【レポート】ACID ANDROID、観客5名限定のプレミア公演に見たライヴバンドとしての新しい面

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ACID ANDROIDが11月25日(水)、関東某所にてチケット販売数5枚のプレミア公演<ACID ANDROID LIVE 2020>を開催した。2020年最初で最後となった同公演は、後日配信されることが事前アナウンスされており、その詳細が先ごろ明らかになったばかりだ。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆ACID ANDROID 画像

この夜のライヴは、全公演が新型コロナのパンデミックで中止となったツアー<ACID ANDROID LIVE 2020>の代わりに企画されたものだ。2020年11月25日、関東某所で開催、観客は5名限定、録画のうえ後日配信予定のライヴ、とだけ事前情報を与えられていたが、会場に入って初めて、極端な観客制限と、録画配信にした理由がわかった。

会場は中規模のライヴハウスだが、ステージは使わず、通常であれば観客でひしめくフロアの真ん中にドラムセット、ギターアンプ、そしてマイクスタンドが車座になって向かい合わせに置かれている。つまりメンバー3人はお互いが演奏している姿を見ながらプレイするわけだ。そしてその周りを7台のカメラが取り囲む。いつもは天井近くにある照明の櫓が極端に下に降ろされている。



つまりこの日行われるのはステージにアーティストが並び立ち、客席に向かってプレイする、という通常のライヴではなく、映像もまた、バンドがライヴ演奏する様子を正面から捉えただけのありきたりなものではなく、映像化することを意識し映像ならではの工夫を凝らした“作品”とすることを考えているということだ。これはコロナのパンデミックがなければありえなかった企画かもしれないが、そこで決まりきった定型的な配信ライヴにしないのはyukihiroのアーティスティックなこだわりに他ならない。

私がこれを書いているのはライヴが行われた当日の夜であり、当然出来上がった“作品”としての配信映像は見ていない。車座方式のライヴを一方向のみから見た感想に過ぎないが、それでもこの日のライヴはインパクト十分だった。衝撃的だった、と言っていい。“映像作品としてのACID ANDROID”ではなく、ライヴバンドとしてのACID ANDROIDの新しい面を、そこで見たのだ。


最初の一音を聴いて驚いた。凶暴なまでにラウドでヘヴィでタフで強靱な出音が、凄まじいパワーを伴って襲いかかってくる。少なくとも私はACID ANDROIDのライヴでこんな凄い音は体験したことがない。どんなにハードでインダストリアルな音であっても常にクールで抑制された端正な表情をたたえているのが、他では得がたい彼らだけの個性だと理解していたが、この日のACID ANDROIDのバンドサウンドは、そんな思い込みを軽く吹き飛ばすようなピリピリとする“圧”が漲っていた。人間の体は吸音材として機能するから、客がいないぶん音が減衰することなく鋭いまま向かってくる、という事情もあると思うが、音響面だけではなく、それ以上にバンドの気合いと剥き出しの骨格の逞しさ、強さが伝わってくる。歓声も拍手もなく、撮影スタッフが周りを取り囲むライヴは、まるでリハーサル風景のようでもあるが、そこには凄まじい緊張感が漂っている。機械ではなく生身の肉体が対峙し軋轢を起こしぶつかり合い炎上する緊張感だ。通常のライヴではオーディエンスの熱い反応に隠れがちなゴツゴツとしたバンドの実体が赤裸々なまでにさらけ出されている。

なるほどACID ANDROIDとはこういうバンドなのだと改めて思い知らされたし、yukihiroひとりでやろうと思えばできるのに、あえてドラム(山口大吾)とギター(KAZUYA)をバンドに加えている理由も体感できた。きわめて完成度の高い緻密で正確な演奏なのに、荒々しいダイナミズムがある。ダークで内向的だが閉じてない。つまりは、めちゃくちゃにカッコいい。配信になってそれがどれだけ伝わるかわからないが、もし興味のある方はできるだけ良いオーディオセットで、それもイヤフォンではなく空気振動が伝わるスピーカーで大音量で聴くことをお勧めする。



演奏曲は初期曲から最新作『GARDEN』収録曲まで比較的まんべんなく演奏されたが、演奏そのものもまた、これまで以上にハードでアグレッシヴな面を強調していた。それがよくわかったのが、中盤から終盤のクライマックスに至る流れの中でプレイされた、まだタイトルもつけられていない新曲2曲だ。ギターの鼓膜に突き刺さるようなハードなギターリフとミニマルなビートが強烈な印象を与える1曲目、エモーショナルでドラマティックな2曲目と、吹っ切れたようなメリハリのある曲調、アッパーでノイジーな音でショウの流れを加速する。

ステージと客席という場所の制約から解き放たれたショウは、照明や演出も含め自由奔放で、より的確にACID ANDROIDの世界観を描き出している。マイクにすがりつくように歌うyukihiroの横顔を激しく明滅する照明が妖しく照らしだし、3人が演奏するそこだけが別世界となっていた。「let's dance」で大きなミラーボールが天井から下がってきて、会場全体を照らし出す演出にはうなった。


これからこのパフォーマンスは、撮った映像を時間をかけて綿密に編集を施し、音響面でも緻密にミックスし作り込んで、繰り返しの鑑賞に耐えうる完成度の高い映像作品として録画配信されるはずだ。しかしどんな映像であれ、この日のACID ANDROIDの演奏が、ロックバンドの本質の正鵠を射るような最高の出来だったことは間違いない。

取材・文◎小野島大

■配信ライヴ<ACID ANDROID LIVE 2020>

配信開始日時:12月28日(月) 00:13〜
※ライヴ実施日:11月25日(水) start18:00@関東某所
【配信チケット】
¥4,500 (TAX IN)
▼イープラス Streaming+ https://eplus.jp/acidandroid1228-st/
・チケット受付:11月28日(土)10:00~2021年1月3日(日)22:30
・アーカイブ配信:2021年1月3日(日)23:59まで
▼ローチケ LIVE STREAMING https://l-tike.com/acidandroid/
・チケット受付:11月28日(土)10:00~2021年1月3日(日)22:30
・アーカイブ配信:2021年1月4日(月)23:59まで
※チケットはZAIKOにて販売
※チケットの購入・動画の視聴にはZAIKOのアカウントへの登録が必要

■NEW GOODS 販売

受注期間:2020年11月29日(日)23:59まで
http://shopping.deli-a.jp/artist/acidandroid.php


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