【ライヴレポート】MUCC、日本武道館ワンマンで「ヤバい!楽しいよ!落ちつけ、俺」

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MUCCが12月27日、日本武道館にて有観客ワンマンライヴ<惡-The brightness world>を開催した。同公演は、6⽉リリースの最新アルバム『惡』を引っさげて行われたもの。観客数を通常収容人数の50%以下に抑えた約10ヵ月ぶりの有観客となるほか、WEB生配信、WOWOW生中継も実施された。そのオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆MUCC 画像 / 動画

「ただいま」という言葉をフロントマン・逹瑯が夢烏(※MUCCファンの総称)たちに向けて発したのは、この夜の本編ラストで琴羽しらす氏と後藤泰観氏、そしてストリングスチーム・killers orchestraを迎えての豪華なる演奏で披露された「スピカ」を歌い終えたときのことである。

始動23周年を迎えての堂々たる15thアルバム『惡』を本来であれば今年5月に発売する予定だったMUCCは、春に緊急事態宣言が発出されたことにより6月になってようやくそのリリースが叶ったのだが、世の中そのものが激動と波乱に満ちることとなってしまった2020年は、結果としてMUCCというバンド自体にもまた大きな変化と変革をもたらすことになったと言えるだろう。



まず、5月4日の結成記念日には完全リモート体制での演奏動画『Remote Super Live 〜Fight against COVID-19〜』を無料配信するところから始まり、翌6月21日にはぴあアリーナMMで行うはずだった<蘇生>の代替公演として無観客有料配信ライヴ<〜Fight against COVID-19 #2〜『惡-THE BROKEN RESUSCITATION』>を大胆な演出アプローチと細部にまで凝ったサウンドメイクにて敢行。なお、12月27日に日本武道館にてワンマンを行うとの告知があったのはこの時だ。

そして、ここからのMUCCは9月から11月にかけても計3本の無観客配信ライヴを決行しており、それらがいずれも異なるコンセプトにて実施されてきたことも実に興味深い流れであったと言える。中でも、レコーディングスタジオを舞台とした11月の<FROM THE MOTHERSHIP>は、配信ライヴにおける音質を徹底的に追求したものとなっていて、近年サウンドエンジニアリングも手掛けているリーダー・ミヤの手腕がいかんなく発揮された内容であった。また、11月にいわゆる小箱タイプのライヴハウスで繰り広げられた<FROM THE UNDERGROUND>でのド直球な熱量たっぷりのパフォーマンスは、そのまま12月27日への期待をより増すことに。



それだけに、ここから1週間と経たない12月2日に我々へと突如もたらされたインフォメーションは衝撃的だったと表現するほかない。公式サイトからの「2021年の春をもってドラマー・SATOちがMUCCを脱退し、ドラマーとしても引退する」というこの不意な“大切なお知らせ”には、きっと動揺した夢烏も多かったのではないかと思う。しかしながら、いざフタを開けてみれば。MUCCがこのたび開催した3年半ぶりの日本武道館公演<惡-The brightness world>]は、徹頭徹尾ひたすらにMUCCらしい躍動感と素晴らしい臨場感に溢れたものになったと断言出来る。

アルバム『惡』の冒頭を飾る、MUCC史上最も低いローGチューニングを用いたヘヴィなサウンドが炸裂する「惡 -JUSTICE-」と「CRACK」で威勢よく幕を開け、SATOちが作詞と作曲を手掛けたタイトル通りのドライヴチューン「神風Over Drive」まで一気にたたみかけると、逹瑯はこぼれるような笑顔で「…ヤッバい! 楽しいよ、これ! 落ちつけ、俺www」とまごうことなき本音を吐露。見やれば、SATOちやYUKKEだけでなくミヤも含めた全員がやたらと破顔しているではないか。


ひとつには、今回のライヴ開催に向け“鳴り物”が導入されたことも吉と出たようで、公式グッズの鈴付きリストバンドや光るタンバリンのみならず、打楽器類の持込みが許可されていた為に会場では拍手に限らず、さまざまな音が入り乱れ、発声が禁忌となっている今日の状況下でも明確な“盛り上がり”というものを生み出すことに成功していた模様。

なお、今回の公演については政府ガイドラインを遵守し、ソーシャルディスタンシングを確保したうえでの有観客ライヴと、アーカイヴ配信も込みのネット配信、さらにはWOWOWでのTV生中継の計3ルートからアクセスすることが出来るようになっていたため、たとえ現場に来ることがNGな場合でも、夢烏たちはそれぞれに<惡-The brightness world>を堪能出来たに違いない(※e+ストリーミングは1月3日までアーカイブ視聴可能)。



何かとクリック至上主義の昨今にあって、オールドスクールなロックンロールをMUCCならではのフリーテンポで堪能することが出来た「Friday the 13th」。サポートキーボーティストの吉田トオルや、バイオリニスト・後藤泰観による叙情的なプレイが華を添えていただけでなく、ランタンを用いた演出の面で配信ライヴでの経験が活かされていた「積想」。繊細な旋律とともに、武道館の中に淡雪が舞い降った「COBALT」。9月の配信ライヴに引き続いて、アルバムのレコーディングにも参加しているlynch.の葉月がゲストヴォーカルとして登場し場を湧かせた「目眩 feat.葉月」などなど。

挙げればキリはないが、今宵のMUCCが全27曲全3時間超にわたって呈示してくれたこのライヴは、コロナ禍に突入して以来の“出来るだけライヴはコンパクトにまとめよう”的な風潮の逆をいく、換気などの安全性は保ちつつも出来るだけ本来的なワンマンライヴとしてのボリューム感を重視した、なんとも矜持と気概のあるものになっていたように思えてならない。


つまり、その意味でも、冒頭においてふれた「スピカ」の際の「ただいま」と言う言葉には、ことさらの想いが託されていたのではないだろうか。観客を前にしたステージという場に、紆余曲折を経ながらも還って来られたことに対する感慨。彼らは今宵、それを幾度となく噛みしめていたものと推測する。もちろん、その場で夢烏たちが「おかえり!」という言葉を彼らに対してかけることは出来なかったが、声は発せずとも演奏後の盛大なる拍手や打楽器音にてその気持ちは存分に伝わったはず。

ゆえに、このあとのアンコールも実に充実した時間として成立することとなり、まずは昨年SATOちの誕生日を記念して会場限定販売されたシングル曲「My WORLD」や、ミヤが「みんなの笑顔でSATOちを成仏させてやろうぜ!」と煽った「名も無き夢」、再び葉月が加勢してくれた「蘭鋳」の3曲では、改装完了早々の武道館が観客たちの跳んだりハネたりによってリアルに揺れるほどのブチ上がり状態に。



ダブルアンコールでは、あたたかなノスタルジーの漂う「家路」、普段であれば途中で観客側がシンガロングする部分をメンバー全員が持ち回りで個々に歌ってみせた「優しい歌」、大きな意味での讃歌である力強く美しい「ハイデ」ときて。この夜、最後の最後に演奏されたのはSATOちの脱退が決定してからミヤが作曲をし、メンバー全員で作詞をして作り上げたという新曲「明星」だった。

既にYouTubeの公式チャンネルにショートバージョンのMVがアップされているほか、来年発売されるベストアルバム『明星』(発売日未定)にも収録されるとのことなので、詳しい歌詞内容についてはそれらを参考にしていただきたいが、とにかくこの曲に関しては涙なくしては聴けなかったのが本当のところ。別に、彼らがお涙頂戴的なパフォーマンスをしていたわけでは断じてないし、この楽曲自体は前向きな意味合いのものでしかない。ただ、それでも彼らの過ごしてきた23年間を思うと、その日々に対しての尊さと愛しさに自然と泣けて来て仕方なかった。


とはいえ、我々はまだ、ここで感涙にむせんでばかりもいられないのも事実。来年2月には彼らの地元にあるザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール(茨城県立県民文化センター)を終着点とするホールツアー<MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world>が控えているわけで、SATOちが在籍するライヴバンド・MUCCの雄姿を拝める機会はまだ幾つもある。すなわち、「ただいま」と「おかえり」の気持ちを、わたしたちはまたそこでも通い合わせることが出来るだろう。せっかくならば、そんな貴重な日々をMUCCの4人とともに楽しく過ごしていこうではないか。MUCCとSATOちのこれからの大切な日々に、宵の明星の如き確かな光あれ。

取材・文◎杉江由紀
撮影◎田中聖太郎/渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)/Susie

■MUCC<惡 -The brightness world>2020年12月27日@日本武道館 SETLIST

01. 惡 -JUSTICE-
02. CRACK
03. 神風 Over Drive
04. ENDER ENDER
05. G.G.
06. 海月
07. アイリス
08. サイコ
09. Friday the 13th
10. SANDMAN
11. 積想
12. COBALT
13. アルファ
14. スーパーヒーロー
15. DEAD or ALIVE
16. 目眩 feat.葉月
17. ニルヴァーナ
18. カウントダウン
19. TONIGHT
20. スピカ
encore
en1. My WORLD
en2. 名も無き夢
en3. 蘭鋳 feat.葉月
W.encore
en4. 家路
en5. 優しい歌
en6. ハイデ
en7. 明星

■<惡-The brightness world>アーカイブ配信

受付期間:2021年1月3日(日)20:00まで
チケット料金:視聴チケット ¥4,500(税込)
【配信サイト】
・ニコニコ生放送:https://live2.nicovideo.jp/watch/lv329393483 ※MAVERICK DC GROUPニコニコチャンネル有料登録会員、および新規有料チャンネル入会者は視聴チケットを3,500円(税込)で購入可能
・イープラス Streaming+:https://eplus.jp/mucc20201227/st/
・LiveFrom EVENTS:https://livefrom.events/mucc ※海外向けチケット購入サイトとなります

■<MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world>

▼2021年
2月28日(日) 福岡サンパレス
3月07日(日) 仙台サンプラザホール
3月25日(木) 愛知県芸術劇場大ホール
3月27日(土) 大阪オリックス劇場
4月03日(土) 新潟テルサ
4月15日(木) LINE CUBE SHIBUYA
4月29日(木・祝) 中野サンプラザホール
5月01日(土) よこすか芸術劇場
5月05日(水・祝) ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール(茨城県立県民文化センター)
5月06日(木) ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール(茨城県立県民文化センター)
▼チケット
全席指定 ¥9,600(税込)
※未就学児入場不可 ※営利目的の転売禁止
一般発売日:2021年2月14日(日)
【朱ゥノ吐VIP会員先行チケット受付】
2021年1月7日(木)12:00~1月12日(火)16:00
※2021年1月4日(月)23:59までにVIP会員入金手続き(決済まで)を完了した方が先行受付の対象となります。

■ベストアルバム『明星』

※リリース日等の詳細は後日発表

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