【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、ループペダルがもたらした刺激「好きなスタイルを全部集約できる」

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BREAKERZのギタリストAKIHIDEが11月25日、ソロとして通算8枚目のアルバム『LOOP WORLD』をリリースする。コロナ禍のステイホーム期間中に自分に何ができるのか葛藤した末に、“これなら自分がやりたいことが集約できる”とハマったのがループペダルを駆使した独奏スタイルだった。ライヴパフォーマンス等で使用されることの多いこの機材だが、AKIHIDEはレコーディングのために録音と再生を重ね、ループペダルならではの緊張感まで封じ込めたところも注目に値する。

◆AKIHIDE 画像 / 動画

AKIHIDEのギタリストとしてのスキルと持ち前のグルーヴ感を活かした一発録りのスリリングな演奏と、迷路のような時代を生きている今だからこそ生まれたメッセージを持つ楽曲たちがリアリティを持って響く。『LOOP WORLD』とはそういうアルバムだ。また、CDにパッケージされたコロナの世界をファンタジックに描いたコンセプトストーリーや美しいアートワークも本人発案、執筆によるもの。マルチな才能を持つアーティストが閉塞感の中で見つけたものは何だったのか? 発信し続けるAKIHIDEのロングインタビューをお届けしたい。

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■セッションや弾き語りとは違う
■ハイブリッドな演奏形態が刺激的

──アルバム『LOOP WORLD』はループペダルを取り入れたアプローチが新鮮で、AKIHIDEさん自身がコロナ禍で心の奥深くまで見つめて制作した印象を受けました。作品を作るきっかけになったのは、現在の世の中の状況ですか? それともループペダルでしょうか?

AKIHIDE:両方かもしれないですね。今年はじめに7枚目のアルバムを出したばかりなので、こんなに早いタイミングで作るつもりはなかったんです。ところが、コロナ禍でBREAKERZのライブができなくなったり、世の中全体も含めて思うような活動ができず、みんなが大変な中、僕自身も“どうしたらいいんだろう?”って。月日が経つにつれて“思った以上に先が見えないな”とすごく不安になったんですね。そんな中、BREAKERZで配信ライブを開催して“これもひとつの形なんだな。ソロでも配信をやってみようか”って思ったときに、自分の中で少し視界が開けたというか、一歩踏み出せるようになったんです。

──配信に可能性を見出したんですね。

AKIHIDE:もともとお客さんとコミュニケーションをとるのが好きで、そのために音楽を作っているタイプの人間なので。最初は自分が創作したものをYouTubeにアップしたりしていたんですが、あるとき、“昔ちょっとやったことがあるループペダルを使ってプレイしてみたら面白いな”と思ったんです。そこからハマってしまって、配信ライブに向けてループペダルを掘り下げてみようって。このやり方なら自分ひとりで出来るなと。リズムもギターのボディを叩いて作れるし、ループペダルを使って楽曲を作ったり、何か形にしたいなと思ったんですよね。

──ひとりで、いろいろなことができるループペダルの機能が背中を押すきっかけになったんですか?

AKIHIDE:ええ。当時は新型コロナウィルスもまだ第1波で、第2波や第3波がくるかもしれない状況だったので、“スタジオにミュージシャン呼べないかも”って思ったんですよね。家でひとりでも完全に制作ができる状態にするために始めたんですけど、思いのほか面白くて。ループペダルってその場で録音したものを再生しながら、さらに音を重ねていける機材なので、“こうしたらひとりなのに、バンドサウンドみたいな複雑なアレンジになるな”とか“このグルーヴがループしたら次の自分はこういうギターを弾くな”ってバトンタッチするみたいに演奏していくんですよね。バンドでのセッションや弾き語りとはまた違う、ハイブリッドな演奏形態が刺激的だったんです。

──ギター少年に戻ったようなワクワク感があった?

AKIHIDE:かもしれないですね。夜もお酒飲みながら“この順番にしたら、もっと良くなるんじゃないか?”って延々とアレンジしてました(笑)。ループペダルでの制作って基本、一発録音のスタイルで、最初から最後まで通してプレイするので、最初に頭の中で設計図を描くというか、順番を考えるんですよ。アンドゥという消去機能(※直前のオーバーダブを取り消すことが可能)があるので、Aメロ→Bメロ→サビって構成を考える中、“このフレーズはいらないな”と思ったものを消去したり、セクションを入れ替えたりする作業を楽しくやっていましたね。ギター少年というよりもギターおじさんなんですけど(笑)。

──いやいや(笑)。話を聞いているだけで楽しそうです。

AKIHIDE:いろいろなことができるなって。最近、パーカッションが好きで、音をいろいろ集めていたのでウィンドチャイムの音を入れてみたり。ギターを弾くのもボディを叩くのも歌うのも、好きなスタイルを全部集約できるのが魅力なんですよね。学んだスキルをふんだんに使えるので。


──コーラスも歌ったものを後からループさせられるんですよね。

AKIHIDE:エド・シーランとかがやってますよね。僕は音源ではやっていないですが、家では試したりしましたね。ループペダルはミニマムな世界なのに無限の広がりを持っている。いろいろなミュージシャンが使っていますが、ここまで深堀りしたのは初めてだったので、とても刺激的でした。

──そうなんですね。自分以外の人と一緒に音を出すことと、ループペダルを使って一人でプレイを完結することの面白さの違いとは?

AKIHIDE:バンドの合奏は各自のグルーヴや曲に描くイメージが若干違うので、その揺れがカッコいいんだと思うんですけど、ループペダルは自分だけのグルーヴで作るので、やや遅くなったり突っ込んだりするポイントも同じで、ブレがないんですよね。たくさんの僕がウネッているようなイメージ。ギターらしい王道の良さがありつつ、いまどきのトラックメーカー的な要素もあって、そこが面白いですね。コロナ禍でギターを始めた方もいらっしゃると思うんですが、ループペダルはお勧めです。

──自分で生ドラムも生ベースも演奏して、ひとり多重録音するパターンもありますよね、レニー・クラヴィッツのように。ループペダルだと、ギターと歌だけで完結させながら、時間をかけずにそれと同じようなことできてしまうという魅力もありますか?

AKIHIDE:そうですね。あとレコーディングだと、失敗したら“そこだけ録り直す”っていうチャレンジができますけど、ループの場合、演奏が始まったら録り直せないので、その面白さもありますね。音を整えるベクトルではない。今回のアルバムもスリリングな要素が強いと思います。

──『LOOP WORLD』のサウンドはエッジがあって刺激的だと感じました。タイトルも“ループペダル”から付けたんですか?

AKIHIDE:ステイホーム期間はみなさんもそうだったと思うんですが、日にちの感覚がよくわからなくて、テレビを点ければ「今日の感染者は◯◯◯人です」っていう情報が流れているような状態で。基本ネガティヴなニュースが多いし、仕事もできないので、“あれ? 今日っていつだっけ?”みたいな感覚になることが多かったんです。“まるで出口のない迷路だな”と思ったときに、“明日が来なくて今日ばかりが繰り返されていく世界”の話が浮かんで、そこからどんどんイマジネーションが広がっていって「LOOP WORLD」のコンセプトストーリーが出来上がっていったんですよね。

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