【ライブレポート】ハンバート ハンバート、回転木馬と描いた“消えていく東京”の物語

ハンバート ハンバートが8月25日、自身初の無観客生配信ライブ＜グッバイ、としまえん＞を行った。

◆ライブ画像（15枚）

今年3月からやむなく中止してきたライブツアーに代わって行われた本公演の会場は、8月末で閉園が決定している遊園地・としまえん。

ハンバート ハンバートは 2017年に「消えゆく東京とハンバート ハンバート」をコンセプトにしたミュージックビデオ「がんばれ兄ちゃん」を公開しているが、このコンセプトを下敷きに、今回の配信ライブも「消えゆく回転木馬」を背景にしたひとつの映像作品として作り上げていた。


暗闇に浮かび上がるランタン。揺れる灯りの中、としまえんを象徴する回転木馬「カルーセルエルドラド」の馬車に乗って登場したハンバート ハンバートの2人は「長いこと待っていたんだ」から演奏をスタート。

1曲目が終わるといつもの調子のおしゃべりをはさんだあとで「横顔しか知らない」を演奏。つづいて10月に発売される新しいアルバムから新曲「レンタカー」が演奏された。そして馬車からメインステージへ演奏の場を移動。メインステージでは、厳かに佇む回転木馬を背にした、まるで映画のワンシーンを思わせるような美しい映像が映し出される。そこでも変わらぬ二人のおしゃべりは続き、佐藤良成は中学生の時、としまえんに来た時のエピソードを披露。「としまえんのことは絶対に忘れないと思う」と思い出を振り返った。


その後、バラード「教訓1」「日が落ちるまで」をしっとりと歌い上げ、この日初披露の新曲「ぼくらの魔法」、人気曲「ぼくのお日さま」を立て続けに演奏。さらにサザンオールスターズの「真夏の果実」のカバーも初披露した。

つづくMCでは、10月21日にアルバム『愛のひみつ』をリリースすることが発表された。この発売日は佐藤良成の誕生日でもあり、「いいのができたのでぼくの誕生日プレゼントとして全員買ってください」と呼びかける一幕も。


ライブ後半の佐藤良成によるピアノ伴奏、フィドル伴奏のセクションでは新曲「試作品第12号」を演奏。「愛」を覚えた研究所のロボットのとまどいをハン バート ハンバートらしいリズミカルな演奏とコーラスワークで表現した楽曲だ。

間髪を入れず、ピアノ伴奏による「虎」が始まる。壮大な回転木馬を背景に、淡々と、しかし丁寧に歌の輪郭である悲哀を表現していく様子はとても説得力をもっていた。そこからの「ホンマツテントウ虫」「国語」「メッセージ」はハンバートファンにはおなじみのセットリストだが、この夏、このタイミングだからこそのアレンジにニヤリとした視聴者は多かったことだろう。


にぎやかで楽しい打ち上げ花火のような楽曲が続いた後、二人は回転木馬前のステージから移動し、坂を登って別のステージへ。少し遠くで 2010年に機械遺産となった回転木馬のスタートのブザーが鳴り響いた後、ゆっくりと木馬が回転しはじめ、それをバックにこの日最後の曲「おなじ話」が演奏された。

ひとつの回転木馬を主役に据え、消えていく東京の景色をテーマに1本の映像作品にとして表現した今回のライブ。最後に二人が「グッバイ、としまえん！」とコールすると映像がドローンに切り替わり、回転木馬からとしまえん、としまえんから東京の夜空へと景色が広がっていく。


この演出をもって、今回の生配信で演奏された楽曲の1曲1曲が物語のようにつながっていくのを感じ、しばらくその余韻に浸 っていたファンも多かったと思う。

この生配信の模様は、アーカイブとして8月31日23時59分まで見ることができる。




◆ハンバート ハンバート オフィシャルサイト