【ライブレポート】ZOC、生き様を見せつけた武道館公演「私たちには私たちの純真がある」

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ZOCが2月8日、東京・日本武道館にて<NEVER TRUST ZOC FINAL>を開催した。

◆ライブ写真(29枚)

個が個のままで集まり、社会や他人ではなく、自分自身を変えるために闘う。女性たちの強い絆や友情、連帯を描いた鮮やかなシスターフッド映画を観たあとのような余韻と感動を残してくれるライブだった。


大森靖子が“共犯者”としてメンバーに名を連ねる6人組グループ、ZOCの日本武道館公演。大森が審査員を務めていたオーディション「ミスiD」出身者を中心に2018年10月に結成され、1月20日に通算4枚目となるシングル「AGE OF ZOC/DON’T TRUST TEENAGER」でメジャーデビューした彼女たちは、1月18日のZepp Tokyoを皮切りに東名阪ツアー<NEVER TRUST ZOC>を開催。日本武道館は同ツアーのファイナルの地となっており、本公演でグループからの卒業を発表している香椎かてぃにとっては、ZOCとしての最後のステージでもあった。


16時40分。開演時刻から10分押しで場内が暗転すると、観客はそれぞれの推しのカラーを点灯させたサイリウムを掲げ、総立ちで彼女たちを迎えた。武道館のアリーナの中央には、ZOCのロゴマークが模されたステージが設置されていた。最初に登壇したのは、結成時からのメンバーである藍染カレン、香椎かてぃ続いて、西井万理那と2020年3月に加入した巫まろ、同年10月にZOCのコリオグラファーからメンバーとなった雅雀り子の三人。最後に、大森靖子がステージに上がり、彼女の激しい咆哮からライブはスタートした。

オープニングは2018年9月にリキッドルームで開催された大森の生誕祭で披露された、ZOCの始まりの曲であるハードコアなラウドロック「ZOC実験室」。メンバーは四方八方に広がり、ゲームのキャラクターのようなハイキックとパンチを繰り出しながら観客を“Zone of Control=支配領域”に巻き込んでいき、孤独を孤立させないから“生きろ!”とシャウト。続く「ACE OF ZOC」では、轟音ギターが鳴り響くポップロックの上で軽やかな早口ラップが炸裂。



第2章の幕開けを飾るメジャーデビューシングルでは、歌詞だけでなく、振り付けでもしっかりと地に足をつけ、視線は愛の溢れた未来へと向けていることを示していた。そして、大森靖子のエレクトロヒップホップ「GIRL’S GIRL」では香椎が女の子は最高で最低とラップし、ZOCのインディーズ2ndシングル「断捨離彼氏」では大森と藍染がステージを回りながら“そんな男とは別れちゃいなよ”という説得に成功。この一幕では、ただかわいく生きたいだけなのに生きられない苦悩や葛藤が怒りや苛立ちとして放出されていたが、ひたすら「愛」と「生」を信じて歌うメンバーの姿は爽快そのものだった。


自己紹介を挟み、大森が「このクッソわけわからない時間からこんなにたくさんの人に来ていただいて、とってもありがたいです。ZOCは生き様をステージで晒すことを大事にしてきたので、360度どこから見ても晒し上げ状態のステージにしてみました。最後まで楽しんでいってください」と感謝の言葉を伝え、第二幕へ。


2015年11月にかつて武道館で卒業公演を行っている巫の「ただいま〜」というあいさつ、そして、彼女の独唱から「IDOL SONG」というふわふわでキラキラのアイドルソングを続けた。大森靖子のオリジナル曲をZOCメンバーの自己紹介ソングへと書き換えた「IDOL SONG」では、メンバーは上目遣いでぶりっ子ポーズをとりながら足を外向きに広げてジャンプ。


レーザー光線が交錯し、ミラーボールの光が場内に煌めいた「イミテーション」では6人で手を繋いで振り向き、インディーズ3rdシングル「ヒアルロンリーガール」は再び巫の妖精のような独唱によって、メンバーはオルゴールの上の人形に変化。“ねぇ、チューして”というフレーズがありながらも、大森が藍染にパンチを見舞わせるシーンもあった「チュープリ」では、西井が曲中に「武道館最高!」と叫び、最後は6人でアイドルらしいハートマークを作って締めくくった。



ここからソロコーナーへと突入したが、改めて、メンバーそれぞれの独特の個性を思い知らされることになった。“絶対女の子がいい”と繰り返す 大森靖子のEDM ポップ「絶対彼女」では、巫と雅雀をバックダンサーに従えたトリオ編成でパフォーマンス。大森のチャーミングな歌声も印象的だが、大森を中心に左右対称となっている巫と雅雀のダンスも見応えがあった。


オレンジのつなぎを着て香椎が押す台車に乗り、「投げチューして」と書かれたうちわを振りながら武道館を周回した西井。宝塚の男役のような、ロックバンドのヴォーカリストのような同姓が惚れる立ち振る舞いを見せた藍染。白いワンピースでファンキーなジャズロックを軽々と歌いこなした巫。タンクトップにモッズコートを羽織り、野良犬のように武道館を彷徨った香椎。




大森の情念と言いようのない悲しみが溢れた歌とsugarbeansのピアノに合わせて、“ぼろぼろになった僕”を舞踏で表現した雅雀。寝転んで激唱する大森を後ろから抱きしめ、自分の目に彼女の手を引く雅雀。そして、「死神」の“その全てが愛に基づいて蠢いている”というフレーズから即興の弾き語りへとドラマチックへと展開。あの迫力は、生で体験しないとわからないかもしれない。彼女は「生き様をステージで晒すことを大事にしてきた」というMCの言葉を目の前で体現してくれた。装飾を一切剥ぎ取った魂の叫びはあまりに鮮烈で、一気に心が持っていかれ、思わず涙が流れた。


川の流れる音を挟んだ不穏なムードの新曲「FLY IN A DEEP RIVER」は5人でのパフォーマンスとなっていた。藍染が“クソ、クソ、クソ”と吐き出し、大森と雅雀が寸劇を披露。香椎はもう岸を渡り、違う川へと進んでいるのだ。再び6人に戻り、「ピンクメトセラ」では藍染と大森がサビで美しいハーモニーを響かせ、スモークがたかれる中で歌ったヘビーでカオティックなロックナンバー「draw (A) drow」での彼女たちはスーパーヒロインのように見えた。

MCでは西井がソロ曲「それな!人生PARTY」を歌唱中に泣きそうになったことを明かし、「あんな明るい曲なのに泣いたら本末転倒じゃん。だから、泣かないでがんばった」と胸を張った。続けて「楽しいね」「予想以上に楽しいね」と声を揃えたメンバーたちは、インディーズ3rdシングル「SHINEMAGIC」で武器を持ってガンファイトを展開。

そして、大森が「アイドル。偶像崇拝。私たちは、無様で、不器用で、汚らわしいからこそ、美しくて。神様になんかなれなくても、ただ生きている様を晒すだけで、私たちは神聖で、実像だからこそ輝いている。それをわかってもらえる時代が来るといいなと思っています。私たちには私たちの純真があるから」と語りかけ、真っ白い光に包まれる中で「A INNOCENCE」を歌唱。香椎、西井、巫、藍染と歌い継ぐごとに輝きが増していき、次第に透明になっていくような気さえした。

本編のラストはインディーズデビュー曲「family name」。二人ずつで手を強く握って歌う、青春の切なさを感じるダンスロック。1人ずつにスポットライトが当たり、やがてZOCのロゴが型取られたステージの真ん中で6人が手を重ねる。その体温さえも伝わってくるようであり、最後に叫んだ「We Are ZOC!」という声には観客のグチャグチャになっている心を解きほぐしてくれるような開放感があった。

アンコールではまず、両A面仕様のメジャー1stシングル「DON’T TRUST TEENAGER」を披露。ギターリフを基調にしたメロディックパンクのような曲調で、大森歌う主メロに対する藍染と巫のハモりを始め、歌い分けやハーモニーの組み合わせが次々と変わっていく、音楽的な面白さも感じさせてくれた。ここで香椎が持参した手紙を広げ、2年半の活動を振り返り「私にとってZOCは青春でした。毎日、このまま時が止まればいいなと思いながら、メンバーの顔を見るのが好きでした。みなさんと同じ夢が見れて本当に楽しかったです」と涙ながらに別れを述べた。


ステージを後にしようと足を進める香椎を残したままで、5人は新曲のピアノバラード「REPEAT THE END」を歌い始めた。メンバーは観客に背中を向け、香椎に向けて “楽しい約束、まだいっぱいあったじゃん”と泣き声で歌いながらも、全員で“ここに残る決意をした私”の心情を真っ直ぐに前を見据えて歌い上げた。

香椎がステージを去り5人となったZOCは涙を流しながら、一人ずつ今の率直な思いを述べた。藍染は「新メンバーが入ってきます。これからもどんどんいろんなことが変わって、予想もできないことが起こると思うけど、私はできるだけ、できるだけ、できるだけ長くここいたい」と決意を表明。雅雀は「正式メンバーになって、色々嫌なものも見てしまって。自分にも周りにも大変なことが起こって、どうやって生きていいかわからないっていう状態でしたが、素晴らしい環境の中で私たちのパフォーマンスを見ていただけて本当に幸せで、生きていてよかったなと思えます」と吐露。

巫は「メンバーのみんなが頑張ってたどり着いた武道館に立つ自信はなかったんですが、ファンのみなさんの顔を見て、ZOCの巫まろとしてもっともっと頑張ろうと思えた」と語り、西井は「私はかてぃが卒業するって聞いた時に、一緒に卒業しようかなと思ったくらいショックだったけど、やっぱり私にはZOCしかないなと思ったし、これからもZOCで頑張りたいです」と力強く宣言。


大森は「お見せするのが恥ずかしいこともたくさんありましたが、出会わなかった方がよかった人なんて一人もいないなと思いました。藍染の実直さ、まろの歌、り子のダンス、にっちゃんの天真爛漫さ。全てにはもっともっと出会っていくべき人がたくさんいると思っています。一人一人がZOCを諦めなかったことに勇気をもらって、私も今、ここにいます。全ての人に出会ってくれてありがとうと言いたいです」と感謝の気持ちを送り、「これからも愛されていい人間だぜって思えるような曲を作って、このメンバーで表現していきたいです」と意気込みを語った。


最後に5人でアカペラで「family name」を歌唱。5人による“クッソ生きてやる”という叫び、そして、足を踏み鳴らしながら叫んだ「We Are Zoc!」という掛け声。その声になぜか涙が誘われてしまった。それがどういう感情なのかうまく説明できなくて困っているのだが、息苦しい日々を、明日を生きる勇気や活力を受け取ったことだけは間違いない。

取材・文◎永堀アツオ
Photo by Masayo
Photo by Yusuke Satou
Photo by Michiko Kiseki

  ◆  ◆  ◆

なお、本公演のアーカイブはStreaming+で2月14日まで、ABEMAで2月15日まで配信中。メンバー別の「推しカメラ配信」は2月16日までの配信だ。

セットリスト

01. ZOC 実験室
02. AGE OF ZOC
03. GIRL’S GIRL
04. 断捨離彼氏
05. IDOL SONG
06. イミテーションガール
07. ヒアルロンリーガール
08. チュープリ
09. 絶対彼女 ( 大森靖子ソロ feat. 巫まろ , 雅雀り子 )
10. それな!人生 PARTY( 西井万理那ソロ )
11. 紅のクオリア ( 藍染カレンソロ )
12. まろまろ浄土 ( 巫まろソロ )
13. 仮定少女 ( 香椎かてぃソロ )
14. 死神 ( 雅雀り子ソロ feat. sugarbeans) 15. 大森靖子弾き語り ( 即興 )
16. FLY IN A DEEP RIVER(新曲)
17. ピンクメトセラ
18. draw (A) drow
19. SHINEMAGIC
20. A INNOCENCE
21. family name
Encore
22. DON’T TRUST TEENAGER
23. REPEAT THE END(新曲)

アーカイブ配信チケット情報


配信チケット
▶Streaming+
https://eplus.jp/zoc-budokan-st/

▶ABEMA
https://abema.tv/channels/payperview-1/slots/B9hMhwFpZiKcXh

推しカメラ配信チケット
販売用URL:https://eplus.jp/zoc-budokan-st/

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