【インタビュー】MUCC、武道館直前にミヤが語る「有観客+配信は初めて。培った経験を活かして最高の音にしたい」

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■「明星」はSATOちが辞めることが決まった後
■それに対する曲を作ろうという話になってできた

──6月の<Fight against COVID-19 #2>と9月の<Fight against COVID-19 #3>を観て、MUCCの配信ライヴはこのスタイルを突き詰めていくんだなと思ったんですが、11月の無観客有料配信ライヴ<FROM THE MOTHERSHIP>は趣向を変えて、レコーディングスタジオから配信されました。これも新しいですね。

ミヤ:レコーディングスタジオを使った配信ライヴは、コロナ前から俺がやりたいと思っていたことのひとつなんです。でも、ライヴ会場からの配信よりサウンドが良くなることはわかりきってるし、すでにいろんなアーティストが実践していたことでもあるから、それを配信ライヴの初回にやる気はなかったというか、つまらないなと思ってたんです。ライヴ感のあるものの配信を続ける中で、少し趣向が変わったように見えるタイミングがいいだろうと判断したし、だからこそ作り上げられるサウンドがあるとも思っていた。ということで、レコーディングスタジオからの配信は4回目まで取っておいたんです。

──おっ!?と感じることが多かったです。まずはレコーディングスタジオでのライヴということで、サウンド&プレイに特化するであろうイメージがあったので、椅子に座っての演奏かなと思っていましたが、違いましたね。

ミヤ:レコーディングスタジオからの配信だとしても、ライヴに変わりはないので。レコーディングのときに、なぜ座って演奏するのかというと、音だけを記録する作業だから、見せ方は必要ないじゃないですか。座って演奏している感みたいなものが音源に記録されることはないですよね。でも、映像が映し出される配信ライヴとなると、座って演奏していては視聴者のテンションが下がると思うんですよ。MUCCというバンドのカラー的にも違う。だから、レコーディングスタジオだけど立って動きながら演奏するというのは、俺の中ではごく自然なことで。

▲無観客配信ライヴ<FROM THE MOTHERSHIP>2020年11月21日(土) 撮影◎渡邊玲奈 (田中聖太郎写真事務所)

──同時に、逹瑯さんと生ピアノは別ブースに入っていたり、レコーディングとライヴの中間という感じが興味深かったです。

ミヤ:そういう部分は、普段レコーディングスタジオで俺らがどんなことをやっているかを見せたいというのもあったんです。それを映像で見ることはあまりないでしょうし、そこが一番面白かったんじゃないかな。

──面白かったです。モニターミキサーのバランスを調整しながら歌う逹瑯さんを見て、いつもこういう感じでボーカルレコーディングをしているんだろうなと思いました。さらに、ブースが多いレコーディングスタジオ環境を活かして、ギターとベースはスピーカーキャビネットを鳴らしたんですよね。

ミヤ:そう。それまでの配信ライヴは全てラインの音だったんですけど、11月の<FROM THE MOTHERSHIP>はスピーカーキャビネットを鳴らした音を配信したんです。根本の音を鳴らすという意味を含めて<MOTHERSHIP>というタイトルにしたので。ま、視聴者的には、スピーカーから出力されていようがラインの音だろうが、関係ないとは思いますけどね。それに、全てがスピーカーキャビネットの音というわけではなくて、ラインの音と混合させたし。

──えっ!? そうだったんですか?

ミヤ:はい。ベーシックな歪みバッキングはスピーカーキャビネットからの音ですけど、それ以外のクリーントーンとかは全てライン。レコーディングスタジオということで、その両方の良さを活かすことができたんですよ。普段のライヴでも両方活かせたらいいんですけど、ライヴではボーカリストがレコーディング用の繊細なコンデンサーマイクを使えないのと一緒で、ギターもいろいろ手間がかかる。それに、生ピアノはバンドの爆音に勝てないから一緒に鳴らせないんですけど、レコーディングスタジオで実施した<FROM THE MOTHERSHIP>では別部屋で演奏することができたので、それが可能になったんです。

──やはり配信される音にこだわったライヴだったんですね。それにレコーディングスタジオであればどこでもいいということではなくて、いろいろな要素を踏まえてスタジオをチョイスされたんですよね。

ミヤ:あのレコーディングスタジオは、サウンド特性がMUCCに合っているから。ドラムの空間の音がすごく良くて、俺の中では“日本のアビーロードスタジオ”という感じです。MUCCで録るなら、このスタジオがいい。

──<FROM THE MOTHERSHIP>も楽しかったです。ただ、当日は残念なことに機材トラブルがいくつかありました。トラブル回避を理由のひとつとして事前収録を選択するアーティストもいますが、MUCCは生配信にこだわっていますね。

ミヤ:今年のMUCCはトラブルがすごく多かったんですよ、配信とかいろいろと新しいことをやってきたこともあって。準備不足で起こったトラブルは改善の余地があるけど、原因不明のトラブルに関しては、ただの運でしかない。実際トラブルを起こした機材も、それ以降全く問題なく作動してたりするんです。配信は、今、俺の中では生ライヴで実施することが一番重要で、トラブルが起こりやすいということは、そんなに大きな問題だとは思ってないんです。

──たしかに、<FROM THE MOTHERSHIP>もトラブルは気になりませんでした。それは、トラブルが起こったことでメンバーがイライラしたり、動揺したりすることがなかったからだと思います。

ミヤ:いや、さっきも言ったように本当にトラブルが多くて、メンバーはもう慣れたんですよ。今年はメンバー全員が厄年だから、来年になればトラブルは減ると思う(笑)。他の配信のときも投げ銭機能が止まってしまったりとかいろいろあって、もはやトラブルを楽しんでいましたね。


──なるほど(笑)。もうひとつ、<FROM THE MOTHERSHIP>では新曲「明星」を披露したことも印象的でした。

ミヤ:「明星」はSATOちがMUCCを辞めることが決まった後、それに対する曲を作ろうという話になってできたんです。SATOちが曲を作って、みんなで歌詞を書くのがいいんじゃないかと思っていたけど、SATOちが俺に「曲を書いてほしい」と言ってきたんです。結果、曲は俺が書いて、全員で作詞しました。

──そうなんですね。そういう背景を知らなかったので、「明星」はコロナ禍の中から生まれたMUCCの新たな希望の歌だと捉えていました。

ミヤ:コロナがあって今回の流れになったので、コロナも含まれていますよ。つまり全部つながっているんです。「明星」は自分達にとって大きな意味のある1曲になった。だから、12月27日の武道館公演で、有観客の場としては初披露するんですけど、その事前に新曲として発表しておきたかった。タイミングは、SATOちの脱退発表前に披露する形になったけど、みんなには武道館前に聴いてほしいと思ったんです。

──染みる曲だなと思っていましたが、そういう生まれ方をしたのであれば当然といえますね。

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