【ライブレポート】ACIDMAN、初の全編インスト有観客公演で「しんどいときこそ笑うんだ」

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ACIDMANが9月11日(金)、LINE CUBE SHIBUYAにて自身7ヵ月ぶりのワンマンライブ<ACIDMAN TOUR “This is instrumental”>を開催した。15:30開演の部、19:00開演の部といった2部にわたって行われた同公演より、先ごろ19:00開演の部のオフィシャルレポートをお届けしたが、これに続いて15:30開演の部の詳細レポートをお届けしたい。

◆ACIDMAN 画像

タイトルにもあるがこの日は、全編インストゥルメンタルでのステージ。ACIDMANとしては初の試みである。当初ツアーで回る予定がコロナ禍の影響で一夜限りにはなってしまったが、1日2回公演で行なうなど、(感染防止対策のため観客数は抑えられてしまうが) ひとりでも多くの人に“ライブ”を楽しんでもらいたいという彼らの思いが伝わる。こうしたコロナ禍で、ACIDMANはいち早く配信ライブをスタートさせて、音楽を届ける方法を構築してきた。一方で、歌を歌わないインストゥルメンタルならば、観客を入れた公演の可能性が広がるのではと企画されたのが今回だ。MCで大木伸夫(Vo/Gt)は自身の信条をこう語った。

「しんどいときこそ笑うんだ」

状況を憂うばかりでなく、「今できること、やれるべきことをやろう」という思いから未来の選択肢を増やすことで、人生はもちろんのことエンターテインメントや音楽を鳴り響かせることができる、ということだろう。ACIDMANの現在の活動は、彼らの音楽に流れるエネルギーそのものを見るようで、まばゆく力強い。


そしてこの<This is instrumental>。同タイトルのアルバムが2012年にリリースされたが、もともとインストゥルメンタル曲は、デビューアルバム『創』(2002年)から各作品に収録されてきた。彼らの音楽の原風景たるものがイマジネイティヴに表現され、また音楽的な実験や試みのあるアプローチも多く、それをこの大きな会場でACIDMANならではの映像や演出とともに堪能できるのはとても贅沢なことだ。観客は着席のまま、歓声をあげる行為はできないまでも、溢れる思いを拍手や手拍子に代えて、3人の登場に歓喜を爆発させた。観客の熱を浦山一悟(Dr)はアグレッシヴなドラミングで返す。

幕開けの曲は「water room」。ドラムのビート、佐藤雅俊(B)のベースと大木のギターフレーズがリズミカルに絡み合うと、会場そのものが息を吹き返していく感覚を覚える。その生命力溢れるサウンドからポリリズム的な「ucess」、さらにループ感のあるギターリフとメロディアスなベース、そしてタイトに刻まれるドラムビートで幾何学的なモチーフを編み上げて行く「Walking Dada」へ。ダイナミックな映像とサウンドが混じり合って、冒頭から目まいのするような世界に引きずり込んでいくステージだ。


「日本が誇るインストゥルメンタルバンド、ACIDMANです(笑)。このコロナの状況のなか、ようこそお越しくださいました」

という大木の挨拶に、会場に盛大な拍手が響きわたる。今回のライブに至った経緯や思いを語った大木だが、なにせACIDMAN自体、観客を入れてのライブが7ヵ月ぶりということで輪をかけて饒舌である。「今日、初めてACIDMANのライブを見るという人? ごめんね、歌ってなくて」と笑いも交えつつ、「映画を見るかのように楽しんでほしい」という。

続く「en」は、映画的な面白さというに相応しく次々と音が重ねられ、彩りや展開を増していく曲だ。大木はループマシーンでフレーズを重ね、ひとりで幾重のギターアンサンブルを生み出し、佐藤はメロディアスなフレーズを紡ぎながら観客に手拍子をうながして、会場を巻き込んだリズムでサウンドを構築していく。音の一部となった観客をパーカッシヴな「Down chorus」にのせて別世界に運びながら、「room NO.138」の洒落たコード感とアップライトベースの重厚な響きで酔わせる。

メロウなさざ波のようなアンサンブルを聴かせる「アルフヘイム」は、シングル「最後の星」(2016年)収録曲でこれがライブ初披露だ。歌ってはいないが、その音に身を委ねていると美しいメロディが聞こえてくる感覚で、また壮大な物語を味わうカタルシスがある。時間にすれば5分ほどの曲だが、そこに織り込まれた世界はとても濃く、豊か。歌もインストも通奏低音的な感情/思想は同じだと思うが、言葉や端的な単語で語り尽くせない分の熱量や感覚的なもの、心が動く気配みたいなものがより繊細に表現されるのがインスト曲である。




「ディープな音と映像の世界観を楽しんで」と大木が告げた中盤は、観客をより深く音にダイブさせていく。静かに降る雪の映像に重なるように、細やかなタッチで3つの音が降り注ぐ「真っ白な夜に」。ノイジーなベースのリフから一気に音の密度が上がり、降る雪を背に躍動する3人のシルエットが会場にさらなる爆音をこだまさせる。映像と音楽の相乗効果はやはり、生のステージのダイナミクスがあるからこそ、より幻想的に、幻惑的に感じられるのだろう。エモーショナルな「SOL」、情熱的な舞踏のMVを使った「風追い人(前編)」、などはその最たる形だ。人々が出会い、命を受け継いでいく神秘を、舞踏という身体表現と音楽で饒舌に紡ぐ「風追い人(前編)」(※映像ではコンテンポラリーダンサー・森山開次を中心としたダンス&演劇パフォーマンスをフィーチャーし、音源では坂本龍一が参加)は美しく感動的だった。また、大木がギターフレーズをループさせながら鍵盤で哀調のメロディを重ねる「Λ-CDM」は荘厳な響きで、ラストの3人のアンサンブルは圧巻。観客はその迫力に飲まれてしまう。

後半は場面を一転するように、観客と一体となって作り上げていく“ライブ”ならではの楽しみに突入する。ライブグッズでもある“バードコール”を使って、観客参加型の曲となった。大木曰く「自然の中で演奏しているようなイメージ。みんながフィールドミュージックを担当してください」と、バードコールをレクチャーした後に「at」「slow view」と、ファンには嬉しい1stや2ndアルバム収録の曲を連投した。瑞々しい水彩画やリキッドアートのような初期作品のアンサンブルと、鳥のさえずりが高い天井の会場に満ちると、深呼吸でもしたいひんやりと澄んだ空気を感じる。ここから「彩-SAI」へと続く流れは、大木が語った「旅する感覚で」というものにぴったりだ。


終盤へと向かうMCでも相変わらず饒舌な大木。1日2公演ということで、いつも以上に時間の制限があるゆえ、メンバーふたりに「喋りすぎだ」と突っ込まれながらも、「何か言い足りないけど、どうしよう?」と言い、情報解禁としてはフライングだったが、この日のライブが配信にもなることもアナウンス (マルチアングル方式で、自分だけのオリジナルライブ映像が楽しめるというもの。こうしたコンテンツ作りにも彼らのこだわりが見える)。

また冒頭に書いた「しんどいときこそ笑うんだ」という自身の思いを語り、コロナ禍で、特にエンターテインメントが停滞してしまった状況で、何をすべきか、どうしたら楽しくなるかと視線を前に進んできたことを告げる。それがこの日のステージだ。「みなさんどうか明るく過ごしてください。それが、この時代を生き抜く必勝法だと思うから」という大木の言葉は、心強い。


ラスト3曲は、2007年から2008年にかけてリリースした3作のシングルに収録された、赤・青・緑の光の三原色をテーマにしたインスト曲を続けて披露。この3曲を連続して演奏するのは、この日が初めてとなる。その最初は「赤色群像」。静謐で物語的なアンサンブルから高い咆哮を上げていくサウンドから、続いての長尺の「ベガの呼応」でよりサウンドは壮大なスケールとなって、観客の想像力を刺激し続ける。3つの音がまばゆいハレーションを起こして、観客の思いを遠くまで飛ばしていく感覚だ。最後の曲となった「EVERGREEN」では、背景のスクリーンが上がり、大小たくさんのキャンドルが灯るなかでの演奏となった。祭壇のように配置されたその灯りは大木の友人、Candle JUNEによるものであり、ホーリーな雰囲気が増す。さまざまな願いを乗せるようなふくよかな演奏に、大きく長い拍手が沸き起こったのはいうまでもなく、観客は7ヵ月ぶりに生で体感するACIDMANのライブの、その余韻までじっくりと味わった。

この先もまだライブ活動については一進一退の状況は続きそうだが、そのなかでできること、楽しむことをACIDMANは身をもって示してくれるだろうと、期待も高まるライブとなった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎Taka"nekoze_photo"

■<ACIDMAN LIVE TOUR “This is instrumental”>2020年9月11日(金)@LINE CUBE SHIBUYAセットリスト

01. water room
02. usess
03. Walking Dada
04. en
05. Dawn Chorus
06. room NO.138
07. アルフヘイム
08. 真っ⽩な夜に
09. SOL
10. ⾵追い⼈(前編)
11. Λ-CDM
12. at
13. slow view
14. 彩-SAI-(前編)
15. ⾚⾊群像
16. ベガの呼応
17. EVERGREEN

■『ACIDMAN LIVE“ This is instrumental ” -multiple angles-』

配信日時:2020年9月25日(金)19:00
アーカイブ期間:初回配信後〜2020年10月4日(日)23:59


▲マルチアングル イメージ

【チケット】
・ACIDMAN MOBILE会員入場券:3,000円(税込)
・一般入場券:3,500円(税込)
チケット販売期間:2020年9月17日(木)18:00〜2020年10月4日(日)20:00
※なお、 “サポートチケット”として、入場券に500円、1,000円、2,000円をプラスしたチケットの販売も行うとのことだ。
「これまでのようなライブ活動が出来ない状況において、皆さまからの応援・ご支援は大きな力となります。もしご賛同いただける場合には、今後のACIDMANの活動資金とさせていただきます。なお、配信されるライブの内容は全て同じで、配信に関する優劣もございません。無理のない範囲でご利用くださればと思います」
詳細やチケット購入方法などはオフィシャルサイトにて。

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