【インタビュー】I Don’t Like Mondays.、“こんな時期”だからこそできた新たな挑戦

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2019年度に行われたフルアルバム『FUTURE』のリリースツアーは全公演ソールドアウトし、2020年に入ってからもコンスタントに新曲を発表し続けていた4人組バンド・I Don’t Like Mondays.が新たなタームに入った。

◆撮り下ろし画像

8月に急遽“5ヶ月連続リリース”と銘打たれ、その第1弾としてリリースされた「モンスター」は、80年代のハードロック/デジタルロックを感じさせる攻めの1曲。続いて9月に第2弾としてリリースされた「MR.CLEVER」は生楽器が効果的に響くダンサブルなトラックに、YUの生々しい心情が綴られた歌詞が乗る。どうやらこの「MR.CLEVER」は、“2020年の僕らを代表する曲を作りたい”というテーマから生まれた楽曲とのことだ。この楽曲が生まれるまでの背景には、いったいどんな想いがあるのだろうか。メンバー全員に訊く。

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■自分たちだからできる音楽を作る

──I Don’t Like Mondays.(以下IDLMs.)は、本来なら7月にアルバムをリリースする予定だったんですよね。

YU(Vo):そうですね。今年の春の状況だと、秋ツアーを延期せざるを得えなかったので、アルバムも同様に見送ることを決めて。けど“こんな状況でもみんなを楽しませることはできないかな”と考えて、今回の5ヶ月連続配信リリースを決めました。でも7月にリリースする予定だったアルバムの曲を、そのままリリースするだけじゃつまらない。今までにやったことがないことであり、やってみたいなと思っていた連続リリースをせっかくやるなら、全曲シングル表題曲級の楽曲を出そうと思ったんです。延期になったり、こういう状況でなければ生まれなかった曲もだいぶありますね。


──昨年末にリリースされた「gift」から、今年の7月にリリースされた「Sunflower」までの楽曲は、人の生活や心に寄り添う質感が多いですが、この5ヶ月連続リリースの第1弾「モンスター」と第2弾「MR.CLEVER」は、またモードが違うように感じます。

YU:4人で作った曲に僕が歌詞を乗せるのがいつもの曲作りなんですけど、これまでの作詞ではそのサウンド感やメロディをいかによく聴かせられるかを重要視していたんです。でもこれからはもうちょっとメッセージが前に出るものにトライしていきたいなって。ずっとトライしてみようと思っていたことではあるんですけど、コロナ禍で考える時間が増えて、自分自身と向き合う時間も多かったので、この機会にやってみようと。楽曲から受けたインスピレーションで湧き出てくる僕の言葉をメインにした楽曲制作にシフトしているんです。

──それは大きな変化ですね。

YU:こんな時期だから何をやってもいい……というと変かもしれないけど、世の中が一気に予測できない状況ならば、(アーティストの音楽のコンセプトや音楽性が)変わっても納得してくれるところはあるのかなって。そういうチャンスってなかなかないと思うんです。緊急事態宣言発令期間にInstagramで邦楽のカバー動画をアップしていたけど、こういうことがない状況でそれをしたら“IDLMs.なら洋楽のカバーでないと”と思われていた節もあると思うんです。

──ああ、たしかに。

YU:だからバンド的にも“ブランディング的にそれはできないな”と思っていたことを壊して、いろんなことにチャレンジしていこうという雰囲気にはなっていきましたね。

KENJI(B):あとは、今までひたすら曲を作ってライブしてということを繰り返して突き進んできたところに、外に出られない時期が続いたことで“これからどういうことをやっていこうか”とじっくり考える時間もできたし、DTMの知識を増やしたり、いろんな動画を観てバンドに生かせそうなものを探したり、普通に映画を観たり、いろいろインプットできたんです。スキルアップして制作にも活用しようかと。


──IDLMs.は様々な音楽性を取り入れた楽曲を制作しているので、たくさんインプットができるのはかなり有意義ですよね。

CHOJI(G):今までやってきたことと違うことをやるというよりは、自分にないものを増やしてバンドの可能性を上げていきたいなと思っていましたね。ずっとしたいと思っていたジャズやフュージョンの勉強をしたり、クラシックを聴いてギターでコードやメロディを演奏してみたり。ギタリストとしての表現力をどう上げていくかを考え直してました。

SHUKI(Dr):こういう状況になって、SNSにはいろんな意見がダイレクトに飛び交っているじゃないですか。それ見ていると、自分たちだけでゼロから作れる“バンド”って強いなと再確認して。僕らがやるべきことは曲を作ること、それを良くすることだと感じて、制作に力を入れていましたね。

KENJI:曲作りをリモートでやってみたりね。やりにくい部分もあったけど、面と向かってないぶん出しやすい意見もあったりして。こういうやり方もアリなのかな、という発見もありました。

YU:僕らはいつでも新しいものを取り入れていきたいタイプだから──飽き性なんでしょうね(笑)。マンネリ化するのがいやだから、やりたいことがどんどん変わっていく。あと、よく考えるんですけど……AIが今までの僕らの発言や過去曲を解析して新曲を作れる世の中だからこそ、今までの僕らから予測できないもの、予測できるもの以上のものを作りたいんです。アーティストとしてのプライドですよね。今回の5ヶ月連続リリースの5曲はこれまでの延長線上でもあるし、僕にとっては新しい挑戦です。

──そうですよね。「モンスター」と「MR.CLEVER」はこれまでの楽曲と比較するとYUさんの思想がかなり濃く出ていますし、メッセージ性が強い。

YU:今は人間のどろどろとした部分やえぐい部分、声を大にして言えないことにフォーカスしたいと思ったんです。できるだけ綺麗ごとを言いたくないというか。僕個人としては“前を向いていこうよ!”とまっすぐなメッセージを投げかけられると“うるせえ!”と思っちゃうんですよ(笑)。

──ははは。天邪鬼な(笑)。

YU:間違いないですね(笑)。自分に向けて書いている曲だから、自分と同じようにひねくれた人が聴いて“わかる!”と言ってもらえたらなと思って。だから削ぎ落さないことにこだわって、昔の自分や作詞家さんが絶対選びそうにない言葉や、生々しい思考のなかから生まれる言葉を選ぶようにしていきましたね。だから面白かったし、自分も好きなものができました。「MR.CLEVER」で書いてることは“みんなそう思ってるでしょ?”って感じでもあるし、そう思う人に届けばいいなと思っているんです。

──わたし個人としても、プライドを持つことは大事だと思っていて。この曲で歌われている“クレバーでいること”は、自分の信念や美学を持って生きることなのかな、と思いながら聴いていました。

YU:あ、そういう解釈もあるんですね(笑)。


──ははは。YUさんの込めた想いとは違いましたか。

YU:人の感じ方はそれぞれなので(笑)。歌詞の解説ってナンセンスじゃないですか? 受け取った人がどう感じるかというのは、僕の領域じゃない。それを“こういうつもりで書いた”と言ってしまうのはつまらないなあって思うんですよ。でも……今まで陽の部分を歌詞では書いてたけど、「MR.CLEVER」は陰の部分かな。どんな人も生きているなかで試行錯誤して奮闘すると思うんです。僕も明るい人間だと思われがちだけど、気を張ってそういう人間に見せようとしていて──でもみんなそうなんじゃないかなと。そういうニュアンスをこれまで僕らが培ってきたサウンド感に落とし込んだらどうなるのか、自分自身も見てみたかった。

KENJI:前はサウンドとメロディの響きや絡みを大事にしていたので、“こういうワードはやめてほしいかも”と言うことが多かったんですよ。でも歌詞を書いているボーカリストが内なるものをもっとちゃんと出すという考え方には賛同できたし、今までの型から外れた歌詞には、YUが書きたいことがちゃんと書けているのかなとも感じていますね。だから歌詞がより聴こえるようなアレンジを心がけるようになったし、どんな歌詞が乗ってもちゃんとIDLMs.らしくかっこいい音楽を貫き通せればいいのかなと思ってます。

SHUKI:この先出るシングルのなかには、YUの歌詞をもとに作ったメロディもあるんですよ。歌詞に対する考え方は、バンド内でも変わってきてますね。

KENJI:ね。完全に曲先行だったのに。

YU:自分を見つめる時間が多いと、言葉の持つ力は大きくなると思うんです。僕らも音と言葉を扱う仕事だし、聴く人の心をえぐれるチャンスと言えばチャンスでもある。だからえぐれる時にえぐっとこう、ってところもありますね(笑)。

──いびつと捉えられてもおかしくない歌詞を、スマートに踊れるサウンドに乗せるところも、反骨精神が見えて。

YU:それはあるかも。バンド活動を始めてからしきりに“おしゃれなサウンド”と言われ続けていて……いい意味で言ってくださっていることは重々理解しつつ、うんざりしてるんです(笑)。

──ロックバンドらしい心意気ですね。

YU:意外と僕たち、ロック畑なんですよね。だから“おしゃれってなんだろう?”ってあんまりしっくりきてないんです(笑)。こうやって洋楽の影響をダイレクトに受けた音楽は増えてきているけど、そういう人たちが書かないものを書きたい気持ちもありましたね。“踊ろうぜベイビー”みたいなことは歌いたくない(笑)!

KENJI:“踊ろうぜベイビー”ってさんざん歌ってきておいて(笑)! でもYUが自分のどろどろした部分を歌うことで、この先“踊ろうぜベイビー”と歌ったとしたら意味の深さは変わってくると思うんですよね。そのためのチャレンジをしている時なのかな、と楽しんでますね。

──先ほどのAIの話もそうですが、IDLMs.だからこそやれることを突き詰めた結果が5ヶ月連続リリース楽曲なのだろうなと。

YU:どんな歌詞を書きたいか考えたら、やっぱりほかの人には書けない歌詞が書きたい。そうじゃないと意味がないと思うし、歌詞を書くのは簡単なことじゃないので、そんなに苦労してまで書いたものに意味がないなんて空しいじゃないですか。だから“自分たちだからできる音楽を作ること”はすごく心がけていますね。

──“怒り”が込められた曲が生まれているのもその一環でしょうか?

YU:日常生活でも怒りはすごく大事にしています。イラッとする時ってすごく感情が高ぶっているんですよね。そこからいろんなことが広がっていくので、どんなことにそれを感じたかは覚えておくようにしていて。“怒り”は僕の最近のホットワードでもありますね(笑)。

──「モンスター」も「MR.CLEVER」も、プログラミングを使いつつバンドの生音が効果的なので、歌詞に綴られた生々しさをより色濃くしていると思います。

CHOJI:ギターを入れずに完成させられる曲もあるんですけど、それだと自分の存在意義も見いだせない。ライブでやることを想定して、自分が満足できるギターを考える──でも最近は世界的にもギターが主だった楽曲が少ないから、いろんな楽器の視点からギターのアプローチを考えるようにしています。ライブに充てていた時間を制作に使えるぶん、そういうことをじっくり考える余裕は出てきてるのかな、と感じてますね。

SHUKI:今の僕らのモードの基軸になっているのが「MR.CLEVER」なんですよね。この曲は“2020年の僕らを代表する曲を作りたい”をテーマに始まっているんです。その段階からなんとなく、全員スーツを着たビジュアルが頭のなかにあって。その僕らがやっていそうな曲調で、いちばん僕らっぽいキャラクターが出るものを試行錯誤した結果、10パターンくらい曲が出てきて──そのなかから生まれたのが「MR.CLEVER」。

YU:自己分析の結晶だよね(笑)。

SHUKI:そうだね(笑)。それを客観的な視点で見たかったので、STYさんにプロデュースを依頼しました。そしたら人の手が入ったのに僕ららしさが出て。

──そうですよね。どのようにSTYさんとの制作は進んだのでしょう?

YU:化学反応を期待して、ベーシックなメロディとベーシックなトラックを渡して“好きにやってください”とがっつりお願いしました。今までの僕らならこだわりが強すぎて、うまく伝わらないこともあったりして(笑)。他の方にもお願いをするという制作は向いてないんだろうなと思ってたんですけど、経験を重ねることで“丸投げできるところは丸投げしたほうが自分たちも成長できる”と思うようになったし、僕らの可能性を引き出してもらえる気がしたんです。実際「Sunflower」もNYのGreat Good Fine Okさんにプロデュースをお願いしてうまくいったし、日本のヒットソングを手掛けている人に丸投げしてみるのも新しいんじゃないかなって。

KENJI:STYさんももともとIDLMs.を聴いていてくれていて、ライブも観てくださっていたみたいで、僕らの好みも把握してたんですよね。そのうえでSTYさんのやれることを最大限に発揮してくださった。

CHOJI:ダンスができるJ-POPを多く手掛けている方のアレンジなので、自分たちではできなかった領域だなと思いましたね。僕の入れていたギターのリフは気に入ってくださったみたいで、そこを生かしてアレンジしてくださったのかな、と思ってます。

SHUKI:STYさんがバンドものをプロデュースするのが初めてだったらしくて。僕らもバンドの枠にとらわれないサウンドを作りつつも、やっぱりライブではバンドの良さを生かしたいので、ソロアーティストのオケにはしたくない。そのイメージをどこまで共有できるかな?という懸念はあったんですけど、結果STYさんはバッファを残してくださったんですよね。“ふだんの自分ならこれくらいアレンジするけど、この音を減らしたらバンドらしさが出ると思うよ”と。

CHOJI:そうだね。僕らでその音を削ぎ落していくというか。

SHUKI:その結果バンドっぽいのにバンドっぽくない、面白いバランスになりました。本当にいい相性だったなと思うし、あらためて僕らはどんなバンドなのか認識できたし、いい機会になりました。


──そうですね。サビのベースのリズムに絡む感じも、かなりクールで。

KENJI:かっこいいですよねえ……。これは僕が打ち込みで作ったベースラインを、STYさんが調整してくださったんですよ。今回すごく勉強になったのが、どの楽器のフレーズも全体で聴くと主張が強いのに、単体で聴くとふんわりしてるということで。“打ち込みのなかに混じるとこういう聴こえ方になるんだ”と思ったし、その完成形を見据えて曲作りができる方なので、すごく勉強になりましたね。

──リスナーからすると、それをライブでやったらどうなるんだろう?という期待にもつながります。

KENJI:絶対めちゃくちゃかっこいいですよ。リハーサルで合わせたりしてるんですけど、弾いていてめちゃくちゃ気持ち良くて。

CHOJI:「モンスター」は実際に9月頭の有観客野外イベント(<MORNING RIVER SUMMIT 2020>)でやってみて──お客さんの行動が制限されてたり、終わってから拍手までにちょっと間はあったんですけど(笑)、盛り上がりそうだなと思いましたね。

KENJI:「モンスター」はライブでもすぐスイッチを入れられる曲になりそうだよね。セットリストのどこに入れても映えそう。まだまだ制限はあるけれど、お客さんの前でライブをやれて本当に楽しかったですね。

YU:ワンマンではないし、お客さんもなかなか自由に盛り上がれない状況だけど、やっぱりライブは楽しいなってあの日すごく思いましたね。実際に目の前にお客さんがいると“見せつけてやる”って気持ちもより強く湧いてくるし(笑)。やっぱ生のライブはオンラインライブとは全然別物だなと思います。

──今思い返すと今年2月の頭まで行われた『FUTURE』のリリースツアー、回り切れて本当に良かったですよね。

KENJI:ほんとですよね。あれを回り切ったことで僕らもちゃんとひと区切りできたし。

YU:だからこそスムーズにマインドチェンジできたし、思い切って次のステップに行けたなと思いますね。そのおかげで、今はクリエイティブな制作ができてます。4人でIDLMs.というブランドを作って、5年掛かって土台ができたような感覚があって。殻が破れたなと思いますね。“月曜日の憂鬱を吹き飛ばす”から“WEEKEND POP”を経て、今度は自分に生まれる怒りを大事に、人の心をえぐっていきます(笑)。

──(笑)。アルバムも期待しています。7月に出す予定だったものと、だいぶ内容が変わりそうですよね?

YU:そうですね。秋ツアーが延期になったぶん制作に時間を取れるので、ひたすら曲作りをして、アレンジを詰めたりしています。僕ら、時間を掛ければ掛けるほどいいものが生まれるタイプではあるので。こういう状況でも楽しみを頑張って見出してます(笑)。そうしないときついし。


──まさに「MR.CLEVER」の精神ですね。今年IDLMs.に起こった様々なことが実を結ぶアルバムになりそうです。

YU:7月に出す予定だったものより、絶対面白いものになってると思いますね。音楽の聴き方が変わってきたことでアルバムの概念も変わってきているので、そこに僕らはどういう意味付けをしていくのか、なにを作るのか──意味を作るところからクリエイティブは始まってくると思うんです。そのへんはこの先ゆっくり考えようかな(笑)。

SHUKI:それでも“自分たちが面白いと思う曲を作り続けたい”という気持ちは変わらないので。

YU:トレンドも捉えつつ、けっきょく自分たちのやりたいことしかできないバンドなんだなって感じはするね(笑)。

CHOJI:聴いてくれる人がいて、演奏してなんぼだとも思うので、ツアーを念頭に置いて曲作りはしていきたいですね。今まで応援してくれている人たちのことも、これから知ってくれる人たちのことも考えたうえで生まれるアルバムにできたらと思います。

KENJI:今YUがやってるトライが生きるアルバムにはしたいし、そういうアルバムがどんなふうになるのか見てみたい。だからアルバムが完成するまでは、YUにはこのスタイルを飽きずに続けてもらいたいです(笑)。

YU:それはどうなるかわからないなあ(笑)。でも、全曲心に傷跡を残すアルバムを作れるようにがんばりたいですね。

取材・文◎沖さやこ
写真◎いわなびとん

■「MR.CLEVER」配信情報
https://avex.lnk.to/idlms_monster

◆I Don’t Like Mondays. オフィシャルサイト
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