【インタビュー】黒田大介「自分の好きなものを他人とシェアできる幸せ、それが選曲の魅力なんです」

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日本各地のアンダーグラウンドなクラブはもちろん、国内フェスや海外のソウルフェス、緩めのラウンジまで日々ハードに活動中の黒田大介。自身の7インチ・レーベル“kickin”を主宰する傍ら、国内外レーベルのリイシュー・プロジェクトへの協力や選曲/監修を手掛けることも多く、その審美眼が生かされたミュージック・キュレーターとしての活動も多岐に渡る。狂熱のディープファンクERAを経て「ポスト・レアグルーヴ」の可能性を求め続ける、そんな黒田がbarks初登場となる。

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■クラブに行き始めたときが
■ちょうどレア・グルーヴ

──このコロナ禍は、どんな生活をされてましたか?

黒田大介(以下、黒田) ご想像通り、引きこもりですね。

──基本、DJの仕事はないですか?

黒田 今も渋谷the roomで月二回レギュラーがあるので、それをやらせていただいて。いわゆるゲストDJがホントになくなって。自分しきりじゃないレギュラーですがBAR STEREOと神田Extrawelt、不定期で東日本橋CITANでもやらせていただいています。ただ12月はゲストDJのオファーをいくつか頂いていて、地方遠征もあります。

──戻ってきました?

黒田 戻ってきたんでしょうかね……。回数としては前の3割くらいですが。

──家ではどんな生活をしてました?

黒田 音楽を聴いたり、海外ドラマ見たり……ホントに大学生みたいな生活(笑)。基本、人と接する仕事なので、ほかの場所で感染してクラブに持ち込みたくないので外には出ないでおこうと思って。……ただでさえクラブは3密ですからね。

──黒田さんがそもそもDJを始めたきっかけは?

黒田 東京に出てきた当時は西麻布の328によく通っていて、藤井悟さんとよく一緒にやられていた中島ケンさんというDJの方がいて──今は荒木町でバー経営されてるんですが──DJってかっこいいな、やってみようかなと。

──音楽は普通に好きで聞いていた?

黒田 小学校くらいから全米トップ40を聞いて、クラシックロック聞いて、ストーンズ聞いて、ストーンズからブラック・ミュージックに行ってPファンクとか、音楽の聞き方としてはいわゆる王道路線ですね。雑誌が唯一の情報ソースで、たとえば「中村とうようのこれを聴け!」とかあると聴いちゃう。昔の人はみんなそういう聞き方だったと思いますけど。そういうガイドラインがあった。

──特にダンス・ミュージック縛りで聞いていたわけではないんですね。

黒田 それはないですね。クラブ・ミュージックと出会ったのはマッシヴ・アタックとかソウルIIソウル……なので80年代後半かな。クラブに行き始めたときがちょうどレア・グルーヴだったんです。それにカウンターを喰らったというか……。

──レア・グルーヴがすごくかっこいい、と思ってDJを始めた。

黒田 レコードもちょこちょこ買ってはいて友達のパーティでDJしたり。その後キチンと仕事でやろうと思ったのが、97年くらい。きっかけはケブ・ダージ(編注:1957年生まれ。ノーザンソウル、ディープファンク、ガレージパンク、ロカビリーなどで活躍するスコットランドのDJ/プロデューサー。“ディープ・ファンク”という言葉を生み出した)です。彼が来日して“ディープ・ファンク”という概念を持ち込んで。ボク自身レア・グルーヴは結構聴いてたし耳も肥えてるぞと自負はあったけど、ケブ・ダージのプレイで一晩で知ってる曲が3曲くらいしかなくて……(笑)。しかもとてつもなくかっこよかった。自分を全否定されたわけじゃないんですけど、価値観をひっくり返された。

──ところで初めてプロDJデビューした日は覚えてますか?

黒田 ギャラもらった日ですか? 地元・大阪で……22歳くらいのときかな。何をかけたかも覚えてないですね(笑)。

──いい記憶ですか? 消したい記憶ですか?

黒田 客はまったく踊ってなかったですね(笑)。つなぎの練習もしてたので、練習通りにプレイして……練習通りにDJしてもライブ感もグルーヴもないしだれも踊らないですよね。ちゃんとやってんのになんでだれも踊ってくれないんだろうってズーッと考えてました(笑)。

──ちゃんとやってるのに(笑)。

黒田 DJ=曲をつなぐものだと思ってたから。実際はそうじゃないじゃないですか。

──ではDJを始めた当初からレア・グルーヴ/ファンク系?

黒田 そうですね。ファンクをズーッと聴いてましたね。で、クラブ・ミュージックとしてレア・グルーヴという価値観に出会って、そこからDJがかけてる曲を教えてもらったり、レコード屋さんに行ったり。

──今のスタイルは最初から?

黒田 根本は変わってないですね……真面目に考えたこともないけど(笑)。97年以降だと、ディープ・ファンクのDJってほぼみんなレコードのコレクターなんです。まずコレクションありきの世界で、この曲を聴きたかったらオレのDJを聴きに来いという。僕はそこにミックスして構成していくスタイルを持ち込んだんです。そこから自分のスタイルが変わったのかな。ディープ・ファンクのシーンはとにかくレア盤競争。そういう行為に多少なりとも違和感はありましたけど、ケヴ・ダージのDJは違った。ミックスはしないけど、自分のストーリーを持っていて、聴かせる。感動させる。

──最初はレア盤ありきだったDJスタイルが、徐々にストーリーがあって、分かりやすいDJに変わっていった感じですか?

黒田 ファンクやソウルだけに拘らなくなりました。レコード好きだったけど、元の音楽好きに戻っていった感じなのかな。

──とりあえずいい音をかけたい?

黒田 そう。小さいディープ・ファンクのシーンでしたけど、自分は異色だったと思うんです。RYUHEI(THE MAN)も近いスタイルでしたけど、彼にはヒップホップ・ミュージックからの影響がある。僕にはその感覚がなくて、そこが自分のウィークポイントでもあり、ストロングポイントでもあると思うんです。

──そこはDJをする上でかなり大きな違いですよね?

黒田 そうなんです。例えば「Funky Drummer」(James Brown)をかけるにしても、僕にはサンプリングネタとしての「Funky Drummer」は意識の中にないんです。そうすると多分かけ方や、そこに乗っかるメッセージが違ってくる。ヒップホップの人たちとの共通言語を持ってないので、この曲の次はやっぱこれでしょ、とか、この曲のこの4小節が、みたいなセオリーが僕にはないんですね。僕ら世代やトミー(冨永陽介/CHAMP主宰、the room店長)なんかの世代のDJは、ベースがヒップホップの人が大多数。だからそこは、ちょっとみんなとは違うのかなという部分。今の新しい世代のDJはヒップホップで育った人が主流ではない印象で、ディープ・ハウスだったり、アンビエントだったり、ビートがない音楽が好きとか、もしかしたらそっちの方が意外としっくりくるかも。

──ヒップホップ通ってないってなかなかいないですね。

黒田 周りにあまりいないんです。リアルタイムでネイティヴ・タンとかは聴いてましたが、レア・グルーヴとして聴いてましたから。“Rebirth of Cool”(DJ Cam Quartet)みたいな世界=レア・グルーヴとしてのヒップホップ。レア・グルーヴの発掘とヒップホップの新作が同時進行している世界。

■今は一般的にそういうダスティな音より
■耳あたりのいいライトな音が好まれますから

──黒田さんがレア・グルーヴを聴き始めた当時、それ以降はレコードの価値がかなり高騰したころですよね?

黒田 そうですね、レア・グルーヴはトレンドでしたから。ディープ・ファンクはさらに需要と供給のアンバランスが大きくて。当初はUK主導だったものが、アメリカの各州に有力なコレクターが出現して、彼らが地元のスタジオとかプロデューサーを尋ねてマスターテープからディグしていったんです。在庫があったらそれを買い取って、それが流通するという……。その音源をNOW-AGAIN (STONES THROW)やJAZZMANがコンピにしてリリースするという流れですね。そこからはいわゆるレアな音源をいい音質で安定して手に入れることができた。ディープ・ファンクのコンピレーションはブートレグの世界でしたけど、それが淘汰されて、きちんとアーティストに還元されるようになったんですね。

──もともと流通してたものではあるんですね。

黒田 プレス枚数が数百枚とか、アセテートのテストカットで世の中に1枚しかないものとか。そんな感じです(笑)。

──昔ながらの、アメリカの片田舎のレコード店に行って「ついに見つけたぞ!」みたいなことはほぼなくなったわけですね。

黒田 ここ10年くらいはレア盤にフォーカスしていないので分からないですが、クオリティが高いものはなかなか出てこないのではないかと。ディープ・ファンクを探していた人たちが、モダン・ソウル、ディスコの発掘にシフトして、近年のディスコ/ブギーのムーブメントとリンクしてますよね。ディープ・ファンクやFunk45が爆発したきっかけもヒップホップ/ブレイクビーツとのリンクでした。ケブとSHADOWが出会ってより大きな流れに。面白い時代ですよね(笑)。今は一般的にそういうダスティな音より耳あたりのいいライトな音が好まれる傾向なので、ファンクかけるときは色々工夫しています。

──黒田さんが影響を受けたのはやっぱりケブ・ダージですか?

黒田 一にも二にもケブ・ダージですね。スタイルは全く違いますけど。

──最近気になるDJはいますか?

黒田 時間があるので、YouTubeでズーッとBoiler Roomとか見てるんですよ(笑)。で、中東の女性テクノDJがすごくかっこよくて……。

──パレスチナのSama'じゃないですか?

黒田 そうだった気がする! すごくかっこよくて。イギリスでエンジニアの勉強をして、ワイルドな雰囲気で……攻撃的というか、しかも自分のルーツ音楽もふんだんに取り入れていて。自分はザラついた音が好きで、ハウスでもアシッド・ハウスが好きだったりするので、ああいう音はいいなと。

──彼女はまた、“佇まい”がまたいいですよね。

黒田 僕の中では“戦う人”っぽいイメージ(笑)。

──日本人だと?

黒田 コロナ禍であまりクラブ行けてないので……。でも、自分のスタイルを持って活動されてるDJは全員気になります。


黒田 作った後はほぼ聴かないです。10年前に作ったミックスをたまに聴いたりはします。昔何やってたのか、ノスタルジーに浸るためというか(笑)。こういうのかけてたんだとか、誰々が来てくれてたなとか。

──記憶と記録ですね。

黒田 そうですね。今は興味があるのがコンピレーションの方。、選曲です。ミキシングは表現するための手段であって、ボクはそれが目的ではないんです。

──選曲の面白さってどういうところにありますか?

黒田 自分の好きなものを他人とシェアできる幸せはあります。DJの感性次第で良くも悪くも聞こえますし。基本好きな曲しかかけないし。

──踊ってくれたらうれしい?

黒田 踊るってピュアな表現じゃないですか? だから踊れる環境なら踊ってくれたらうれしい。今の曲何ですか?とDJブースに来てくれるのもうれしいですけど。なかなか聴かれないですけど大歓迎です。僕は怖いイメージがあるらしくて……以前のアー写のせいかな(笑)。

■kickinレーベルは
■自分の選曲の延長にある

──2015年に“kickin”レーベルを立ち上げたのはなぜでしょうか?

黒田 7インチのレーベルなんですが、自分のかけたい曲をアナログで出したい。自分が欲しいからという理由がまずありました。

──レーベルを立ち上げたことで変わったことは? 選曲の仕方が変わっとか……。

黒田 レーベルは自分の選曲の延長にあるんです。選曲が深まったからこそ、この曲を出そうかなと。

──最後にDJする上で心がけていることはありますか?

黒田 必然性と意外性。ここでこの曲かけるか!とか、黒田大介がこんな曲をかけるかとか、意外性はサプライズ。どこかで出してやりたいと日々考えてます(笑)。


『KICKIN PRESENTS MIGHTY MAINSTREAM:DJ'S CHOICE 1965-1973』

2020年6月24日(水)リリース
ULTRA-VYBE
CDSOL-45366 ¥2,400+tax

1. Red Clay / Jack Wilkins
2. She / Chalres Kynard
3. House Of Rising Funk / Afrique
4. Babylon / Buddy Terry
5. The Loud Minority (Edit) / Frank Foster
6. El Torro Poo Poo / Charles Kynard
7. Don't You Care / Alice Clark
8. Ain't Got Nobody / Maxine Weldon
9. M'Bassa / LaMont Johnson
10. Booger Bear / Charles Williams
11. Inner City Blues (Make Me Wanna Holler) / Sarah Vaughan
12. Mi Hermano / Blue Mitchell
13. Hot Peppers Part 1 / Mauricio Smith
14. Mambo Au Go Go Pt.1 / Orquesta Joe Cain
15. Quadrivium / Hadley Caliman
16. Abscretions / Buddy Terry
17. Equipoise / Roy Haynes
18. Naima / Charles McPherson

■DJ INFOMATION

<DAISUKE KURODA presents ★kickin lounge★>
毎月第二、第四月曜@渋谷THE ROOM
http://www.theroom.jp/

<The Consequences>
毎月第三水曜@渋谷THE ROOM
http://www.theroom.jp/


偶数月第三日曜@神田Extrawelt
https://www.bar-extrawelt.com/

◆黒田大介 Instagram
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