【ライブレポート】和楽器バンドがコロナ禍に踏み出した大きな一歩

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和楽器バンドが8月15日、16日に横浜アリーナにて<和楽器バンド 真夏の大新年会 2020 横浜アリーナ 〜天球の架け橋>を開催した。

◆ライブ画像(14枚)

これは新型コロナウイルス感染拡大後初となる、アリーナ規模での有観客ライブ。会場では入場口での検温、消毒の徹底など感染症対策を厳重に行い、公演の最中も独自のライブの楽しみ方を提示、同時に全世界に向けて生配信が行われるなど、これからの“新しい生活様式”に即した公演となった。



結成以来、和楽器バンドが毎年開催してきた<大新年会>。今年も2月29日、3月1日に両国国技館にて開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために中止に。一年に一回の特別な公演であるが故に、仕方のないことと理解しつつもファンの悲しみも大きかったし、もちろんメンバーやスタッフ、和楽器バンドに関わる人々全てが口惜しい思いをした。

しかし先の見えないこの情勢下にあって和楽器バンドは、8月に、そしてまだ誰も挑戦していなかったアリーナ規模での有観客ライブという形で<大新年会>を開催してくれた。和楽器バンドにとっては約半年ぶりのライブでもある。状況が日々変わっていく中、この決断はメンバーにとっても相当な勇気のいるものであっただろう。しかしそれを振り払い、2日連続でライブを届けてくれた和楽器バンドの強い意思に、胸を打たれた。


これまでの<大新年会>と言えば、明るい楽曲で幕を開ける印象が強かった。しかし今回一曲目にセレクトされたのは名バラード「IZANA」。イントロが開け紗幕が下されると、天球や大自然をモチーフにした壮大な映像を背に鈴華ゆう子(Vo)が高らかに歌い始める。高いステージから徐々に降りてくる荘厳なその姿。ゆったりとしたメロディに美しい和楽器の音色が重なり、魂が解放されるような心地に。

この「IZANA」は鈴華が「予測もしない悲しみやつらさが起こる世界で、ひとつひとつの悲しみやつらさを包み込み、それらを溶かすことができたら」という思いで作った楽曲。今の世界を取り巻く状況にリンクした「均衡保つ 万策は尽き 苦渋に満ちた脅威は」という言葉、そしてそれに続く「平和を祈りて 天と地 隔てるかけ橋として」という歌詞。誰しもが不安に怯えるこの世の中で、“救いたりえん”とするそのスタイルにすでに涙腺は崩壊。和楽器バンドがこの公演にかける真摯な願いも感じられた。悲しみを受け止めた上での浄化、今日のライブの一曲目にこれほど良い選曲はないだろう。


そうして一度まっさらに浄化された状態の心に、「Ignite」で火をつける。炎柱吹き出す中で“ライブができる喜び”を全身で表現するような8人の激しいステージングと、8つの楽器と歌がギリギリでぶつけ合う音圧に圧倒される。続く「Valkyrie-戦乙女-」では山葵(Dr)と黒流(和太鼓)の叩き出す激しいリズムに、“和楽器バンドのこの高揚感を味わえる日をずっと待っていた”と感無量に。この公演は感染症対策のため声援も禁止されているが、鈴華が発した「そのままで充分伝わってきてるから!」という言葉通り、声こそないものの会場全体が興奮に包まれていることがわかる。

久しぶりに「いろは唄」が披露された後は、改めてバンドを代表して鈴華から本ライブの開催に至った経緯と思いが語られ、集まったファンへ感謝の言葉が伝えられた。そして町屋(G)、いぶくろ聖志(箏)、蜷川べに(津軽三味線)によるセッションコーナーへ。いぶくろの緻密で繊細な音色に、べにがロックに弾き弾く三味線が重なり、さらに町屋の神業ギターが炸裂。和楽器バンドの各楽曲や町屋の「焔」を彷彿とさせるフレーズもあり、ファンなら思わずニヤリとしてしまうような構成だったのもポイント。

なお、今回のライブはステージにはメンバー8人のみ、という条件下で開催されている。きっと当初予定されていた<大新年会>であれば、このセッションコーナーには剣舞隊やメンバー以外の和楽器奏者、ダンサーらが出演していたであろう。しかし今回はメンバー三人の奏でる音だけを純粋に楽しむという面白さを知ることができた。これは余計なものを削ぎ落として“音”で魅せる、まさに最新の和楽器バンドのスタイルだ。


中盤からは元気と勇気をくれるような、明るく前向きな楽曲が続いていたのも印象的。「IZANA」で浄化させ、「Ignite」で着火、そこから「World domination」「起死回生」などで鼓舞する。この構成も、さすがだ。

「起死回生」の三本締めで会場全体が盛り上がったところで、メンバーそれぞれのMCコーナーも。神永大輔(尺八)が自粛期間中にギターやピアノに挑戦していたという話や、町屋はこの期間に全く運動をしなかったというエピソードなどが明かされるが、べにが「みんなの顔を見てエネルギーをいただける。昨日、今日と幸せな気持ち」と言ったようにメンバーみんながステージ立てる喜びに満ち溢れているようだ。また、山葵が外国人の物真似から中国語で挨拶し、さらに亜沙(B)から無茶振りを受けてしまうシーンなど、いつもと変わらない和気藹々としたメンバーの姿も見られて、ほっこり。

そんな温かな気持ちに沿うように、神永の尺八の音が「オキノタユウ」へと連れて行ってくれる。伸びやかな鈴華のボーカルと町屋のアコギの音色に誘われて、浮遊していくような気持ちに。その場の空気感を丸ごと曲に引き込むところが、和楽器バンドの凄いところ。終盤の「雪影ぼうし」でもそれを感じた。この日は猛暑日であったが、8人が演奏すれば目の前に“雪花舞い散る”冬景色が浮かぶのだ。情景を投射するこの感覚は、和楽器バンドならでは。


昨今の暗い情勢をぶち壊すような「Break Out」からの後半戦には、鈴華と町屋の歌い分けが面白い「シンクロニシティ」やアニメ映像を使った「ワタシ・至上主義」など、楽しめる楽曲が盛り込まれ、和楽器バンド恒例の「和太鼓ドラムバトル」も行われた。いつもなら観客の歓声とともにドラムと和太鼓の激しい撃ち合いを楽しめるのだが、今回はそれも難しい。

しかしこのコーナーだけ写真撮影をOKにした上で、シャッターチャンスタイムを設けるなど、この状況下だからこその工夫が凝らされていた。亜沙がいつもビデオカメラとともに携えているパペット“亜沙カメくん”と黒流がキュートなポーズを取ったり山葵が自慢の筋肉をアピールしたりと、自身が「黒歴史」と言うくらい体を張って会場を楽しませてくれた。笑わせてもらいつつも、ファンを楽しませようとするメンバーの優しさにちょっとホロリ。

そしてライブの締めは「情景エフェクター」。メンバーの合唱にあわせ、観客も大きくクラップ。 “無数に続く分岐点の中で 僕らは「今」を生きれるかな?”という歌詞に、様々な葛藤を乗り越えて今日このステージを魅せてくれた和楽器バンドの思いを重ね合わせる。そして “君がいるのならば ここで歌ってもいいかな”という問いに応えるように、ファンはペンライトを左右に大きく振る。その光の輪が、明日へ続く虹のかけ橋のように見えた。


この感動をさらに突き上げてくれたのが、「暁ノ糸」。普段はアンコール時にファンがこの歌を合唱するのだが、今回はそれも叶わない。しかし事前にSNSで募集したファンの「暁ノ糸」歌唱動画を大スクリーンに映し出すという演出が行われ、この場では歌えなくても、ファンの思いは繋がっていることが実感させられた。それを受けて披露された、本家「暁ノ糸」は、今日一番のエモーショナルなシーンだったと思う。

また、10月に発売されるニューアルバムから「Singin’ for...」も初披露された。これは和楽器バンドからのまっすぐなメッセージが込められた一曲。歌詞にある“愛を届けたい 伝えたい 君の元へ”という気持ち、今回和楽器バンドのライブに触れた人には、しっかりと届いただろう。


鈴華はアンコールのMCで公演前に抱えていた不安をメンバーとファンの言葉が救ってくれたことを明かし、これからも「ライブをすると発表していく」と宣言した。そして「乗り越えて、こうしてまたみなさんと会える日を願って」との言葉でライブを締めくくった。オーラスに披露された「千本桜」にあわせてファンが掲げたペンライトの輝きは、「横浜アリーナでライブを再開する」という勇気ある一歩を踏み出した和楽器バンドの前途を祝す花吹雪のように思えた。


今回の<大新年会>は、いつものような派手な演出や大人数でのパフォーマンスはなかった。メンバー8人だけで作る、非常にシンプルなものだった。しかし最近の和楽器バンドは、余分なものを削ぎ落としたことで、より“強さ”を得たように思う。本公演では彼らの強さに救われ、励ましをもらい、そして明日への希望を感じさせてもらった。

当たり前が当たり前でなくなった2020年春。音楽の世界も見通しがつかないことだらけで、不安に苛まれることがある。しかし誰かが一歩を踏み出せば、その状況が変わるかもしれない。和楽器バンドはこの横浜アリーナという大きなステージで、それを体現してくれた。この公演を経て私たちファンも、和楽器バンドも、またひとつ大きくなったはずだ。

文◎服部容子(BARKS)
写真◎KEIKO TANABE

▲和楽器バンドが立ち上げた「たる募金プロジェクト」募金活動も会場で実施。2日間で約150万円、オンライン配信の課金システムを使った募金額は約30万円が集まった。この募金は、日本で製造される三味線の約60%を製造する大手でありながらコロナ禍で受注が落ち込んでしまい廃業することを決めた老舗三味線メーカー・東京和楽器に全額寄付される。

セットリスト

M01.IZANA
M02.Ignite
M03.Valkyrie-戦乙女-
M04いろは唄
M05.セッション1(町屋・いぶくろ聖志・蜷川べに)
M06.World domination
M07.起死回生
M08.オキノタユウ
M09.セッション2(鈴華ゆう子・町屋・黒流)
M10.Break Out
M11.シンクロニシティ
M12.ワタシ・至上主義
M13.和太鼓ドラムバトル
M14.雪影ぼうし
M15.地球最後の告白を
M16.情景エフェクター

Encore
EN1.暁ノ糸
EN2.Singin’ for...
EN3.千本桜

<和楽器バンド JAPAN TOUR 2020 TOKYO SINGING>

■日時 / 開場
10月24日(土)東京・ガーデンシアター開場16:00 / 開演17:00
10月25日(日)東京・ガーデンシアター開場15:00 / 開演16:00
11月14日(土)大阪・大阪城ホール開場16:00 / 開演17:00
11月28日(土)愛知・日本ガイシホール開場16:00 / 開演17:00

■チケット料金
前売 ¥10,000(消費税込み)
当日 ¥11,000(消費税込み)

■注意事項 / 申し込み同意条項
※政府の要請に基づき、ソーシャルディスタンスを確保した上で実施いたします。
※入場時、ご来場者の氏名、所在地、連絡先のご記入をお願い致します。身分証明書の確認も行います。
上記ご記入いただいた情報を公的機関の要請により提出する場合がございます。
※入場口にて検温を実施いたします。
また、以下の事項に該当するお客様につきましては、ご来場をご遠慮ください。
・37.5度以上の発熱(平熱より1度以上高い発熱)がある方 (会場に向かう前に検温をお願いいたします。)
・公演日より起算し、2週間以内に発熱や感冒症状で受診や投薬をした方
・公演日より起算し、2週間以内に嗅覚異常、味覚異常、咳、鼻水、発熱があった方
※マスクを着用してのご来場をお願いいたします。マスクを着用していない方のご入場はお断りさせていただきます。
※ご入場後に体調を崩された場合は、速やかにスタッフにお申し出ください。
(症状によりご退場をお願いさせていただく場合もございます。)

【その他注意事項】
※場内、ロビーなどでのご歓談は⾃粛をお願いいたします。
※⼊場⼝に⼿指⽤のアルコール消毒液をご⽤意いたします。消毒の徹底をお願いいたします。
※厚生労働省よりリリースされました、新型コロナウィルス接触確認アプリ(COCOA)のダウンロードにご協力をお願い致します。
※スタッフに体調不良の者がいないか、検温により確認いたします。体調に異常(特に出勤前の検温で37.5度以上)が認められた場合は速やかに⾃宅待機とし、代⾏のスタッフが対応いたします。
※公演時間は2時間を予定しております。公演中、場内は常に換気状態を保ち、場内ドアを全開放する換気時間を設ける予定です。
※終演後、規制退場とさせていただく場合がございます。
※プレゼント及びスタンド花・お祝い花は、感染リスク低減のためご辞退させていただきます。
※会場周辺でのアーティストの入り待ち・出待ち行為はお止めください。

『TOKYO SINGING』

発売日:2020年10月14日(水)

・CD収録曲(全12曲収録予定)※全5形態共通
M1. Calling
M2. Ignite
M3. reload dead
M4. 生きとしいける花
M5. Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE
M6. ゲルニカ
M7. Tokyo Sensation
M8. オリガミイズム
M9. 宛名のない手紙
M10. 日輪 M11. Eclipse
M12. Singin’ for...

■真・⼋重流盤(CD+フィギュア+Blu-ray付)】※オフィシャルファンクラブ真・八重流会員限定販売
PDCS-1915 ¥15,000(税抜)
・CD:全12曲収録予定
・フィギュア:和楽器バンド mini brokker8体セット
・Blu-ray(※プレイパス対応):REACT TOUR FINAL @横須賀芸術劇場 をフルサイズ収録(全17曲)
【Blu-ray収録曲】
和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT-新章- FINAL
1. Overture~ReAct~
2. 雨のち感情論
3. 天樂
4. 吉原ラメント
5. 蜉蝣
6. Strong Fate
7. 細雪
8. 鏡花水月
9. 月に叫ぶ夜
10. なでしこ桜
11. シンクロニシティ
12. 極限双打
13. 雪影ぼうし
14. 暁ノ糸
15. あっぱれが正義。
EN1. Ignite
EN2. 千本桜
※完全数量限定生産
*プレイパス対応Blu-ray
Blu-rayについているプレイパスコードを入力するだけで、スマホで曲や映像を、簡単に再生することができます
▲真・⼋重流盤 ジャケット


■初回限定映像盤(CD+Blu-ray付or CD+DVD付)
(CD+Blu-ray付)UMCK-7073 ¥6,000(税抜)
(CD+DVD付)UMCK-7085 ¥5,000(税抜)
CD:全12曲収録予定
Blu-ray/DVD共通
Premium Symphonic Night Vol.2 ~ライブ&オーケストラ~ in 大阪城ホールをフルサイズ収録(全16曲)
【Blu-ray/DVD収録曲】
Premium Symphonic Night Vol.2 ~ライブ&オーケストラ~ in 大阪城ホール
1. Overture
2. オキノタユウ
3. 細雪
4. 儚くも美しいのは
5. 砂漠の子守唄
6. 独歩
7. 雨のち感情論
8. 花一匁
9. Ignite
10. 戦 –ikusa–
11. 吉原ラメント
12. 蛍火
13. Bring Me To Life with Amy Lee of EVANESCENCE
14. 千本桜 with Amy Lee of EVANESCENCE
EN1. IZANA
EN2. 流星
▲初回限定映像盤 ジャケット

■初回限定ブック盤(CD+書籍)
UMCK-7074 ¥5,000(税抜)
CD:全12曲収録予定
書籍:Ouick Japanプロデュース和楽器バンド“解体新書”(全144ページ予定)付き
▲初回盤 ジャケット

■CD Only盤
UMCK-1668/9 ¥3,500(税抜)
CD1:全12曲収録予定
CD2:全曲の Instrumental をDisc 2として収録
▲通常盤 ジャケット

■デジタル配信盤
CD収録全曲に加え、「ロキ」をボーナストラックとして追加収録。
(全ダウンロード/ 全ストリーミングサービス配信)

・全形態共通封入特典
トレーディングカード全10種類のうち1枚ランダム封⼊
※初回プレス分のみ

・チェーン別オリジナル特典
“TOKYO SOUVENIR”(東京土産)
今作のアルバム「TOKYO SINGING」。東京から世界へということで、特典はアルバムの「お土産」がコンセプト。
是非、各種お土産をお楽しみに。
・タワーレコード:”TOKYO SOUVENIR”キーホルダー
・HMV:”TOKYO SOUVENIR”ペナント型マグネット
・Amazon:”TOKYO SOUVENIR”ポストカード
・楽天:”TOKYO SOUVENIR”ボールペン
・TSUTAYA:”TOKYO SOUVENIR”ポスター
・UNIVERSAL MUSIC STORE:メンバー写真/メンバーイラストクリアカード全16種から1種ランダム(PET製 B5サイズ)
(初回限定映像盤/初回限定ブック盤/CD Only盤の3形態セット購入で全16枚セット進呈)
・その他店舗・ECサイト:”TOKYO SOUVENIR”ロゴステッカー

※特典は先着となり数に限りがあります。無くなり次第終了となりますので予めご了承ください。
※一部取扱いのない店舗・オンランインショップもございます。詳しくは各CDショップにてご確認ください。
※それぞれのデザインは後日発表させて頂きます。

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