【ライブレポート】flumpool、10度目の全国ツアー開幕「会いたかったぜ」

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flumpoolがデビュー記念日の翌日となる10月2日(金)、埼玉県・大宮ソニックシティ ホールにて自身10度目の全国ツアー<flumpool 10th Tour 2020「Real」>をスタートさせた。新型コロナウイルス感染症の影響で延期となっていたツアーだが、8月27日、“一旦全チケットの払い戻しを行った上で新開催概要のもと決行する”との判断をメンバーコメントと共に発表。万全の感染防止策を講じ、規制された収容人数の範囲内での実施に踏み切った。

◆flumpool 画像

ライブでは、5月にリリースされた4年ぶりのニューアルバム『Real』収録曲を中心に、コロナ禍という時世ならではの想いから選んだ楽曲も披露。制約を逆手に取って楽しむ様々な演出を盛り込みながら、flumpoolは新しいライブの形を提示した。観客側も、飛沫対策のため大きな声を出して応援することは叶わなかったが、その想いを拍手や手拍子、オリジナル応援アプリなどで表現。バンドとファンが相思相愛であることが感じられる、熱いライブ空間となった。


来場者は予め個人情報を記入したシートを手に、前後左右距離を取って並び、検温・消毒を済ませてから入場。ガイドラインに従って間隔を空けた座席にて、会話を控えて開演を待っていた。SEが鳴り、本来ならば大歓声が起きるはずのところだが、それが難しい中、渾身の大拍手が会場に響き渡る。阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)、そしてサポートメンバーの磯貝サイモン(Key,Cho)、最後に姿を現した山村隆太(Vo)はファンの想いを受け止めるかのように大きく両手を広げ、「会いたかったぜ、大宮!」と絶叫。時代の閉塞感を突き破ろうとするかのように、エネルギーに満ちた明るく清々しい幕開けだ。メンバーは代わる代わるハンドクラップして観客のノリを先導したり、掛け声が定番となっていた曲の前には新しい盛り上がり方を提案したり。手探りで再開した有観客ライブツアーの初日を迎えるにあたり、ファンを楽しませようと綿密にシミュレーションを重ねてきたことが随所から伝わってきた。

ツアーはまだ始まったばかりなのでネタバレは最小限に留めるが、アルバム『Real』収録曲の数々は、想像以上にライブ映えすることを実感する初日公演だった。また、以前は当たり前にできていたことがコロナ禍で困難となり、悲しいニュースも絶えないこの2020年にこそ響く絶妙な選曲も多数。例えば、“逢いたくて”の山村の歌詞が切々と会場に響き渡ったがメジャー1stシングル「星に願いを」もその一つだった。“幸せにならなきゃいけない”に続けて“一人一人のために~!”と歌詞を変えて叫ぶように歌った場面では、アーティストとしてだけでなく同じ時代を生きる一人間としての切実な想いを感じ、胸打たれた。阪井のギターもエモーショナルで、激しく胸を掻きむしるかのよう。後方でリズムを支える小倉の前に尼川、阪井が集まって呼吸を合わせ、音の切り替わりと同時にパッと散ってゆく、そんなさり気ない動きも華やかで、バンドとしてのオーラをありありと感じた。


「今日本当に来てくれてありがとうね。いろんな不安があったと思うし、いろんな反対の声もあったと思うし。今日この場所に勇気を持って来てくれたことに本当に感謝しています。今日はその分、もうね……感動するけど……皆の力になれるように、精一杯歌います。もう頭から泣きそうやわ」──山村隆太

と序盤から感極まった様子の山村に、ファンは大きな拍手を送る。『Real』収録の「ちいさな日々」でもまた、失われた日常の尊さに想いを馳せることとなった。優しく包み込むような温かい歌声と、呼吸がピッタリと合った落ち着いた演奏は、幼馴染みからスタートして苦楽を共にしてきたflumpoolの音楽ならではの安心感。その一方で、今年2月にドラマ主題歌として話題となった「素晴らしき嘘」では、シリアスで重厚感のあるドラマティックなパフォーマンスを見せ、照明演出でも圧倒。セットリストは変化に富み、緩急のメリハリが効いていた。

MCでは、観客が大声を発することができないという制約を逆手に取って、その状況をも笑いに変えようとするエンターテイナー精神を発揮。夫婦漫才のように合の手を入れる山村、クールにツッコむ尼川、全てをおおらかに見守って笑う小倉。そういったじゃれ合うような一連のやり取りからは、メンバー同士の信頼関係や絆を垣間見ることができた。そしてその空気感は、flumpoolのライブには欠かせない醍醐味の一つだった、とコロナ以前の“当たり前”を懐かしく思い返した。


アルバム『Real』収録曲を初披露するだけでなく、既存曲のアレンジや趣向を変えての披露もこのツアーにおける初挑戦の一つ。演出も曲名も詳しくは明かせないが、山村が“HOME感”と評したそのコーナーに突入すると観客はざわめき、新しいスタイルでの表現に目を輝かせていた。音楽と照明とが見事にシンクロし、広大なサウンドスケープを立ち上げると、HOMEどころか会場を飛び出してまるで大自然の中にいるような、開放感を味わうことのできる極上の時間だった。

8月15日(土)、地元・大阪フェスティバルホールにて開催した初無観客配信ライブの時にも感じたことなのだが、『Real』をリリースして以降のflumpoolの音楽とパフォーマンスには妖艶さが増大。そのエッセンスが加わることで表現の幅がより多彩になり、魔性の魅力を醸し出しているので、是非体感していただきたい。終盤の盛り上がりを確約する「PEPEパラダイス」では、今ツアー専用のオリジナル応援アプリ“PEPEンライトReal”を活用し、声を出さない応援の新しい在り方を示した。事前にTwitter等でアプリのダウンロード及びインストールを呼び掛け、開演前にも丁寧にアナウンス。振るたびスマートフォン画面の色が刻々と変わっていくという仕組みで、音楽の盛り上がりと連動して客席には色鮮やかな光が瞬いていた。阪井は自らシェイクするような手の動きで煽り、山村は「もっともっと! もっと速くもっと速く(振って)!」とシャウトし、ファンはそれに応える。いわばコロナ時代に生み出されたコール&レスポンスの進化形であり、会場が一体となって新たなライブの楽しみ方を実験しているようにも見えた。


代表曲の一つであり、2010年に公開された同名映画の主題歌「君に届け」が披露されたのも大きな見どころの一つ。flumpoolにとってバンドキャリアとして大きな意味があるだけでなく、特別な想いを宿す大切なこの曲。丁寧に真っ直ぐに言葉を噛み締めながら、山村はステージ左右の端まで歩いていき、隅々まで届けるように歌唱した。尼川は阪井に近付き、向き合って呼吸を合わせてプレイ。終盤に向け、高鳴る鼓動そのもののような小倉のドラミングが響き渡ったのは感動的な瞬間だった。観客はこの曲の間、勢いよく弾むように手拍子し、絶え間なく想いを届けるように手を振り続けていた。

「ライブも、ツアーももうできないかな?とも思ったし、やっても皆不安も絶対あるやろうし、周りからの反対もあるやろうし。その中でも、やるはいいけど人は来てくれるのかな?っていうのは、すごく心配してたんですけども」──山村隆太

と率直に語った山村は、「こうやって来てくれて、ちゃんと想いを届けてくれてる……ちゃんと届いてるよ!」とライブの実現に感無量の様子。その後も、「感謝してもしつくせない。勇気を出して今日来てくれた一人一人に大きな拍手を」とファンに対して繰り返し感謝を述べていた。山村が歌唱時機能性発声障害から復帰した後初のアルバムとなる『Real』はバンドにとって特別な作品で、本作を携え、全国ツアーという形で各地のファンに届けたい──その想いを彼らは貫き、こうしてツアーは幕開けた。コロナ収束の見通しが立たない中、開催には賛同の声ばかりではなかったはずだが、音楽を求めている人たちのために、そして音楽の未来のために、彼らは勇気ある一歩を踏み出し、ファンと共に新しいライブの形を模索し始めている。


次回公演は10月11日(日)の広島県・広島上野学園ホールとなり、このツアーは2021年の6月まで続く。本ツアーと並行して、FC限定でのオンラインツアー<flumpool FAN MEETING~裏Real~>の開催決定もステージ上で発表。flumpoolはこれからも新たな表現の形を模索し、その場を拡大し続けていく。

取材・文◎大前多恵
撮影◎Yukitaka Amemiya

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