【インタビュー】マカロニえんぴつ、メジャーリリース第一弾で「原点回帰」

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マカロニえんぴつ、メジャーリリース第一弾E.P.『愛を知らずに魔法は使えない』が良い。非常に良い。インディーズ時代に培った、メッセージ性の強いロック+マニアックなポップセンスの絶妙なバランスを崩すことなく、両方向に思い切り幅を広げた全6曲。アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』オープニング主題歌「生きるをする」とエンディング主題歌「mother」が前者の代表なら、凝りまくった音の遊びが詰まったアルバム用の新曲が後者にあたる。ナチュラルな自信とピュアな音楽家の好奇心を両輪に、メジャーシーンでの活躍を誓う4人に話を訊いた。

  ◆  ◆  ◆

■原点回帰

──今回から環境が変わりましたね。どんないい変化がありました?

はっとり(Vo&G):環境は良くなりましたね。スタジオも今まで使ったことのないところを使わせてもらえて、でもきれいで新しいというよりも、昔からあるようなスタジオを使いたかったんですよ。アナログの卓があるような。そういうところを今回使えたので、純粋に録音が楽しかったよね?

田辺由明(G&Cho):楽しかったね。いろんなことを試させてもらえたりして。

長谷川大喜(Key&Cho):グランドピアノでレコーディングしたんですよ。僕が書いた「ルート16」という曲なんですけど。

──ああー。あれ、めちゃくちゃいい音。

長谷川:今までピアノの音色はキーボードで録っていたんですけど、初めて生のピアノで録らせてもらって、しかも用意してもらったピアノがスタインウェイで、すごく音が良くて、曲にハマっていたんですね。

はっとり:気分はもうニューヨーク。片手でホットドッグ喰いながら弾いてました。

──それぐらいノリノリで。それって音に出ていると思います。高野さんは、何か良い変化は?

高野賢也(B&Cho):僕は…(沈黙)。

田辺:賢也だけいつも通りだった(笑)。

高野:リズムはいつものように。でも今回のドラムは新しい手法で、サンプリングパッドを使っているんですけど、買ったのがレコーディングの2日前でした。

はっとり:賢也が選んで買ってくれたんですよ。

高野:それをレコーディング当日にサポート・ドラマーの高浦くんに渡して。設定も何もできていなかったので、彼は大変だったと思いますけど。

はっとり:説明書とにらめっこしていた。

高野:レコーディングしている時に、普通はドラムの振動を肌で感じるんですけど、パッドだと全然伝わらなくて。彼はすごく動きが激しいのに、無音なんですよ。

はっとり:ハイハット、シンバルだけが聴こえてくる。サウンドチェックみたいな感じ。それって嫌な変化じゃん(笑)。

高野:いや、いい意味で楽しかった。

──田辺さんはどうでしょう。

田辺:今までは、スタジオのちっちゃい部屋にギターアンプを入れて鳴らしていたので、デッドな(反響音の少ない)サウンドだったんですけど、今回初めて大きい部屋でギターアンプを鳴らして録ることができて。サウンドのスケール感が上がって、弾いていてすごく楽しかった。

はっとり:オフマイクを立てたことで、部屋鳴りも録れたし。

田辺:隣の部屋の扉を開けて、マイクを立てて、その音も混ぜていく。それがすごく良かったんですよね。今まで感じたことのない音になりました。

はっとり:それが「カーペット夜想曲」。この曲だけエンジニアが違うんですよ。俺の高校の友達なんです。同じ大学のエンジニアのコースに進んで、俺らの自主制作CDも録ってくれて、満を持してメジャータイミングで、もう一回原点回帰しようという感じですね。アイディアマンなので、いろんな録り方を教えてもらって、ミックスも気合入ってましたね。この曲だけ時間かけすぎて、お金使いすぎて怒られましたけど。

──あはは。いやー、でもこの音の面白さには変えられないですよ。

田辺:いろんなことに挑戦できた曲ですね。

▲『愛を知らずに魔法は使えない』初回限定盤

▲『愛を知らずに魔法は使えない』通常盤

──そもそも、今年は4月にフルアルバム『hope』のリリース、からの今回のミニアルバム。かなりのハイペースじゃないですか。

はっとり:コロナ禍があったにしては、そうですね。リハーサルを再開したのが5,6月で、制作もしながら、配信ライブのリハもしていました。でも時間がないことにはいい面もあって、『hope』も時間がない中で、ツアー中だったけど、制作スパンは長かったじゃん?

長谷川:そうだね。

はっとり:アレンジを詰める時間はけっこうあったんだけど、今回みたいに時間がないと、やっぱりシンプルになるので、『hope』のやりすぎちゃったところを、ちょっと修正したというか…まあ、今回もやりすぎてるけどね。

長谷川:けっこう詰まってる(笑)。



はっとり:ダイちゃん(長谷川)の「ルート16」とか、「ノンシュガー」とか、ウワモノを極力引き算してやる形が、今回はできたのかなと思います。みんなで作ることに慣れてきたので、「ノンシュガー」とか、「カーペット夜想曲」とか、大枠を作るのは本当に早くなったよね。俺、リハーサル中に歌いながら考えてるから。

長谷川:ワンコーラス、すぐできるもんね。

はっとり:そのほうが早いし、みんなの意見も聴ける。「どっちのメロディがいい?」とか、多数決を取ったりできるから、いいですよ。

──曲は全部最近の曲?

はっとり:「溶けない」「生きるをする」「mother」の3曲は外出自粛前に作っていました。どれもタイアップなので、ワンコーラスは録ってあって、自粛明けに残りを録ったりしていました。だから半分新曲、半分ちょっと前の曲、みたいな感じかな。

田辺:「溶けない」「生きるをする」に関しては、『hope』の流れを汲んでいる感じがする。

はっとり:ちょっとやりすぎのね(笑)。

──この3曲には共通点があって、タイアップらしくキャッチーなサビを持ちつつ、途中でテンポチェンジしたりして、一筋縄ではいかないという面白さがある。

はっとり:「溶けない」は、途中に別曲が入っているから。「mother」も、途中でリズムが変わるし。

田辺:ハードロックセクションになる(笑)。





──そこがマカロニえんぴつの面白さだなあと思います。めちゃくちゃキャッチーなロックチューンでも、曲が始まったそのままの感じで素直に終わらない、というのは…。

はっとり:終われないんですよ。なんだろうね?

長谷川:僕は「ルート16」を作ったんですけど、シンプルなコードで行きたいと思っていたのが、はっとりフィルターを通すとちょっとコードを変えようということになって、全然印象が変わったんですよ。いい意味で複雑にしてくれるというか、中身の詰まった感じにしてくれるというか。

はっとり:でも「ルート16」に関しては、あんまり崩してないよ。サビのコードを変えたぐらい。デモの段階ですでに良かったから。仮タイトルが「ルート49」だったよね。

長谷川:あれ、なんで16にしたの?

はっとり:「ルート49」は、新潟-東京間の国道でしょ。

長谷川:そう。新潟の、僕んちの目の前が国道49号線だから。

──かっこいい。「ルート66」みたい。

はっとり:すげぇいいタイトルだと思ったけど、でもこのバンドのゆかりではないじゃん? だから(メンバーが通った大学のある)川崎を通る16号線にしたの。

長谷川:ああ、そういうことね。

はっとり:(奥田)民生さんにも「ルート2」っていう曲あるしね。

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