【インタビュー】カルロス・マリン「ヘヴィ・メタルからポップでセクシーな曲まで」

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イル・ディーヴォの中心メンバーであり、素晴らしく魅力的なバリトンの歌声を持つカルロス・マリンが、ソロアルバム『ポートレイト』をリリースした。自らの音楽的原点に立ち返ったこのアルバムは、ミュージカルやオペラのみならず、カルロスがこれまで長年愛聴し歌い続けてきたスタンダードやポップス、ロックの名曲をカヴァーしたというものだ。本人曰く「まさに自分の音楽の原点に立ち返った」「まさにこれらの曲が、現在の僕を形作ったといってもいい」という自身の肖像画のようなアルバムとなっている。

収録曲は日本でもなじみのあるスタンダード/ポップス/ロックの名曲ばかりで、カルロスは情感たっぷりにダイナミックな歌を聞かせてくれている。自らの音楽的ルーツを自らのスタイルで歌いあげた愛すべき作品の誕生だ。

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──ソロとして初めてのスタジオ録音のソロ・アルバムですが、『ポートレイト』の手応えはいかがですか?

カルロス・マリン:気分は最高だよ。4月のリリース予定だったから、本当なら今頃、プロモーションのために来日していたはずなんだけど、当然パンデミックでそうならなかった。でもようやくリリースされてとても嬉しいよ。若かった頃、1980~1990年代に聴いた曲を集めたスタジオ・アルバムを作りたいというのは昔からあった構想なんだ。ヘヴィ・メタルからポップでセクシーな曲まで、ジョージ・マイケルの「ケアレス・ウィスパー」からクイーンまで名曲揃いの胸を張れるアルバムだよ。

──パンデミックといえば、ヨーロッパでは第3波ともいうべき感染拡大が広がっているようですが、スペインは今、どんな状況ですか?

カルロス・マリン:スペインはひどい状況だ。今日の感染者数は1万6千人。再びロックダウンになるので、レストランも劇場もバーも閉鎖。夜9時から6時までは外出禁止だ。仕事や学校にはこれまで通り行ける。そんな状況だけど、今回頑張ればクリスマス時期までには、家族が集まってパーティができるようになっていてくれるんじゃないかと期待しているんだけど…どうだろうね。あとはワクチンが開発されるのを待つしかないのかな。今が大変な時期であるのは間違いないね。

──この約半年間、あなたはどんな風に過ごしていましたか?

カルロス・マリン:退屈な毎日さ(笑)。スペインがロックダウンされたのが3月末だったので、イル・ディーヴォの南米ツアーに出る予定でメキシコに飛んだんだ。でも、パンデミックの状況はたちまち悪化し、3月15日にはマドリッドが封鎖されることになったから、僕は国に帰れなくなる前に戻って来た。「ボヘミアン・ラプソディ」のビデオは幸い、そうなる前の2月末から3月の頭に撮影を終えて、それからメキシコに飛んでいた。戻って来てからは家で他のレコーディングをしたり…イル・ディーヴォのレコーディングもしたよ。スタジオに行くことはできたから、それなりに忙しかったんだ。でも、再びロックダウンになって、今は何もできずにいる。今回こそ乗り越えてほしいが、来年までは何もできないのは確定だね。1月にはなんとか、このクレイジーな状況が終わるか、もしくは状況が改善されていてほしいよ。

──「ボヘミアン・ラプソディ」のMV撮影は、ロックダウンに入る前にできてよかったですね。

カルロス・マリン:素晴らしい体験だったよ。撮影は3日間、セットやすべてデザインをイノセンスが手がけた。僕には最高のチームが付いててくれる。俳優達もメイクいっぱいで…20~30名のスタッフ総動員だったんだ。すべてグリーンバックの撮影だったので、撮っている時はセットが何も見えない。ちょっと左右に行きすぎるだけで、スクリーンから外れてしまうから難しいんだよ。しかもダンサーもイノセンスも大きなウィッグを被ってたから、なかなか大変だった。ライトとかもいっぱい使用して…でも、素晴らしい経験だった。3日の撮影終了後はそれぞれ家での仕事になったので、イノセンスも編集に関わり、意見を出し合いながらメールでやりとりをして、3~4ヶ月かけて完成させたんだ。長い曲だし、いろんな仕掛けを使って美しいものにするのは大変だったよ、特にグリーンバックでコンピューターを使っての作業だとね。でも、でき上がった僕らの「ボヘミアン・ラプソディ」には心から満足している。


──この「ボヘミアン・ラプソディ」のMVのコンセプト、ストーリーはどういうものだったのですか?

カルロス・マリン:おとぎ話の世界にしたかったんだ。最初のパートは森の中のようなイメージでおとぎ話、天使が出てきて…2部は新しい世界、魔法の世界、そしてロックンロール風に僕がピアノの脇で歌っててダンサーがいて…最後はフレディ・マーキュリーとモンセラート・カバリエの1992年のバルセロナ・オリンピックで披露したデュエットへのオマージュさ。だから、タキシードでラストの高音ではクラシカルに歌い上げた。モンセラート・カバリエと歌ってたフレディを少し真似てみたんだ。それがあのビデオのコンセプトだよ。

──撮影時に起きたとっておきのエピソードを何かひとつお話ししていただけませんか?

カルロス・マリン:とっておきのエピソードかい?実はあの時、僕はアキレス腱を切断して辛い時期だったんだ。12月のイル・ディーヴォのツアーで切ってしまい、12月25日に手術を受けクリスマス期間はずっと病院で過ごした。2月まで車椅子生活だったんだ。撮影の時も歩けなかったので松葉杖を付いていた。5~10分おきに満面の笑みで歌うふりをしてたけど、実は想像を超える痛さだった。本当は僕がカッコよく歩くシーンがあったんだけど、どうしても速く歩けず、ポストプロダクションで早回しにするしかなかった。そこでコミカルにしちゃったんだ。ちょっと古風なメヌエット風/オペラ風のところで早歩きしているのはそういうわけさ。たくさんのパートからでき上がったビデオなので、オペラ風、古典オペラ風~大きなウィッグをつけた「フィガロの結婚」、モーツァルト・スタイルもあれば、それ以外にもストーリーに応じて色々な世界があって、トータルで見た時にとても完成されたビデオだと思う。

──『ポートレイト』は、ポップスやロックの名曲を独特のスタイルでカヴァーするというこれまでのキャリアとは異なる内容ですが、どうしてこのような作品を?

カルロス・マリン:リスナーに届けるのにそれが一番聴きやすいと思ったからさ。ソロで何かをしようという時、イル・ディーヴォでの僕をよく知っていてくれるファンはいるわけだけど、新しい人たちに音楽を届けたいなら、すでに知っている曲にすれば「おや、これは誰のヴァージョン?」と思うだろ?シンガーの立場から言えば、カヴァーの方が新曲をやるより難しい。少なくとも原曲と同じ、できればそれ以上のものにしたいわけだからね。僕は自分の曲になるように努力した。オリジナルは1~2回聴くだけに止め、自分のために書かれた曲であるかのように取りかかったんだ。イル・ディーヴォでカヴァーを歌う時も同じ気持ちでやっているので、今回もそうしたよ。もうひとつ、今回はオペラティックに歌い上げるより、ポップで身近に感じられるものにしたんだ。若い頃、ミュージカルやポップスを歌っていた頃の自分に戻り、オペラのスタイルをちょっと封印したという意味で、楽しいながらもチャレンジだったな。

──選曲は、あなたが好きだった曲ということですね?

カルロス・マリン:好きな曲はいっぱいあるからね。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」はその筆頭だ。子供の頃からクイーン、フレディ・マーキュリーのファンだった。エアロスミスの「ミス・ア・シング」も映画『アルマゲドン』で聴いた時、スティーヴン・タイラーのヴォーカルにぶっ飛んだ。ヘヴィ・メタルなシンガーだが、ちょっとしゃがれてて…すごい高音でファルセットを効かせたこの声をどうやって僕のバリトンで歌おう?と思ったけれど、どうしてもやりたかった。プロデューサーで友人のアルベルト・キンテーロがオリジナルとはまるで違う素晴らしいアレンジをしてくれたよ。ジャスティン・ティンバーレイクの「キャント・ストップ・ザ・フィーリング!」も一緒だ。こんなポップソングを僕がやるとは誰も予想してなかったと思うけど、それをソウル風なスタイルで歌ってみた。他にも大ファンだったジョージ・マイケルの名曲「ケアレス・ウィスパー」、ジョー・コッカーの「ユー・アー・ソー・ビューティフル」、フランキー・ヴァリの「君の瞳に恋してる」、リック・アストリーの「ギヴ・ユー・アップ」などなど。僕が大好きなアーティストの大好きな曲を選んだんだ。ティナ・ターナーの「ザ・ベスト」もね。僕は彼女の大ファンだから。今もステージに立ってて、歳はとったけど、パワーは全然衰えてない。歌うことについて、音楽について、こういったシンガー達から学べることはたくさんある。僕もラスヴェガスのショウやミュージカルをたくさん見て学んで来た。だから、自分のソロはできる限り「大きな」ショウにしたいんだ。僕の頭の中にあるショウのイメージがそうだからさ。

──今回苦労したのはどの曲でしたか?

カルロス・マリン:当然ながら「ボヘミアン・ラプソディ」だったね。たくさんのパートででき上がっている曲だからだ。ポップな部分もあれば、中間のクワイアを使ったメヌエット・パートはクラシカルだし、エンディングは原曲にはない僕のオリジナルなアイディアだ。フレディのキーはものすごく高かったけど、キーは落としたくなかった。イノセンスとのデュエットだったので、キーを下げちゃうと、彼女のソプラノが生かせないし、女性の彼女が歌うのが大変になるので、オリジナル・キーで歌うしかなかったんだ。フレディの高音を出そうと僕もかなり奮闘して、結果的にはフレディ以上の高音まで行ったんだ。イノセンスときたら、まるで空を飛ぶ鳥みたいだから、ハーモニーをつける僕の音程も自然と高くなってしまうんだよ。2曲がひとつになったような長い曲だから、レコーディングには丸2日かかった。クワイアとの部分ではクワイアだけを別に録ったけど、アルベルト・キンテーロがアレンジしたハーモニーは、クイーンのハーモニーの完全再現だね。素晴らしいチームとの汗の結晶なんだ。

──新鮮に感じた点、初めてのことは?

カルロス・マリン:自分自身のポップな声を再発見した。しばらく忘れていた声だった。このアルバムで聴ける声は僕の自然な声に近い19~20歳でミュージカルをやっていた頃の声なんだ。オペラをやり始め、イル・ディーヴォではオペラティックな声を使っていた。でも今回はこれまで作った中で一番ポップなアルバムで、ファンからは「オペラ風のものを期待してたら、ソウルまで歌っていてびっくり」と驚かれた。一番オペラ風なのが「ボヘミアン・ラプソディ」で、他の曲はポップだ。たまにオペラな瞬間もあるけど、基本は身近に感じられるポップスを僕の解釈で心から届けようとしていて、そのためには囁くように歌うこともあった。「ケアレス・ウィスパー」は、そのいい例だよ。ジョージ・マイケルの原曲のエッセンスを引き出そうと頑張ったから、なんとかできたんじゃないかと誇りに感じてるよ。

──今作で、自身が特に気に入っている曲を選ぶとすると?

カルロス・マリン:それは難しいなぁ。あえて選ぶなら「ボヘミアン・ラプソディ」。「ミス・ア・シング」も自分でびっくりするほど僕の声に合う曲だった。メロディが素晴らしい曲は、バラードであろうとロックソングであろうと関係なく素晴らしいものになることの証明だ。「ケアレス・ウィスパー」も…。「恋に落ちた時」は、ナット・キング・コールで聴いていたロマンティックな曲だ。「ユー・アー・ソー・ビューティフル」も美しくインティメイトな曲。ジョー・コッカーのヴァージョンは、ギターとピアノだけでしっとりと歌っていたので、僕もそれでいきたいと思ったんだ。…やっぱりアルバムすべてが僕にとっては特別なので1曲だけは選べない。他の曲に申し訳ないからね。

──あなたの音楽的背景を語る上で、最も影響を受けたアーティスト、手本としているアーティストはいますか?


カルロス・マリン:僕が歌い始めた頃ということかい? 6~7歳の時に偉大なるテナー歌手マリオ・ランツァの映画『歌劇王カルーソ』を観て、それがきっかけで歌うようになったんだ。彼が歌う「オー・ソレ・ミオ」やオペラのアリアを聴き、僕も子供ながらに「オー・ソレ・ミオ」「サンタルシア」「グラナダ」といったナポリ民謡のアルバムを作ったんだ。僕はスペイン人だけど、生まれはドイツ、オランダに3年住んでいる時に、まず8歳でLP、10歳で2枚目を作った。スペインに戻ってからはドミンゴとかマリオ・デル・モナコなどオペラ・シンガーを聴いたよ。ポップスだとフランク・シナトラ、ディーン・マーティン、そして今も昔も大好きなのがトム・ジョーンズ、あとはクイーンだね。グループとしてもだが、フレディ・マーキュリーは凄すぎる。どこまで高音を出せるんだ?というくらい限界を超えて行く。他にもスパンダー・バレエ、リック・アストリー…このアルバムで取り上げたシンガーはみんな好きだよ。トム・ジョーンズだけは入れる寸前だったんだが、入れる余裕がなかった。エルヴィス・プレスリーもだ。全部を入れるわけには行かないからね。だから、今回は1980年代と1990年代に絞ったんだよ。

──2020年は新型コロナウイルスによって、私たちの生活や世界ががらりと変わってしまいましたが、あなた自身、大きく変わったことはありますか?

カルロス・マリン:金は使ってばかりじゃなく、ちゃんと貯めておかなきゃと改めて思った(笑)。1年間、仕事がなくなって気付いたら「預金がもうない」なんてことにならないようにね。それがひとつ。ふたつ目はこのパンデミックから抜け出すには皆で協力し合うしかないということ。もし各国の首相が話し合ってどうするかを決められれば足並みも揃う。今のスペインの状況を見るとやり方が間違ってたんだと思う。一方で日本を見ると正しかったんだと思うよ、首相は新しく変わったかもしれないが。このまま行って近いうちに劇場も100%再開できるようになればいいね。そうすれば僕も日本に行ける。正しいやり方でやれば、良い結果が生まれることの良い例だよ。

──今年はイル・ディーヴォの日本デビュー15周年なのですが、初来日の時のことは覚えていますか。

カルロス・マリン:すごかったよ。日本で最初にテレビ番組に出た時は「日本のオーディエンスは僕らのこと知ってくれてるのかな?」と不安だったし、実際リアクションはそれほどではなかった。最初のコンサートをやった時もみんなあまり拍手をしないんだ。両手に棒を持って振ってるだけ。「気に入ってもらえなかったのか」と思って、ずっと最後までそんな感じだった。今では日本のファンも大きな声を出して愛情表現してくれて最高だよ。僕らは日本に特別な感情を抱いている。津波(東日本大震災)の時にも日本に行ってコンサートもやったし、レコードも出してナンバーワンになった。何かが起こると必ず立ち上がって、乗り越え、それまで以上の国にするところが日本と日本人の素晴らしさだよ。そこに僕は驚かされるし日本の文化の好きな点さ。何が起ころうとも前へ進む。過去に止まってはいられない。自分たちの力でまた国を動き出させる。そういうところが好きだから日本に住みたいくらいなのさ。きっといつか東京に住んでいると思うよ、東京が大好きだから。

──2018年8月には最新アルバム『タイムレス』を引っさげ、日本武道館4 daysを含む全国6大都市11回公演という大規模な来日公演がありましたね。

カルロス・マリン:行くたびに数が増えている。日本のファンの素晴らしさには僕ら感謝しているよ。アメリカ、スペイン…どこへ行っても見覚えのある日本のファンは来てくれている。単なるファンというより友人のようなんだ。日本では素敵な着物を着てるファンもいたりして、その礼儀正しさは素晴らしい。それでいてコンサートではパッションに溢れているのには驚いたよ。手拍子をして心から楽しんでくれているのが分かる。僕ら、必ず日本語で話しかけるようにしていて、得意なのはデヴィッド、セバスチャンも頑張って話そうとする。僕は「アイシテマス」とあと少しだけなんだけどね(笑)。とにかく日本でのコンサートはいつも楽しい。大抵1~1ヶ月半はいるので、食べ物もホテルも何もかも満喫しているよ。

──2017年にはソロとして初来日公演を行っていますが、その時はいかがでしたか?

カルロス・マリン:最高だったね、オーディエンスもすごく楽しんでくれていたようだ。僕としては、「どんな風に受け止められるかな?」と思ってたが、すごく楽しんでもらえたようだ。フランク・シナトラ風というか、羽飾りをつけたパリのキャバレー風のダンサーなどを使った2時間のショウだったけど、一緒に手拍子をして笑って理解してくれていた。特に客席から伝わってくるエネルギーを僕も全身で感じていたよ。もし1月にまた戻ってライヴができるのであれば、僕は150%を出し切るよ。前回と同じくらい素晴らしいショウになると思うので、きっとまた楽しんでもらえるだろう。

──このアルバムからの曲中心になりますか?

カルロス・マリン:そうだ。よりモダンなショウになるね。もちろんシナトラの曲やこれまで歌ったことのない曲もやるし、前回と同じくイノセンスをゲストに迎えるつもりだよ。「ボヘミアン・ラプソディ」「パラダイス」をやるには彼女が必要だからね。「オペラ座の怪人」もね。アルバムからの曲や色々取り混ぜたファンタスティックなショウになるはずさ。

──イル・ディーヴォの来年の予定や計画は?

カルロス・マリン:2月にアメリカ・ツアーを再開できればと願っている。このパンデミック中にレコーディングをしたニュー・アルバムもリリースされる。リモートでそれぞれの国から録ったんだ。アルベルト・キンテーロはバルセロナで僕はマドリードのスタジオでやってたので、少し楽だった。来年春、ツアーが始まるのと同じくらいに出る予定だ。すべてがうまく行けばの話だけどね。そのあとは今回キャンセルになった南米、日本は2022年に行くんじゃなかったかな。ヨーロッパ、アメリカ、アジア…早くステージに立ちたくて仕方がないよ。もう1年ステージに立てていないなんて、クレイジーだよ。

──ソロ活動も含め、イル・ディーヴォでデビュー後のこの16年を振り返ると、どんなことを思い出しますか?

カルロス・マリン:まるで映画みたいにこの16年のハイライトが次々と思い浮かぶよ。セリーヌ・ディオン、トニ・ブラクストン、バーブラ・ストライサンド…。でも一番カリスマティックなコンサートといえば、マディソン・スクエア・ガーデンで一緒にやったバーブラ・ストライサンドとだろう。彼女と歌えたこともだけど、客席を見るとアル・パチーノ、オプラ・ウィンフリー、トム・クルーズ、ベン・スティラー、ロバート・デニーロ…信じられない顔ぶれなんだ。ショウにはビル&ヒラリー・クリントンも来ていた。終演後、楽屋にいたら、誰かがドアをノックしたので開けたんだ、下着姿でね。そしたらヒラリーが「あなたたちの大ファンだから写真を撮らせて」って言うんだよ。慌てて服を着て出て行って…ビル・クリントンが来て「君たちのツアーでサックスを吹きたいよ」と言うもんだから、その話はニュースにもなっちゃったけどね。無事に写真撮影もした。とても素晴らしい人たちだったね。バーブラ・ストライサンドと歌えたこと、世界中の首相に会えたこと、ゴルバチョフ、ブッシュ、オバマ…たくさんの国を訪れたこと…それこそ世界を何周しただろう。世界中で400万人近い人が僕らのコンサートを見てくれた計算になるんだ。売れたアルバムは4千万枚。何よりも信じられないのは、今も僕らはこうしてここにいて、アルバムをリリースし、次のコンサートのことを考えていることだよ。イル・ディーヴォはオーディエンスが好きでいてくれる限り、続いていくよ。それぞれにソロなどもやりつつね。僕もソロとイル・ディーヴォがぶつかることないよう、両立させていこうと思っているよ。イル・ディーヴォはお客さんがそこにいる限り、永遠だ。

──イル・ディーヴォの他のメンバーは、あなたのアルバムを聴かれましたか?

C:話は特にしていないな。聴いたんじゃないかとは思うけど…「ボヘミアン・ラプソディ」のビデオを見てくれたのは知っている。14日以来話してないんだ。実は今夜4人でFacebookチャットをするんで、もしかすると、そこで何か言ってくれるかも。大抵4人の誰かが何かをすると、「あのアルバムは良かった」「あのオペラが良かった」と褒めてくれるんだ。

──今回のアルバムのどういった点を日本のファンに一番アピールしたいですか?

カルロス・マリン:これが僕の初めてのソロとしてのスタジオ・アルバムだという点だね。そしてさっきも言ったように、僕の自然なポップな声に戻って歌っている点だ。自分でも再発見したというか…そういう声が自分の中にあることはもちろん分かってたし、たまにポップに歌うこともあった。でも、アルバム1枚をそんな声で作ってみたら、自分でも驚くほどに良かった。チャレンジでもあった。いい例がティナ・ターナーの「ザ・ベスト」だ。ティナ・ターナーの声で知っている曲を男性の声に変える上で、「僕に何ができるだろう?」と考えた。ティナ・ターナーの素晴らしいヴァージョンとは違う新しいものにするには何をすればいいか。最終的には自分のやり方でやった。そこをアピールしたいね。どんな有名な曲であれ、自分にとってやりやすい場所に持っていって歌うことができたという点だ。

──ライブで聞きたいですね。

カルロス・マリン:当然、世界中で聴いてもらい、ツアーでこのアルバムを見せられることを期待している。そしてオーディエンスとファンがアルバムを気に入ってくれて、聴いている時は音楽のマジックに酔いしれてほしい。どんな音楽であれ、音楽というのは普段とは違う別世界に連れて行ってくれて、日々の問題や避けたいことを忘れさせてくれるものだ。僕の音楽がそうなればと願っているよ。心穏やかに、リラックスして、ダンスして、涙を流して…なんでもいいんだ。

──最後に、日本のファンへメッセージを。

カルロス・マリン:僕からの日本のファンへのメッセージは一言、アイ・ラブ・ユーということ。また日本に戻れる日が本当に待ちきれない。6月に新しいショウを披露するのが待ちきれないよ。プロモーションでもなんでもいいから日本に行ってみんなの顔を見て、触れ合って、ハグをしたい…マスクなしでハグをできるようになっててほしいよ。スペイン人はラテンのルーツを持つ人間だから人と人との距離が近いんだ。ハグをしたいんだよ。ハグが大好きだ。でも今の時期はみんな「ハグはダメ。ソーシアル・ディスタンスよ!」と言ってるので、日本風にこうやって(お辞儀をして)挨拶しないとね。

カルロス・マリン『ポートレイト』


通常盤 UICY-15930 \2,750
DVD付限定盤デラックス・エディション UICY-79181 \3,850
※日本盤のみSHM-CD仕様
1.ミス・ア・シング
2.ザ・ベスト
3.ギヴ・ユー・アップ
4.ケアレス・ウィスパー
5.君の瞳に恋してる
6.恋に落ちた時
7.キャント・ストップ・ザ・フィーリング!
8.ユー・アー・ソー・ビューティフル
9.ボヘミアン・ラプソディ featuring イノセンス
10.パラダイス~愛のテーマ featuring イノセンス
◆『ポートレイト』視聴サイト

<来日公演 再延期のお知らせ>

2021年1月22日(金)Bunkamuraオーチャードホール、1月23日(土)メルパルクホール大阪にて予定しておりました「カルロス・マリン」公演は、新型コロナウイルス感染症による国内外の状況を考慮し、やむを得ず2021年6月に再延期とさせていただきます。
【再延期公演日程】
2021年6月2日(水)メルパルクホール大阪
2021年6月3日(木)Bunkamuraオーチャードホール
再延期公演のチケットの発売に関する詳細は後日発表致します。お客様、および関係各社の皆様にご迷惑をお掛け致しますことを心よりお詫び申し上げます。

◆カルロス・マリン・オフィシャルサイト
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