【ライブレポート】GORILLAZ、豪華コラボ実現による配信ライブをコングスタジオから世界へ

ツイート

2020年は“Song Machine”と題した新プロジェクトを立ち上げ、ロバート・スミス(ザ・キュアー)、エルトン・ジョン、ベック、アースギャングや、日本人アーティストではCHAIなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行なってきたGORILLAZ。10月23日にはシリーズの楽曲をまとめたニューアルバム『SONG MACHINE : Season One - Strange Timez』を全世界同時発売したGORILLAZが12月12日、<Live Stream Event “SONG MACHINE LIVE”>を行なった。

◆GORILLAZ (ゴリラズ) 画像

ブラーのデーモン・アルバーンとコミックアーティストのジェイミー・ヒューレットによるバーチャル覆面プロジェクトとしてスタートしたGORILLAZ。カートゥーンバンドということもあり初期の頃はライブでもアニメ映像やVJ演出が主体だったが、徐々にデーモン他、バンドメンバーや客演アーティストのリアルなパフォーマンスで魅せるスタンダードなライブスタイルで、エンタテインメントなショーを行なってきた。

コロナ禍で多くのアーティストがオンラインでのライブを模索し、創意工夫してきた2020年だったが、GORILLAZにとってはオンライン、画面上のライブはなんの制約もなく、これまでの活動の側面を何面をもかけ合わせた表現ができる恰好の舞台だろう。バーチャルとリアルとがどう絡むのか、“Song Machine”でコラボレーションしたアーティストたちが、ライブでどんなふうに、どんな形で登場するのかどうかも楽しみだ。


▲Damon Albarn

会場になったのは、GORILLAZの拠点であるコングスタジオ(という体)。カメラが建物に入って行き、明かりが漏れるカーテンを開けると、そこは大きな倉庫のような空間になっていて、その一角に巨大なスクリーンを掲げたステージを設えられている。周りには乗り物やユニークなマネキン、機材やガラクタ、ソファもあってと、秘密基地に紛れ込んだ感覚を味わううちに1曲目「Strange Timez (feat.Robert Smith)」がスタートする。ドラム、パーカッション、ギター、ベース、2キーボードや男女混成のコーラスなど大所帯の編成によるボリューム感のあるサウンドで、スクリーンには月にロバート・スミスの顔が浮かび上がるあのミュージックビデオの映像と、フロアにモノリス状のものが出現してミュージックビデオでの世界観が再現されたりと、映像とARを掛け合わせた展開で、観るものの好奇心をくすぐっていく。

続く「The Vally of the Pagans (feat.BECK)」では3Dホログラムのべックが変幻自在にステップを踏んで、キーボードを背負ったデーモンと絡んだかと思うと、「The Lost Chord (feat.Leee John)」ではレイー・ジョンが実際に登場して美声を響かせる。冒頭から、さまざまな手法のコラボレーションで魅せてくれる上に、会場内の各所でカートゥーンが動き回っていたりと、画面の隅々まで見逃せない。またJPEGMAFIAとCHAIとのコラボレーション曲「MLS (feat.JPEGMAFIA and CHAI)」では、キッチュなコラージュ的映像とARとで、バンドのアンサンブルもよりユーモラスで陽性の雰囲気で、グルーヴが跳ねる。

後半でのハイライトは、ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーでの活動で知られるピーター・フック(B)、ジョージア(Per)が登場しての「Aries(feat.Peter Hook and Geogia)」だ。ニュー・オーダーの香りを漂わせ、ほんのりとビターでロマンティックな「Aries」サウンドを、じっくりと、またアグレッシヴにバンドで構築していく。ピーター・フックとデーモン・アルバーンという、それぞれの世代で新たなロックミュージックを切り開いてきたもの同士のセッションが最高で、ラストに高々とベースを掲げたピーター・フックに、バンドからも拍手が贈られた。


▲Kano

一転して、デーモンが鍵盤をプレイしながら歌うメロウな「Dead Butterflies (feat.Kano and Roxani Arias)」では、ラッパーKanoが登場してその声を響かせ、またデーモンが鍵盤を奏でるその後ろに座って、このセッションの空気浸るような表情を見せる。映像で、ホログラムで、リアルでと入れ替わり立ち替わりにゲストが登場していくライブとなったが、不思議と忙しない感じはない。むしろカメラクルーやスタッフの動き回る姿もとらえていく映像になっていたが、そんな舞台裏やごった煮感も丸ごとエンタテインメント化した感覚で、面白い。

本編のラストは、「Momentary Bliss (feat.Slowthai and Slaves)」で、UKのラップシーン、パンクシーンの暴れ馬が登場してめちゃくちゃにかき回していく。画面も大胆にエフェクトをかけて遊び心満載。自由な組み合わせと、面白くて新しいに嗅覚を研ぎ澄ました“Song Machine”の醍醐味を伝えるライブとなった。


▲Slowthai+2D

またここからはアンコール的な立ち位置で、これまでの作品からの曲を披露。俳優でミュージシャンのマット・ベリーの臨場感のあるリーディングで空気を一変させる「Fire Coming out of The Monkey’s Head」にはじまり、それまでのステージからメンバーが皆こじんまりとした空間へと移動して、アコースティック編成で、デーモンはウーリッツァーの前に座り「Last Living Soul」など、アルバム『Demon Days』(2005)の曲を温かな温度で聴かせる。クリスマスツリーと、ソウルフルなコーラスでホリデー感も加わった、これもまたスペシャルな時間だ。


▲Damon Albarn & Sweetie Irie

そしてラストは、再びステージへと戻ってレゲエシンガー、スウィーティー・アイリをゲストに「Clint Eastwood」をテンション高くぶち上げて、パーティを再燃。ギタリスト、ベーシスト、そしてデーモンもステージを跳ね回ったりとライブは最高潮を迎えて、デーモンの投げキッスと合掌でのあいさつで、<Live Stream Event”SONG MACHINE LIVE”>の幕を閉じた。ライブを通じてこの“Song Machine”シリーズがここからどう展開していくのかもまた期待してしまうし、GORILLAZとしての度量の大きさを感じるオンラインライブだった。

取材・文◎吉羽さおり
写真提供◎Gorillaz / Christian Cargill

■オンラインイベント<Live Stream Event “SONG MACHINE LIVE”>2020.12.12 SETLIST

01. Song Machine: Strange Timez (feat. Robert Smith)
02. The Vally of the Pagans feat. Beck
03. The Lost Chord (feat. Leee John) ※with Leee John
04. Pac-Man (feat. ScHoolboy Q)
05. MLS (feat. JPEGMAFIA and CHAI)
06. The Pink Phantom (feat. Elton John)
07. Opium (feat. EARTHGANG)
08. Aries (feat. Peter Hook and Geargia) ※with Peter Hook and Geargia
09. Dead Butterflies (feat. Kano and Roxani Arias) ※with Kano
10. Desole (feat. Fatoumana Diawara)
11. Momentary Bliss (feat. slowthai and Slaves) ※with slowthai and Slaves
encore
12. Fire Coming Out of The Monkey's Head ※with Matt Berry
13. Last Living Souls
14. Dracula
15. Don’t Get Lost In Heaven
16. Demon Days
17. Clint Eastwood ※with Sweetie Irie




■アルバム『SONG MACHINE : Season One - Strange Timez / ソング・マシーン:シーズン1 - ストレンジ・タイムズ』

2020年10月23日発売
WPCR-18380/1 2,600円+税
01. Strange Timez (feat. Robert Smith)
02. The Valley of The Pagans (feat. Beck)
03. The Lost Chord (feat. Leee John)
04. Pac-Man (feat. ScHoolboy Q)
05. Chalk Tablet Towers (feat. St Vincent)
06. The Pink Phantom (feat. Elton John and 6LACK)
07. Aries (feat. Peter Hook and Georgia)
08. Friday 13th (feat. Octavian)
09. Dead Butterflies (feat. Kano and Roxani Arias)
10. Désolé (feat. Fatoumata Diawara) [Extended Version]
11. Momentary Bliss (feat. Slowthai and Slaves)
12. Opium (feat. EARTHGANG)
13. Simplicity (feat. Joan As Police Woman)
14. Severed Head (feat. Goldlink and Unknown Mortal Orchestra)
15. With Love To An Ex (feat Moonchild Sanelly)
16. MLS (feat. JPEGMAFIA and CHAI)
17. How Far? (feat. Tony Allen and Skepta)
*18. Taxi back to 80s Reykjavík
*日本盤CDのみのボーナストラック
https://Gorillaz.lnk.to/SongMachine-S1Me

この記事をツイート

この記事の関連情報