【インタビュー】ORANGE RANGEサウンドを支えるエンジニアリング

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眩しく輝く太陽、心地よい風、キラキラと光るターコイズブルーの海、そして自由すぎる音楽と愉快な仲間たち…ORANGE RANGEが醸し出すイメージを一言でまとめれば、こういう感じだろうか。

だがしかし、異常な振れ幅を持ったその音楽性と唯一無二のアンサンブルは、ただの自由気ままで成り立っているわけではない。音楽への愛情やこだわりは言うに及ばず、そこには経験を元にした優れたエンジニアリングが礎となっているのはあきらかだ。

その頑強なサウンドを生み出しているのは、現場主義を貫き通すNAOTOのひたむきさ、そしてサウンドを操ることが面白くて楽しくて仕方がないという少年のような無邪気さに立脚していることも、避けては通れぬ真実のひとつである。

音にこだわりサウンドメイクに余念がないアーティストを最大限サポートしたいと願うゼンハイザーの協力の下、音楽に取りつかれ音作りの楽しさに身を投じるNAOTOに話を聞いた。


──テレビやフェスで見ている限りNAOTO=ORANGE RANGEのギタリストという認識だと思いますが、それ以前に作曲家でありコンポーザーでありエンジニアでもありますよね。自分のスタジオまで作ってしまうようになった経緯は?

NAOTO:学生の頃、ギターを始める前から兄の影響でサンプラーとかシーケンサとかシンセがあったので、見よう見まねで多重録音していたんです。当時周りはダンサーやスケーターが多かったので、その人たちと一緒にトラックとかを作ったりして遊んでいたので、そこからどんどん変わっていってスタジオを持つようになったんです。

──自然な流れだったんですね。

NAOTO:ORANGE RANGEはみんな沖縄にいるんですけど、僕の場合はスタジオを借りるとそこの限られた時間の中でやらなきゃいけないのがとてもストレス…というか性に合わないんです。もし気が乗らなかったらやめちゃうタイプで、天気が良かったら録音をやめて海でBBQしたりして(笑)。それだとスタジオ代がもったいないし、そもそも歌を録るのにコンディションもあるじゃないですか。コンディションが悪かったら「明日来て」とか、声が一番いい状態ですぐ録れる場所を作りたいと思って、本格的にスタジオを作ったんです。それがどんどん発展していってドラム以外は全部やっちゃうような形になりました。

──スタジオは少しずつ充実させていったんですか?

NAOTO:そうですね。知り合いのエンジニアやミュージシャンに聞きまくったり、東京で録音していたときは、友達の録音にお邪魔して図々しくそこのエンジニアと仲良くなって「あれは何ですか」「これは何ですか」とか「ちょっと触っていいですか」と、それで仲良くなってその人のホームスタジオに行って、色々楽器や機材を触らせてもらったり、MIXしているのを隣で見せてもらったり。20歳~25歳くらいまでは図々しかったので、そういうのが普通にできていたから良かったかな。今はもうできないですけど(笑)。

──そのエネルギーの源は「いい音をつくりたい」「いい音楽をつくりたい」という衝動ですか?

NAOTO:そもそもきっかけは「不思議」だったんです。マイクってこんなにいっぱいあるのに、使い方によって出てくる音が全然違ってくるのがとても不思議で。ちょっと動かすだけでも違うし、楽器によっては合う合わないもあるし、何よりスタジオの鳴りで音が違ってくる。ゴールがないところに面白さがあるというか、ある水準を超えたら、あとはセンスや好みが試されてくるというのもあるので、やり込めばやり込むほど自分らしさと経験値がすべて身に付くという面白さがありますね。

──いい音で音楽を作り、自分が思い描いた音像のままオーディエンスに届けたいですね。


NAOTO:自分が表現したものをそのまま聞いて欲しいというのはありますけど、人によって再生機器も違ってそうはいかない時もあるので、MIXするときに普通のイヤホンで聞いてみたりして、そこにちょっと合わせる作業もするんです。そこで良ければなおさらかっこいいみたいな。そうすると自分の思い描いているものとは違ってくるし、曲によっては難しいこともある。コンシューマーに向けたら本質が変わってきちゃったり、あんまり自分好みにしすぎちゃったらリスナーに伝わらなかったり…そのせめぎ合いを試すのはいつもやっていることですね。

──そんな試行錯誤をしているなんて、オーディエンスはつゆ知らず、ですね。

NAOTO:知らないだろうし、たぶん知らないほうがいいのかな。そこは僕らが持っていくべきだと思うし、リスナーにどんな環境でもいい感じに聞かせるというのを探求しないといけないし。わがままにやるっていうよりも、そこに寄せてあげる作業は必要だと思う。なので、なるべく何も考えずにフラットな状態で聞いていただくのがいいと思います。

──それにしてもORANGE RANGEは音色が全く違ったボーカリストが3人もいるので、録りからMIXまでエンジニアリングという意味ではとても大変でしょう?

NAOTO:そうですね。でも、声は特に「気持ち」ですよね。業務的にやるのではなくて、ノッてもらうこと、気分良くなってもらうことが重要。うまくいかなかったら、休んでおしゃべりしてお菓子とか食べてコンディションを整える。自宅スタジオなので時間を気にすることもないから、本チャンを録る前に3回くらい仮本チャンをやるんですけど、ピッチやタイミングは気にせずに気持ちだけで歌ってもらうんです。そういう配慮とかボーカリストへの心遣いによっていい歌が録れるかどうか…そういった経験は積み重なってきました。

──プロデューサー目線ですね。音もエンジニアリングもミュージシャンシップも理解していないと到達できない世界ですから、楽しくて仕方ないですね。

NAOTO:面白いです。ひとりで打ち込みだけやっているわけではなくて、色んな人との関わりですから。生の楽器、声というのは日によっても全然違うので、発見もあるしやったことに満足もできないし、このマイクにはこのプリアンプ/距離感がいいという経験が溜まってくるし、それがある日崩れるときもあるし。人間だから声のコンディションも違うし、時代によって使い方も変わってくるから、そこらへんが飽きないで探求できる理由じゃないかな。ゴールがないんです。

──ゴール/正解がないというのは、音楽そのものがそうだから。

NAOTO:そうですね。「明日また歌いに来て」と言いながら録った仮テイクが、ストレスがなくなってとてもいいテンションで、きっちりピッチが合った本番テイクよりも良かったりするときもあったり。

──本番前の仮テイクが採用されることって、レコーディングあるあるですよね。

NAOTO:仮本番一発目をOKテイクとして使うことは本当によくあります。一発目っていうのは、ラフですけどピッチどうのこうのではなく、ストレスのないのびのびとしているテイクが多いんですよね。

──メンバーも分かっているでしょうけど「もう一回歌わせてくれ」もあるでしょう?ボーカリストとして完成度を上げたいという本人たちの気持ちと、NAOTO判断によるトータル的な音楽としての魅力、その善し悪しのジャッジはどうしているんですか?

NAOTO:僕は、本人たちの意見を尊重します。もちろん僕だけのバンドではないですし、ボーカルの気持ちが一番大切だと思っているから。たとえボーカルが選んだそのテイクがあまり気に入らなかったとしても、そのボーカルの気持ちをもらって、MIXの段階でそのテイクがフィットするような調整をしてあげる。だから相当なことがない限り、ボーカルに「こうして欲しい」と言われたら全力で応えます。

──そんなレコーディングの中で、ゼンハイザーのマイクはどのような使い方をしているんですか?


NAOTO:僕がよく使うのは421(SENNHEISER MD421)なんですけど、昔から3本くらい持ってます。万能なんだけど中域にエッジがあるというか、レンジはそんなに広くないんですけどミドルに集中してて届きやすい音なんです。ラップにもエレキにもアコギにもベースにも使えるんですよ。ヴィンテージと現行品を使い分けながら、色々試してやっています。

──マイクも楽器ですよね。決してオーディオ機器ではなく。

NAOTO:そうですね。特に歌は149(NEUMANN M149)※とか87(NEUMANN U87)をメインで使うんですけど、ラップの場合はレンジが広く録れてもガッツリこないというか、きれいなんだけどグッとこないんです。そこで421でラップを録ると、それだけでガッツがあって何もしなくても前に出てくる。10分の1くらいの値段のマイクのほうがよかったりするので面白いですよね。使う場所と楽器によって、安いのがいいときもあるし高いのがいいときもある。※NEUMANN(ノイマン):レコーディング現場において、コンデンサーマイクのトップブランドとして他を寄せ付けないドイツの音響機器ブランド。ゼンハイザーグループ企業のひとつ。

──そういう試行錯誤を経ての作品ですから、僕らもできるだけいい音で聴く事ができれば、もっともっと音楽の深みに触れることができそう。

NAOTO:今回、ゼンハイザーのイヤホン(SENNHEISER MOMENTUM True Wireless2)で2日間ほどアルバムを聴いていたんですけど、「これで聴いてくれたら、僕らが作った音との差はほとんどないんじゃないかな」って思いました。まず驚いたのがレンジの広さで、僕は制作のときも3種類くらいのイヤホンを使ってるんですけど、ここまでローが見えるのにびっくりしました。ワイヤレス、初めて使ったんですけどすごく良いですね。

──ワイヤレスって、音が悪いという先入観がありますよね(笑)。



NAOTO:はい。だけど、試してみたらめっちゃ良かった。リスナーの方にこれで聴いて欲しいと思ったのは、すべてしっくりといい感じに聴こえてすごく楽しめたから。単純にテンションがあがるこういう製品は大切だなと思いました。どこかが気になるということもなく、頭の上から下まで音楽で埋め尽くされる感じ。目をつぶって聴くと、喉元にキックやベースがあって、おでこあたりに歌の一番高いところやハットが見える。いつも聴いているお気に入りの曲を聴いてみると発見もあるんですよ。タイトだと思ってたキックが実は長かったんだなとか。

──イヤホンが違うだけで、世界が随分と変わるんですね。

NAOTO:僕は映画も観るんですけど、映画も最高でしたよ。

──特に映画は、静寂な音から爆発シーンのような大音量までダイナミックレンジが非常に大きいので、それを楽しませてくれるイヤホン/ヘッドホンってなかなか大変かも。

NAOTO:普段使っているイヤホンも結構レンジの広いタイプなんですけど、それよりもこのゼンハイザーの臨場感やローの感じの方が良かったですね。

──さすがゼンハイザーだ。


NAOTO:このイヤホンで聴いたら普段好きな曲がもっと楽しくなると思う。どんなアーティストの作品でもいいですし。

──こういう音の良さや楽しさって、若い時にたくさん経験しておくと良いですよね。

NAOTO:そうですね。若いほうが吸収力が違ってくると思うんで、今のうちにいろんな曲や音に触れたほうがいいのかなとは思います。

──これからも楽しい音楽の発表を楽しみにしています。

NAOTO:最近家にいる時間が多いから、いろいろ研究していますよ。楽しみにしていてください。


撮影◎Keishi Kise(FULLER)
取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)

<ORANGE RANGE ヴィデヲ・DE・クリスマス>

2020年12月25日(金) 20:00 START
https://www.youtube.com/c/ORANGERANGEkoza



ORANGE RANGE NEW SONGS in 2020

「KONOHOSHI」
2020年4月29日発売
※ABCテレビ「おはよう朝日です」40周年記念特別番組テーマソング
Tunes Storeほか主要配信サイトおよびApple Music、Spotify、dヒッツほかサブスクリプションサービスで配信
https://jvcmusic.lnk.to/KONOHOSHI


「気分上々」
2020年8月26日発売
※アイダ設計 ZEH住宅「BRAVO ZNEXT」CMソング
主要配信サイトおよび各サブスクリプションサービスで配信
https://jvcmusic.lnk.to/Kibunjoujou


「Imagine」
2020年9月16日発売
※「ツール・ド・東北」公式テーマソング
主要配信サイトおよび各サブスクリプションサービスで配信
https://jvcmusic.lnk.to/Imagine



SENNHEISER MOMENTUM True Wireless2
【寸法】76.8 x 43.8 x 34.7 mm
【USB規格】USB-C
【電源】5 V- 650 mA
【スピーカー形式】ゼンハイザー 7mm ダイナミックドライバ
【周波数特性(マイク)】100 Hz - 10 kHz
【周波数帯域】5 - 21,000 Hz
【ノイズキャンセレーション】Single-Mic ANC
【Bluetooth バージョン】Bluetooth 5.1
【充電時間】1.5時間(フルチャージ)/10分(1.5時間動作)
【アプリサポート】ゼンハイザー Smart Control
【充電池仕様】ビルトインリチウムバッテリー
【動作時間】充電ケース併用で最大28時間の音楽再生(本体のみ最大7時間)
【対応プロファイル】A2DP, AVRCP, HSP, HFP
【コーデック】SBC, AAC, aptX
【イヤカップ形状】インイヤー
【パッケージ寸法】(L x B x H) 170 x 115 x 45 mm
【全高調波歪(THD + N)】<0,08% (1kHz / 94dB)
【製品保証】2年



◆SENNHEISER MOMENTUM True Wireless2オフィシャルサイト
◆<ORANGE RANGE ヴィデヲ・DE・クリスマス>2020年12月25日(金) 20:00 START
◆「KONOHOSHI」2020年4月29日発売
◆「気分上々」2020年8月26日発売
◆「Imagine」2020年9月16日発売
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