【インタビュー】Grave to the Hope、メロディック・デス・メタル界の伝説がアルバム発表で再び降臨

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国内のメロディック・デス・メタル界では伝説的な存在となっているSERPENT。そのリーダーでコンポーザーだったKeija(ds,key,g,b)が、当時のシンガーであるKen(vo)と再び合流し、新たなプロジェクトとしてGrave to the Hopeを始動させた。去る12月16日には1stアルバム『PROVIDENCE』をリリース。この二人によるコラボレーションは、SERPENTが活動を休止して以来、約12年ぶりのことだ。彼らは何を思い描いていたのか。ギター・ソロで客演し、各曲の完成に向けて重要な役割を担ったTHOUSAND EYESのKOUTA(g)も交えて話を聞いた。

■アルバムを作っていくうえで
■心境の変化が結構あったんですよね


――いつ頃、Grave to the Hopeというプロジェクトを立ち上げようと思ったんですか?

Keija:考えていたというよりは、2年前ぐらいにKenと居酒屋で飲んでたんですよ。そのときに何かやりたいねという話になって、唐突にSNSで、また何かやりますみたいな発信をしちゃったんですね(笑)。それが始まりです。

Ken:完全にその場の酔いに任せてみたいな(笑)。

Keija:Kenがまた曲を作ってくださいよみたいなことを言ってきたんですよ。じゃあ、どんなものがいいのかと聞いたら、メロデスみたいな感じがいいかなぁということだったんで、だったらまた遊びで一緒にやろうかって流れですね。

――Kenくんはなぜそんな話を持ちかけたんですか?

Ken:何でやったんですかねぇ……。むちゃくちゃ酔ってたんで、全然その辺の記憶がないんですよ(笑)。多分、その時点で10年ぐらいKeijaさんの曲に合わせて歌ってなかったから、久しぶりに何か歌わせてくださいよぐらいの勢いで言ったんやと思います。

――その10年ほどの間も、Kenくんは音楽活動をまったくしていなかったわけではないですよね?

Ken:そうですね。ただ、友達に誘われて、1年に1回ぐらい、サイケのイベントやったりにちらほらソロでは出てたんですけど、ホントに遊び程度のものだったんで、音源を作るとかまでには至らなかったんですよね。SERPENTが終わってからは。

――このプロジェクト始動を発表して以降は、どのように進んでいったんですか?

Keija:とりあえず2年前にその話をして、結局、去年は何も出来なかったんです。1曲できたぐらいだったんですよね。でも、言ったからには出さなきゃなと思っていて、今年の前半ぐらいにまとめて曲を書いて。

――先ほどメロデスという言葉が出ていましたが、この二人が組むことになれば、当然、SERPENTを期待されるだろうというのはわかっていたと思うんですよ。

Keija:そうですね。僕の最初の構想としては、SERPENT的なことではなく、結構リフで押したような、SERPENTよりももっと厳つい路線をやりたいなというのがあったんですよ。そこで本題に入っちゃうんですけど、最初にできたのが、2曲目の「The Dimness of the End」なんです。その次にできたのが「Nasty Soil」。だから、当初の路線としては、そういう感じの曲調でいきたいなという気持ちがあったんです。でも、アルバムを作っていくうえで、心境の変化が結構あったんですよね。途中から、ファンの人はもっとメロディアスなものを望んでいるのかなとも思うようになってきて、だんだん曲調も変わっていったんです。


――「The Dimness of the End」ができたときには、すぐにKenくんに聴かせたんですか?

Keija:そう、できてすぐに渡しました。

Ken:それを最初に聴いたときは、結構リフで押してくるなぁと思ったんですけど、何回か聴いてたら、やっぱりKeijaさんやなっていう、懐かしい気持ちが一番強かったですかね。歌をつけてみたら、若干、SERPENTっぽくもなるのかなと思いながら乗せてみたんですけど(笑)、リフの部分に乗せる面では新しい方向で、メロディアスなところではSERPENTっぽくなって、これはこれでいいものができそうだなと、個人的にはいい感触やったですね。構成的に、サビがすごくわかりやすいのがSERPENTかなと思うんですけど、そこに上手いこと歌を乗せていくというのは、今回のGrave to the Hopeにも持ち込もうとは思いましたね。

――Kenくんにとって、SERPENTの活動というのは、どういうものだったんですか?

Ken:Keijaさんと知り合ったときは、すでにSERPENTというバンドはでき上がっていて、雲の上の存在というか、凄い人らと一緒にやらせてもらうみたいな感覚があったんですよね。だから、活動中はずっと緊張感はありましたし、いいものを作らないとっていうプレッシャーがありましたね。でも、今回はもうちょっとフラットな感じで取り組めたので、SERPENTと今は感覚的にも全然違うのかなとは思います。

Keija:僕らは歳が7つぐらい離れてるんですよ。初めて出会ったのはKenが高校生の頃で、緊張してるやろうなぁというのは常に感じてました(笑)。

――そんな若かりし頃に出会ってるんですね。SERPENTは後の世代にすごく影響を与えたバンドになっていますよね。

Keija:ありがたいですね。でも、何かそういう実感って、あんまりないんですよ。

KOUTA:僕がバンドを始めた頃にはもうすでにSERPENTのCDは出てましたし、日本人のバンドで、しかもメロデスで『BURRN!』に載るのは凄いみたいに思ってましたね。自分たちも頑張れば載れるんだなって。だから、憧れとか目標とか、そういう存在でしたね。

――今回のGrave to the Hopeの制作において、KOUTAくんにギター・ソロで参加してもらうというアイディアはどういう発端だったんですか?

Keija:僕が単純にKOUTAさんのギターが好きだったんですよね。Kenにも「KOUTAさんよくない?」って相談したら、「いいんじゃないですか」みたいな答えだったんで、即決まりだったんですけど、KOUTAさん独特のフレーズってあるじゃないですか、節回しというか。あとはヴィブラートだったり、トーンだったり。今回はスラッシーなリフも多いし、メロディアスな部分もあるので、ばっちりハマるんじゃないかなと思ったんですよね。

Ken:最初の2曲、「The Dimness of the End」と「Nasty Soil」を聴いたときに、KOUTAさんがやっているTHOUSAND EYESは結構攻撃的なバンドですし、メロディアスな要素も弾いていらっしゃる方なので、これは絶対に合うなと僕も思いましたね。

――実際に声をかけられて、KOUTAくんはどう受け止めたんですか?

KOUTA:すごく光栄だと思いました。単純に嬉しかったですね。去年、THOUSAND EYESが大阪でSOILWORKのオープニング・アクトをやったときに、お二人が観に来てくださったんですよ。終演後に楽屋にズラズラっと来られたときには怖いなぁと思ったんですけど(笑)、蓋を開けてみたら、その依頼の話だったんですね。そのときはまだ曲はなかったんですが、その場では一旦お受けしたんです。


▲Keija

――Grave to the Hopeというバンド名はどのような背景で決まったんですか? KeijaくんとKenくんがスタートさせたプロジェクトらしい名前でもあると思いますが。

Keija:それを感じていただけたら嬉しいですね。これは実はSERPENTのラスト・ライヴのタイトルなんですよ。“Grave to the Hope”というのは、直訳すると、光の当たる墓みたいな意味なんです。墓を作品に見立てて、今後も光の当たり続けるような作品になればいいなという気持ちも入ってますかね。

――しかも、この名前を見れば、SERPENTのファンはみな震えるだろうと?

Keija:覚えてますかね、ラスト・ライヴのタイトルを(笑)。

――マニアックな人は覚えてますよ(笑)。作曲はKeijaくんが一人で取り組んでいたと考えていいんですか?

Keija:そうですね。とりあえず、ワン・コーラスできたらKenに送って、こんな感じはどうみたいな相談をすることもありますけど、基本的には全部一人でやっちゃいましたね。

■実はアルバムの曲順は
■作った順番になってるんですよ


――曲が出揃ったのはいつ頃だったんですか?

Keija:7月ぐらいだったと思います。最後にできたのが「Floating Spirit」ですね。実はアルバムの曲順は、作った順番になってるんですよ(笑)。

――とすると、先ほどの話にあったように、音楽的に変化していった過程がわかるわけですね。

Keija:そうそう、まさに。ただ、1曲目の「Axix of Tragedy」は、SERPENTが2003年に出したデモの1曲目(「The Abyss of Time」)なんですよ。だから一応、この曲だけはリメイクという形にはなるんですけどね。

――歌詞は新たに書いていますよね。オープニングらしい内容だと思いますし。

Keija:そう、新たにKenが書いてます。

Ken:この曲は僕の前のヴォーカルの方が歌ってた曲で、僕は歌うのも初めてだったんですよ。曲の存在は知ってたんですけど、歌いたいなと思っていた曲ではあったんですね。だから、これを振られたときには「やった!」と思って。歌詞は復活、新たな始まりを頭に入れながら書きましたね。

――Keijaくんはなぜこのタイミングで、この曲を取り上げようと思ったんですか?

Keija:一番は、僕とKenがやるということで、SERPENTのときのファンへのサービスみたいなものはやっぱりありますね。僕が気に入ってたというのもあるんですけど、Kenにも相談したんですね、この曲を1曲目に持ってきたいんだけどって。そしたら「それ、歌いたかったんですよ」みたいな返しが来たんです。でも、最初はそういう構想はなかったんですよ。多分、3曲目ができた頃だったかな、これをオープニングにしようと思ったのは。実質、「The Dimness of the End」への導入曲、テンションを高めるためのSEみたいなニュアンスですけど、当時も同じような気持ちで書いた曲だったと思います。


▲Ken

――タイミング的にも、過渡期的な時期に思いついたわけですね。「The Dimness of the End」はどんな思いで書いていたんですか? この二人で始める最初の曲ですから、相当に気合も入っていたと思いますが。

Keija:そうですね。これはもう、メタルファンが聴いて、ガッツポーズするような王道な曲を狙って書きました。厳ついのが来て、サビでパッとメロディアスに泣かせるみたいな、イメージどおりになったかなとは思います。

Ken:聴かせてもらったときに、すごくカッコいい曲やなと思ったんですよ。ただ、攻めすぎてぐちゃぐちゃになるのが嫌やったんで、曲のよさを前面に出したような歌をつけることができたらいいなと思って、厳ついけどわかりやすい、そんなフレーズをつけることは意識しましたね。

Keija:あとはね、多分、ファンの人だと、僕の書く1曲目って、(SERPENTの代表曲である)「Bloody Gates」みたいな曲がくるやろうと予想すると思うんです。その意表をついてやろうという気持ちもありましたね(笑)。

――確かにそう予想している人は、この暴虐な音に衝撃を受けるかもしれませんね。歌詞については、具体的なテーマもあったように思いますが?

Ken:Grave to the Hopeは、マイナス思考で終わるようなプロジェクトにはしたくなかったので、ありきたりな、後ろめたいような歌詞だけで終わらせるのがすごく嫌だったんです。だから、戦うとか、希望を持つ、前進する気持ちで書くように意識はしてましたね。もちろん、3曲目につながるようにというのもありますし。今回のコンセプトは、自然と人間の調和みたいなところが僕の中にあったんですね。この曲では、自然界から見た人間の悪口みたいな感じで書いてます。

――なるほど。<Melt in darkness>というフレーズは、どういった意味合いで書いたんですか?

Ken:まぁ、結構勢いに任せて書いた部分が多いですけど、そこは再生を意味する隠語のような感じで書きました。一回溶かして生まれ変わるようなイメージですね。

――KOUTAくんは曲を聴いてどんな印象を持ちました?

KOUTA:最初はヴォーカルが入っていないデモを2曲もらったんですけど、さっきKeijaさんが仰っていたとおり、予想していたよりもゴリゴリというか、かなりリフでガッツリ攻めてくる感じだったので、ちょっと意外だなとも思ったんですけど、「The Dimness of the End」はきっとSE明けの1曲目とか、そういう位置に来る曲になるんだろうなと思いましたね。だから……速い王道のメタルですかね。Keijaさんと同じ印象を僕は受けました。サビになったらやっぱりKeijaさん節が炸裂してたので、これはいい勉強になるなと思いながら聴いてましたね。

――KOUTAくんから見る「Keijaさん節」というのは?

KOUTA:昔は他のミュージシャンとKeijaさんの話をするときに、よく哀愁というフレーズを使ってたんですけど、ただの哀愁とは違っていて。でも、泣きという言葉もちょっと違うんですよね。何かすごく高貴な感じなんですよ。気高くて、哀愁も漂っているけど……何でしょうね。プライドが高いというと語弊があるかもしれないですけど、そういう尊いものを感じます。

Keija:めっちゃ嬉しいですね(笑)。でも、感覚的にやっぱりSERPENTと今回は全然違いますよね?

――ええ。ただ、SERPENTもVeiled in Scarletも知る立場としては比較できるものがあるわけですが、言うなれば、それもすべてKeijaらしさですからね。

Keija:そうですね。そこを隠す必要はないと思ってるんで。

――ギター・ソロもこの曲を最初にレコーディングしたようですが、どんな依頼の仕方をしたんですか?

Keija:とりあえず、KOUTAさんの感性で弾いてくださいという丸投げな感じです(笑)。「どんな感じで弾けばいいですか」と聞かれはしたんですけど、全曲同じコメントで返しましたね、「テクニカルかつ哀愁漂う感じで」みたいな(笑)。僕が細かく指示したら、KOUTAさんのよさが出ないと思ったんですよ。だから、「The Dimness of the End」のギター・ソロが返ってきたときには、さすがだなと思いましたね。スラッシュ・リフの上とメロディアスなコード進行の上との対比がすごく素晴らしい。どちらでも対応できる、そのバランス感覚が凄いなと。

KOUTA:コード進行が独特で、結構、エグいことをKeijaさんはやってるんですよね。そこにどうテクニカルかつ泣かせる感じというKeijaさんの要望に応えるか……全曲そうなんですけど、そこは悩みどころでした。

Ken:すごく耳に入ってくるギター・ソロなんですよね。Keijaさんが言ったように、スラッシュ・リフの上に乗せるフレーズと、メロディアスなフレーズも、ギタリストが二人いるのかなって思うぐらいの聴きやすさというか、馴染ませ方とかはさすがやなと思いましたね。
KOUTA:恐縮です。

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