【コラム】ザ・ストラッツ、明かされるロビー・ウィリアムスとの秘話

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Photo by Beth Saravo

ザ・ストラッツの通算第三作にあたるニュー・アルバム『ストレンジ・デイズ』の発売がいよいよ間近に迫ってきた。10月16日に世界同時リリースを迎える今作は、新型コロナ禍の影響により通常のライヴ活動はおろか外出すらもままならない状況下、ロサンゼルス在住のプロデューサー、ジョン・レヴィーンの自宅にメンバー全員が泊まり込み、なんとわずか10日間でレコーディングされたというもの。そうした大胆な制作のあり方に加え、ザ・ストロークスのアルバート・ハモンドJr.、デフ・レパードのジョー・エリオットとフィル・コリン、さらにはトム・モレロといった豪華かつ少々意外な顔ぶれのゲストたちがフィーチュアされている点も話題を集めている。


そうしたゲスト陣の中でも特に目を引くのがロビー・ウィリアムスだろう。彼との共演によるこのアルバムの表題曲「ストレンジ・デイズ」についてはすでにビデオ・クリップも公開されているが、こうした状況下、彼との共同作業はどのように行なわれたのだろうか? その疑問にフロントマンのルーク・スピラーが答えてくれた。


「まず今回のアルバムを作るにあたり、なんとかロビーに参加してもらえないものかっていう願望があった。それは、彼のような昔ながらのソングライティングの感覚が欲しかったからなんだ。もちろんロビーに参加してもらうからには彼の最高傑作に負けないくらい豊かなテクスチャーを持った曲を用意しなきゃ駄目だと思ったけども、幸いにもこの「ストレンジ・デイズ」という曲はわりと早い段階のうちから特別感のある曲になりつつあったし、しかも今回の体験全体を総括するものになっていたりもするから、この曲を一緒にやれたら素晴らしいな、と思ったんだ」

特殊な状況下にある日々――このアルバム・タイトルはそうした現状を指していたりもするというわけだ。そうしたご時世だけに、今回、ロビーの自宅へと出向いたメンバーはルークのみ。作業をする場合にもできるだけ少ない人数で、ということになったわけだ。しかも彼を交えてヴォーカル・パート録りが行なわれたのは、彼の邸宅内ではなく、玄関先だったのだという。

「あのレコーディング自体もマジで滅多にない経験だった。まず俺は、ビバリーヒルズにある彼の豪邸に赴いたんだけど、そこに到着した瞬間からストレンジな気分だった。門のところで車から降ろされたんだけど、普通はそこにチャイムがあって、すぐそばに玄関があるものじゃないか。だけどロビー邸の場合、門を入ってから玄関まで1マイルぐらいはあるんじゃないかという感じだった。「ここは『ジュラシック・パーク』か?」と思うようなゲートから入ると(笑)、それから15分ぐらい酷暑の中を歩く羽目になって、それでようやく家に辿り着いたんだ。目の前にそびえる馬鹿でかい豪邸の左側には彼の所有する車が何台も並んでいて、右側はいわゆるポーチになってるんだけど、そこにまた堂々たる柱が2本立っていて、建物の中に入るのに階段を4~5段上るような造りになっていてね。そこに、俺よりもちょっと先にプロデューサーのジョン・レヴィーンとエンジニアが到着していて、すでにラップトップやらインターフェイス、マイク2本がセッティングされていた」

お喋りが大好きなルークの話は、まだまだ続く。

「そして、いよいよロビーの登場だよ。娘さんも一緒にいてね。彼女は俺たちの大ファンだそうで、すごく大喜びしてくれたんだけど、そんな状況もまた不思議(=ストレンジ)だった。和気藹々としたムードではありつつも、そこですぐさま消毒しなくちゃならなかったり、せっかくロビーと対面できたのに、10フィートとか11フィートとか距離をとって話さなきゃならなかったり。なんか変な感じだったね。でも、ロビーはあの曲について「とても気に入って、ずっと聴いていた。すごく特別な曲だと思う」と言ってくれて、その場の雰囲気もすごく良かった。「君たちは本当にユニークなことをやっているよ。だから参加できて嬉しい」とも言ってくれてたしね。俺としてはもう、ただただ彼に感謝するばかりだった」

話し始めたら止まらないルークの話は、当然ながらまだ続く。


Photo by Sonny Matson

「そんなやりとりをしてる間にセッティングも済んで、到着から15分後ぐらいに歌入れが始まったんだけど、あれはまさにマジックだった。ああいうのってあんまりないはずだよ。俺的に不思議(=ストレンジ)だったのは、彼に歌い方をプレゼンしたこと。もちろん彼は曲をちゃんと覚えてくれていたけど、歌いこなすところまではいってなかった。だからこの不肖ルーク・スピラーが、世界最大級のスターのひとりであるロビー・ウィリアムス様の隣に立って、ああしろこうしろって指図しちゃったというわけだよ(笑)。自分でも「これって、どういうこと?」って感じだった(笑)。でも、最高に楽しかったよ」

そしてルークのお喋りは、ようやく着地点へと向かう。

「俺自身はすでに自分のヴォーカルを入れ終わってたけど、結果、この曲はその段階で全部歌い直してる。最初に歌を録ってから2~3週間経ってたはずだからね。曲の冒頭のところで鳥がさえずってるのは、サンプリングとかじゃなくて本物の鳥の歌声なんだ。ビバリーヒルズの野外の音がそのまま入ってるんだよ。野外録音というのもなかなかの経験だったな。たまに飛行機が飛んできて録り直しになったり、メイドさんか誰かが車で入ってきて、その音が入ってしまったり。でも、それも面白かったし、なんとかやり遂げたよ。1時間ちょっとで全部終わったんじゃないかな」

そんな両者の共演が見事な「ストレンジ・デイズ」は、このニュー・アルバムのオープニングに収められている。そして、言うまでもなく聴きどころはそればかりではないし、このバンドの明るい未来を予感させるというよりも、この先に彼らが大きなステップ・アップを遂げることになるのを確信させるような素晴らしい仕上がりのアルバムになっている。少し先にはなるが、2021年4月には来日公演も控えている。そちらも楽しみなところだが、まずはこの2020年を象徴する、2020年にしか生まれ得なかったはずのロック・アルバム、『ストレンジ・デイズ』に注目して欲しいところだ。

文◎増田勇一


ザ・ストラッツ『ストレンジ・デイズ』



2020年10月16日発売
UICY-15952 / \2,500+税 / 日本盤のみボーナス・トラック3曲収録(サマーソニック2019ライヴ音源)
予約・試聴 https://umj.lnk.to/struts-strange-days
『ストレンジ・デイズ』日本盤ショップ別オリジナル特典:https://www.universal-music.co.jp/the-struts/news/2020-09-04/
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