【インタビュー】秦 基博、配信ライブ<コペルニクス>を語る「無観客をプラスに捉えて」

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シンガーソングライターの秦 基博が11月、無観客配信ライブ<秦 基博 CONCERT TOUR 2020 ―コペルニクス―>を開催した。

◆秦 基博 画像

2019年12月に4年ぶりのオリジナルアルバム『コペルニクス』をリリースし、2020年3月から新作をひっさげての全国ツアーを展開する予定…だったが、新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえて延期、そして中止という判断を下した。“アルバム制作とツアーはひとつのセット”と考えている秦 基博。アルバムの世界をライブでファンの人たちと共有したいという思いから、ツアーの初日を飾る予定だった埼玉・大宮ソニックシティで自身初の配信ライブに挑んだ。このライブの模様が12月27日(日)夜8時からWOWOWで放送されるということで、オンエアに先がけて、このライブについて振り返って語ったオフィシャルインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■アルバムを作って完成させて
■でもそこが終わりじゃない

──アルバム『コペルニクス』が昨年12月にリリースされて、3月からツアーが予定されていました。ツアーの準備をされていたと思いますが、延期・中止が決まった時はどんなことを考えていましたか?

秦 基博:2月の時点では「できるんじゃないか」という感覚もあったので、リハーサルを行なって、会場で本番と同じ内容でリハをするゲネプロもしていました。でも、結局延期になってしまって…。どうなっていくのか全く分からない状況が続いていきましたので、2回ぐらい延期にしましたけど、その都度、来てくださる方に予定をやりくりしてもらわないといけないので、いつまで“延期”という対応を取っていくべきなのかを考えているなかで、8月のタイミングで中止を決断しました。

──配信ライブを考えたのもその頃ですか?

秦 基博:延期という状況が続いていたので、もし中止になった場合は配信に切り替えて届けられたらいいなとは、それ以前から考えていました。アルバム『コペルニクス』の世界をライブで届けることは必ずやりたいと思っていましたから。アルバムを作って完成させて、でもそこが終わりじゃないんです。ライブで聴いてくださる方と共有して初めてアルバムとして形を成すような気持ちでいるので、ツアーはできなくても、何らかの形でライブはしたいなと。


──5月頃から配信ライブを行なうアーティストも増えてきていましたね。

秦 基博:そうですね。最初はどんな形で配信ライブを届ければいいのか分からなかったんですけど、いろんな方が配信ライブを行なう中で、配信でしか出来ないこともあるんじゃないかと思いましたし、ツアーの代わりではなくて、新しい形、新しいコンテンツとして届けるのがいいんじゃないかと思うようになりました。ポジティブな方向に捉えて。

──会場はツアー初日にライブを行なう予定だった大宮ソニックシティでしたが。

秦 基博:これも縁があったんだと思います。配信ライブを行なうために会場を押さえる必要があって、機材の搬入などを考えて、関東近郊で一番近かった大宮がいいんじゃないかと。ゲネプロを行なったのも大宮ソニックシティだったので。本来ツアーが始まる場所だったところで配信ライブができたのは、僕にとっても良かったことかなと思っています。

──初めての配信ライブ。多くの方が視聴していましたが、目の前にはお客さんがいない状態でした。どんな気持ちで臨みましたか?

秦 基博:会場にはお客さんはいないんですけど、画面の向こうというか、その先にいますので、“いないところに向かって歌っている”とか“話しかけている”という感覚ではなくて、やっぱりそこにいるんだと思ってやっていました。


──実際に配信ライブを行なってみて感じたことは?

秦 基博:目の前でお客さんがいるわけではないので、反応とか呼吸とか、いつもとは違っていましたけど、バンドメンバーがいるので、メンバーと息を合わせて、アンサンブルとしてのライブを作っていく感じがありました。配信ということで、普段のライブではあり得ない位置にカメラの方がいたり、演奏中にもステージ上にいるとか、客席の中を縦横無尽にカメラが動いたりとか、そこが配信ライブに特化した部分かなって思いますし、無観客というのをプラスに捉えて作っていけたところだと思います。

──本来のツアー初日から時間が経っての開催でしたが、ステージセットやセットリストは敢えて変えずに。

秦 基博:はい、基本的にはそのままですね。ゲネプロで得たものをそのまま配信ライブで届ける形になりました。ただ、セッション的な部分があったりしたので、演奏の尺とかは再検討しましたけど、基本的にな構成だったり、ライブ演出については同じです。

──アルバム『コペルニクス』をひっさげてのライブでしたが、リリースから1年経った今、改めてどんな作品だったと思いますか?

秦 基博:自分の転換点にしたいと思って作ったアルバムで、“新しい始まり”になるといいなという思いがありました。今、このアルバムのことを考えると、“本当にやりたいこと”とか“こんなふうに音楽を作ってみたい”という“今”を閉じ込めている作品になっているなって思いました。


──配信ライブで全曲演奏したことで、収録曲とも改めて向き合う機会に。

秦 基博:そうですね。アルバムのリリースツアーでアルバム曲を全部演奏するというのは自分にとってはとても自然で。CDの曲順は、その曲たちの中で一番いい流れを構築しているので、ライブではどんなふうに散りばめていくのか、再構築していくのかというのは結構考えました。アルバムの中に「天動説」「地動説」というインスト曲が入っていて、アルバム全体の流れを作っているんですけど、ライブでは「天動説」の後に来る曲と「地動説」の後に来る曲を逆にしました。それは意図的に最初から描いていたわけではないのですが、ライブのセットリストを考えていて、おのずとそうなっていきました。「天動説」の後に「9inch Space Ship」が来て、「地動説」の後に「LOVE LETTER」が来て。CDと逆になったのは自分でも不思議な気持ちです。でも、ライブをするんだったらこの流れしかないというセットリストになったので、自分の中では納得しているというか、「あ、このアルバムはこんなふうに結ばれていくんだな」って腑に落ちた感じがしました。

──中盤にアコースティックコーナーや弾き語りがありましたが、それもライブならではの緩急というか、場面転換的な効果が感じられました。

秦 基博:僕にとって、バンドセットはもちろんですけど、弾き語りやアコースティックな表現もずっとやってきていることなので、久しぶりのツアーでもあったので、アコースティックコーナーや弾き語りでも届けられたらいいなというセットリストでした。レコーディングに参加してもらったミュージシャンと一緒にライブもできるということで、「Joan」はレコーディングと同じように僕とトオミ(ヨウ)さんと朝倉(真司)さんの3人で演奏しました。

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