【インタビュー】YUKKEが語るMUCCの現在地「新曲のベースにはSATOちへの想いを込めている」

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■変わってしまうというのはやっぱり……
■俺にとって20数年で一番大きい出来事

──SATOちさんが脱退の意思を最初に口にされたのは、1回目の緊急事態宣言が発出される前日の4月7日だったと。時系列的にそれで合っていますか?

YUKKE:全員の前で話したのがそこだったというだけで、少し前からそういう気持ちがあることは何度か聞いていたし、その都度話はしていましたね。

──そういう時は2人で、だったんですか?

YUKKE:2人が多かったです。SATOちは自分から「YUKKE、聞いてくれよ!」というタイプではないので、“ちょっと今、精神的にヤバそうだな”と思った時は、俺のほうから声を掛けるようにしていて。数年前からそういうことが続いて、ついにSATOちの中のダムが壊れたのが去年4月。アルバム『惡』のレコーディングが終わってからかな? あとは、タイミングもあったと思うんです。コロナ禍で決まっていたツアーができなくなったという。結局ツアーに出ちゃえば、悩みながらも完走するわけじゃないですか? ところが活動自粛ということになって、自分自身のこれからのことと照らし合わせて考えた時に出てしまった結論なんだと思います。

▲YUKKE (B)

──急に言われたわけでもなく、何年かの積み重ねがあったし、状況も状況だった。だからYUKKEさんとしても理解できたと。

YUKKE:うん。急に言われたわけじゃないから、すごく納得いくというか。“あぁ、だよね”という気持ちもありますね。“もう、次の言葉はそれしかないよね”っていうか。でも、ミーティングのときは“脱退っていう言葉、出すなよ、出すなよ……言ったな!”という感じでもあったんです。“メンバー全員の場で、ついに出したな、このヤロウ”と(苦笑)。最初はそんなふうに感じてましたね。

──2人だけでお話されている段階では、YUKKEさんから他のメンバーに「今、SATOちがこういうことで悩んでて」みたいなことを伝えるような、そういう情報共有はあったんですか?

YUKKE:なくはないですけど、もちろん毎回ではなかったです。過去のレコーディングでSATOちが精神的にまいっている時は、SATOち以外のメンバー3人で集まって話すというよりは、それぞれに「今、こんな感じ」「あ、そうなんだ?」みたいな確認というか声掛けはしていました。ただ、それを4人で場を作って話すというのは、もしかしたらここ5年ぐらいなかったかもしれない。

──それはどういう理由があって、そういう場を持たなかったんですか?

YUKKE:もともとが「4人で集まって何か話そうぜ!」というタイプのバンドでもないので(笑)。その時々で必要な会話はしていたんですけど、それがここ5年は少なかったのか……。逆に、それが多ければいいということでもないというか。そんなに心配し合って話し合って、というものでもないと思ってるから、バンドって。だからそこは俺が勝手に、個人的に聞いてメンバーに話すようにはしていたんですけども。

▲MUCC

──なるほど。そして、SATOちさんが「辞める」という意思表示をした4月以降、MUCCとしては配信ライヴの数々を開催していますが、決して消化試合的な感じにはならず、いい空気感で活動をしてこられたんですね?

YUKKE:そうですね。空気感的にはいつも通りだったし、いつも通りちゃんとSATOちは悩んでたし(笑)。ライヴリハーサル前も個人でスタジオに入ってずっと練習して、今までと変わらないSATOちでしたよ。

──脱退が決まった後、バンド間がギクシャクしたり険悪なムードになったりはしなかったのかな?と素朴な疑問が湧いたんですが、そういうこともなかったですか?

YUKKE:メンバーで話し合って、SATOちの脱退の意思を確認したところから一回もそういうことはないですね。まぁ、別にその場も険悪だったわけではないし、大人が真面目に話をしているだけだったので。むしろ昔より空気がいいし、SATOちも笑ってることが増えました。抱えてたものを“よっこいしょ”って下ろしたというか、今もなんか軽くなってるんじゃないかなっていう気はしてます。

──言いたいことが言えなくて悩んでいる期間のほうが辛かった、ということなんですかね……。

YUKKE:そうだと思います。今はだいぶラクになってるんじゃないですかね?

──リズム隊としての結束は固いと思うので、SATOちさんの脱退はYUKKEさんにとってものすごく大きいことですよね? SATOちさんの意思を尊重するとはいえ、消化するのは難しくなかったですか?

YUKKE:4月とか5月頃の俺の消化のできなさっぷりは結構ひどくて(笑)。だから、「脱退してほしくない」とわがままを言ってでも、何としても一緒に頑張ろうぜ!というスタンスだったんですけどね。俺の中では“MUCCに入った”ということが、まず1つ大きい出来事としてあって。そこからこの4人で20数年やってきているわけで。バンドマンの誰しもが“自分たちのバンドの最後ってどういう感じなのかな?”と想像すると思うし、過去には「MUCCの解散ライヴってどんな感じになるのかね?」なんて冗談で話したこともあるんですよ。そんな時、俺の中では必ずドラムは、“そこにずっといるもの”としてSATOちを想像してるわけで。でも、変わってしまうというのはやっぱり……20数年やってきた中でも、俺にとってすごく、一番大きい出来事です。

▲MUCC

──SATOちさんが脱退しても、MUCCは解散せず続いていきます。その選択はすんなりと導き出されたんでしょうか?

YUKKE:脱退すると聞いた時に、俺の中の“バンドをやってる人生”の計算が合わなくなって。もしもの話として昔、「MUCCは、メンバーの誰か1人でも抜けたら解散するか?」とかいう話が出たこともあったんです。で、「そうなるかもね」なんて。でも、“もし今、ここでMUCCがなくなるとしたらどうかな?”って考えたときに、俺は普段から“ベース馬鹿”っていうほど弾いてるタイプではないんですけど(笑)、すごくやり残している感じがあって。ベースに対して、“全然まだやることあるな。これでバンドが解散して、もし他のバンドもやらないとしたら……。終わってしまうのは違う”とすごく思ったんです。“あ、まだやるべきだな”って。

──いちアーティストとして、バンドマンとして。

YUKKE:そうですね。SATOちが脱退した後のことは、形態とか含めて、まだちゃんと話が進んでいないですけど、MUCCとしてやれることってまだまだたくさんあるし、見られる景色もいっぱいあると思う。自分たちにはもちろんMUCCが必要だし、必要としてくれる人もいる。歌詞であれ何であれ、これだけ自分たち自身に正直に、いろんなことを歌ってきたバンドだからこそ、4人が3人にはなるけど、それでもできることってあるはずで。4人でバランスを取ってやってきたバンドなので、“誰にでも愛される普通の男の子”みたいな存在が1人いなくなることで、現場の空気はすごく変わる気はするんです。だけど、それも次のMUCCというか、これからのMUCCの空気感になっていくんだろうし。ここで止まるというふうには全然思わなかったです。

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