【インタビュー】FAKE TYPE.「休止したから今がある」

■休止してなかったら解散してた
──トップハムハット狂さんとしては、こういう復帰作にしたいと考えていたものはありました?
トップハムハット狂:したかったというか、し忘れちゃったことがあって。FAKE TYPE.のアルバムには、物語調の曲をいつも1、2曲は入れるようにしてたんですよ。でも、約3年半休止していたから、その間に溜まっていた自分の感情がやっぱり濃厚にあったんで、そっちを優先して書いてたんですよね。で、マスタリングをするぐらいのときに、やべえ! 書いてねえ!って気付いて(苦笑)。もう今から書き直せないし、次からの作品は物語調のものを意識しながらやっていこうかなって。
──でも、言ってみれば溜め込んでいたものをしっかり吐き出せたということですよね。筆の進みも速かったですか?
トップハムハット狂:そうですね。ラスト1、2曲ぐらいまではすぐに書いて、すぐに録音して、っていう感じでした。
──ちなみに、ラストのほうに書いた曲というと?
トップハムハット狂:最後に書いたのが「So what」で、去年の秋口に書いてたんですけど、その時期、俺が個人的にすっごいイライラしていて。そのフラストレーションを爆発させてしまった曲になってますね。なんかもう本当にFAKEでやるのが忍びないくらい、これ以外に書きたいことが全然出てこなくて(苦笑)。
DYES IWASAKI:AOが録ったやつを送ってくれて聴いてたんですけど、曲が終わった瞬間に「クソがっ!」って叫んでて、えっ!? 今の何!?って。
トップハムハット狂:はははははははは!(笑)
DYES IWASAKI:めちゃめちゃビックリしました(笑)。吐き捨てるみたいに言ってたから、さすがにこれはちょっとやめとこうか……?って。そしたら冷静になったみたいで、「確かにこれはちょっと酷すぎるわ」って(笑)。
トップハムハット狂:あの時期は酷かったなぁ……(苦笑)。
──大変でしたね(苦笑)。そういった楽曲もありつつ、「Tandemoon Rendezvous」や「はじまりの背中」のような、活動再開について内面を赤裸々に吐露していくようなものもあって。ラストナンバーの「はじまりの背中」は、比較的シンプルでストレートものになっていますけど、トラックはいつ頃に作ったんですか?
DYES IWASAKI:実は覚えていないんですよ。「はじまりの背中」「HOPTRONIC」「FAKE HEARTS」は、もともとストックにあった曲で、たぶん活動休止前とか休止直後に作っていたと思うんですけど。その辺りに作った曲は、このタイミングじゃないともう出す機会がなくなるだろうなと思ったし、昔っぽいFAKE TYPE.と、今のFAKE TYPE.の両方を出せたらいいなと思ったんで、今回入れてますね。もともとの状態から多少手は加えてます。
トップハムハット狂:「始まりの背中」のリリックも、2020年の秋口に書いた気がしますね。トラックを聴いたときに、唯一レベルの“ザ・キレイ系トラック”だったんで、これはエモーショナルなことが書けるなと思って。やっぱり再開することに対して書いたものがあったほうがいいなと思っていたんで、そのことを自分の視点で書きました。「始まりの背中」というタイトルは、休止前に作った『FAKE WORLD』の最後に入っていた曲が、「終わりの先」だったんですよ。そことの対比みたいな感じにしたくて。自分たちが水面下で話して、始めたがっている気持ちがあって、その背中を自ら押してあげる、みたいな。
──なるほど。
トップハムハット狂:でも、この曲で書いていることって、結構普遍的なことでもあって。やりたいとは思っているけど、なんとなくやり出せなくて、くすぶっている人って多いと思うんですよ。そういう人が、このタイトルを見たときに刺さってくれるといいなと思ったし、何かを始めたがっている人の背中を押してあげられたらいいなっていう裏メッセージもあり、っていう感じですね。
──「Tandemoon Rendezvous」には〈予想以上に削られるバイタルにメンタル〉、「はじまりの背中」には〈すり減った心は戻らないけど〉というリリックもありますが、それこそ身も心もボロボロになっていると感じる瞬間も、過去にはあったと。
トップハムハット狂:やっぱり生み出すときって、心も身体も使うわけじゃないですか。命を削って作り上げていくんですけど、そのペースが自分たちにとっては異常なくらい速かったんですよ。このスピードでやっていったら、もう身がもたないっていうところで休止になったんですよね。だから、その時期のことを振り返ってというか、自分に言い聞かせるように「無理すんなよ?」っていう。すり減ってしまった分はもう戻らないけれど、そのことは忘れずに、自分たちのペースを守ってやっていけたらいいよねって。そのことは、リリックにする前に、今後一緒にやっていく上でどうしたらいいか?って、ダイゴと話したことでもあるんですよ。お互いのペースでやっていくのが一番いいよねって。
──とにかくマイペースにやろうと。
トップハムハット狂:そうじゃないと楽しくなくなっちゃいますからね。「音楽」っていうぐらいだから、根底は楽しくないといけないし、作っている本人たちが楽しんでいないのに、聴いてくれる人が楽しいわけがないので。
──それが活動再開のタイミングで話し合ったことでもあり、活動休止してしまった一因でもあると。
DYES IWASAKI:仕事感みたいなものが最後のほうはすごくありましたね。結構無茶なペースでやらないと食えていけなかったところもあったので。だから、当時はすごく必死だったんだろうなって思います。
──活動再開を発表されたブログで、DYESさんは「今度は道を見失わないように、全てを大事に活動していきます」とコメントをされていましたよね。
DYES IWASAKI:そうですね。足元が見えていなかったと思うし、たぶん、焦っていたんだと思います。焦って、周りとか自分のことをちゃんと見れていなかったなって。そういうところから負のスパイラルに入って行ってしまったんだと思います。
──「Tandemoon Rendezvous」には〈過去の休止は必要なファクター〉ともありますけど、本当にそういうことなんでしょうね。
2人:そうだと思います。
DYES IWASAKI:たぶん、休止してなかったら解散してたと思いますからね。
トップハムハット狂:ははははは(笑)。うん。
DYES IWASAKI:あのまま行った先は絶対に解散だったと思うんで。休止したから今があるっていうのは、すごく感じてますね。
トップハムハット狂:休止前は「もう嫌だ!」って感じだったからね?(笑)
DYES IWASAKI:そうだよね(笑)。
トップハムハット狂:「これもう無理だよ……!」っていう。だけど、聴いてくれている人がたくさんいるのはわかっていたから、これをなくしてしまうのは正直もったいない気もしたし、申し訳ないなっていう気持ちもあったんで、休止にしましょうって。
──解散しなかったというのは、本当はやりたい気持ちはあったということでしょうからね。続ける方向でいたかった。
トップハムハット狂:そこはやっぱそうですよ。

──そして、4月には東名阪ツアーも決まっています。ライブが実際にどうなるのかは世の中の状況次第という感じにはなると思うんですが、今後活動していくにあたっては、マイペースでやることがメインになってくると。
トップハムハット狂:そうですね。せっかくやりたいと思っていることが、またやりたくないことになってしまうのは絶対に嫌だなっていうのは、お互いあると思います。
DYES IWASAKI:うん。無茶はしたくないので。やっぱり楽しいと思えるペース、楽しいと思い続けられるペースでやっていきたいですね。そこは大事にしていきたいです。
トップハムハット狂:お互いにどうするか話し合って、ペースを考えていけたらいいかなって。
──コミュニケーションをとっていこうと。昔よりも今のほうがやりやすかったりします?
DYES IWASAKI:めちゃめちゃやりやすいですよ。
トップハムハット狂:うん。よく話すようになった。
DYES IWASAKI:平日は毎日レベルで連絡を取り合ってる気がする。FAKEで確認しなきゃいけないことも多いし。で、その確認が終わった後に、2時間ダラダラしゃべっちゃうことはありますね(笑)。
トップハムハット狂:あるある(笑)。
──曲もすでに作っていたりするんですか?
DYES IWASAKI:一応作ってはいますね。でも、最近は少し休んでます(笑)。やっぱりアルバムを作ると全部出し切っちゃうんで、今はインプットする期間だなと思って、AOと話し合って、お互いストップしてますね。
トップハムハット狂:すでに1曲だけもらってるんですよ。それが思いついたら書ける状態ではあるから、その閃き待ちみたいなところはあるかもしれないですね。
DYES IWASAKI:今はそういう感じですけど、とはいえ、またやりたくなると思うんで、そのときに作り出せばいいかなって思ってます。
取材・文◎山口哲生
4th Full Album『FAKE LAND』
LABEL:Butcher Swing Records
1.Stay Tuned
2.FAKE LAND
3.BEELZEBUZ
4.FAKE HEARTS
5.So what
6.Yummy Yummy Yummy
7.GAME OF DICE
8.HOPTRONIC
9.Tandemoon Rendezvous
10.はじまりの背中
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