【インタビュー】坂本冬美「全てを賭ける」、桑田佳祐書き下ろし曲に込めた思い

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サザンオールスターズの桑田佳祐が作詞・作曲を手掛けた、坂本冬美の新曲「ブッダのように私は死んだ」。今作は、まるで「歌謡サスペンス劇場」とでも呼びたくなるような世界観が広がる、美しくも不埒な大人の愛の歌だ。歌詞は坂本冬美本人を主人公に見立てて書き下ろされたそうだが、歌唱の面はもちろん、衝撃的な仕上がりとなった映像の面においても「坂本冬美」の新たな魅力を惜しみなく引き出すこととなり、早くも大きな反響を呼んでいる。今回のインタビューでは覚悟を持って挑んだというその新作について、また、コロナ禍の新たな試みとして始めたYouTubeや転機となった忌野清志郎との出会いなどについても語って頂いた。

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■どうしても桑田さんに曲を書いて頂きたい

──いきなりこの話題からで申し訳ないのですが、ステイホーム期間中に始められたYouTube、心底楽しませて頂きました(笑)。

坂本冬美:ありがとうございます(笑)。YouTubeが何かもわからないまま始めましたが、やってみてすごく楽になりましたね。これまでいつも坂本冬美と言えば、和服を着て、鎧をつけた戦闘モードのようなイメージが自分の中にもあったんですが、あれだけさらけ出したらもう恥も外聞もないみたいな(笑)。お会いする皆さんも今まではどこか構えていらっしゃる感じがありましたが、最近はまずクスッと笑って頂けるようになって、お話ししていても距離が近くなったような感覚があります。



──もともとは、リリースイベントの生配信をされる予定だったんですよね。

坂本:そうなんです。「俺でいいのか」という曲のギター伴奏バージョンを発売するにあたって生配信をする予定だったんですが、コロナ禍で出来なくなりまして。でも事前にファンの方からのリクエストなども募っていましたから、じゃあ自宅からやっちゃいますかと。歌の練習をしてるみたいな感じで配信するのもいいんじゃないですかということでやり始めたのがきっかけなんです。今はちょっとバタバタしているので撮っていないんですが、「またやってください」っていうお声はたくさん頂いていますので、あんな感じですが(笑)、落ち着きましたらまたやろうかなと思っています。

──楽しみにしています(笑)。さて、11月11日に新曲「ブッダのように私は死んだ」がリリースされました。発売前から、いろんな意味で反響が大きかったですね。

坂本:やはり桑田佳祐さんが書き下ろしてくださったということで、普段とは違う反響がありましたね。今更ながら、私は大それたことをしたものだと思いました。国民的な大スターである桑田さんに、よくも図々しくお手紙を差し上げたなと(笑)。無理を承知でお送りしたのですが、本当に運よく──私は奇跡のタイミングだと思っているのですが、お忙しい桑田さんのスケジュールのちょっとした隙間に入ることが出来まして、曲を書いて頂けることになったんです。もう本当に、大感動でした。

──きっかけは、2018年のNHK紅白歌合戦だったそうですね。

坂本:はい。北島三郎さんのリハーサルの時に桑田さんがすぐそばにいらっしゃいまして、思わず「ファンです!握手してください!」と(笑)。中学生の頃から憧れでよく聴いていた、あのサザンオールスターズの桑田さんですからね。その後の本番も、同じ歌手としてではなく、まるで青春時代に戻ったかのような気持ちで楽しませて頂いたんです。それから年が明けて、どうしても桑田さんに曲を書いて頂きたいという思いが高まりまして。

──お手紙をお書きになったと。

坂本:もともと演歌しか知らなかったんですが、中学の時に、初恋の人だった山本くんが私に聴かせてくれたのが、サザンオールスターズだったんですね。私がデビューしてからも、好きな歌手の欄にはいつも石川さゆりさんとサザンオールスターズと書いていたくらい大好きで。私、デビューしたら普通に会えると思っていたんですよ。同じ音楽の世界にいるわけですし、あの忌野清志郎さんともユニットを組んでご一緒させて頂いたりしていましたから、桑田さんともそのうちお会いできて、いつか曲を書いて頂きたいなと普通に思っていたんです。でも、忌野清志郎さんとはレコード会社が一緒だったからであって、そうそう会えるものではないんだということがだんだんわかってきまして。もうその夢は諦めようということで一旦収めたんですが、その紅白で甦ったんですよね。あの時の気持ちが。

──実際に楽曲を受け取られたのはどういう状況だったんですか?

坂本:お手紙を出して数ヶ月後にお会いすることになったんですが、いきなり歌詞を見せて頂き、その数分後には音源を聴かせて頂きました。桑田さん的には、私を驚かせようというサプライズだったそうです。

──デモ音源は、桑田さんが歌われていたわけですよね。

坂本:もちろんです。でもそれは私だけに頂いたもので、スタッフも誰も聴いていないんですよ。これはお宝です(笑)。ちなみに桑田さんから頂いたものや一緒に撮って頂いた写真、お会いした時の自分の気持ちを書き留めたメモなどはひとまとめにしているんですが、そのまま全部、私の棺に入ることになっています(笑)。

──墓場まで持っていくと(笑)。その桑田さんバージョンを聴いてみたい気もしますが、いざそれを聴いて歌うとなると、失礼ながらプレッシャーなどもあったのではと想像するのですが。

坂本:もちろんです。だって桑田さんですから。曲も詞も歌声も桑田さんの世界ですからね。最初はどこか桑田さんの新曲を聴いているような感じもありましたが、そこから何百回と聴いて、私なりに「こんな感じかな」とイメージを膨らませながら歌の世界観を身体に取り込み、何百回と歌ってレコーディングに臨みました。ただ、最初のひと声を出すまではとても怖かったです。桑田さんが思い描いていらっしゃる「ブッダのように私は死んだ」の世界観と、私の声が乗ることで出来上がる世界観のイメージが違っていたらどうしようって。だから最初は恐る恐る声を出した感じでしたね。

──こちらまで緊張感が伝わってくるようです。レコーディングには、桑田さんもいらっしゃったそうですね。

坂本:はい。2日間あったんですが、最初は恐る恐る何テイクか歌いまして、2回目の時はちょっとオーバーに、怨念とまではいきませんが思いを乗せすぎるくらいの感じでまた何テイクか歌い、その中から桑田さんに選んで頂きました。

──桑田さんご自身も、ギターとカウベル、そしてコーラスで参加されています。

坂本:本当に贅沢ですよね。その他の演奏も桑田さんのチームの皆さんが全部やってくださいましたから、とても豪華な仕上がりになっています。カラオケバージョンを聴いているだけでも幸せですよ。

──コーラスワークなども、桑田さんならではの感じで。

坂本:ムード歌謡的な雰囲気もありますね。桑田さんはクールファイブさんもお好きですし、あとはちあきなおみさんや美空ひばりさん、都はるみさんなど、日本の歌謡曲や演歌をリスペクトされているんだというお気持ちもすごく伝わってきました。

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