【インタビュー】アルルカン、暁と祥平が語るアルバムの違和感と真実「予定調和でないリアルな物語」

ツイート

アルルカンが8月19日、4年ぶりとなる3rdフルアルバム『The laughing man』をリリースする。収録された全10曲は、このアルバムのために書き下ろされた真っ新なナンバー。前アルバムから現在まで数々の新曲が発表されているが、あえてそれらを収録せずに純度を高めたという意味では、トータルコンセプトを研ぎ澄ました作品でもある。そのテーマは“アルバムにストーリーを”というものだ。

◆アルルカン 画像 / 動画

2019年秋に開催された結成6周年記念ワンマンツアー<6th ANNIVERSARY ONEMAN TOUR 「con anima」>ではメンバー同士が互いの額を激しくぶつけ合う一触即発のシーンがあった。ツアー明けの2020年2月にリリースされたシングルのタイトルは、「怒り」。バンドの現状に対する暁(Vo)の苛立ちが赤裸々に綴られた。果たして、アルルカンにまつわる違和感や不和は真実かデマか。それらすべての答えが、このアルバムに集約されていると言っていい。つまり前述のテーマである“ストーリー”とは、アルルカンというバンドそのものであり、彼ら自身の告白でもあるようだ。

BARKSは暁とアルバムタイトル曲の作曲を務めたベーシストの祥平に『The laughing man』についてじっくりと話を訊いた。コロナ禍ゆえにリモート制作となったことの是非、暁以外の4人が作詞を手掛けた「FIREWORKS」の衝撃、そして“笑っている”というタイトルの真意。すべてを語り尽くしてくれた10000字越えのロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■今まではメンバー個々が作りたいもの
■今回はそれとは作り方が全然違う

──BARKSでは、2019年の結成6周年記念ワンマンツアー<6th ANNIVERSARY ONEMANTOUR「con anima」>をレポートしていますが、ステージ上でメンバー間の一色触発の接触があったりと、かなりバンド内のヒリヒリとした状況も伝わるものでした。そうしたツアーや、2020年2月リリースのシングル「怒り」の内容なども踏まえると、今回のアルバム『The laughing man』は、さまざまな思いが織り込まれた作品だなと察します。まず、今作に向かう取っ掛かりはどんなものだったのでしょうか。

暁:いくつかありますけど。「そろそろアルバムを作りたいね」という話をしていて、次に作るんだったらめちゃくちゃいいものにしたいなっていうのはあったんです。で、どういうものにしたいか?となったとき、今、言っていただいたように、バンドがもがきながら活動していくなかで、苦しんだ分、ちゃんと前に進めるものがいいなと思ったんです。シンプルに笑って活動できるようになりたいなと。だから『The laughing man』というタイトルはそのときにはあったんです。

▲暁 (Vo)

──そうだったんですね。

暁:そこからはじまって。歌詞については、いつも自分がどう思っているかを歌っているんですけど、結構そればっかりになっちゃって。別に間違ってはいないと思うんですけど、人が受け取る上での幅がなかったり、逆にありすぎたり。そこに気づいて、もっと自然に届けられないかなと。であれば、この感情をもとに物語を作って、それに乗っかって曲やデザインやアートワークを作れないかなという想いはありました。

──それはいつ頃の話ですか。

暁:いつでしたっけ、祥平さん?

祥平:最初からちゃんとしたイメージがあったというよりは、作りながら段々とできていったものだったと思うんですよ。

暁:明確にしたのはいつなんだろうな……制作期間が長かったので。

──フルアルバムとしては4年ぶりとなりますしね。この間にかなりの数のシングルもリリースしていて、直近のシングル「怒り」は今回は収録されなかったじゃないですか。そこには何か理由はあったんですか?

暁:「全曲新曲でやりたいね」というのはメインコンポーザーの奈緒が言っていて。僕も、今ないものが欲しかったので、自然というか必然というか、「そうだね」となりましたね。ここまでシングルはいっぱいリリースしてますけど、それをアルバムに入れようという考えはなかったです。

──「怒り」はかなり感情が露わとなった曲で、自分自身にも他者にも“このままじゃダメなんだ”という、そのときのご自身の気持ちがかなりリアルに描かれている感触です。あのとき曲に向かっていたモチベーションと、今回のアルバムには隔たりがありますか?

暁:僕個人でいうと、「怒り」をきちんと形にできたから、気持ちが次へ向かったというか。「怒り」という曲は、完成に近づく頃にはメッセージになったんですけど、やっぱり出所は決してキレイなものではなかったので。それがあったからこそ、“次はちゃんと笑おうぜ”というテーマというかタイトルが出たんですよね……なかなかめんどくさい性格しているので、僕(笑)。だから、「怒り」からもちゃんと繋がっているんです。

祥平:僕にはそれと真逆なところがあって。「怒り」を2月にリリースしてから、コロナ禍の影響でライブができない状態になった。基本的に僕は、リリースした作品をライブで披露をしていくなかで消化していくタイプなんです。そういう意味では、「怒り」を消化しきれないまま、アルバム制作に入っちゃったというのがあるんです。

──なるほど。暁さんには、ライブができない状況のまま作品をアウトプットしていく上で、消化しきれないシコリのようなものはありましたか?

暁:特になかったですね。アルバム制作に限って言えば、自粛期間によってきちんと曲を書く時間を作ることができたので。逆にスパッといけた感じがありました。

▲祥平 (B)

──もう少し「怒り」についてうかがいますが、その制作時はみんなでぶつかり合ったり、葛藤しながら作り上げた感触ですか?

暁:“思いを出さなきゃ”っていう感じだったと僕自身は思うんですけど、4人はどうだったんだろう? “受け取らなきゃ”っていう感じだったのかな? 僕と4人とでは結構意識が違ったのかなって思ってますね。

祥平:受け取るのに必死だったのは覚えてる。

暁:はははは。

祥平:僕は、自分で歌詞を解釈をして、変に納得して終わらせるクセがあるので、意図をうまく受け取れんかったり(笑)。そういう意味では、やり取りは全然なかったと思いますね。

暁:「なんかグサっとくる」と言ってた歌詞の一節もあったよね?

祥平:全体的にグサっとくるんですよ。最初から最後まで耳の痛い感じでした(笑)。

──お互いに“こういうことを思っているんだな”って歌詞を通してやり取りした感じですね。それを1曲にまとめ上げてリリースしたことで、気持ちを昇華したんでしょうね、お互いに。

暁:そうですね。僕はそうだと思います。

祥平:ライブで演っていない「怒り」はサウンドやプレイ面ではまだちょっと消化不良ですけど、それがアルバム制作に変な影響をおよぼしたということはまったくないですね。

──アルバム制作に向かう上で、暁さんの思いとか、“笑って活動したい”という方向性とか、そういう話もメンバー間で?

祥平:みんながそのときに持っていた漠然としたイメージは、結構近しいものがあったんじゃないかなと思います。前向きだったり、明るかったり。

暁:僕が言いたいことや思っていることは、あまりわかりやすいものじゃなかったんですよ。それに比べると“笑いたい”というのは、みんなも受け取りやすかったんじゃないかなとは思いますね。

──そこを汲み取って作曲陣が、“それならこういう曲をやりたい”、“ああいう曲がいい”といろんなタイプの楽曲を作ってきたり?

暁:「向日葵」は結構前からデモとして存在していて。普通に曲としていいから、ベストなタイミングで出したいと思っていたし。コロナ禍の影響で中止にはなってしまったんですけど、6月に予定していた主催イベント<アルルカンサーカス>を見越して、「イン・ザ・ミラー」っていうアルバム1曲目に収録した曲があったり。「如何様」も早い段階であったんだっけ?

祥平:温めていた曲は「向日葵」くらいだった気がするな。

暁:そうか。“こういう曲をやりたい”っていうのは、そこから話し合うなかで出てきましたね。で、「如何様」「空に落ちる」とかタイプの違う曲が出揃った感じで。

──段々と曲の幅も広がっていった。

祥平:タイプの違う曲が揃って幅が広がったのは、アルバムにストーリーを持たせたということが大きいかな。今回は今までと作り方が全然違うんですよ。今まではもっとシンプルに、“それぞれが作りたいもの”だったと思うんです。

──個々の作りたい曲がひとつのアルバムにまとまる感じ?

祥平:それが今回は、“The laughing man”というストーリーがあって曲を作っていくというもので、俺らなりに器用にできたかなという手応えはありますね。

◆インタビュー【2】へ
この記事をツイート

この記事の関連情報