【ライブレポート】鬼束ちひろ、デビュー20周年有観客コンサート「新たに歩みだした彼女に出会えた夜」

ツイート

鬼束ちひろが、11月17日東京・Bunkamuraオーチャードホール、11月24日大阪・Zepp Nambaで、デビュー20周年コンサートツアー<UNHESITATE>を開催。MCなし、アンコールなしの全17曲、約2時間に及ぶライブとなった東京公演をレポートする。

また、11月25日(水)に3年ぶり8枚目となるオリジナルアルバム『HYSTERIA』をリリース。12月2日(火)にはフジテレビ系列「FNS歌謡祭 第一夜」、12/27(日)にNHK BSプレミアム / BS4K「The Covers' Fes. 2020」の出演が決定している。

●「UNHESITATE」東京公演ライブレポート

9月18日にSTREAMING CONCERT「SUBURBIA」に続き、久しぶりの有観客によるコンサートツアー<UNHESITATE>を開催した鬼束ちひろ。その初日となった東京・Bunkamuraオーチャードホール公演は、新型コロナウイルスの感染防止対策のため観客数をキャパシティの半数ほどに絞られたが、それでも1曲1曲への拍手がいつも以上に大きく聞こえたのは、こうして生でライブを体感できることの喜びが溢れていたからだろう。






会場が心地よい緊張感で包まれたなか、まずはピアノ・坂本昌之、バイオリン・室屋光一郎、チェロ・結城貴弘が登場し、イントロダクションとなる叙情的なピアノの演奏がスタート。そして鬼束ちひろがステージに歩み出ると、1曲目「BORDERLINE」のイントロが静かに奏でられた。グッとアクセルを踏み込むように歌い出した鬼束のボーカルはソウルフルで、曲が進むに連れて自身を解き放っていくような高揚感があり、声のグルーヴが生まれていく。はじまりから会場の空気を掌握するステージで、ニューアルバム『HYSTERIA』にも収録された「End of the world」「Tiger in my love」へと続いた。アンサンブルと歌声との躍動が、観客の心を静かに振動させるようで、会場内の密度が上がった感覚だ。

中盤は、より繊細でエモーショナルな曲が並ぶ。ストリングスの音色とスロウなステップを踏むように歌声を絡ませる「私とワルツを」、またライブでの披露はレアな「ダイニングチキン」は引き裂かれた心の重い痛みを声に映す。シンプルで美しいピアノとストリングスの調べに、身体を震わせるようにして放つそのボーカルが凛と映える。客席からは、一段と長く大きな拍手が湧き上がった。「EVER AFTER」や「火の鳥」、そして「MAGICAL WORLD」など観客に語りかけ、また優しく抱擁するような曲が続き、さらに圧巻だったのが「CROW」。高音のバイオリンの旋律とふくよかなチェロの響き、そしてパーカッシヴなピアノの伴奏とともに、心の奥底から放つ力強いボーカルが、観客ひとりひとりの想いや憂いのようなものも昇華する。







後半はリリカルな「蛍」にはじまり、またデビューから20年を迎えた今だからこそ、不器用な生き方や自身の音楽人生を支えてくれた人たちへの心からの感謝の想いを素直に綴った「書きかけの手紙」(20周年のオールタイムベストアルバム『REQUIEM AND SILENCE』収録)が披露された。この新たな曲から、初期の「月光」へと続く流れも感慨深い。心の置き場がなく痛みにまみれてもがき、手を伸ばす、その衝動は今なお生々しくあり、また一方でこの「月光」が今の世の中に差す光のようにも届く。エモーショナルでとても美しい時が流れた。

ここまでMCなし、ノンストップで歌ってきた鬼束。一言挨拶を交わすと、ラストに「嵐が丘」を歌い、今一度観客の心をかき乱し<UNHESITATE>の東京公演の幕を閉じた。エンディングには、10月に配信リリースされ、また11月25日リリースの最新アルバム『HYSTERIA』にも収録された「焼ける川」が会場に響く。デビュー20周年を経て、また新たに歩みだした鬼束ちひろに出会えた一夜となった。

文:吉羽さおり
写真:西岡 浩記 | NISHIOKA Hiroki-

セットリスト

1. BORDERLINE
2. End of the world
3. Tiger in my Love
4. Beautiful Fighter
5. イノセンス
6. 私とワルツを
7. 流星群
8. ダイニングチキン
9. EVER AFTER
10. 悲しみの気球
11. 火の鳥
12. MAGICAL WORLD
13. CROW
14. 蛍
15. 書きかけの手紙
16. 月光
17. 嵐ヶ丘

オリジナルアルバム『HYSTERIA』

2020年11月25日(水)発売

■通常盤 CD only VICL-65435 / \3,000+税
■初回限定盤 CD+DVD VIZL-1817 / \4,800+税
■プレミアム・コレクターズ・エディション(完全生産限定盤)SHM-CD+Blu-ray+Photo Book VIZL-1818 / \7,200+税

<収録曲>
■通常盤 CD only
1. 憂鬱な太陽 退屈な月
2. フェアリーテイル
3. 焼ける川
4. Dawn of my faith
5. swallow the ocean
6. 「蒼い春」
7. ネオンテトラの麻疹たち
8. UNCRIMINAL
9. End of the world
10. Boys Don’t Cry
全10曲収録

■初回限定盤 CD+DVD
CD
※通常盤と同内容

DVD
[SUBURBIA](Streaming Version)
1. 月光
2. 流星群
3. Tiger in my Love
4. BORDERLINE
5. MAGICAL WORLD
6. 悲しみの気球
7. EVER AFTER
8. 眩暈
9. CROW
10. 蛍

■プレミアム・コレクターズ・エディション SHM-CD+Blu-ray+Photo Book
SHM-CD
※通常盤と同内容

Blu-ray
[SUBURBIA] (Director’s Cut Version)
1. 月光
2. 流星群
3. Tiger in my Love
4. BORDERLINE
5. MAGICAL WORLD
6. 悲しみの気球
7. EVER AFTER
8. 眩暈
9. CROW
10. 蛍

<プレミアム・コレクターズ・エディション限定特典>
○三方背豪華パッケージ仕様(サイズ縦26.5cm横18.2cm)
○高音質SHM-CD仕様
○Blu-ray(配信ライブ「SUBURBIA」Director’s Cut Version)
○スペシャルフォトブック(48P)
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス