毎月ZIGZOのライブがあったから、RYOとのtest.Noや個人活動を併行しつつも必ずZIGZOに戻る1年間を過ごしたんですね。今年は12ヵ月連続リリースがあるから、毎月ZIGZOの音と対峙できる喜びもあるんです。

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