【インタビュー】FEVER 333が語る『WRONG GENERATION』とBLMの真実「俺はこの世代に大きな希望を感じてる」

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▲Photo / Jonathan Weiner

ロサンゼルス出身のFEVER 333が10月23日、EP『WRONG GENERATION』をデジタルリリースした。同作品は5月25日、米国ミネソタ州ミネアポリスで起こったジョージ・フロイド氏への痛ましい傷害致死事件を受けて制作されたもの。ジェイソン・エイロン・バトラー(Vo)はLAでの抗議運動に参加。最前線での活動を続けるため、延べ13日間ストリート上でデモ行進に参列し、14日目に制作へ取り掛かって完成した作品がEP『WRONG GENERATION』だ。

◆FEVER 333 動画 / 画像

ブラック・ライヴズ・マター (BLM / Black Lives Matter)の抗議活動で見聞きした全てと、彼自身の過去と信念と戦いの宣言が語り尽くされた楽曲には、ニュースからは見えてこないリアルなストーリーが、実に生々しく、アグレッシヴなサウンドとともに8曲にまとめられている。「俺達はただの人間だ。俺達が求めてきたのは、公平だけだ。それは、そんなにクレイジーなことなのか?」とはジェイソンの弁だ。EP『WRONG GENERATION』は2020年の最重要作のひとつであることに間違いない。ジェイソンがそのすべてを語る。

   ◆   ◆   ◆

■信じることのために戦う人達に
■インスパイアされたよ

──EP『WRONG GENERATION』が生まれるきっかけとなった5月25日の事件まで、またロックダウンが始まった後は、どんなことを考え、何をしていましたか?

ジェイソン:アーティストとして次に何を作ろうか、いろいろと考えているところだった。でも、ジョージ・フロイドが殺害されて、その時までと完全に考えが変わって、俺はデモに行くことにしたんだ。そのすぐ後に、このEPを書いた。

──13日間もデモ行進に参加したそうですね。

ジェイソン:うん、ジョージ・フロイドが亡くなった後に“デモが起こってる”って聞いて、それに参加した。家族と一緒に行く時もあったし、夜に俺だけ行くこともあった。全てを目撃したよ。平和な抗議も、反逆者達も、市民を守るためにいるはずの警察が市民を攻撃しているのも見た。攻撃的で、威嚇的な行動をしたのも見た。それから、希望も見た、人々の瞳の中にね。彼らはもっと良い社会を望んでいる。様々な人々がこの一つのことのために集まって、戦っていた。それには本当にインスパイアされた。フラストレーションも凄くあったよ。俺達を守るべき人間達が、俺達を攻撃するって知るのは恐ろしいことだけど、でも、自分達が信じることのために戦う人達に、インスパイアされたよ。


▲EP『WRONG GENERATION』

──私は2日間参加しましたが、同じように希望を感じました。ただ、初期のTVニュースにはかなり憤りました。私は一度も抗議者達の中に暴徒がいるのを見ませんでしたが、報道では抗議者達が暴徒のように伝えられていて。

ジェイソン:その通りだね。クレイジーだよね?

──有り得ないですよ。しかも、その偏向報道が日本にも伝わってしまった。でもこれは、今まで延々と起こってきたことなんですよね? 私が初めてBLMのデモに参加したのは、2012年のトレイボン・マーティンの射殺事件の後だったのですが、公園で行われた平和なデモに行って、家に帰ってからTVでニュースを見たら、デモで暴徒が暴れたという報道でした。平和なデモは一切流れなかったんです。

ジェイソン:分かるよ。そう、彼らは選んでそこにフォーカスしてる。そういうニュースのほうが売れるからね。そして、これらTV局を所有する大企業が、彼らのストーリーを推進している。それが常に起こってきたことなんだ。

──信じられないです。13日間デモに出ていて、曲作りをしようと決めたのはいつだったんですか?

ジェイソン:13日目の夜、家に帰って、共作者の一人に「曲作りをしたい」って言ったんだ。言いたいことを言う準備ができていると思ったし、この一件に関して、何が起こっていて、今後は何が起こるべきかを語る上での充分な情報を吸収したと感じていた。君が言ったように、俺が見たストーリーは、俺が聞かされた話とはかなり違ってた。だから、この活動に参加した人間として、俺のストーリーを語りたかったんだ。


──これまで以上に、アグレッシヴでハードなサウンドの作品になりましたね。特に6曲目の「FOR THE RECORD (フォー・ザ・レコード)」はすごくハードコアな曲で大興奮しました。作品のサウンド的な方向性について教えてください。

ジェイソン:サウンドは、あの時に感じていた俺の感情を表していると思う。フラストレーションと同時に、狂った状況の最中でもより良い未来に対して感じる俺の純粋な希望を説明したかった。それと、EP全体を通して、その時に感じていた大量の徒労感も表現しようとしたんだ。大半はトラヴィス・バーカーとジョン・フェルドマンと共作したんだけど、スタジオに行って「今日書く曲は、今日中に終わらせる」って彼らに伝えた。その曲のテーマが、最高に生々しくて、本物で、純粋になるようにね。“今日俺が感じることが、今日書くこと”というプロセスを続けて、毎日新しい曲を書き続けながら8日間過ごした。それが、このEPになったんだ。

──EPの曲順は、書いた順番通りに並べたのですか?

ジェイソン:少し変えたよ。でも「BITE BACK (バイト・バック)」は最初に書いた曲だった。だから、意図的にアルバムのオープニング曲にしたんだ。その必要があった。

──「BITE BACK」をファーストシングルにしたのも、そういう理由ですね?

ジェイソン:その通りだよ。



──このEPのイントロダクションとして、最高の曲だと思います。EPのタイトルにもなっている「WRONG GENERATION (ローング・ジェネレーション)」も非常にパワフルでエキサイティングな曲ですが、この曲とタイトルについて教えてください。

ジェイソン:デモに参加している時に、“お前達は間違った世代 (ローング・ジェネレーション)に喧嘩を売った”って書いたプラカードを持っているヤツがいたんだ。そのプラカードが、この世代と共に起こっていたことと、これから起ころうとしていることの全てを言い表していると思った。少なくとも俺達の世代の間に、本物の感情的な結束があることを感じたんだ。そして俺達は、やる必要があることに労力を注いでいる、そう感じた。ミレニアム文化とか、Z世代とか、俺達はオルタナティヴで斬新な言葉を使って、この世代なりの政治的思想を持っているけど、ついに俺は、俺達がやる必要があったこと、やりたいと思っていたことを支持するアクションを見ることができた。

──なるほど。

ジェイソン:それは悲劇から生まれたことではあったけど、そのおかげで俺は「この世代と俺達に続く世代は、俺達が考える進化を退化させるような社会のあらゆるシステムに挑んでいく」と言える強さと勇気を手にしたんだ。俺達はやるよ。ついに俺はそれを見たんだ。それはこのタイトル曲だけでなく、このEP全体をインスパイアした。俺はこの世代に大きな希望を感じてる。俺は本当に生まれて初めて、俺達が必要としていた人々の参加を目にすることができたんだよ。

──大勢の人達とデモ行進しながら、“この抗議活動のサウンドトラックが必要だ”と感じる瞬間があったんですが、まさにそのサウンドトラックをあなたが作ってくれたと感じています。

ジェイソン:ありがとう。嬉しいよ。



──EPリリース日の10月23日から30日まで、計6公演のライブストリーミングを行う予定になっていますが、このライブ配信について教えてください。

ジェイソン:今は人々と交流する大きなイベントがやれない世界で生活しているから、ライブをやる可能性がなくなってる。それで俺は、8ヶ月前までの俺達が知っていたライブに似ているデジタル体験を創り出したかったんだ。最新のオーディオテクノロジーを使って、視聴者だけでなく特別ゲストともインタラクトできるライブ。新しいということと同時に、従来のライブの感覚を感じられるものにすることが大事だったんだ。生だから編集はないし、現実に起こっているパフォーマンスが時間のズレなく見られるよ。毎回セットリストを変えるし、何回か特別ゲストが出演する。他とは違うすごく面白くて楽しいライブストリームになるよ。

──楽しみです。シングル「BITE BACK」のヴィジュアライザー映像であなたが着ているバンドの新しい衣装は、“XLARGEとコラボレーションして制作したと聞きましたが、どのように実現したんですか?

ジェイソン:高校生の頃から、俺はXLARGEの大ファンだったんだ。ビースティー・ボーイズが着てた長年人気のストリート・ブランドだからね。コラボの話をレーベル経由でもらって、昔から俺は服のデザインをしたいと思ってたから、「デザイン過程に参加していいか?」って聞いてみたら賛成してくれて。新しいジャンプスーツとベストをオフィスに行ってデザインすることができたんだよ。

──ツアーで来日した時ですね?

ジェイソン:うん、ツアー後に一日余分に滞在して。生地からジッパー、ポケット、バックル、カラーまで、全てデザインしたんだ。サイズも俺の体に合わせて仕立てた。彼らは物凄くクリエイティブで、クールで、親切で、有能で、本当に感謝してる。俺は日本もXLARGEも大好きだから、東京でデザインができるなんて最高の経験だったよ。昔、友人と服のブランドを少しやってたことがあるんだけど、服のデザインとかフィット感とか着た時に得られる気分が好きで、ずっと服のデザインには興味があったんだ。

──最後に、日本のファンに伝えたいことはありますか?

ジェイソン:ありがとうを伝えたい。日本のファンは、初期の頃から物凄く僕達を応援してくれて、音楽だけでなく俺達のメッセージを理解しようとしてくれた。そして、俺達のメッセージ、信念、政治的思想を受け止めてくれた。最終的に大事なのは、人々がパワーを持つこと、人々を力づけることで、君達の国や社会の中に君達の居場所がある、君達は望む変化を起こせるって感じてもらうことなんだ。だから、俺達にありのままの俺達でいさせてくれて、俺達に加わってくれて、君達の社会の君達の戦いに加わらせてくれて、本当にありがとうって日本のファンに言いたい。

取材・文◎鈴木美穂

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