【連載】「建物語り」by うらら 第10回<夏空と、海と、浦賀かもめ団地>

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梅雨が明けた。
長い、長い、梅雨が明けた。

2020年3月、解散ライブになるはずだったSalleyの代官山UNIT公演が中止となった。

あまり暗い話を書きたくないので細かい内容は端折らせていただくが、今年の春はいろんな意味でしんどい日々が続いた。簡単に言うと、自分の中のネガティブとポジティブが毎日全力の喧嘩をして、そのダメージで起き上がれない、みたいな日々だ(今は両者が共存を覚えてくれたので、割と穏やかに過ごしている)。

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■青い空と、青い海と、あと建物が見たい。
■できれば、団地が見たい。

6月に入り、緊急事態宣言が解除されたが、入れ替わるように梅雨がやってきた。4月中には自宅である程度仕事ができる環境を整えてしまったので、結局そのまま自宅に籠る日々が続いた。変わったのは、窓から射す光の量が減ったことくらいだ。

なんとなく慣れてきた日々、というよりも、慣らされた日々の上で、叶わないこと、どうしようもないこともあるという現実も受け止められるようになって、あれだけ毎日誰かと外に出てははしゃいでいた私も自宅で一人で過ごすことが日常になって……そんな中でも日に日に大きく膨らんでいく一つの思いがあった。

「青い空と、青い海と、あと建物が見たい。できれば、団地が見たい。」

雨に閉じ込められる毎日、薄暗い部屋で天気予報サイトを何度も見に行っては、いまかいまかと梅雨が明けるのを待っていた。

8月1日。関東の梅雨が明けた。さあ行こう。今すぐ行こう。すぐさま目ぼしい友人に「海(と団地)見に行かない?」と連絡をとり、梅雨明けからすぐの、暑く、晴れた夏の日に、私は「浦賀かもめ団地」へと向かった。

浦賀かもめ団地は、横須賀市にある県営団地だ。昭和45年に入居開始、ということだから、千里ニュータウンに馴染み深い私的には「比較的新しめの団地」に感じられる。

横須賀インターで高速を降り、浦賀かもめ団地の方へ向かう。坂が多く、山を切り開いたような町で、海の気配は全くない。窓を通り越して響いてくる、夏を待ちわびていたセミたちの声をBGMに、ナビの通りに坂道を登ってゆく。やがて頂上を越え、道が降りはじめたそのときだった。


海と団地が同時に姿を現した。

ライブができなくなった3月、誰にも会えなかった4月、一人自宅で誕生日を迎えた5月、そして雨に閉じ込められていた6月と7月を耐えて、ようやく夏と、海と、青い空と、そして団地に会うことができた。この景色を見た瞬間、車の中で「うわぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」と叫んでしまった。同乗者ごめんな。

ということで、かもめ団地に到着したのだが、私は都内からの訪問者である。いくらここ数ヶ月ほとんど人に会っていないとはいえ、このご時世、あまりうろうろと見回るのも憚られた。なのでほとんど団地の外側や海の写真になっているが、いつものごとく、「詳しい情報」「細かい写真」は他の知識豊富な方のところで見ていただくとして、今回も私の好き!や興味!や見て!にお付き合いいただこうと思う。

車を停め、まずは足早に団地を通り抜ける。とにかく海が見たい。


ふと横に目をやると、団地の小径の奥が何にもぶつかることなく空へと抜けていた。こんな景色は今までに見たことがない。本当に海沿いに建っているのだな、と改めて実感する。ああ、早く海が見たい。


正面も景色がぶつからない。青い空が棟と棟の間に気持ちよさそうに広がっている。ああ、もうすぐ海だ。海と団地の、最強の共演が……。

ドーーーーーーーーン!!!!!!!

なにこれすっごーーーーーーーい!!!!!(50TAの歌のフレーズを思わず口ずさむ)

本当に海のすぐそばに団地が並んでいる。海を向いて、団地が、並んでいる。これこれ、これが見たかったんです! 最高です!


ほとんどが中層フラット(カステラ切ったみたいなやつ)で、ベランダ型(バルコニーが突き出していないタイプ)だった。直線的な埋立地に、直線的な中層フラットが並ぶ。後ろは山、前は海という自然たっぷりなロケーションでありながら、人工的な直線で形成されている違和感がたまらない。敷地内も緑が多いので、どこを切り取っても青と緑と団地、という写真になる。フォトジェニすぎる。(あとiPhone11proの広角便利だね)


4棟だけある高層棟の高層階からは、海が一望できるのだろう。絶対めちゃくちゃいい景色やん。登りたい。階段室どんなんか見たい。でも人んちだし、我慢。(手前の敷地、元々なにがあったんだろう?)


さきほどの「なにこれすっごい」写真の先から、振り返って撮った写真。太陽が西へと傾いている、つまりこの海に面した棟を含め、浦賀かもめ団地のほとんどの棟が南向きということになる。それも、光を遮るものは何もない。南には、海があるだけなのだ。


東側からみた高層棟。一番陸側に建っており、神奈川県のマークを肩に背負っている。後ろに見えているのは浦賀かもめ団地の一部ではなく、元々は官舎だったが、今は使用されていない建物らしい(後ほど話に出てくる方に教えていただいた)。


これは東側の写真。このまま私が後ろを振り返ると、先ほどの写真の風景になる。埋立地がせり出ているような形なので、東側ももちろん海である。ちなみに余談だが、持っているカメラは私のではなく、私を撮っているカメラが私のカメラ(NikonD5600)。

まず海!と来てしまったので、もう一度車で降りてきた道を歩いて戻り、高台から団地を見下ろしてみることにした。


景色が本当に綺麗……
緑、青、そして団地……夏……



連なる中層フラットの向こう側は、青々とした夏の空だけ。直線だらけの気持ちの良い景色。手前に見えている棟と左奥の棟で窓の配置が違うので、間取りのパターンが棟によって違ったりするのだろう。


坂の上にあった公園から。んん〜〜〜夏に見に来てよかった感〜〜〜!!! 棟によって微妙に色が違うのは、初めからだろうか、塗り替えかな?

坂をあがっている途中で、横須賀消防局の方に「この辺の人じゃないよね?こんなところに何しにきたの?」と話しかけられた。

団地が好きなので見にきました、と話すと、「わざわざ?」「へえ〜」「団地好きねえ〜」「ほお〜」とひとしきり物珍しそうにしたあとで、昔はこうだったんだよ、あっちには〜〜があるんだよ、今はこんな風だよ、と、この浦賀かもめ団地とその周辺のことを色々と教えてくれた。穏やかな笑顔で話す消防士さんから、街の温かさを感じた。

■こんなに素敵な景色は
■どこにでもあるものではない


さて、再び団地の方へ戻る。普通はここ最初だろ…海に引っ張られすぎた……
神奈川県のマーク、団地名が入った看板、もしかしてこの形は…カモメの「カ」かな?おもしろい。


敷地内のストアは、3店舗ほどが営業していた。一番奥のヤマザキショップの前では、住人の方々だろうか、談笑をされていた(ので近づかずに退散)。この左側には交番などもあった。


プレイロット、タコ滑り台がぽつん。全面に雑草が生い茂っており、サンダルでは立ち入るのを躊躇するほど。


別の場所、ブランコも雑草の中にぽつん。

行き交う船を、ぼぉっと眺める。海沿いの歩道では、こんがり焼けた上半身裸のおじさんが散歩をしている。

きっと海に近い団地ならではの住みづらさや、また多くの団地で共通する住人の高齢化など、様々な問題も抱えているのだろう。それでも、青い空と海と、緑の木々や草花、そして立ち並ぶ棟のコントラスト、こんなに素敵な景色はどこにでもあるものではない。


3月からずっと鬱々としていた心が、ぱぁっと晴れていくのを感じた。夏の太陽と空と海と浦賀カモメ団地、本当にありがとう。

夏といえば、私うららの夏の歌が配信リリースされている。

「あれから、」

という、ちょっぴりせつない夏ソングだ。


作詞作曲を、尊敬するアーティストであり作家である友人の山崎あおいちゃんにお願いして、最高の一曲ができたのでぜひ聴いてほしい。あおいちゃんに、夏が好きだから、夏の曲がいい!といったら、わかりました!私も夏好きです!と返事をくれた。

配信リリースなので、各配信サイトから聴いていただける。

また、ホームページもあるので、情報はこちらをチェックしていただきたい。



以前のようにライブができる日は、きっとまだ遠いだろう。けれど、音楽は鳴り止まない。好きなものから力をもらって、その力を音楽に変えてまた皆さんへとお渡ししていく。そういうポジティブな連鎖が続いていけばいいなと思う。

そのためにも細心の注意を払いつつ、また建物を見にいきたい。


そのときはまた、建物語りで。

うらら 

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