【インタビュー】Seven Billion Dots、『HOPE』というタイトルに沿う前向きなアルバム

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2018年2月に結成し、インディーズ時代から<出れんの!?サマソニ>や<RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 18/19>などを勝ち抜いて注目を集め、2019年に早くもメジャーデビューを果たした3ピースロックバンドSeven Billion Dotsが、ファーストアルバム『HOPE』を完成させた。

「Stay With Me」「Maybe I」などの既発シングル曲が持つ壮大な世界観に加えて、ポップサイドも開花。自分たちらしい多様性を意識した楽曲が揃い、その実力と個性を改めて堪能できる1枚だ。これまでの活動の集大成でありつつ、積極的にもっともっと進化していこうという新たな挑戦にも満ちている。それは、メジャーデビュー直後にコロナ禍に突入し、思うように活動できなかった2020年の葛藤や、Masafumi(Vo、G)が出演した恋愛リアリティーショー『オオカミくんには騙されない』での経験など、ネガティブもポジティブもすべてを糧にして今作を作り上げたからだ。

夢を語るだけではなく、等身大の不安も苛立ちも抱えながら、今届けたい音と想いを彼らは見つけた。今作を掲げ、決意を新たに歩み出したSeven Billion Dotsの3人の声をお届けする。


──ファーストアルバムが完成して、手応えはいかがですか?

Ken(G):『HOPE』というタイトルに沿うような、全体的に前向きなアルバムになったんじゃないかなと思いました。作っている時はそんなに意識してなかったんですけど、終わったあとに各曲のキーを思い返して考えてみたら、マイナーキーの曲が1曲もないんですよ。メジャーキーの曲ばっかりで、こんなに明るいアルバムはなかなかないんじゃないかなってくらい明るい作品ができたと思います。やっぱり、こういうご時世で、ほかのアーティストが最近出してる曲を聴いたりしても、わりと暗めな曲が多いなって感じてたんですよね。僕らは反対に、こういうご時世だからこそ、あえて明るく前向きになれるような曲を出せたらいいなと思って。

Lyo(Dr):今回、初のフルアルバムってことで、作品に対して向き合う時間が今までの作品よりも長くて、その分、どういうふうにしたらもっとクオリティがあがるのかっていうことをみんなそれぞれが考えながら向き合えたので、今までのベストを尽くした自信作になっています。

Masafumi(Vo、G):これまでインディーズ時代に出したミニアルバムと、メジャーデビューしてからのEP、シングルまでを自分たちのファーストステージだとすると、この『HOPE』からはセカンドステージに一歩踏み出した感があります。ファーストステージでリリースしてきた楽曲も入ってるんですけど、それを含めて、更新されたSeven Billion Dotsが感じられるようなアルバムになりました。もちろん現時点のベストを尽くしたんですけど、もうこの先が楽しみになっています。

──ファーストシングルの表題曲「Stay With Me」が1曲目ですけど、やっぱりこの曲がはじまりの曲というか、大事な曲ですか。


Masafumi:そうですね。バンドの信念みたいなものが反映されている曲なので、ひとつ中心となるような、大事な曲ですね。リリースしてからもう一年半経つんですけど、演奏していくごとにどんどん力強くなっていくというか。歌詞も力強いんですけど、歌ったり、演奏することで、そのパワーがさらに強くなってるなあと思います。

Ken:やっぱりこの曲が一曲目だっていう感じはみんな共通してあって。すんなり一曲目に決まりました。

──こういう疾走感のある曲が原点にありつつ、4曲目の「Let's get the party started」のようなゆったりしたグルーヴの楽曲が、アルバムとして新たな側面に感じました。

Masafumi:この曲は、まさにさっき言ったセカンドステージに行くうえでの核になるような曲ですね。お客さんとの一体感を意識して、サビで一緒にシンガロングできるようなところは、Seven Billion Dotsの音楽によくあるんですけど。この曲はただ単にロックバンド的なノリだけじゃなくて、メロがひねってあったり、テンポ感もそれほど早くないんです。こういうところは、これから重視されていく部分なんだろうなと思いますね。僕としても、こういう曲は結構歌いやすいです。ギター弾きながらになると難しいところもありますけど。

Lyo:実際に3人で合わせたのは、まだスタジオで一回だけなんですけど、こういう跳ねるリズムの曲は初めてなので難しいですね(笑)。でも、ノリノリで叩ける部分もあって、個人的には楽しいです。

──ギターも、いわゆるギターロック的なアプローチとは違いますよね。

Ken:今までにないタイプの曲だったので、リズムを意識して全部のフレーズを考えました。苦戦しましたけど、できあがってみると、新しいものができたなって感じますね。

──歌詞は、ちょっと肩の力が抜けた感じというか、カジュアルな言葉使いになっていて。それも新鮮でした。


▲Masafumi

Masafumi:このアルバム通してなんですけど、今までは「Stay With Me」とかも含めて、ちょっと広い世界を歌っていたのが、もっと身近なことにフォーカスしている歌詞が多くなっている感じがしています。それはすごくいい傾向だと思っていて。特に「Let's get the party started」の歌詞に関しては、コロナの状況下で、ステイホーム中に上司から変なメールが来た、みたいな話をよく聞いたりしたので、ちょっと大人を皮肉るような歌詞にしたいなと思ったんです。まあ、実際にパーティはできないけど、お酒飲んで、踊ったり歌ったりして、大人の手から離れて楽しもうぜ、って。それで、また明日も乗り越えていこうぜ、みたいな曲になりましたね。

──LyoさんとKenさんから見て、Masafumiさんの歌詞の変化はどうでした?

Lyo:広いところから、もっとパーソナルな部分に目線がいったので、よりいっそう共感しやすい感じになったかなと思います。

Ken:人間的というか。

Masafumi:人間味溢れてる(笑)?

Ken:そうそう。なんか愚痴ってるような歌詞もおもしろいなって思いました。

──LINEとか具体的な単語が出てくるのも印象的で。「What Was That!?」にはタピオカティーが出てきますし。

Masafumi:そうですね。みんなが想像できるだろうし、共感しやすいかなって。あと、のちのちこの言葉が古くなったとしても、それはそれで味なのかなって思ったんですよね。ポケベルとかポラロイドとか、昔の曲の歌詞に出てくるじゃないですか。そうやって、その時代時代の良さになっていくんじゃないかなと思って入れました。

──たしかに、あとから聴いたら2020年っぽさになってるかもしれないですよね。

Masafumi:あの時タピオカ流行ってたよね~って話題になれば(笑)。

──続く「マイナーロード」も、横ノリのグルーヴな曲なんですけど、ドラムは打ち込みですか?

Lyo:はい。この曲だけ打ち込みです。


▲Ken

Ken:この曲は僕が作っていった曲なんです。クラブ要素が入ってるような曲に振り切って寄せたような曲があってもいいのかなって思いまして。いろいろ音を入れてみました。なんとなく作っていったものを持っていって、スタジオで1回生ドラムでも叩いてもらったんですけど、打ち込みのほうがいいんじゃない?って話になって。

──柔軟な判断ですね。Lyoさん的にもOKだったんですか?

Lyo:はい。普通にレコーディングで一曲叩かなくて済んだってだけですね(笑)。

Masafumi:はははは。

──やっぱり生音じゃないとっていうのはなく?

Lyo:必要とあらばって感じかなと思ってますね。

Masafumi:うちのバンドは、たぶん被るのがイヤなんですよ。だから、アルバムの中にも、自分たちとしては全部違う色の曲を入れたくて。一貫してるけどいろんな色の曲があって、いい意味で多様なことができるのが、このバンドの聴かせどころだと思うので。場合場合によって、ドラムが入らなかったりっていうのも全然あり得ますね。


▲Lyo

──今後も打ち込みの曲をやってみたい、みたいな興味もあります?

Masafumi:その時その時で、打ち込みのほうがいいんじゃないかなって時は打ち込みでやると思います。「マイナーロード」はライブではドラムで叩くことになるので、また違う感じになるんじゃないかな。

──アレンジの面でいちばん印象的だったのが、最後の「HOPE」で。歌だけで始まって、バンドが入ったあと、最後も歌だけで静かに終わるっていう、すごく優しい終わり方ですよね。これはどういう発想だったんですか?

Masafumi:「HOPE」は、アルバムにバラードチックな曲がほしいよねって話になってから作り始めたので、いちばん最後にできた曲なんです。さっきも言ったように、僕らの曲はシンガロングのパートが結構ポイントになってることが多くて、この曲も、ライブを想像した時にみんなで歌える曲にしたいなっていうところから作り始めました。アレンジはAメロから順番に構築していった感じです。作っていった結果、いちばん最後にシンガロングだけで終わるのがいいんじゃないかなっていう。展開の順にそのまま自然とできていった感じですね。

Ken:歌詞があるシンガロングパートって、あんまりなかったんですよ。だから、このメロでやったらめっちゃいいんじゃないのかなって思って、やってみたらめっちゃハマったので。「これでしょ!」ってなりました。この曲ができる前から、アルバムタイトルの『HOPE』は決まっていて。最後に一曲、バラードを作るならこのタイトルの曲を作ろうってなってできた曲なんです。

──「HOPE」っていう言葉からできた曲なんですね。

Masafumi:はい。「HOPE」…「希望」を主題にして曲を作ろうっていうふうになって。サビのメロが浮かんだ時に、「HOPE」っていう言葉を使って韻を踏んだらいいんじゃないかと思って、「Hopes in our home」っていう歌詞になりました。こういう社会状況のなかで、やっぱりホームって言葉がすごく日常的に出てきたし、自分のなかでもスッとHOPEとHOMEの響きが腑に落ちたんですよね。その一節を使おうと思って、メロにはめ込んでいきました。

──すごくいい言葉ですよね。それこそステイホームとかホームって言葉がネガティブな意味合いを孕むことも多かったですけど、やっぱり帰る場所があるって希望なわけですし。

Masafumi:そうですね。まさに帰る場所があるってことをこの曲では言いたかったんです。ひとりぼっちに感じている人にも手をさしのべて、帰る場所がちゃんとあるんだよって、希望が家にあるよって歌にしたくて。歌詞全体をとおして、そういう情景を描いてますね。

──なるほど。さらに、「Stay With Me」という遠くの未来を目指していく曲で始まって、最後の「HOPE」では自分の居場所をちゃんと見てるという流れから、デビューの頃からの視点の変化を感じます。

Masafumi:そうですね。この1年、自問自答することがすごく増えて。やっぱり、ひとりで過ごす時間が多かったなかで、いろんなことを考えさせられて、自分自身も精神的に落ちることがすごくあったんです。そういう時に自分が必要としていたものって、もっと近い言葉で。言葉を選ばずに言うと「この状況、うぜえな」みたいな、もっと素の部分の言葉だったんですよね。自分に対しても含めて、みんな口に出しては言わないけど、心の中で思ってる言葉があるよな?って考えた時に、そういう心の中の言葉を体現できるものが必要だったというか、自分が求めてるものなんだなって気づいて。それまで、もっときれいなことを言おうとしてた自分から、もっと素直な表現にしようと思っていった感じです。

──結成して3年を経ての変化っていうものも感じますか。

Masafumi:一貫してる部分は変わらないと思うんですけど、曲を作ることとか、生み出す曲とかに関しては、徐々に変化してますね。洗練されつつ、かつ、ユニークさが増したというか。きれいなものから、ちょっとひねったものも出せるような変化をしてきてるかなと思います。




──最近はサブスクで聴かれる環境にあるなかで、アルバム単位で聴いてもらうことの難しさを感じることも多いと思うんですけど、アルバムというかたちでひとつの作品を作り上げることによって、改めて気づいたこととか、自分たちを再確認することはありましたか。

Masafumi:アルバムの構成とか曲順を考えていくうえで、やっぱり自分たちの強みが再認識できたと思います。Seven Billion Dotsの個性に加えて、さらにひとつひとつの楽曲の個性をしっかり色付けできてるっていうところが、自分たちの強みになってるんじゃないかなと思いました。だから、本に例えたら1章から最終章まで通してみてやっと意味がわかるというか、アルバム単位で聴くことで、バンドの伝えたいことがわかると思うので。そういうところも考えながら聴いてもらえたらいいなとは思いますね。

──ちなみに、このアルバムの具体的な制作時期はいつ頃だったんですか。

Masafumi:アルバムを作ろうって動き出したのは10月頃からですかね。それまでも曲の骨組みとかはあったんですけど、10月にしっかり固めだして、それこそ「HOPE」とかを作って、11月にレコーディングしていきました。

──2020年前半、コロナで動けなかった間いろいろため込んで、このアルバムで動き出した感じなんですね。もっとライブもやりたかったと思いますし、ここからもう1回始めるぞって気持ちもありますか。

Masafumi:そうですね。デビュー1年目がなにもできなかったので。ここからの1年が本当の1年目かなって感じです。

──一方で、Masafumiさんは『オオカミくんには騙されない』への出演がありましたが、改めて、どういう経験になりましたか。

Masafumi:ひと言で言うと、挑戦でした。でも、新たな自分の一面も見れたし、人がどういうふうに自分たちの印象を受け取るのかとか、きれいな面から汚い面まで全部含めて、いろいろ考えることができましたね。人の本質みたいなものを考えるようになって、そういう部分が、楽曲制作とか、特に歌詞において今回のアルバムにすごく反映されています。「Let's get the party started」での理不尽さとか(笑)。「もしもフィルムに二人だけなら」は、番組のなかでの恋愛話からアイデアが生まれて書いた曲ですし。番組に出た経験が直接反映されていると思います。自分について自分に問う回数が増えて、自分がどういう考えを持ってるのかっていうことをより深堀りしたし、番組に出たことに対するいろんな声だったり、出演者同士でいろんなことを話して紡がれた言葉が蓄積されていって、だんだん自分の核となり、それが歌詞となりって感じですね。

──メンバーは観てたんですか?

Ken:はい。ABEMA の有料会員に入って(笑)、毎週欠かさず観てました。音楽への影響も、ばちばちに感じましたよ。

Masafumi:(笑)。創作者として、作品を生み出すうえで必要なものがすごく吸収できた経験でした。

──さらに、2月で結成3周年なんですよね。もう3年でここまでたどり着いたわけですけど、この3年を振り返るといかがでしたか。

Masafumi:どうだろう…早かったなあ。感覚としてはどんどん時間がすぎていった感じです。いち個人の感覚でいうと、メジャーデビューできたとしても5年くらいインディーズ活動をやってからかなと思っていたので、そこは想像以上でしたね。でも、やっぱりまだまだ足りてないなって部分もあります。知名度もそうだし、楽曲についても、もちろんアルバムでは今のベストを尽くしたけど、今回作ってみてさらにのびしろを感じたというか。この3年間で成長したけど、まだまだここから成長できるなっていう自信が芽生えました。だから、もっと高みにどんどん行けるんじゃないかなと思います。

Lyo:とりあえずはこのアルバムを多くの人に届けたいので、もっとバズりたいです(笑)。

取材・文◎後藤寛子




『HOPE』

2021年2月17日(水)発売
初回⽣産限定盤(CD+DVD)
ESCL – 5485~5486 \5,000 (税込)
★フォトブック付き スペシャルトールパッケージ仕様
通常盤CD
ESCL – 5487 \3,000 (税込)
1.Stay With Me
2.Nightmare
3.Dive!!
4.Let’s get the party started
5.マイナーロード
6.もしもフィルムに⼆⼈だけなら
7.Fingers Crossed
8.What Was That!?
9.Maybe I
10.You & I
11.HOPE
DVD
・「Stay With Me」 Music Video
・「Maybe I」 Music Video
・「もしもフィルムに⼆⼈だけなら」 Music Video
・「Fingers Crossed」 Music Video
・1st Debut Anniversary「Dots TV Special」LIVE
・「HOPE」Behind the scenes

◆Seven Billion Dotsオフィシャルサイト
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