【コラム】Mrs. GREEN APPLE、インストアルバムが可視化した緻密で大胆な楽曲構築法

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Mrs. GREEN APPLE (以下、ミセス)が12月7日、インストゥルメンタルアルバム『5-Instrumentals-』をリリースした。今年7月8日にリリースされたベストアルバム『5』のインストバージョンにあたる作品だ。

◆Mrs. GREEN APPLE 動画 / 画像

『5』はリリース当時、主要チャートで7冠を獲得した話題作。全19曲のストリーミング総再生数は、なんと16億回を突破するなど、現在も幅広い世代からの支持を得ているアルバムだ。収録曲のうち「インフェルノ」「青と夏」はそれぞれ1億回を突破し、日本レコード協会のストリーミング認定でプラチナを獲得している。なお、『5』の発売日にメジャーデビュー5周年を迎えたミセスは、同日、“フェーズ1”の完結と、当面の間、活動休止することを表明。バンドは現在休止期間中だ。


▲インストゥルメンタルアルバム『5-Instrumentals-』

『5-Instrumentals-』では、ボーナストラックとして、「点描の唄」を追加収録。映画『青夏 きみに恋した30日』の挿入歌として制作され、井上苑子がゲストボーカルに参加している楽曲だ。ストリーミング再生回数は1億回超で、新たな男女デュエット曲として根強い人気を誇っている。

ミセスの全楽曲の作詞・作曲・編曲を手掛けているのは、バンドのフロントマン、大森元貴 (Vo, G)。彼がDTMでアレンジまで一気に仕上げたあと、メンバーがそれを耳コピし、自分なりの解釈を加えて演奏することで形になるという。ギター、ベース、ドラム以外のアレンジも大森の手によるもの。これまで外部のプロデューサーが入ったことはなく、その実力は折り紙つき。以前放送されたテレビ朝日系音楽番組『関ジャム 完全燃SHOW』では、音楽プロデューサーの蔦谷好位置が「今後、(ミセスの楽曲プロデュースを)手掛けてみたいか?」という質問に対し、「僕がやることは何もない! 全部できているので」と返答。ミセスの楽曲のクオリティを高く評価した。

小学6年生で楽曲制作を始め、中学1年生で既にDTMを使った制作/録音/編集を行うなど、音楽にまつわるほとんどの知識を早くから独学で吸収してきた大森。彼が指揮を執るミセスは、自由なポップソングを志向するバンドとなり、これまで様々なジャンルの音楽を鳴らしてきた。私たちに多くの驚きと喜びをもたらしたミセスの楽曲は、彼らにとって、実験と試行の場だった。『5-Instrumentals-』ではボーカルが削がれているため、各楽器の動きやアンサンブルの響きをより詳細に聴くことができる。コードワークやシーンの展開、楽曲構成などの緻密さに改めて唸らせられることにもなるだろう。アレンジに詰まった面白さとこだわりをぜひ堪能してほしい。以下、インストゥルメンタルアルバム『5-Instrumentals-』を楽しむためのポイントを解説する。

   ◆   ◆   ◆

【Point 1】豊富なアイデアに
裏打ちされた展開の妙

大森の書く曲は、“Aメロ→Bメロ→サビ”というシンプルな構成でない曲が多く、作曲の時点からJ-POPの定型から外れている感じがあるが、アレンジでも意表を突いてくる。例えば、「どこかで日は昇る」は、速めのテンポから始まるが、イントロからテンポダウンし、8分の6拍子に変わる。「アウフヘーベン」のように、サビのコード進行が1番と2番で異なり、終盤に近づくにつれて、響きがよりドラマティックになるよう工夫されている曲も多い。一方、「青と夏」はラスサビに入るタイミングで全楽器が音を伸ばしているため、実は音数が少なかったりする。それでも物足りなさを感じさせないのは、ボーカルの伸びやかさによるところが大きい。このように、インストトラックを聴けば、“ここでこう来るのか!”という気づきにたくさん出会えることだろう。

【Point 2】カウンター的に響く
セカンドメロディの発見

「スターダム」Dメロのベース、「アボイドノート」の全編にわたって掛け合いするギター2本のように、ボーカルの裏で他の楽器も歌心溢れるフレーズを弾いていたことが、インストトラックだとよく分かる。特に「鯨の唄」はボーカルがなくとも非常にドラマティック。ストリングスを筆頭とした、美しいアレンジは一つの到達点と言えよう。

【Point 3】耳に楽しい
ユニークな音色

「StaRt」にある法螺貝、「サママ・フェスティバル!」や「青と夏」にある風鈴の音など、多様な音色を取り入れているのもミセスの楽曲の大きな特徴。なかには歌詞に連動した表現もあるため、歌詞を思い浮かべながら耳を凝らしてみてほしい。また、今回のアルバムでは、ボーカルだけではなく、声を加工して作った音も取り除かれている。「WanteD! WanteD!」や「PRESENT (Japanese ver.)」で音数が極端に少ない箇所があるのはそのためだ。原曲と聴き比べて、どこからどこまでが声によって作られているのかを探ってみるのも楽しいかもしれない。

   ◆   ◆   ◆

先述の通り、バンドは現在活動休止中だが、その勢いは留まることを知らない。LINE MUSICの“LINE MUSIC年間ランキング2020”ではアーティストランキング3位にランクイン。Spotifyでは“2020年 Spotifyジャパンランキング”の国内で最も再生されたアーティスト5位、国内で最も再生されたアルバム3位に『Attitude』がランクイン。さらにBillboard JAPANが発表した2020年の年間ランキングを見てみると、総合ソングチャート“HOT 100”にて、「インフェルノ」「青と夏」「僕のこと」「点描の唄(feat.井上苑子)」「ロマンチシズム」の5曲が100位以内にランクイン。アルバムチャートでは『5』のみならず、2019年10月にリリースされた4thアルバム『Attitude』も100位内に位置付けている。

これらのデータから読み取れるのは、活動休止中にもかかわらず、多くのリスナーがミセスの楽曲を求めているということ。YOASOBI「夜に駆ける」、瑛人「香水」を筆頭に、2020年はTikTokでのバズをきっかけとしたヒット曲が新しく生まれた。“TikTokで気になる曲を見つける→YouTubeでMVをチェックする→ストリーミングでフルサイズの音源を聴く”というリスナーの傾向から考えると、最初に楽曲が認知され、次にアーティストが認知され、そして当該アーティストの次回作が期待されるようになる、という流れが浸透しつつあると考えられる。そんななか、ミセスが楽曲をコンスタントにヒットさせていることは、バンドが、そして大森元貴という作家が、既に多くのリスナーからの信頼を得ている証といえるだろう。今年の秋、全国各地の学校によるオンライン学園祭で、「青と夏」「僕のこと」「StaRt」等を使用した創作ダンスや歌唱、演奏動画が数多く制作されたことも、同様のことを裏付けている現象だ。

リスナーの欲求が“聴きたい”から、“踊りたい”や“歌いたい”、“演奏したい”にまで波及しつつあるなか、今回リリースされるインストアルバムは、ファン待望のアイテムと言えるだろう。表立った活動が止まっている状態でも、多くの人々を惹きつけてしまうこのバンドは、やはり底知れない。

文◎蜂須賀ちなみ



■インストゥルメンタルアルバム『5 -Instrumentals-』

2020年12月7日(月) 配信開始
01. スターダム (Instrumental)
02. 我逢人 (Instrumental)
03. StaRt (Instrumental)
04. Speaking (Instrumental)
05. パブリック (Instrumental)
06. サママ・フェスティバル! (Instrumental -2020 Remastered) 
07. In the Morning (Instrumental)
08. 鯨の唄 (Instrumental)
09. どこかで日は昇る (Instrumental)
10. WanteD! WanteD! (Instrumental)
11. Love me, Love you (Instrumental)
12. アウフヘーベン (Instrumental)
13. 青と夏 (Instrumental)
14. 僕のこと (Instrumental)
15. ロマンチシズム (Instrumental)
16. インフェルノ (Instrumental)
17. アボイドノート (Instrumental)
18. PRESENT (Japanese ver.)(Instrumental)
19. Theater (Instrumental)
20. 点描の唄 (Instrumental)


▲ベストアルバム『5』

■ベストアルバム『5』

2020年7月8日(水)発売
【『5 COMPLETE BOX』(完全生産限定)】UPCH-29368 ¥15,000+税
※【『5』初回限定盤 (CD+DVD)】+【Blu-ray『EDEN no SONO Live at YOKOHAMA ARENA 2019.12.08』初回限定盤】+復刻Tシャツ2020+LPサイズ フォトポスター16枚
※商品サイズ:縦32.5cm×横32.5cm×高さ5.8cm
【初回限定盤 (CD+DVD)】UPCH-29363 ¥3,990+税
【通常盤 (CD)】UPCH-20549 ¥3,000+税
■CD収録曲■ ※完全生産限定『5 COMPLETE BOX』、初回限定盤、通常盤共通
01. スターダム (新録)
02. 我逢人 (がほうじん)
03. StaRt
04. Speaking
05. パブリック
06. サママ・フェスティバル!
07. In the Morning
08. 鯨の唄
09. どこかで日は昇る
10. WanteD! WanteD!
11. Love me, Love you
12. アウフヘーベン
13. 青と夏
14. 僕のこと
15. ロマンチシズム
16. インフェルノ
17. アボイドノート (新曲)
18. PRESENT (Japanese ver.) (新曲)
19. Theater (新曲)

■DVD収録曲■ ※完全生産限定『5 COMPLETE BOX』、初回限定盤共通
Mrs. GREEN APPLE 2014~2019 LIVE & FES映像メンバー視聴座談会
▼Mrs. GREEN APPLE 2014~2019 LIVE映像
01)20140705 渋谷LUSH「ゼンジン未到とコンフリクト ~前奏編~」より「HeLLo」
02)20141109 新宿MARZ「ゼンジン未到とパラダイムシフト ~音楽編~」より「藍(あお)」
03)20150326 新代田FEVER「ゼンジン未到とプログレス ~実戦編~」より「我逢人(がほうじん)」
04)20150708 日本工学院「Variety 再現スタジオライブ」より「StaRt」
05)20150926 渋谷WWW「Mrs. ONEMAN LIVE ~武装と創と造~」より「ミスカサズ」
06)20151224 恵比寿LIQUIDROOM「Mrs. ONEMAN TOUR ~東と名と阪~」より「うブ」
07)20160410 赤坂BLITZ 「TWELVE TOUR ~春宵一刻とモノテトラ~」より「Speaking」
08)20170519 東京国際フォーラム「MGA MEET YOU TOUR」より「JOURNEY」
09)20170715 日比谷野外大音楽堂「ゼンジン未到とロワジール ~東京編~」より「庶幾の唄」
10)20180909 幕張メッセ国際展示場「ENSEMBLE TOUR ~ソワレ・ドゥ・ラ・ブリュ~」より「They are」
11)20180909 幕張メッセ国際展示場「ENSEMBLE TOUR ~ソワレ・ドゥ・ラ・ブリュ~」より「PARTY」
12)20181117 札幌ペニーレーン24 「ゼンジン未到とプロテスト ~回帰編~」より「Simple」
13)20190704 NHKホール「The ROOM TOUR」より「どこかで日は昇る」 
14)20190704 NHKホール「The ROOM TOUR」より「FACTORY」
15)20191208 横浜アリーナ「Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR / エデンの園」より「インフェルノ」
▼Mrs. GREEN APPLE 2015~2019 FES映像
01)20150809 国営ひたち海浜公園 WING TENT「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」より「VIP」
02)20190901 泉大津フェニックス 「RUSH BALL 2019」より「ロマンチシズム」
03)20190811 国営ひたち海浜公園 GRASS STAGE「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」より「青と夏」
▼Music Video
01)アボイドノート Music Video
02)PRESENT (Japanese ver.) Music Video
03)Theater Music Video
・Behind the Scenes of “5”

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