【ライブレポート】all at once、自身初ワンマンを無料配信「やはり歌を届けるしかない」

all at onceが2月7日(日)、デビューCDリリース記念 無料無観客配信ライブ＜all at once ONELINE LIVE 〜Zero to One〜＞を開催した。同公演は、自身初のワンマンライブであり、約1年ぶりのステージとなるものだ。そのオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆all at once 画像 / 動画

2019年に＜倉木麻衣 20th Anniversary Live＞東京公演のオープニングアクトとゲストコーラスに抜擢されたことをはじめ、数々の大きな舞台を経験してきた北海道出身のITSUKIと宮崎県出身のNARITOによるall at onceは、2020年春にCDデビューを予定していた。CDデビュー曲となるはずだった「12cm」は、亀田誠治がアレンジおよびサウンドプロデュースを担当し、「初めて二人の歌声を聴いた時、“歌を聴かせる音楽”の本質を久しぶりに聴くことができ、鳥肌が立った」「ピュアで、不器用だけど愚直なまでに真っすぐ」と亀田から賞賛されたその歌声には、デビュー前から注目が集まっていた。しかし、コロナ禍における緊急事態宣言の発出によりCDデビューは一旦延期。音楽配信やストリーミング配信を重ねながら、ヴォーカリストとしての地力を養ってきた。そして2021年1月27日、1st EP『JUST BELIEVE YOU』でCDデビューを果たし、そのリリースを記念して記念して行われる無料無観客配信配信ワンマンライブが＜all at once ONELINE LIVE 〜Zero to One〜＞となる。


定刻の19時に、ステージに設置された巨大スクリーンに＜all at once ONLINE LIVE 〜Zero to One〜＞のライヴロゴが映し出されると、上手からITSUKI、下手からNARITOが向かい合わせで登場。伸びのあるダイナミックなフェイクのハーモニーを響かせ、一瞬にして会場全体を生命力に満ち溢れた空気に変えると1曲目「雨上がりに架かる虹」へ。高純度なNARITOのハイトーンヴォイスと縦横無尽に広がるITSUKIの豊かなコーラス、それぞれの持ち味を存分に発揮しての幕開けとなった。続く「Take mo' Chance」はジェームス・ブラウンやブルーノ・マーズをルーツに持つITSUKIの音楽性志向が現れたファンク調のナンバーだ。カラフルな映像で彩られたスクリーンをバックに、気負いや緊張を全く感じさせないリズミックな歌と伸び伸びとしたパフォーマンスから、彼らがステージを心底楽しんでいることが伝わってきた。

「こうしてライブを届けられることが素直にすごく嬉しいです。今持っている最大限、今できる全てをお届けできたらと思っています」──NARITO


初ライブが開催できた喜びをにじませた短いMCの後は、デビューEPのリード曲「JUST BELIEVE YOU」へ。同曲は『名探偵コナン』の歴代テーマソングの中でも人気が高い、約20年前にリリースされた倉木麻衣の「Secret of my heart」をサンプリングした楽曲だ。原曲同様に作詞を倉木麻衣、作曲を大野愛果が手掛けたことでも話題となった。思い合っているのになかなか会えず、でも、きっといつかまた会える日が来ると信じ合う主人公達の想いを情緒溢れる美しいメロディに乗せ、時に切々と、時にエモーショナルに表情豊かに歌い上げた。特に倉木麻衣の「Secret of my heart」のボーカルにフェイクコーラスを重ねる見せ場のセクションでは堂々たる歌声を披露し、ポテンシャルの高さを見せつけた。

その余韻が残る中、ステージ上の無数のキャンドルに火が灯されるなど、シックで温かな雰囲気にセットチェンジ。ここからはこの日のスペシャルゲストとしてピアノ奏者の高島ユータを迎え、ピアノの伴奏によるアコースティックコーナーへ。

「コロナ禍の昨今、僕達に何ができるのか……？ やはり歌を届けるしかないと思って、ずっと楽曲制作を行なってきました。そこで生まれた、僕達の想いが詰まった楽曲から何曲か披露したいと思います」──ITSUKI

真摯に語って届けられたのは心に染み入るバラードチューン「Make It Better」だ。さらに、チェアに腰掛けながら“百年先も君と生きていたい”というストレートな歌詞が印象的なラブソング「Two of us」をゆったりと届け、開放感溢れるサビが心地よい「オーバーライト」が披露されるなど、アコースティックサウンドに乗せた未発表曲3曲が温かく響きわたった。


高島を送り出した後は、この日初披露となるもう1曲「Mission to the moon」をスタンドマイクでスタイリッシュにアクト。大勢のオーディエンスが目の前にいるかのように両手を掲げて頭上でクラップをしてみたり、客席を煽る仕草を見せるなど、無観客であることを忘れさせるような臨場感と躍動感溢れるパフォーマンスに自然と心が躍る。

終盤は、『名探偵コナン』のエンディングテーマとしてオンエアされ、Spotifyの“日本バイラルトップ50”にランクインしたほか、各ストリーミングサービスでも250万回を超える再生回数を記録した「星合」からスタート。七夕を表す季語がタイトルに冠された同曲は、大切な人に会えないもどかしさや切なさを織姫と彦星に重ねて歌ったドラマティックなナンバーだ。この日のall at onceにとっては、“一日も早く日常に戻って多くの観客の前で歌いたい”という切なる想いが相まって、歌声に一層感情がほとばしったように感じられた。

「星合」が終わると一瞬暗転、すぐに流れ出したイントロに乗って、「次に歌う曲は、本来であれば僕達のデビューシングルになるはずだった楽曲です。大切に歌いたいと思います」とITSUKIが語り、NARITOはその言葉を受けてカメラに向かって深くおじぎ。そして目を閉じながら静かに「12cm」を歌い出した。一語一語噛み締めるように言葉を紡ぎ、丁寧にコーラスを重ねる二人。万感の想いが画面越しからでも十分に伝わってくる。6分を越える壮大なバラードソングに乗せた歌声は多くのリスナーに深い感動を与えたことだろう。歌唱後は、感極まったNARITOが思わず涙を流す場面も。

「歌えていることは、当たり前じゃないんだということを実感しました。僕達の力じゃなくて、こうしてライブが出来ているのも沢山のスタッフや、そして何より観てくれている皆様のおかげです。all at onceという名前に込めた“全員で作り上げていく”という想いを大切に、皆さんと共に歩んでいきたいと思っています。これからもよろしくお願いします」──ITSUKI


そして最後は、群馬県立樹徳高校ダンス部の映像と共に、再び「JUST BELIEVE YOU」を熱唱。当初は共にステージに上がってのコラボレーションを予定していたそうだが、映像の中で生き生きと踊るダンサーたちから、「素敵な曲で、この作品を踊れて、楽しかったです！」「コロナの中、私達に頑張れる力をくださり、ありがとうございます！」といったall at onceに向けてのメッセージも紹介された。all at onceもまた「僕らはまだ諦めていません。いつかきっと一緒にステージに立ちましょう！」とエールを送り、渾身の歌声を響かせて、およそ1時間のライブが晴れやかなエンディングを迎えた。

今回は約1時間、全10曲というコンパクトなセットリストだったが、幸福感をもたらす真っ直ぐなボーカルや、新人らしからぬ巧みなコーラススキルが際立つ充実の1stライブとなった。我慢が強いられる困難な時代だからこそ、音楽に対するひたむきさや謙虚な姿勢が、確かな道しるべとして明るい未来を鮮烈に照らす一夜だった。

撮影◎高田梓