【インタビュー】川崎鷹也、人生を変えた魔法の音楽

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■僕の作る楽曲たちは家族

──それこそ「魔法の絨毯」は現在の奥様とお付き合いをしていた頃に、奥様がお好きな劇団四季の『アラジン』を一緒に観に行ったときのエピソードがもとになっているとのことで。

川崎:いまから3年前、付き合ってほんと数ヶ月くらいの頃に作った曲なんです。奥さんは高校の2個上の先輩で、3年生の仲良しグループのなかに僕も混ぜてもらって、よく遊んでもらってて。

──その頃から川崎さんは、奥様のことをお好きだったんですよね。

川崎:そうです(笑)。彼女は高校卒業と同時に東京に出て、半年に1回くらい連絡を取ったりしてたんですよね。でも僕が高校卒業とともに上京したあと、ある日そのラリーが続いたんですよ。お互いの状況を報告しあうなかで会うことになって、冬の上野公園で再会して、他愛のない話をして。そのあとも連絡が続いて、僕から告白をして──ってこんな話大丈夫かな!?(笑)

──川崎さんのパーソナルなラブソングを深く知るうえで、奥様の存在は不可欠なので(笑)。4年越しの想いが実ったんですね。

川崎:その間にお付き合いした人はいたんですけど、やっぱり心のどこかに彼女の存在があったんですよね。奥さんは本当にすごい人なんですよ。考え方や持っているビジョン、出てくる言葉一つひとつが立派で、感心します。この人とお付き合いするなら、この人に見合った男でないといけないし、告白して付き合えたはいいけど、毎日“ふられる!”と思ってたんです(笑)。歌詞のとおりお金もないし、力もないし、地位も名誉もないし、本当に自分に自信がなくて。でも絶対に離してはいけない人だし、守らなければいけない人だと思っていたんですよね。

──自分に自信がなくて、不釣り合いであるという劣等感以上に、それだけともに歩んでいきたいという想いが強かった、と。

川崎:そうですね。それまではなによりも音楽が最優先だったけど、いまの奥さんとお付き合いするようになってから“この人と一緒にいるから音楽が頑張れるな”と優先順位が急に変わったんですよね。10年20年後を想像したときに、この人となら一緒に面白いことができるなと直感的に思ったのでプロポーズして、2018年に結婚しました。

──『I believe in you』と『Magic』を聴いて、川崎さんは恋をしたことで人生や気構えが大きく変わったんだろうなと思ったので、いまのお話には納得です。

川崎:恋愛をして学ぶこと、お付き合いしている人から学ぶこと、ふたりで一緒に過ごすからこそ初めて見えることって、誰しも身に覚えがあるんじゃないかなと思うんです。奥さんと付き合う前は自分を鼓舞するような曲をよく書いていたけれど、奥さんと付き合うようになってから、自然とみんなが見逃してしまった何気ない日々や、ちょっとした風景を曲にするようになって。“楽曲”と“私生活”と“ライブ”の3つがいい関係性を築けてきた気がします。だから僕の曲は、みんなの生活のなかにスッと入り込めているのかな。それも曲を書く醍醐味のひとつになっていますね。

──『Magic』の楽曲は、ご結婚なさっても奥様に恋をしているような印象を受けるので、それも若年層には憧れの夫婦像だろうなと。

川崎:いやー……恥ずかしいですね(笑)。でも結婚する前から奥さんは“結婚しようが、子どもが生まれようが、ずっと恋人でありつづけたい”と言い続けているんです。それを言われて、俺も“たしかにそうだな”と思って。“恋人同士でいる”というのは、つねになんとなく意識してることかもしれないですね。


──「魔法の絨毯」が注目を浴びたのは突発的なものではなく、“楽曲”と“私生活”と“ライブ”の歯車が噛み合ったからこそ起こったことなんだろうなと思いました。

川崎:ああ、そうなのかな。私生活のことを公表するかどうかも悩みましたけど、事務所の社長に相談したらけっこう軽い感じで“いいんじゃない?”と言ってくれて(笑)。それで2018年に結婚していたことと、2020年4月に子どもが生まれたことをツイートで発表して。離れていく人もいるんじゃないかと怖かったんですけど、俺が書いているのはリアルでコアな部分だし、それを理解してくれたらうれしいなと思っていたら、リプ欄が祝福のコメントだけで埋まって。ファンの方々といい関係性を築けていたんだなと再確認できました。8年間毎月真剣にライブを続けてきて、それで「魔法の絨毯」をきっかけにやっといろんな人に聴いてもらえる機会が増えて……本当にうれしいですね。

──川崎さんが最も大事にしている“ライブ”も少しずつ再開できるようになってきましたしね。

川崎:音源やMVがいいことも大事なんですけど、やっぱり僕にとってはステージに立って、お客さんの前でどういうパフォーマンスができるかがいちばん大事ですね。Face to Faceで、目を見て歌を届けたときに、自分がなにを感じるか、お客さんになにを受け取ってもらえるか──ヴォーカリストとしてそこしか考えてないんです。……歌は不思議ですよね。人の記憶に残るし、人の記憶を呼び起こしたりもする。テクノロジーの進化は素晴らしいけれど、人間から生まれるものがいちばんでないと、僕らが存在する意味がない。ステージは偽れないから、歌の心を大事にしてますね。綺麗に整ったものは世の中にたくさん存在しているけれど、やっぱり最終的には人間性だと思うんです。仕事も恋愛も、けっきょく人じゃないですか。

──そうですね。

川崎:ステージはいちばん僕の人間性が見える場所だし、僕はそこで勝負してるから。ステージに立つことで“音楽を続けていて良かったな” “同じスタンスでやり続けていて良かったな”と痛感して、そこで感情が高ぶって“悔しい”や“楽しい”や“喜び”という気持ちが生まれて、曲が生まれるんです。音源は“曲”だけど、ライブは“川崎鷹也”をそのまま差し出してる感じですね。ちょっと哲学っぽい言葉になるんですけど、人間として生まれてきたなら、ダサくてもかっこ悪くても、笑ったり、感情をあらわにしたり、自分の言いたいことや伝えたいことを届けることが生きることだとも思うんです。

──ああ、なるほど。

川崎:どうやら人は、自分の思っていることの3割程度しか他人に伝えられないらしいんです。それなら自分の伝えたい“好きだ”や“一緒にいたい”や“ありがとう”を言えるときにたくさん言いたい。それが人としての存在意義なのかな、と思ったりもするんですよね。僕はこだわりが強いし取り繕ったり偽らないから、面倒くさい人間だと思うんです(笑)。でも分かり合えた友達とは長く続いていくタイプで、一緒にYouTubeでラジオをやっているマセキ芸能社所属のお笑いコンビ・髭兎の薄井賢也や、奥さん、いまの事務所の社長は僕のことを100%理解してくれていて、お互い尊重し合えているんです。

──薄井さんや赤井さんなど、違うシーンで活躍する人とご縁が続くのも、川崎さんの性質なのかなと思いました。

川崎:“ひとりでも充分やっていける人”が好きなんですよね。そういう人間同士がひとつのものに取り組んだときに、すごいパワーが生まれると思うんです。僕のまわりにいる人たちはみんなそうで、そういう人たちと一緒にいると自分では想像してなかった景色を観ることができるんです。そういう人たちと長く、面白いことをやっていきたいですね。


──「魔法の絨毯」をきっかけに、またそういう人との出会いが増えそうですね。注目を浴びたことが、曲作りに影響を及ぼすなどはありますか?

川崎:ないですね。この先どれだけ聴いてくれる人が増えようが、このスタンスは変わらないです。

──とはいえ、たぶんこの先増えると思うんです。“「魔法の絨毯」を超えなきゃね”と言われることとか。

川崎:ああ(笑)。冒頭でもお話したとおり、僕の作る楽曲たちは家族で。次の子どもが生まれてきたときに“お兄ちゃんを超えなきゃね”と僕は言わないと思うんですよ。生まれてくる子たちには必ず、その子にしかない良さや魅力がある。

──たしかにそうですね。また、川崎さんは今後の目標として“長く残る音楽を作りたい”ともおっしゃっています。

川崎:いま「魔法の絨毯」を愛してくれている人が、10年後とかに聴いて“あいつとカラオケで歌ったな”とか“あの人に恋をしていたな”と思い出してくれるのが僕の理想であり、僕の夢なんです。玉置浩二さんの「メロディー」や、尾崎豊さんの「I LOVE YOU」のような20年、30年と聴き継がれている名曲に僕は助けられたので、そんな曲を作っていけたらと思いますね。

──いま挙げてくださった2曲も、時代にとらわれていない音楽ですよね。

川崎:流行りのものも聴くんですけど、自分のなかに残っているのは時代に左右されていない曲かもしれない。斉藤和義さんも大好きですし。

──それこそ、川崎さんが曲にしている“人を愛する気持ち”も時代にとらわれていないですものね。そんな音楽が時代の最先端のTikTokで見つかるのも面白いなと思います。

川崎:本当だ、そうですね(笑)。「魔法の絨毯」は大出世したお兄ちゃん。まだまだ曲を生み続けて、大家族を作ります!

取材・文◎沖さやこ

リリース情報

EP『Magic』
2020年10月1日(木)発売
1. Let me know
2. エンドロール
3. 光さす
4. ほろ酔いラブソング


ALBUM『I believe in you』
2018年3月14日(水)発売
1. Luv Letter
2. ベルが鳴る前に
3. 魔法の絨毯
4. 幸せあれ
5. きのこハンバーグ
6. 君の為のキミノウタ
7. 拝啓、ひまわり
8. 大切な人
9. I believe in you


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