【インタビュー】TK from 凛として時雨、「実際のライブを超えている部分をどこかで作りたかった」

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フィルムギグ『TK from 凛として時雨 Studio Live for “SAINOU” ~Film Gig Emotion~』が9月4日より劇場公開される。これは、8月8日から3日間配信された配信ライブ<TK from 凛として時雨 Studio Live for “SAINOU”>が全国の映画館で体感できるというものだが、“Film Gig Emotion”ならではの試みも用意された。

◆TK from 凛として時雨 画像

「ライブ配信が普及していく中で、よりライブに近く、そして通常のライブでは実現できないサウンドと空間を追求したい」とTK自ら企画したフィルムギグは、劇場上映のために自身が5.1ch MIXを施したほか、キャリア初のサラウンドミックスに挑むなど、サウンド面でも意欲的。もちろん最勝健太郎がディレクターを務めた映像との融合は、PCやスマートフォンでは味わうことのできない新たなライブ表現となるものだ。

また、「配信ではなくライブで初めて新曲を聴くドキドキ感を味わってもらいたい」という想いから、新たに制作された未発表楽曲が初披露される。エンタメ全体が混迷する中、TKは何を思い、今回の劇場公開へ至ったのか、その核心を明かしてくれたメールインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■なんとかこの音楽を届けようという意地と
■それを全力で受け取ろうとする想い

──4月には『THE FIRST TAKE』(※一発撮りYouTubeチャンネル)に「unravel」と「copy light」が公開されました。感想を教えてください。

TK:構築したものを突き詰める、という普段僕が行なっている作業とは全く逆ベクトルの“一発撮り”という制限の中で、自分自身をどう表現するかというプロジェクトでした。ある種、もっともシンプルで自分にとっては究極の形ですし、元々好きで拝見してたので断る選択肢はなかったですが、断りたいという気持ちと挑戦したい気持ちでの葛藤でした(笑)。作品づくり以外には基本的に安心してやれることってそんなにないのかもしれません。いつもどこかで自分が新たな場所に行って、壊れるかもしれないし、でも壊しにいかないとそのままだなと思って飛び込んでます。

──5月には「unravel」のHOME LIVE Ver.が公開されました。リモートでの制作の面白さや難しさについて、どう感じましたか?

TK:映像を撮るというのは初めての試みでしたが、映像作家の最勝さんとも作業を共にしていた時期でしたし、僕自身もレコーディングからミックスまで出来るので、とてもスムーズに取り組めましたね。結構レコーディングスタジオに迫るクオリティになるかなと思ったんですが、ドラムが“iPhone 6s”だったのでちょうど良い家感になりました(笑)。元々リモートで進めることも多いので、そのあたりのやりとりはとてもスムーズでしたね。海外の方とやりとりをすることも多かったので、むしろこのやり方がもっと広まれば可能性も無限でいいなと思ってましたし。



──Instagramで「たくさんのオンラインライブを観ている」と書かれていましたが、特に記憶に残ったライブ、あるいは“オンラインライブ”全般に対する印象を教えてください。

TK:9mm Parabellum Bullet、安藤裕子さん、ACIDMAN、星野源さんなど、どれも素晴らしいライブでした。もちろん実際の大きな音で目の前にいる高揚感とは違いますが、自分の好きな環境で観られる良さもありますよね。それと観ていてやっぱり、ミュージシャンの意地を感じました。それはリスナーに対してもですが、なんとかこの音楽を届けようという意地と、それを全力で受け取ろうとする想い。今、通常のライブが出来ない中で新たなものを生み出そうとするものと、受け取ろうとするもののウネリみたいなものを感じるんです。

──配信ライブ<TK from 凛として時雨 Studio Live for “SAINOU”>について、スタジオライブではあるものの、ライブ自体ひさびさだったかと思います。感想や感触など教えてください。

TK:元々のツアーリハーサルも途中で中断してしまったので、まず楽曲の再現がとても難しかったですね(笑)。今回は撮影に向けたリハーサルが1日しかなかったので、ものすごい緊張感で挑みました。制作のときはほとんど再現性を考えないので、音源に対して生で演奏するものとそうでないものの取捨選択や、あえて音源に対してはみ出すような部分を作ったりします。どの楽曲も難しい上に、配信ライブになると環境や音量が異なってくるので、一定のクオリティで観ることが出来るような音作りも意識しました。最初から配信に向けて音作りをするというのはとても繊細な部分で、ライブ感のエネルギーだけでもレコーディングの緻密さだけでも駄目なので、これからまだまだ模索していきたいところですね。

──ちゃんMARIさんを加えた現在のメンバーでの演奏に対して、どんな手応えを感じていますか?

TK:今まであまりバンドのピアニストにサポートをお願いしたことがなかったので、とても新鮮で、どのフレーズもキャッチーで玉手箱みたいな鮮烈さがあります。楽曲制作から携わってもらいましたが、ビジョンがしっかりしていて、サポートという立ち位置ではありますが、やっぱりバンドメンバーとしての存在感がすごいですね。他のメンバーもそうですが、意外とそういうのって何もしてないときに表れると思っていて、楽曲の背中を押されてる感じがするんですよね。メンバー的には押してないと思いますけど(笑)。カッコいいんです、単純に。綺麗になぞっていくというよりも、バンドとは違ったバンド感をどこかで求めてるんだと思います。


──「copy light」の演奏後、おそらくBOBOさんだと思われる「よっしゃあ!」という声が入っていたのが印象的でした。やはり、あの曲を演奏するのはTKさん個人としてもバンドとしても、かなりの集中力を要するものなのでしょうか?

TK:すいません、あれ、一郎なんです(笑)。ものすごい緊張感でしたからね。僕もオンとオフが激しいので、演奏のモードに入ると楽曲の奥に入り込んでしまうので、メンバーも緊張感があると思います。僕は僕でやっぱりバンドとは違って、あくまで自分のソロプロジェクトとしてやってるという、どこにも倒れられない張り詰めた何かはいつも背負ってますからね。そのエネルギーが伝わってるのもあると思います。

──「蝶の飛ぶ水槽」の間奏以降のギターノイズが耳に残りました。どんなイメージで、どのように出している音なのでしょうか?

TK:元々あれはシンセで弾いた音だったので、そのままハードディスクからも流してる部分はあるんですが、メンバーで話し合ってその音を生演奏でさらに有機的にアレンジしていく方向にしたんです。BOBOはあそこのパートを「ブランコぎこぎこパート」っていうんですけど(笑)。H9っていうエフェクターのパラメーターをいろいろ弄ってると、破壊的な音が出てきたりするんです。音色からフレーズを生み出してくれるタイプのエフェクターで、後半に向かって脳内の中で溺れていく様なモジュレーションを使っています。

──ライブ配信の映像は、美しい照明やカメラワークによって、映像作品としても完成度の高い内容だと感じました。完成した映像に対して、どのような感想をお持ちですか?

TK:僕に根気よく食らいついてくれたディレクター最勝さん、カメラマンさんの意地の結晶でもありますね(笑)。ライブを再現するのではなくて、普段は見れないアングルなどをどうしても表現したかったですし、まだ時間は経っていないのにもう二度と見せることのない瞬間を収録してもらいました。僕は映像や写真を撮られることはとても苦手なのですが、本心では良いものが作れるなら視覚的なものは残したいと思っているんです。でも映像作品として残すなら、という思いの強さからなかなか踏み出せないことが多いのですが、今回は飛び込んでみました。スタッフにも恵まれて、本当に良い作品を生み出すことができたなと思っています。

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