【ライブレポート】Dear Chambers「ライブハウスで君が来るのを待ってる」

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10月23日、渋谷TSUTAYA O-WEST。ゲストバンドとして招かれたircleとUnblockの熱の入ったステージを受けて、この日の主役である3人が転換をし始めた。セッティングを終えたモリヤマリョウタ・秋吉ペレ・しかぎしょうたの3人は、持ち場についたまま、向かい合って何か談笑している。すると、そのままモリヤマが手を挙げ、ステージが暗転。ギターのフィードバックノイズを鳴らし始めた…のだが、突然音をとめた。

モリヤマ「めちゃめちゃ久々に来てる顔が結構いるんだけどさ、マジどこに潜んでたの?って思うわけ(笑)。いつもありがとうの人もいっぱいいるし、初めての人もいっぱいいる。すげえ長い時間やるから、最高の1日にしよう。よろしくお願いします」

6月3日にリリースされた1st EP『It’s up to you』を手に、ツアー<Strikes Back TOUR 2020 延長戦>を行なったDear Chambers。当初は、同EPを5月にリリースし、5月から7月にかけて全国を廻る予定だったのだが、新型コロナウイルスの影響を受けて2公演以外は中止に。しかし、“振替公演”よりも何かおもしろい言い方は何かないかと考え、“延長戦”と銘打った全国ツアーを9月からスタートさせた。


そのツアーファイナルは、『It’s up to you』のラストナンバーである「本音」から始まった。バンドとして終わらない旅をこの先も続けていきたいという想いをまっすぐに歌ったミディアムナンバーを高鳴らす3人。以前、インタビューを行なった際に、今回のツアーについては「やれるならやるし、やれないならやらない」というシンプルなスタンスでいると話していた。この日の公演も、収容人数の削減やマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保など、感染予防対策ガイドラインを遵守して開催されたのだが、一時期よりは比較的落ち着いてきたものの、いまだに収束の目処が立っていない状況でツアーを敢行するのは、今まで通りにはいかない部分もあったかもしれない。そんな中、曲の終盤で「俺たちは、旅を続けてきました」と絶叫するモリヤマ。その言葉であり、最後の「夢が夢で終わらぬように」という歌詞を噛みしめていると、「調子はどうだい?」とモリヤマが叫び、「forget」へ。しかぎが叩く2ビートに乗り、すごい勢いで駆け出し始めた3人の姿に、序盤からひたすら胸を揺さぶられた。

そこから「ワンルーム・ラヴァー」「ワンラスト・ラヴァー」と連続で畳み掛けていったのだが、どの曲も前のめりに…というよりも、音源よりもテンポをかなりあげている。もはや音源とは別物と言っていいぐらいハードなものになっていたのだが、アンサンブルが崩壊するどころか、曲を追うごとに3人のキレがどんどん増していくのだ。ギターをかき鳴らしながら、耳に残る美メロをがなり気味に歌うモリヤマも、時に頭を激しく振りながらもプレイやコーラスで支える秋吉も、強烈なフィルを叩き込んでいくしかぎも、めちゃくちゃエモーショナル。「勝手に僕らみたいなバカなバンドを好きになってくれてありがとう。勝手にライブハウスを愛してくれてありがとう」と、「ワンサイド・ラヴァー」へ繋げると、思い思いに楽しんでいたオーディエンスのテンションも高まっていき、「幸せになってくれよ」では、たくさんの拳があがった。


中盤では、ハチロクの骨太なグルーヴで感傷をぶつけていく「さよならは言わないでね」や、それまでとは打って変わって、原曲よりもBPMを落としてじっくりと歌い上げた「星に願いを」など、勢いで突っ走っていくだけではないところも見せつける3人。それだけでなく、MCにも心を掴まれた。なかでも印象的だったのが「このツアーで確信したことがあった」と話し出したもの。

モリヤマ「僕らは、音楽に出会ったとき、バンドを始めたとき、初めてライブハウスに行ったときの初々しい感情とか、出会った衝撃を忘れないでいようって、小さい機材車の中で話すんですけど。でも、もう28歳ですよ、僕も。どんどん何かに縛られて生活していくことも増えてきて。でも結局、あの頃と一緒で、何かにドキドキしていたりすることがとても好きだなって。昔は“バンドで何かを伝えたい”って、その“伝えたい”っていう言葉だけが言いたかったんです。そうじゃなくて、俺たちは、俺らがバンドをやってるドキドキを伝えたいんだなって、このツアーで素直に思いました。明日になればまた俺たちはライブするし、どうせ大人になんてなれないと思ってます。いつでもライブハウスに遊びにきてください」


そんなMCから、蒼い感情を叩きつける「青年時代」「BABY」「幻に会えたなら」の3連発や、身も心もボロボロになりながらも、改めて歩き出す決意を歌った「東京」と、いまだ冷めやらない想いを全力でぶつけてくる音に、どうしたって胸が熱くなる。どれも楽曲とリンクしている嘘偽りのない言葉達は、彼らであり、歌詞を書くモリヤマが腹の底から思っていることだろう。そんな彼が、このツアー中でずっと言い続けていたことがあったそうだ。

モリヤマ「僕らは東京の府中Flightと、埼玉の秩父ladder ladderがホームでやってます。僕らはそこで楽しいことをしたいし、その楽しいものを広げていきたい。ただそれだけなんで。もう何度も言ってますけど、君たちのタイミングで、君たちの好きな日に、好きな時間に、ライブハウスにまた遊びにきてください」


「俺たちはいつだって、ライブハウスで君が来るのを待ってる」というモリヤマの絶叫からなだれ込んでいった「wait」から、ライブハウス賛歌の「ぼくらの遊び場」でピークに達した興奮を、ダメ押しといわんばかりにファストチューンの「Strikes Back」で更新するエンディングは、とにかく鳥肌モノ。やっぱりライブハウスでしか味わえないものは、確実にある。そんなことを改めて心から思わせてくれる、生粋のライブバンドのツアーファイナルだった。


Dear Chambersは、ホームである府中Flightにて<TOKYO>、東名阪で<"ぼくらの遊び場"-Autumn->と題した2本の主催イベントを、11~12月にそれぞれ開催する予定になっている。しかし、このご時世、もしかしたらまだライブハウスに行くことを少しためらってしまう人もいるかもしれない。しかし、ここからも彼らの“旅”であり、“夢”は続いていく。この日のライブの最後に「僕らは“やっちゃいけないよ”って言われない限りはやめない」とも話していた。またいつかどこかで、それこそあなたの好きなタイミングで、彼らの“遊び場”に足を運んでいただけたら、筆者としても嬉しい限りだ。

Photo by TERU
文◎山口哲生



◆Dear Chambersオフィシャルサイト
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