【機材レポート】松本孝弘、『Bluesman』REC機材に探求心と遊び心「改造したギターがすごくいい」

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B'zの松本孝弘が、前ソロアルバム『enigma』から約4年ぶりとなる『Bluesman』を9月2日にリリースした。“Japanese Bluesman”として自覚的に制作された全13曲のインストゥルメンタル作品は、ロック、ウエスタン、和テイストなど様々なアプローチで“ブルーズ”を表現しながらも、TAKならではのトーンが核を貫く仕上がりだ。そのレコーディングには、これまで同様に数々の所有ギターがスタジオにセットされ、その中からフレーズに最も適したものがセレクトされたという。

◆松本孝弘 画像

『Bluesman』のレコーディングで使用されたギターはアコースティックを含めて全7本。そのうち、昨年入手したレコーディング初登場となるギターが4本、さらにその中の3本は貴重なヴィンテージギターだ。また、B'zのアルバム『NEW LOVE』レコーディングや、ツアー<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->ではブリッジとテイルピースが一体となったバーブリッジのGibson Jeff Beck 1954 Les Paul Oxbloodが使用されたが、今回のレコーディングで使用された3本の新規ヴィンテージギターのうち、2本がバーブリッジのモデルだったことも興味深い。

「もともと僕は、ジェフ・ベックが持っていたレスポールが“バーブリッジ”で“オックスブラッドという色”だっていうことをまったく知らなかったんです。黒いレスポールスタンダードを持っていると思ってたんですね。それが数年前に、初めて“Oxblood”というギターの存在を知って、そのシグネチャーを入手できないか楽器屋さんに相談したら、わりとすぐに見つけてくださったんです。ジェフ・ベックの“Oxblood”のストーリーを調べると、1954年当時はゴールドトップでP-90ピックアップしかなかった時代だから、改造されたモデルなんですよね。で、それと同じ製造年のレスポールを入手して、P.A.Fを搭載してみようと」──松本孝弘

つまり、シグネチャーという形とは別に、ジェフ・ベック本人の“Oxblood”と同年代のレスポールを入手して、仕様を再現するという試みが行われたわけだ。

「1954年製と1955年製の2本を買ったんです。それを僕がいつもギターのメンテナンスをお願いしている楽器屋さんに相談したところ、「1955年製のほうを改造したほうがいい」という話になって、実は僕もそう思っていたので実行したわけです。ピックアップは1960年製のギブソンES-175に搭載されていた“P.A.F”を移し替えたんですけど、鳴らしてみたら、改造したギターがすごくいい音で。これが意外に歪むんですよ。ディストーションの音がすごくいい。だから、今回のレコーディングでは1955年製を歪みのメインにして、1954年製をクリーンや少し歪ませるくらいのトーンで使ってます」──松本孝弘

これらバーブリッジ仕様の3本 (Gibson Jeff Beck 1954 Les Paul Oxblood、Gibson Les Paul Gold Top 1954、Gibson Les Paul Gold Top 1955) に加え、昨年入手したGibson Les Paul Standard 1959 や、Gibson Les Paul Custom -清正-など、レスポールは全5本が使用されている。また、昨年入手したFender Stevie Ray Vaughan Signature Stratocaster Relic、ファンにはお馴染みのアコースティックギターMartin 1937 000-18もレコーディングに加わった。


すでに公開されているアルバム収録曲「Waltz in Blue」のミュージックビデオでは、Gibson Les Paul Gold Top 1955、Gibson Les Paul Gold Top 1954、Gibson Jeff Beck 1954 Les Paul Oxblood、Fender Stevie Ray Vaughan Signature Stratocaster Relicを弾く松本孝弘の演奏シーンを観ることが可能、それぞれのトーンの違いを味わうことのできる仕上がりとなっている。以下に、『Bluesman』レコーディングで使用したギターレコーディング機材を写真と併せてご紹介していきたい。

   ◆   ◆   ◆

【GUITAR編】


▲<Gibson Les Paul Standard 1959 #9-0308>

2019年11月、米国ナッシュビルのギブソンへ訪問した際、スタッフから紹介されたヴィンテージギターショップで入手した1959年製。チェリーサンバーストの赤い部分が経年変化によって退色した“レモンドロップ”と呼ばれるカラーが1959年製のレスポールには多くみられるが、このギターは赤い部分がしっかりと残っているほか、ボディーやネックに目立ったキズがないなど、状態が素晴らしい。ペグのみ交換されているが、オリジナルも保管しているとのこと。

松本孝弘は1959年製をもう1本所有しており、「前から持っているほうがロック系サウンドに向いているとすれば、こちらはクリーンサウンドが美しい。それに前から持っているほうはレモンドロップイエローだけど、赤みが残っているというところも気に入った要因のひとつ」とのことだ。『Bluesman』のレコーディングでは「Rainy Monday Blues ~ 茨の道」「漣 < sazanami >」「花火」「Good News」といった4曲で使用。



▲<Gibson Jeff Beck 1954 Les Paul Oxblood #10>

1970年代前半にジェフ・ベックが愛用した“Oxblood”(オックスブラッド)を完璧に再現した限定50本のプレミアムなモデルであり、B'zのアルバム『NEW LOVE』レコーディングや、ツアー<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->でも使用されるなど、現在お気に入りの1本。ジェフ・ベック本人の“Oxblood”は、オリジナルのゴールドトップからOxblood(くすんだ濃赤色)へリフィニッシュされているほか、P-90ピックアップはハムバッキングPUの“P.A.F”に交換されていた。それら本人のモデルを元に、キズやリシェイプされたネックなど、ギブソンカスタムショップが完全プロファイリングして細部に至るまで再現したモデルとなる。

ブリッジとテイルピースが一体のバーブリッジはオクターブチューニングができないが、<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->で使用した結果、ピッチの狂いもなく、むしろバーブリッジならではのテンション感とそのサウンドに魅せられたという。『Bluesman』のレコーディングでは「Here Comes the Taxman」「月光かりの如く」「Waltz in Blue」「Arby Garden」といった4曲で使用。



▲<Gibson Les Paul Gold Top 1954 #4-673>

2019年に入手した“バーブリッジ” “P-90”ピックアップが搭載されたゴールドトップ。つまり、前述したジェフ・ベック本人の“Oxblood”は改造されたモデルだが、これはそのオリジナル状態のモデルとなる。ボディー裏にヴィンテージならではのクラックがあるものの、キズやヨゴレのないあまりにも綺麗な1本。

前述したとおり、アルバム『NEW LOVE』レコーディングやツアー<B'z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE->の使用でバーブリッジに問題はなく、そのトーンや弾き心地を気に入ったことから、この1954年製と後述する1955年製を入手した。『Bluesman』のレコーディングでは「Actually」「Waltz in Blue」「花火」「Asian root」「Lovely」といった5曲で使用。



▲<Gibson Les Paul Gold Top 1955 #5-9937>

こちらも2019年に入手した“バーブリッジ”搭載の1955年製ゴールドトップ。もともとは1954製ゴールドトップ同様、ピックアップに“P-90”が搭載されていたが、1960年製のギブソンES-175に搭載されていたハムバッカーPU“P.A.F”に交換。つまり、ジェフ・ベック本人の“Oxblood”の仕様にカスタムされた1955年製となる。

ボディーサイド&バックやネック裏まで塗装されたオールゴールドのカラーは入手した当時、かなり痛んでいたとのことでリフィニッシュ。ネック裏の塗装が剝がれている部分は入手時にすでにこの状態だったそうだが、あえてそのまま残してリフィニッシュしたという。『Bluesman』のレコーディングでは最も使用頻度が高いモデルで、「Here Comes the Taxman」「Be Funky !」「Rainy Monday Blues ~ 茨の道」「月光かりの如く」「Waltz in Blue」「Good News」「Arby Garden」「Lovely」といった8曲で使用。



▲<Gibson Les Paul Custom -清正->

沖縄のハードロックバンド紫のギタリスト比嘉清正から譲り受けたレスポールカスタムは、持ち主のお名前をいただいて“清正”と命名。通常ヘッド裏に刻印されているシリアルナンバーが確認できず、製造年が不明だ。フロントにはゼブラカラーのピックアップが搭載されているが、これはカスタマイズされたものだと思われる。

1990年代に使用したこともあるとのことだが、ボディートップがめくれ上がってしまった等の理由で、20年以上にわたって保管されていた。改めてリペアを施したところ、通常のレスポールとは異なるサウンドが個性的だったとのことで、『Bluesman』のレコーディングでは「Here Comes the Taxman」「月光かりの如く」といった2曲で使用。



▲<Fender Stevie Ray Vaughan Signature Stratocaster Relic #CZ537894>

昨年のB'zのツアー先でのことだそうだが、本人曰く「BARKSのニュース記事を見て発売されることを知った」というスティーヴィー・レイ・ヴォーン・シグネチャー。『Winter NAMM 2019』で発表されたもので、フェンダー・カスタム・ショップの徹底したプロファイルによってスティーヴィー・レイ・ヴォーンのギターを忠実に再現したレリックだ。

スティーヴィー・レイ・ヴォーンは自身のヒーローであるジミ・ヘンドリックスへのオマージュとして、右利き用のギターに左利き用のトレモロブリッジを載せていたが、松本孝弘は通常の右用に交換。さらに、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの“SRV”と描かれていたピックガードを“TAK”に変えるという遊び心も。「BOOGIE WOOGIE AZB 10」では同モデル1本で弾ききったほか、「Actually」「Be Funky !」「Rainy Monday Blues ~ 茨の道」「月光かりの如く」「Waltz in Blue」「Asian root」といった7曲で使用。



▲<Martin 1937 000-18>

『LOOSE』の頃から愛用し続けているアコースティックギターは、1937年製ゆえ状態もナイーブなため、レコーディング用として管理/保管されている。ネックスケールは24.9インチ、ボディートップはスプルース、指板とブリッジにはローズウッド、ピックガードにはタートイズシェルを採用。『Bluesman』のレコーディングでは「月光かりの如く」「漣 < sazanami >」「Waltz in Blue」「Arby Garden」といった4曲で使用した。

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