【インタビュー】平井堅、デビュー25周年記念<Ken's Bar>への心情や選曲に込めた思い

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1998年にスタートし、その後も平井堅のライフワークとして続いているコンセプトライブ<Ken's Bar>。デビュー25周年を迎えた昨年は<Ken Hirai 25th Anniversary Special !! Ken‘s Bar -ON LINE->と題し、自身初となる無観客での配信ライブとして開催された。その模様がいよいよ2月7日に、WOWOW SpecialとしてWOWOWで放送・配信されるということでメールインタビューを実施。当日を迎えるにあたっての心情や選曲に込めた思いなど、ある意味”舞台裏”となる貴重なエピソードを披露していただいた。

――昨年行われた<Ken Hirai 25th Anniversary Special !! Ken‘s Bar -ON LINE->がいよいよWOWOWで放送されます。ライブは上海での<Ken's Bar>以来ということでしたが、まず1年ぶりのライブに挑むお気持ちはいかがでしたか?

平井堅:丸1年、人前で歌っていなかったので、とにかく歌えるのか? 人前に出られる状態なのか? など不安だらけでした。またこれだけブランクが空いたのはデビュー以来初めてだったので、基礎体力を上げなきゃ、芸能人に戻らなきゃ、という焦りもありましたね。元々のボーッとした性格に乗っ取られていたので、緊張感を持たないと!と。とはいえ緊張に関しては、案の定リハーサルが始まれば嫌と言う程戻って来ましたが…。


――平井さんにとって初めてとなる無観客での配信ライブ。実際にやってみての率直な感想をお聞かせください。

平井堅:とにかく緊張しました。これは無観客とか配信とか関係なく、久しぶりに「真剣に歌うこと」を行ったからだと思います。無観客の方が気楽かなと思っていたけど大間違いでした。ピーンと張り詰めた空気の中での歌唱は拷問の様で、テレビ収録に近いかな。テレビは敵陣に乗り込む意識で覚悟を決めるのですが、いつものメンバーやスタッフが見守る中での静寂は、より静寂を濃くするというか…。もう本当に疲れました(苦笑)。


――いつもと同じようにお客様用のテーブルや椅子がセッティングされていることで、これまでに参加した<Ken's Bar>のことを思い出したり、今その場所でライブを観ている自分というものをより具体的にイメージしながらご覧になるファンの方も多いと思います。平井さんご自身は、歌っている最中あの景色をどのように感じていらっしゃいましたか?

平井堅:テーブルや椅子やキャンドルがいつものKen's Bar と同じ様にあるのに、人だけがいない。お客さんがいないという景色は、人と会えない、人が集まってはいけないというこのご時世の異様なムードを体現していた気がします。ちょっとシニカルな状況で必死に歌うというのは、僕自身グッと来るものがありました。お客様という、最重要ピースが欠けた状態で歌うやるせなさが感情を盛り立てるというか…。


――拍手も歓声もなく、お客さんの表情を見ることもできない無観客ライブ。最初のMCでは「心細い」とおっしゃっていましたが、後半に向かっていくにつれて、歌っている時の心境に変化はありましたか?

平井堅:「あぁ、この曲の時はお客さんこういう顔をしてたよな」とか、そんなことを思いながら歌ってました。歌手って孤独なんです。有観客であろうが無観客であろうが。これはお客様をないがしろにしている訳ではなく、歌手の宿命だと僕は思っています。自分とにらめっこしている感じが、無観客の方が如実に出るかもれません。

――ちなみに、ご自身でも他アーティストの配信ライブをご覧になるような機会はありましたか?1視聴者として、どのようなことをお感じになったのかお聞きしてみたいです。

平井堅:会場で観たいなぁという感情は正直芽生えましたが、演者をじっくり見る、分析する、愛でるという点では、配信ライブの方が有意義かもと思いました。

――では次に、選曲や構成についてお伺いします。ライブはクリスマスの時期でしたが、今回の選曲/構成の軸はそういった“ムード”を軸にしたものではなかったように思います。選曲をする上で、またライブを行う上で、平井さんとスタッフの皆さんが大切にされていたものはどういったものだったのでしょうか。

平井堅:マンネリと新しさのバランスはいつも悩みどころです。あまりやったことのない曲を選ぶ時は、なるべく直観的に、今自分が歌いたいものにしようと思っています。あとはやはりこのコロナ禍のムードを背負って選んでいるので、僕自身の今の気持ちにリンクした曲を選んでいるつもりです。今回のイメージは、痛さと暖かさかな。


――鈴木大さんと石成正人さん。バンマスであるお2人とは、今回の選曲やアレンジについてどのようなお話をされていたのでしょうか。打ち合わせ段階やリハーサルをしながらなど、何か本番に向けての経緯や経過がわかるようなお話を伺いたいです。

平井堅:基本、全て自分1人で決めています。1人で決めて1人で悩んで、1つ1つ解決してという流れを、スタッフやメンバーが遠巻きに見守ってくれている感じですね(笑)。そして、どうしても答えが見つからない時、乗り越えられない時に2人に相談するって感じかな。ミュージシャンのプレイの引き出しを色々試したりという作業も勿論ありますが、結局一番悩むのはやっぱり歌唱なので、やはりそれは自分で乗り越えるしかないんですよね。

――「hug」や「UPSET」など、久しぶりにライブで披露された曲もありました。まずどうしてこのタイミングで久々の披露になったのかなど、具体的なきっかけがあれば聞かせてください。

平井堅:これも深い意味は無くて、思いつきです。(笑)まずギター1本で何をやろう、ベース1本で何が出来るだろう、はたまたパーカッションだけで歌える曲はあるかな?など、楽器優先で考えています。楽器1本とボーカル。このスタイルの可能性を広げたいという議題に、曲を当てはめていく感じです。リハーサルで挫折せず生き残った強者達です。よく挫折するので(涙)。


――「UPSET」は特に、ウッドベース1本というアレンジがとてもスリリングでした。実際にこのバージョンで歌ってみて、いかがでしたか?

平井堅:当たり前過ぎる事を言いますが、ベース1本で歌う楽曲はベースが格好いい楽曲を選んでいます。もう1度言います。当たり前です。元曲がシンセベースであろうが、生のベースであろうが、何も考えず「あっ、この曲のベース格好いい!」と思った曲を選んでいます。それをウッドベースで弾くことが現実的かどうかなど全く考えず。なので、演者には本当に大変な苦労をさせていると思うし、僕も大変です。出来ることならこんな苦行は避けたい。でもやる。何故なら僕、ベースが好きなんです。ベースしか聴いてないと言っても過言ではないんです、アップテンポの曲は。


――「Ken's Bar」のお楽しみでもあるカバー曲は、NiziUの「Make you happy」と、財津和夫さんの「切手のないおくりもの」でした。まず「Make you happy」を歌いたいと思われたきっかけは? 話題性というだけでなく、何か歌い手としてそそられるところがあったのではないかと思うのですがいかがでしょうか。

平井堅:その年のヒット曲を歌うというのはしばしばやっているので、「Make you happy」はうってつけであるのと同時に、僕的に食指が動いたのはメロディーとコード進行です。サビのところで、コードは7thコードに行くのにメロディは行かないところがあって、それはそれで可愛いんだけど、そこを変えて7thノートに行くと、よりソウルっぽくブルージーになって面白いかなと。それで、原曲とはメロディを変えてみました。玄人ぶったことを言ってスイマセン。

――完全に余談ですが、「Make you happy」は振り付けも大きな話題になりました。実際にお客様が目の前にいたら、ひょっとしたら平井さんの縄跳びダンスがちらりと見られたかも…と想像していたのですが可能性はありましたか(笑)。

平井堅:勿論ちょっと練習しましたよ、縄跳びダンス。(笑)結構出来ていると自負しています。ただ、足を使ってピョンピョン跳ねながら歌うのは僕の実力では不可能でした。だからと言って手だけくるくる回し、軽くいなしながら歌うのはWithUの皆さんに申し訳ない…というのが、僕なりの誠意です。


――「切手のないおくりもの」は、大橋トリオさんのアレンジで仕上げられたものとは全く違う表情が引き出されていて、驚きました。今回このライブで、そしてこのアレンジで歌おうと思われた経緯を聞かせていただければと思います。

平井堅:パーカッションと歌だけでというのもやりたかったのですが、パーカッションは音階もコードも無いのでなかなか難しいんです(汗)。この曲でもトライしたかったのですが、どんどん転調していくし、こりゃ無理だということでベース&パーカッションのアレンジにしました。レコーディングとは構成楽器は違うけど、ニューオリンズ味は同じく噛みしめながら演奏したつもりです。配信だからこそ1人1人に届けたい。心優しく育ててくれた母にも届くように(照)。そんな事を思いながらこの曲を選びました。


――もちろん受け取り方は自由だと思いますが、このライブを再度ご覧になる方、今回初めてテレビで視聴される方へ、もしよろしければ「こういうところを感じてもらいたい」「ここが見どころ」など、少しご本人からのコメントをいただけますと幸いです。

平井堅:以前のライブMCでも話したことがあるのですが、Ken's BarがKen's Barたる所以、らしさというのは、僕が思うに「剥き出し感」なんです。水を打った様な静けさの中、楽器1本や時にはアカペラなど、限りなくミニマムな中で僕が歌い、時に焦り、迷い、時に間違い(涙)、汗をかき、MCで噛み…。平井堅が右往左往しながらなんとか最後までやり切る、その様子をお客様が見守る。よくやった、よく頑張った、と。ぜひ、じーっと見て監視して下さい。ほぼ見せ物小屋です(笑)。


――デビュー25周年。記念すべき年なのに思うようなライブ活動ができないもどかしさもあったのではないかなと思いますが、特設サイトでの全楽曲ストリーミング配信や公式インスタグラムなど、平井堅さんの音楽に新しい角度から触れる機会も生まれた年ではないかなと思います。平井さんご自身は、このコロナ禍における音楽の力や役割について今どのように感じていらっしゃいますか? また実際のご予定の話ではなく、配信も含めライブというものを今後どう展開していきたいと思われていますでしょうか。

平井堅:とても難しい問題だと思います。こんな時代にエンタテインメントは二の次だ。いや、こんな時代だからこそエンタテインメントが必要だ。様々な意見を耳にしましたよね。今ライブ1つにしても、やるべきかやめるべきか、周りを伺いつつ決断を先延ばしにしている方や躊躇している方が沢山いらっしゃると思います。そんな中、ヒット曲も確実に生まれている。素晴らしい事だと思います。今、僕が出来ることは、ひたすら「耐える」ことかなと思っています。「いつか」の為に、腐らず、足腰を鍛え、感性を磨き、歌手としての筋力を上げる努力を怠らないこと。優等生的発言かもしれないけど、嘘なくそう思っています。

――お忙しいところ、ありがとうございました。

平井堅:ありがとうございました。

文:山田邦子
写真:上飯坂一

【番組情報】

平井堅 25th Anniversary Special!! Ken's Bar -ONLINE- WOWOW Special
2021年2月7日(日)夜8:00~ WOWOWライブ WOWOWオンデマンド

【関連番組】
平井堅 Ken's Bar Special!! in SHANGHAI
2021年2月3日(水)午後3:30~ WOWOWライブ
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