【コラム】DREAMCATCHER、ハードロックを武器に宣戦布告

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K-POP唯一無二のハードロック路線で独自の道を切り開いているDREAMCATCHERの、日本オリジナル配信曲「NO MORE」。作曲陣には、スウェーデンのメタルバンド、ハンマーフォールのギタリストであるポンタス・ノルグレンも名を連ね、アレンジにはBABYMETALの作家陣としても知られるMEGも参加。

手には剣、腰に銃を携え、眼光鋭い少女が主人公のミュージックビデオ。激しいロックに乗せて、刺激的な画面には様々な言葉が舞う。“小さな世界で/吠えたてるStray dogs(野良犬)/群がってばかり/臆病ねLosers(敗者)”そう、この楽曲は、今の時代ならではのSNS上の誹謗中傷に立ち向かう姿を描いている。


終始音数の多い高密度なハードロックに、“戦い”へ挑む力強さがあふれている。映像は、自身もSNSから火が付いた漫画家の阿東里枝がキャラクターをデザイン、映像制作は動画クリエイターのぽかげが担当。DREAMCATCHERは、歌唱力はもちろん、ダンスも高評価で、ルックスも全員申し分ないチームだが、今回のミュージックビデオは本人たちの露出を封印して勝負。またキャラクターもメンバーではなく、あえて架空の少女であるのは、この楽曲が持つメッセージ性を浮き立たせていると感じられる。

肝となる歌詞だが、日本語と英語がバランスよく織り交ぜられ、ともすれば重く伝わってしまう内容も、英語にすることで耳にリズムよく響いてくる。例えば、上に記した歌詞に出てくる「Stray dogs(野良犬)」「Losers(敗者)」も、英語で歌われているため気にならないが、この2つを合わせると“負け犬”。楽曲冒頭から、なかなかの宣戦布告を仕掛けてくる。

怒涛のドラムと野太いギターから一転、ベースの重低音と不穏なメロディが敷かれたラップパートも聴きどころだ。

“Who said that(誰が言ったの)/根拠のないRumor(噂)/I do not care(気にしない)/そのComment of ruder(無礼なコメント)”
“相容れないVision(構想)/あなたもFiction?(作り物?)”
“I do not be afraid(怖くない)/全然ノーダメージ/余計なInfoだけShutdown(シャットダウン)”

と、誹謗中傷に負けない強い意志を、見事なフロウで表現。本作のミュージックビデオは、リリース日の11月20日に公開され、翌日には10万再生を達成。YouTubeにもSNSにも、世界中のリスナーから続々とコメントが付いている。

彼女たちがこうしたテーマの楽曲を歌う理由は、本国での活躍を見るとひも解ける。DREAMCATCHERは韓国でデビュー4年目、日本はこの11月に2年目を迎えたチームで、ダークファンタジーな世界観をコンセプトにした7人組アーティストだ。年間100組以上のダンス音楽チームがデビューするというK-POP市場で、メタルやハードロック系の音楽をベースに独自の路線を一貫。

面白いのは、作品を跨ぎながら一連になった物語性を持っていることだ。デビューから続いていた第一章の「悪夢シリーズ」が昨年で終わり、2020年の2月に韓国でリリースされた1stアルバム『Dystopia : The Tree of Language』より、「Dystopia=暗黒の世界」の第二章が始まった。

サブタイトル「The Tree of Language」の意味は“言葉の木”。同アルバムのリード曲「Scream」は、“高まった憎悪の中の無作為の標的”という歌詞があるように、ネット上で行われる“魔女狩り”がテーマ。夏にリリースされた「BOCA」はスペイン語で“口”を意味し、“棘のような言葉であなたを苦しめるならBOCA(口)を開けられないようにする”と歌っている。

この流れを受け、日本オリジナルの本作「NO MORE」は、SNSの誹謗中傷と戦う楽曲が生まれた。音楽性やコンセプトだけでなく、こうした一連の物語性を持続したうえで、人気チームとして活躍できていることは、韓国でかなり稀有な存在と言えるだろう。

現在、日本や韓国はもとより、海外ファンの比率が高いDREAMCATCHERだが、彼女たちも音楽界で“戦って”きた経緯がある。メタル/ハードロック×アイドルは、日本であればBABYMETAL、BiSH、PassCodeをはじめ多数存在するが、韓国はロックの需要自体が低く、ポップス曲にロックのアレンジをされることすら少ない。

そのためDREAMCATCHERのコンセプトでのデビューは相当なインパクトがある一方で、“賭け”でもあった。現地のインタビューによると、「デビュー当時は他のコンセプトへの欲もあった」(ガヒョン)、「以前は曲の世界観を理解するのに時間がかかったが、今は歌やダンスに自然と世界観を入れ込むことができるようになった」(シヨン)、「最近は作詞にも参加できるくらい、世界観を自ら展開できるようになった」(スア)と心境の変化を語っている。

なおDREAMCATCHERを成功に導いたのが、彼女たちの事務所「DREAMCATCHER COMPANY」のイ・ジュウォン代表だ。イ代表は、大学で日本語専攻だった経験から、日本音楽や雑誌の輸入専門会社を立ち上げ、日韓サッカーW杯のあった2002年には韓国でも絶大な人気を誇ったX JAPANのフィルムコンサートを主催、同時にYOSHIKIの韓国招聘も実現させた実績を持ち、日本のバンド文化にも造詣が深い。

過去のインタビューにて、ガールズグループを作る心構えとして、「国内だけでなく海外のマニアも満足できるような、一貫したカラーを持ったチームが必要と考えた。私がJ-POPのビジネスで学んだことだ」と振り返っている。韓国でもJ-POPの影響力が強かった時代を過ごした代表の経験が、巡り巡って今、韓国を出発点に、日本、さらに世界へ響いていることは興味深い。

11月7日に韓国から配信されたDREAMCATCHERのオンラインライブでは、初めて生バンドを従えての公演となった。「いつか生バンドとライブしたい」とメンバーも口にしていたことが、コロナ禍ゆえ奇しくもオンライン公演での実現となった。様々な苦境のなか着実に成長を続けているDREAMCATCHER。2021年にはきっと「NO MORE」も含めたオンステージを、日本でも見られると期待しよう。

文◎日韓音楽コミュニケーター・筧 真帆


■Japan Digital single「NO MORE」

2020年11月20日(金)発売
https://lnk.to/NO_MORE
※今作品には、スケジュールの都合上ハンドンは参加しておりません。あらかじめご了承ください。

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