【インタビュー】CONCERTO MOON、島の信念はそのままに芳賀のクリアなトーンが誘う新作『RAIN FIRE』

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1996年結成、国内ハードロックシーンにギターヒーローとして君臨し続ける島 紀史率いるCONCERTO MOON。2015年よりバンドを支えた河塚篤史(Dr.)、中易繁治(B.)に加え、芳賀 亘(Vo.)、三宅 亮(Key.)の若き新布陣を迎えての初のオリジナルアルバム『RAIN FIRE』が完成した。これまでの世界観と島の信念はそのままに、よりメロディの美しさが際立つクリアな芳賀のトーンが誘う新作はどのようなアルバムになったのか、島(G.)と芳賀(Vo.)の二人にその全貌を聞いた。

■「もういいかな」とか「もう無理なのかな」と思った時期もあった
■でも助けてくれたり協力してくれたり叱咤激励してくれた先輩が居た


──近年コンスタントな活動をされていらして、とても順調さが伺えますね。充実度はいかがですか?

島 紀史(以下、島):近年稀に見るバンドの状態の良さと思いますね。前作が過去の楽曲を今のメンバーでというものでしたから、芳賀というリードシンガーが加入して、芳賀の為に曲を作る事が早々に実現したい事でもあったし、昨年のツアーでも感じたバンドの状態の良さと勢いがあるうちに制作しようと。とにかく早く作りたくて昨年から取り組んでみたけど、そう上手くも進まなくてね。曲作りから考えれば長いスパンにはなったけど、バンドの状態の良さ、関係の良さを表現出来たとは思いますね。

芳賀 亘(以下、芳賀):僕は最初にバンド加入のお話しをいただいた時も、島さんが僕の為に楽曲を書いて下さるという事でとても楽しみにしていて、前作ではまずレコーディングを一緒に経験して、今作は初のオリジナルで楽しみにしていた事が形になってとても嬉しいですし、充実していますね。


▲島 紀史(Norifumi Shima) - Guitar

──ブレずに続けるって大変だと思うのですが、実際挫けそうになった事はあったのでしょうか?

島:僕のキャラクター上、あまり表に出した事はないけれど、基本の精神として自分のキャリアを振り返ってみてたくさんの人に助けられたし、やりたい事しかやりたくないと言い続けてきた僕のような人間に、その環境を与えてくれる、協力してくれる人達が居たからこそだよね。今のレーベルと初めて話した時も、担当者自身がCONCERTO MOONを好きでいてくれたし、何よりも「CONCERTO MOONらしい作品を作ってくれればいいんです。」と言ってくれてね、これってミュージシャンにとってこの上ない幸せな事だよね。デモテープでさえ、楽しみにしていてくれて、それがこちらのやる気になるんだよね。レーベルとしたら、どんなものが出来るのか怖ろしくて言ったかもしれないけど(笑)、このご時世なのでスタジオにもそう来て貰うわけにも行かなかったし、今どんなものが出来ているのかをとにかく楽しみにしてくれた。今までやってきた中で、「もういいかな。」とか、「もう無理なのかな。」と思った時期も無くはないですよ、でもその時々で助けてくれたり協力してくれた人達、叱咤激励してくれた諸先輩方が居たからね。恵まれているなと思います。こういう話しはあまりした事もないけれど、多くの人に支えられてきましたね。

──島さんの人柄なのでしょうね。

島:そんなに自分が良い人間とは思っていないし、単にワガママだろうなと思うけど、メンバーにはいつも「俺を信用してくれな。」とは言いますね。例えば今回のような真新しい作品を作る際に、メンバーには出来るだけ自分のイメージを伝えて、完成形に近いデモテープは渡しても、これがどんな仕上がりになるのかを見えているのは僕だけじゃない?とにかく俺を信用してくれって事だし、ある日突然、「この曲はナシだ。」と言った事もあるし。今回もギリギリになって、「あの曲は止めてこの曲をやりたい、必ずこれがあった方がいいから。」って事もありましたよ。

──さて、新布陣を迎えての初のスタジオアルバム『RAIN FIRE』が完成しました。通算13枚目ですが、とてもフレッシュな印象があります。

島:とにかく自分達らしく、反省点としては「もうこういう曲はやったよね。」とか「もう以前の作品に入っているな。」というところに近年はこだわり過ぎたかなと思う部分もあったので、フレッシュに感じて貰えたのは、今さら『From Father to Sun』や『Rain Forest』のパート2を作るという事ではなくて、自分がこのバンドを始めた時の初期衝動に正直であろうと思った。だからこそ曲作りでの段階では「Alone in Paradise」や「Dream Chaser」や「Change My Heart」のパート2みたいなアイデアもあったんだけど、それは自分のセルフコピーだなと曲作りを始めて2ヶ月間くらい貯めたアイデアを全部捨てたんですよ。思いつくものをとにかく録音して行く作業を昨年の10月くらいからしていて、年明け1月にはレコーディングの予定だったものが12月になって全部捨てたからね、男らしく消去ですよ。それから年明け早々に録音機材を持って帰省したんだけど、それでリフレッシュ出来たかもしれないな。自分らしくある事は大前提として、芳賀と三宅の若い二人が加入した事もフレッシュさになったかもしれない、それこそがバンドを始めた頃の初期衝動なわけだよね。CONCERTO MOONとして、アマチュアでは出来なかった事が出来るようになった時の気持ち。その帰省中に出たアイデアは半数は占めているんですよ。和歌山の家からは徒歩10秒で浜辺だったり、車で5分行けば白浜の街並みが見下ろせる場所だったりなので環境の変化も良かったのかもしれない。芳賀は今までのシンガーで誰よりもレンジが広いし、誰よりも澄んだ綺麗な声だしね。芳賀と三宅ありきのものを作ろうと思ったし、それがフレッシュな印象になったのはとても嬉しいですね。


──このサウンドにはやはり鍵盤は必須だと思うので、三宅さんとはどのようなご縁ですか?

島:岡垣さん(TERRA ROSA, etc)の紹介だったと思います。キーボードが居ない時期には松井くん(BLINDMAN)に助けて貰ったりもしたけど、でも彼にはBLINDMANがあるからね。なので誰か居ないかなとは思っていたし、岡垣さんとは個人的にもプロジェクトでギターを弾かせて貰ったりもしていて、雑談の中でも岡垣さんの若い弟子で「島くんの音楽にマッチしそうな子が居るよ。」と聞いていて。最初は「とんでもない!」って断られていたんだけど、彼の中でチャレンジしてみたいと言ってくれてね。当時の彼のバンドの音源も聴いていたし、「ただ古臭くなりたい。」とか、「レインボーやディープ・パープルを焼き直したいバンドではないよ。」という話しはしました。松井くんも含めて、岡垣一門の持っているものは自分の音楽には非常にマッチするし、「前任者のコピーをする必要もないよ。」と。

──お若いのに、鍵盤を揺らしながら弾いていますよね(笑)。

島:頭おかしいのよ、あの一門は(笑)。僕の一門も頭おかしいかもしれないけど(笑)。岡垣さんは三宅をまだまだって言うけれど、非凡なものを持っているし、今回のレコーディングでもかなり苦労したと思いますよ。彼は関西に住んでいるので、このご時世だしリモートレコーディングのような形にもなったけど、「もっとこうしよう、ああしよう。」のレスポンスも良かったし、目の前では簡単に試せる事がやり取りになると何度も手間がかかるからね。


▲三宅 亮(Ryo Miyake) - Keyboards

──サウンドも全体的に近年のストロングなものから、よりメロディックでよりキャッチーにシフトされましたね。

島:やっぱり芳賀が居るからだし、僕の曲を楽しみにしてくれていた期待にも応えたかったしね。いつもこのバンドでこだわってきた事だけど、キャッチーでありたいし、激しいだけ、ポップなだけ、ではなくて自分が影響を受けてきたもの、好きなものはハードロックでヘヴィなものではあるけれど、必ずキャッチーなものでありたい。

──例えるなら、今作はレインボーが『Bent Out of Shape』をリリースした頃のような。

島:それは最高の褒め言葉だね?。自分の中にそのイメージがあったわけではないけれど、自分の好きなものに照らし合わせるならば、やっぱりジョー・リン・ターナー時代のレインボーだよね。だって『Bent Out of Shape』は究極の完成品じゃない?それぞれのアルバムも凄いけど、やっぱり『Bent Out of Shape』はレインボーの中でも突出した作品だと思うし、そう受け取って貰えたなら最高ですね。それには芳賀のフレッシュさがあったからだね。


▲芳賀 亘(Wataru Haga) - Vocal

──芳賀さんが影響を受けたシンガーはどなたでしょう?

芳賀:マイケル・スウィートやロバート・プラント、デヴィッド・カヴァーデイル、ジェフ・スコット・ソート、そしてジョー・リン・ターナーですね。一通りを通りつつ、各シンガーの良い部分を取り入れたりしています。

──ビブラートはマイケル・スウィートを感じたかもです。

芳賀:ビブラートを真似していた頃もあったので、もしかしたらその影響が残っているかもしれないですね。

──今回は帰省した事も大きかったようですが、他に制作のインスピレーションはどんなところからでしょう?

島:やっぱり芳賀の加入が大きいですね。これまではもっと男らしい声のタイプとやっていたけれど、「島くんの音楽は綺麗な声の人が歌うと良いと思うよ。」と結構言われていたのね。でもそれを頑なに拒絶していたの。それが芳賀を知ってからは必要以上にアグレッシブにダーティな声を出して欲しいなんて1ミリも思わなかったし、この透き通る綺麗な声で自分のキャッチーな音楽を表現してもらえたらという部分が大きかったですね。

──今作は、より楽曲の中にメリハリがありますよね。

島:それこそ曲を考え出すと自分のやっているタイプの音楽は聴かなくなるんですよ。良いと思ったものってどこかその二番煎じを作ってしまう危険性があるのね。今更レインボーとディープ・パープルを忘れる事は無理だけど、普通に聴く分には昔からポップスの方が好きだし、自分の引き出しにはあるよね。そっちの影響を自分の音楽にフィードバックさせたのはあるかもしれない、芳賀の声からのインスピレーションね。カーペンターズやアバ、オリビア・ニュートン・ジョンとか、ビリー・ジョエルやジミ・ジェイミソンのサバイバーが好きだった事が今考えると影響したかもしれない。

──芳賀さんの歌詞の場合はいかがですか?

芳賀:僕はインストの段階から聴き込んで、今の状況に当てはめてみたり、自分のストックからもありますね。

島:謎の言語(仮歌)でメロディを渡してね(笑)。この期間が結構長かったよね。

芳賀:その謎の言語から歌詞が浮かんで書いたものもあります(笑)。

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