【インタビュー】HYDE、エンターテインメントと狂気を語る「僕はライヴを芸術だと思っている」

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HYDEが7月29日、Blu-ray&DVD『HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL』をリリースする。同映像作品はソロ再始動第一弾アルバム『ANTI』を掲げて行われた全国ツアーの最終日、12月8日の幕張メッセ公演を収録したもの。バースデーコンサート<HYDE ACOUSTIC CONCERT 2019 黑ミサ BIRTHDAY>からスタートした昨年は、アジアツアーと春秋二度にわたるアメリカツアー、そして国内ツアーと自身最多となる年間96本のライヴを敢行、<ANTI FINAL>にはその集大成となる最高峰を刻み込んだ。初回限定盤にはワールドツアー<HYDE LIVE 2019>の裏側を詰め込んだ50分超えのドキュメンタリーが特典映像として収められるほか、ライヴ本番直前の集合写真もフォトギャラリーとして収録される。

◆HYDE 画像 / 動画

「客席の盛り上がりも含めて、ホントにファイナルらしいいいライヴ」とは、2020年初頭のBARKSインタビューでHYDE自身が語った言葉だ。先ごろ実施された無観客配信ライヴ<LIVE EX>はソロとして約7ヵ月ぶりのパフォーマンスとなったわけだが、その間のコロナ禍による影響と現状、映像作品『HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL』、アメリカでの活動と2019年の自己評価、L'Arc-en-Cielの8年ぶりアリーナツアー<ARENA TOUR MMXX>、そして今後について語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■僕のライヴの強みはエンターテインメント性
■誰もが“これは圧倒的に他と違う”って感じる

──なにかと大変な昨今のコロナ禍ですが、HYDEさんはいかがお過ごしですか。

HYDE:いろいろと予定していたことが全部なくなっちゃったからね。曲作りしながらのんびり過ごしてます。庭の草刈りとかしてますよ。

──のんびり草刈りをしているHYDEさんがちょっと想像できません(笑)。

HYDE:ホント規則正しく生活してますね。今までアメリカと日本の往復で、ずっと時差ボケしていたけど、今はそれもなくなってすごく健康的だし。世の中がいろいろ大変なことになっていて暗い気持ちになりがちだけど、そういう小さなことでも自分にとってプラスだなと思えるような過ごし方をしたいなと思って。

▲<HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL>12月8日@幕張メッセ国際展示場4・5・6ホール

──こういうご時世だからこそ。コロナ禍でHYDEさんの2020年の活動予定も変更を余儀なくされたと思いますが、それについてはどうでしょう。

HYDE:まだ発表はしていなかったけど、予定していたツアーがすべてキャンセルになってしまいました。本当ならファンの子がビックリするような企画もいろいろ考えてたんだけど、それが全部なくなったのは、やっぱり残念ですね。でも残念だけど、そのぶん制作に時間を使えるし、のんびりリフレッシュできてるし、時差ボケもなくなったし、次に走り出すときはきっといいスタートが切れると思って前向きに過ごしてます。

──そうしたなか、7月29日にライヴ映像作品『HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL』がリリースされますね。昨年はバースデーコンサートから始まり、アジアツアーと2度のアメリカツアー、そして国内ツアーが行なわれ、HYDE史上最多となる年間96本のライヴに臨まれたわけですが、まさにその集大成と言うべき千葉・幕張メッセ公演最終日が収録されています。

HYDE:はい。

──いかがでしょう? もうすでに懐かしい記憶となっていらっしゃるのか、それともまだあのときの興奮が甦るような感覚だったりするのでしょうか。

HYDE:どうでしょうね? 今回のリリースのためにライヴ映像を何度もチェックしてたから、懐かしいという感じでもないし、かと言って去年12月がどうだったかなって考えると遥か彼方のような気もするし……微妙だね(笑)。

──では今のHYDEさんの目には、このライヴ映像はどう映りましたか。

HYDE:HYDEというアーティストの芸術として、かなり完成度は高いと思いますね。僕はライヴを芸術だと思っているからね、即興芸術というのかな。その完成度はとても高いし、これまで以上にHYDEというキャラクターが発揮されたものになったと思います。ファンのみんなも僕の目指すものを理解して、最高にクレイジーなカオスを作ろうとしてくれてるし、お互いのリスペクトも映像から感じるし、そういう意味ではちょっと微笑ましくもありますけど(笑)。いろんな意味で面白い、いい作品になってると思う。これ以上のものは今のところないんじゃないかな。


──まさに“作品”ですよね。ライヴの記録でもありますけど、芸術作品として美しい。ジャケットにも使われていますが、ステージセットのコンセプトである仮想都市“NEO TOKYO”が描かれたバックドロップからして圧巻で。HYDEさんのこだわりや目指す世界観がここに集約されていると感じました。

HYDE:ジャケットは実際のライブ写真に街を付け足しただけなんで、ファンの光はリアルです。昔からああいった街のバックドロップは作ってきてますからね。今回で何回目になるんだろう? 回数を重ねているぶん、どんどん僕の頭のなかにあるイメージが巧妙になっていってるので、デザイナーとやり取りしているときなんかは“もっとこうしなきゃダメだ”とか“なんで、まだわかってくれないんだよ”みたいに思ってしまうこともあって。何度もやりとりして完成しました。そういう点ではスタッフはちょっとかわいそうだったかもね(笑)。でも、これまでの知識があるから形にできたこともいっぱいあるし、そういう意味で言えば、今回はいちばんクオリティーが高いと思います。

──映像になっても凄まじい迫力ですからね。このバックドロップが存在するからこそ表現できたものもあると思うんです。例えば楽器と機材だけのシンプルなステージではきっとこのライヴの世界観は生まれなかったんじゃないかなって。

HYDE:仮にステージセットがまったくなかったとしても同じような盛り上がりにはできたと思うけど、印象はだいぶ変わっただろうね。フェスのように何もないステージでもできるけど、僕の目指すライヴの強みはやっぱりエンターテインメント性だと思うんですよ。パッと見たときに、誰もが“これは圧倒的に他とは違う”って感じるだろうし、個性という意味でも大きな意味があると思う。例えば海外の人がこの映像をYouTubeとかで観たとしたら、きっと印象に残るだろうなって、そういう気持ちもあるし。

──エンターテインメント性でいえばライヴの終盤に出現したエアーダンサー (※風で踊る筒状の巨大なバルーン人形)もそうですよね。あれによってステージの印象がそれまでのハードでアグレッシヴなものから一気にポップな方向へ振り切れるじゃないですか。そのへんのバランス感覚が絶妙ですよね。

HYDE:ポップな要素も自分らしさかなと思うんです。ちょっとコミカルな要素も似合うというか。そういう要素が逆にさらなるカオスに繋がったりもするし、オモチャ箱をひっくり返したような雰囲気が出て、そっちのほうがクレイジーかなと思うんだよね。要はドロドロにホラーを展開するのも怖いけど、そのなかで笑っているヤツがいるほうがもっと怖い、みたいな(笑)。そういうニュアンスはあるかもしれない。

──エンターテインメントと狂気の背中合わせ。

HYDE:そうそうそう。

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