【ライブレポート】WANIMA、<Boil Down 2020>で「いつでも頼ってください」

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WANIMAが12月17日、東京ガーデンシアターにて新たなイベント<Boil Down 2020>を開催した。先ごろ公開した速報レポートに続いて、詳細レポートをお届けしたい。

◆WANIMA画像

2019年11月よりスタートさせたバンド史上最大規模となる25万人動員予定の<COMINATCHA!!TOUR 2019-2020>は新型コロナウイルスの拡散防止のため、30公演中アリーナでの16公演を中止。9月22日にZOZO MARINE STADIUMにてツアーファイナルを行ったものの、ライブビューイング+配信ライブという形式だったため、本公演はWANIMAにとって約10ヵ月ぶりとなる有観客ライブだ。現状を鑑みたガイドラインを踏まえ、万全を期す形で行われた。

19時の定刻を少し過ぎたところで暗転し、いつものSEが爆音で鳴るかと思いきや、この日のために用意したという「Boil down」を背にKENTA (Vo,B)、KO-SHIN (G,Cho)、FUJI (Dr,/Cho)の3人が登場するサプライズ。このイベントは単発ではなく、WANIMAとお客さんが1年を締めくくれるスペシャルな忘年会として位置づけたいと語っており、来年以降も開催予定。その願いが初っ端から表れていた。


会場をゆっくり見渡し、お客さんが詰めかけた光景を見つめるメンバー。やはり、格別な想いがあるのだろう。KENTAの「Boil Down 2020、開催しまーす!」といういつもの高らかな宣言から放たれた「エル」から、その気持ちを爆発させていく。エネルギッシュに疾走していくのはもちろん、気合いは感じつさせつつも柔和な表情を浮かべているのもまた印象的。曲中に「みんな、来てくれてありがとう!」とKENTAは口にし、KO-SHINは笑顔でギターソロを炸裂させる。その勢いのまま、畳み掛けるよう「雨あがり」へ。ギターが軽快なイントロを奏でれば、オーディエンスが大きく手を掲げて、どんどん高まる熱気。ライブでは当たり前のやり取りだが、昨今の状況下、とても貴重な瞬間だ。その喜びをメンバーも噛み締め、WANIMAらしいポジティヴな空気がどんどん膨らんでいった。

「『COMINATCHA!!』のツアーファイナルはZOZO MARINE STADIUMで配信ライブをしたんですけど、そのときは改めてみんなの存在の大切さがわかった。それを経て、ですから、皆さんの前でライブができること、その場所におってくれてありがとうございます!」──KENTA

ライブを“みんなが帰る場”だと位置づけているWANIMAにとって、有観客で開催できたことは本当に喜ばしいこと。集まってくれたオーディエンスへ感謝し、「待ち望んでました、この日を。皆さんと少しでも新しい一歩を踏み出せたらいいなと思ってやってます」と改めて本公演への想いをKENTAが語る。そして、力強いFUJIのドラムからシリアスなムードをまとって疾走していく「いつもの流れ」を投下。逸る気持ちが抑えられないのだろう。歌もプレイも前のめりでつ突き進み、KENTAが歌詞を飛ばす場面もあったが、それもライブならではの一興。その瞬間の感情が投影されているからこそだ。


「みんな、ここ(心)で歌ってください」とKENTAが語りかけてから「ララバイ」。合間合間に“Boil Down”と歌い、会場の奥の奥まで届くように視線を飛ばすKENTA。ステージ上のテンションもアガリっぱなしのところへ間髪入れずに「昨日の歌」と続けていくのも流石のひと言。オーディエンスの気持ちをグイグイと引っ張っていく。

WANIMAのライブではお馴染みのリクエストコーナーでは、これまでならフロアから様々な曲名が叫ばれていたが、今回は現状に即したアプローチ。KENTAがマスクをし、アクリルボードを手持ちでフロアまで降り、オーディエンスに手書きで伝えてもらうスタイル。声が出せないからやらない、と安易に決断をせず、何とかして実現させるのもWANIMAらしく、頼もしさがあった。リクエストされたのは「1CHANCE」。歌い出しをKENTAが何度も確認する微笑ましい光景もありつつ、曲に入ればガッツリと響かせるのがWANIMA。いいムードをさらに高めていった。

中盤戦になり、覚醒と緩和の行き来がたまらない「リベンジ」を豪快に鳴らし、よりオーディエンスの心を焚き付けたのは「Japanese Pride」だった。痛快に強烈な歌と音を飛ばす。そんな中、クライマックスに差し掛かったところで「やっぱ、みんな、おってよかった」とKENTAが思わず口にしたことにグッときた人も多かったはず。オーディエンスが拳を何度も突き上げ、会場全体が一体と高まっていく、これぞライブというムードになった「いいから」から一転、チャンネルをバチッと切り替え、厳かな空気を作り上げた「SNOW」はこの日のハイライトのひとつと言っていいだろう。鈴の音が響き、繊細にKO-SHINがギターを弾く。そこにKENTAの涙声のような、心震わせる歌声が広がっていったのだ。会場中からスマホライトが照らされ、満点の星空のような光景に包まれたステージ。歌、音、ひとつひとつを噛み締めながら聴き入ってしまった。


その空気のまま、気持ちを開放してくれるような優しさと柔和さに満ちた「Milk」を続け、しっとりとしたパートかと思いきや、メンバー全員でタイトルコールもした「オドルヨル」をドロップ。破壊力抜群のこの曲でまた一気にヒートアップし、会場の温度を上げていく。こうやって大きな抑揚をつけた流れのライブができるのはバンド力の賜物だ。

「生きとったらいろいろあると思うけど、オレらも楽しみを作っていけるようにするし。何とか、何とか、みんなが一歩を踏みとどまれるように音楽を作っていくから。みんな、苦しいところにおると思うけど、おってくれるだけでいいから。みんな苦しいところにおると思うけど、毎日毎日、たいへんな日が続くと思うけど、何かあったら、いつでもWANIMAに頼ってください」──KENTA

この言葉、少しの濁りもなく、今のWANIMAが思うことをそのまま伝えたものだろう。デビュー以来、幾度となく取材をさせてもらっているが、常に「どうやったら楽しんでもらえるか? 喜んでもらえるか?」を常に考え続けてきてるバンドであり、何よりもライブを大切にしてきた。だからこそ、この制限がある状況で考えることも多いはず。ともに生きる中で、先頭を走り、みんなを引っ張っていきたいという気概が伝わってきた。

そして、驚きだったのが次に放たれた「Mom」だ。母親代わりであった亡き祖母へ向けてKENTAがしたためたこの曲の冒頭、新たな言葉が綴られており、歌い上げられていったのだ。ライブバージョンという簡単な表現はしたくないほどの重み。シンプルなバンドアンサンブルと歌が心を打つ。本編の締めくくりはまたアッパーに、感謝の気持ちをぶちまけるように「Hey Lady」を豪快にプレイ。アドレナリン全開で突き進むKO-SHINも笑顔が止まらない様子。明日を生きる活力をステージから飛ばしに飛ばしていった。


鳴り止まない盛大な拍手に呼び戻され、少し間を開けて歌い出したのは「春を待って」。<COMINATCHA!!TOUR 2019-2020>が中止になり、「ツアーを楽しみにしていた方々に最速で届けたい」と緊急配信された曲だ。閉塞感や不安にさいなまれる今、そこに寄り添い、支えでありたいというWANIMAの軸が投影されており、この日にやるべき曲のひとつだったはず。

ラストは、たいへんな状況や辛さも過去のものにしようと願う「HOPE」をセレクトし、強い気持ちを届けていった。その直後、「発表するのを忘れてた!」とKENTAが叫び、2021年4月から2ndミニアルバム『Cheddar Flavor』を引っさげた<Cheddar Flavor Tour 2021>を全11ヶ所21公演で開催すると発表。9月にZOZO MARINE STADIUMで行われた<COMINATCHA!!TOUR 2019-2020>のツアーファイナルでは、翌日に『Cheddar Flavor』をリリースするという嬉しいサプライズをしてくれたが、こうやって未来につながる喜びを届けてくれるのは実にWANIMAらしい。まず間違いなく、ツアーでも最高にポジティブなパワーをもらえることだろう。予断は許さない状況もあるが、願わくばゼロ距離でライブを体験できることも期待したい。

取材・文◎ヤコウリュウジ
撮影◎瀧本JON...行秀

   ◆   ◆   ◆

■<Boil Down 2020>2020年12月17日(木)@東京・東京ガーデンシアター セットリスト

SE. Boil down
01. エル
02. 雨あがり
03. いつもの流れ
04. ララバイ
05. 昨日の歌
06. 1CHANCE ※リクエスト
07. リベンジ
08. Japanese Pride
09. いいから
10. SNOW
11. Milk
12. オドルヨル
13. Mom
14. Hey Lady
encore
en1. 春を待って
en2. HOPE

■<Cheddar Flavor Tour 2021>

2021年
4月28日(水) 東京・Zepp Tokyo
5月11日(火) 広島・BLUE LIVE HIROSHIMA
5月12日(水) 広島・BLUE LIVE HIROSHIMA
5月17日(月) 熊本・熊本城ホール シビックホール
5月18日(火) 熊本・熊本城ホール シビックホール
5月25日(火) 福岡・Zepp Fukuoka
5月26日(水) 福岡・Zepp Fukuoka
6月01日(火) 愛媛・松山市総合コミュニティセンター・キャメリアホール
6月02日(水) 愛媛・松山市総合コミュニティセンター・キャメリアホール
6月10日(木) 宮城・仙台PIT
6月11日(金) 宮城・仙台PIT
6月16日(水) 愛知・Zepp Nagoya
6月17日(木) 愛知・Zepp Nagoya
6月23日(水) 北海道・Zepp Sapporo
6月24日(木) 北海道・Zepp Sapporo
6月30日(水) 大阪・Zepp Osaka Bayside
7月01日(木) 大阪・Zepp Osaka Bayside
7月06日(火) 東京・豊洲PIT
7月07日(水) 東京・豊洲PIT
7月13日(火) 東京・STUDIO COAST
7月14日(水) 東京・STUDIO COAST
※詳細は後日発表予定

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