【レポート】Cubase 11の進化を知るトーク・ディスカッション・イベント<CUBASE FUN SESSIONS>

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豊富な機能と高品位な音質を備え、プロユースからビギナーまでさまざまなレベルやシチュエーションでの用途に対応するDAW、Cubase。11月には、最新バージョンのCubase 11が発売された。そのリリース日に合わせ配信されたトーク・ディスカッション・イベント<CUBASE FUN SESSIONS>に、普段から制作にCubaseを使用しているアーティスト3名が登場。Cubase 11に搭載された新機能を中心にプロの視点からCubaseというDAWの魅力を解説するという、Cubaseユーザーはもちろん、これから導入を検討している人にとっても役に立つイベントとなった。

◆ ◆ ◆


バーチャルスタジオからの配信となった本イベント。リニューアルされたばかりのヤマハ銀座店ブランド体験エリアの映像をバックに、デビュー20周年を迎えたロックバンド”shame”、そして宇宙バンド「SPEED OF LIGHTS」を率いるCUTT、DTMレッスン・サイト“Sleepfreaks”のインストラクターでサウンドクリエイターとしても活動する宮川智希、J RADIO FISH「PERFECT HUMAN」をはじめ多数の楽曲を手がけ、ユニット“OOPARTZ(オーパーツ)”のメンバーでもあるJUVENILEのゲスト3名が登場。ナビゲーターにCubese歴について聞かれると、CUTTはCubase SX1から、宮川はCubase SX3から、JUVENILEはCubese SX4から、と長年の愛用者であることがわかる。



トーク・セッションに入る前に、まずはCubase 11についての概要が紹介され、下記のような新機能が搭載されたことがアナウンスされた。

・サンプラートラックに、スライス機能やLFOを搭載。
・オーディオ書き出しがバッチ処理に対応。
・キューエディタが強化され、スケール表示、キーエディタ上でのグローバルトラック表示に対応。
・スペクトル表示のオーディオ編集ソフト、SpectraLayers Oneが付属。
・EQ“Frequency”が2に進化し、Dynamicモードが追加。
・ラウドネス、位相、スペクトラム表示を統合したメータープラグイン“Supervision”を搭載。
・これまでPro版のみの機能だったVariAudioがCubase Artistにも搭載。
・キーエディタでは、MIDI CCやピッチベンドレーンで傾きやカーブを書き込み可能に。
・Squasher(3バンドマルチコンプレッサー)、Imager(マルチバンドステレオイメージャー)などのプラグインが追加。
・6つの新しいサンプルセットが追加。

そして、ドイツ・ハンブルグのスタインバーグ本社、Cubase担当のMatthias Quellmannの映像メッセージに続いて、いよいよトーク・セッションがスタート。本イベントのためにゲストの3名が制作したトラックをもとに、Cubase 11の内容に迫っていくという趣旨だ。

トップバッターのCUTTが用意していたのはギター・ロックな楽曲で、まず言及されたのが“キーエディタの進化”だ。「全画面でキーエディタを出しても、コードやマーカーが表示される。制作フローが変わって、より楽曲に集中できる」と氏は言う。また、新しく加わった“スケールアシスタント機能”によってスケールから外れた音を自動で表示でき、「外れているからといってダメだというのではなく、バランスを意識してメロディやコードを練り上げられるのが良かった」そうだ。さらに、オーソドックなコード進行が物足りないと感じた時、小節単位でスケール変更することで、「自分に作れないようなメロディができた」という。

▲Squasher
▲Imager

ミックスにあたってCUTTが活用したというのが“Squasher”。今回のトラックではドラムに使用しているそうで、「バキっとして、今勝負できる音になりやすい」。また、「マルチバンドコンプだけど、EQ的にも使える」といい、「プリセットが充実しているので、そこから調整していくといいでは?」との提案もあった。そのほか「Imagerも面白い」とのことで、今回のトラックでは、ハイミッドの帯域だけオートメーションでパンを動かしたそう。こういったプラグインのインターフェースの使いやすさについても賞賛していた。

▲Frequency 2

宮川が用意したのは、ヒット曲を題材にした女性ボーカル入りデモソング。まず感想をもらしたのが、進化したEQ“Frequency 2”について。今回のトラックでは、入力信号に対してかかり具合の強さを調節できるDynamicモードで、キックの入力に対して使用。「時間的な調節ができ、一瞬だけかけられる。低域は曲にとって重要な部分なので、こういった機能は便利」とのこと。また同じくDynamicモードを使いボーカルも調整しており、「コンプだと帯域で絞られてしまうが、ピンポイントでできるのがいい」という。

▲SuperVision

また、メータープラグイン“SuperVision”も活用したそうだ。「中でもマルチパノラマは、定位の広がりを各帯域ごとに表示でき、耳では気づかない部分も視覚的にわかる」とのことで、マスタリングだけでなくミキシングにも利用可能だという。そのほかに使ったプラグインとして挙がったのが“Squasher”。ピアノをハウス系の硬いサウンドにするために使用したそうで、宮川曰く「ドンシャリサウンドがすぐに作れて、パキッとした今風のサウンドになる」。またピアノについては、サンプラートラックで一部のアタック音だけを抽出、メインのピアノ・サウンドに足すといったことをしたと解説していた。

▲サンプラートラック

そして、JUVENILEが制作したのはEDM系のトラック。活躍したのはサンプラートラックだ。「スライス機能が追加され、サンプルを自動でチョップしてくれる。それが鍵盤に自動的にアサインされるので、すぐにフレーズを叩くことができる」と、自身の音楽スタイルにはとても合っているのだと語る。また、LFOが付いたことで表現の幅が広がったほか、「サンプルをGroove Agentなどの付属のインストゥルメントに簡単に送ることができ、音程を変えるなどすぐに加工できるのも良い」という。

▲MIDIトラックでピッチカーブを書き込めるように

さらに、「これまではオートメーションでやっていたところを、MIDIトラックでピッチカーブを書き込めるようになった」ことはJUVENILEにとって大きかったそうだ。「シンベによく使うピッチベンドを、ドラムの表情付けにも活用できる」という。また、マスター・エフェクトとしてImagerを使ったそうで、氏によると「外にいくにつれて広がるように設定することで、音圧感が出てEDMっぽくなる」。そのほか、インプレイスレンダリングといった従来の機能の便利さなどについても言及していた。

トーク・セッションの最後には、Cubase 11をいち早く使用しての感想が語られた。


CUTT「Cubaseは、新機能をいち早く取り入れているDAW。もう進化はないと思っていましたが、まだありました。今回はワークフローに焦点を当てて進化していて、キーエディタによって、音楽に対する理解がより深まるんじゃないかと期待しています」

宮川「これまでバージョンが上がってくるのを見ていて、音楽を作る敷居がより低くなる設計に進化したと思う。スケールアシスタントのような機能をもっと追加してもらえたら嬉しいです。これまでCubase Proにしか搭載されていなかったVariAudioがCubase Artistにも追加されたので、自身で歌ったり、ボーカルものを制作する人はCubase Artist以上をお勧めします」

JUVENILE「サンプラートラックでスライスができるなど、もとあったものにもう1個プラスするという進化の仕方が先を行っていると思います。また、Squasherといった新しいものに触れて、これを使ってみたら?っていう挑戦状のように感じました」


本編終了後は、視聴者からの質問コーナーが設けられるなど充実のイベントとなった<CUBASE FUN SESSIONS>。動画では、実際の操作画面をもとに解説が行われているため、Cubase 11の新機能の使用法や、CUTT、宮川、JUVENILE、それぞれのCubase活用術がよくわかるはずだ。この機会にぜひ一度ご視聴いただき、Cubase 11の実力を体感していただきたい。

レポート・文=山本奈緒


<CUBASE FUN SESSIONS>ゲスト紹介

■CUTT

hide(X JAPAN)に見出され、1999年にバンド「shame」のボーカル・ギターとしてデビュー。シャウトを特徴にしながらもストレートなボーカル、哲学性の持った歌詞、幅広い音楽性で人気を博した。現在はソロ活動と共に宇宙バンド「SPEED OF LIGHTS」を展開。また2020年はshameのデビュー20周年を記念し、クラウドファンディングによる3回のスタジオ配信ライブを行った。2002年よりCUBASEを核に音楽制作を行っており、MIDI打ち込みからマスタリングに至るまでの機能に造詣が深い。

CUTT率いるバンド「shame」、デビュー20周年記念シングル「Time Capsule」とスタジオライブDVD「TIme Capsules」シリーズ3種類が2021年初頭に発売決定!
https://www.facebook.com/shameJapan/


■宮川智希(Sleepfreaks)

SleepfreaksDTMインストラクターとして、ロック/エレクトロニカ/J-POP/EDMまで多岐に渡るジャンルを指導。サウンドクリエイター/作家として活動を行いながら、音楽ユニット「L75-3」のアレンジャー、エレクトロミュージックに特化したユニット「Cad:noah」のビートメーカーとして精力的に活動している。

日本最大級のDTMメディアサイト「Sleepfreaks(スリープフリークス)」。YouTubeチャンネルは登録者数が10万人到達間近!
https://www.youtube.com/user/sleepfreaks


■JUVENILE

大ヒットしたRADIO FISH「PERFECT HUMAN」の作編曲担当や韓国の大人気アーティストCNBLUE「Face to face」編曲。その他にも、東京シティ競馬テーマソング相田翔子feat.オリエンタルラジオ『Twinkle Twinkle 2017』編曲、May’n、福山潤、SKE48古畑奈和、Liyuuなども楽曲提供、10代に圧倒的人気を誇る『TikTok』TVCM楽曲の作編曲を手掛けている話題の新進気鋭のSound Producer。TALK BOX界No1のブロデューサー“FINGAZZ”来日公演で共演を果たした事でトークボックスブレイヤーの1人としても注目されている。SoundProduceとしてはダンスミュージック中心に ROCK/JAZZ/POPS など...ジャンルは多岐に渡っている。音楽活動は、2015年よりELECTROユニット OOPARTZ(オーバーツ) のSoundProduce/TALK BOXERとしても精力的に活動中。 2020年8月よりYouTubeにてHi☆Channel ~music session~のレギュラーMCもつとめている。

手がけてきた楽曲のYouTube 総再生数が1億回以上、「From Tokyo To The World」を掲げ“JUVENILE World”ともいうべき独自のCity Musicを発信し続けるDJ/アーティスト、そして音楽ブロデューサーのJUVENILEが自身初のセッション・アルバム『INTERWEAVE』を2020年12月23日リリース。
https://juvenile-tokyo.com/

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