【対談インタビュー】事務所代表とA&Rが語る、「H△G」のビジョン

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■H△Gの持っている“昼”の成分が新しさやカウンターになれば

──メジャーデビュー前、ちょうどH△Gの音楽性が広がり始めた頃にインタビューをした時、Yutaさんはどれだけ自分のエゴで音楽を作っていくべきなのか、少し葛藤を抱えているようにも見えました。

丹羽:それは大いにありますね。H△Gは岡崎発信という土着的なマインドを持っているけれど、僕がやっていることはそれを都会的にコーティングする作業なんですよ。このふたつは混ざらない可能性も高いので、賭けでもあって。でもジャンプアップしていくための変化でもあるんです。

峯松:YutaだけでなくChihoにも葛藤を感じますね。自分がシンガーとしてこうなりたいという軸があるぶん、生活基盤を持ちつつアーティストとして活動していくなかで、ほかのアーティストやシンガーを気にすることは、やっぱりあると思うんです。コロナ禍に入って中国公演も国内公演も含めて中止になったからか、それがより強くなったように見受けられる瞬間があって。自粛期間中に発表された「青空」は、それについて書かれたものなのかなとも思うんです。彼女もシンガーとして過渡期を迎えているのかなと思いますね。

丹羽:ChihoはH△Gでフロントを務めるだけでなく、VOCALOIDカバー曲が海外で何億回再生されていたりもするんです。それだけ何度も聴かれている曲のなかに存在する自分は本当の自分なのか──Chihoはそういう葛藤を抱えていると思いますね。ChihoもYutaも、石川さんも僕も、自分たちがH△Gの一員である前に、H△Gという性格がもう存在してしまっているから“H△Gというものに対して自分はどう存在すればいいんだろう?”という葛藤はずっとあると思います。でもアーティストってセールスが伴わないと人が離れていくことが多いと思うんですけど、H△Gにはそれがないんですよ。その理由はChihoの歌声だと思うんですよね。

峯松:うん。そうですね。

丹羽:僕自身も“あの歌は絶対に届けたい。どうやったら届くんだろう?”という気持ちがすごく強いし、H△Gという場所でこそChihoの声は輝くんですよね。



──H△Gの音楽は“青春”をテーマにしていますが、青春がリアルタイムではない大人たちも巻き込んでいるのも特徴のひとつだと思います。透明感のあるまっすぐなChihoさんの声もあって、リスナーの“すごく悲しいことも悔しいこともたくさんあったけど、あの時すごく楽しかったし、きらきらしていたよね”という気持ちに共鳴する音楽というか。

丹羽:それはその通りですね。最初は、そういう作り方をするべきではない、もっとリスナーの年齢層に寄り添うべきだと思っていたんです。でも大人が10代のフリをして曲作りをするほうが、無理が生じていいものが生まれないんじゃないかという結論に至って。H△Gの音楽に共通する“懐かしさ”ってそういうことだと思うんですよね。

──Blu-rayアルバムとしてリリースされた『瞬きもせずに』の楽曲はその真骨頂という印象がありました。そして今回のCDアルバム『瞬きもせずに+』は新曲3曲を追加してリリース。この3曲はまたH△Gの新機軸ではないでしょうか。

丹羽:また新しい音楽性にチャレンジしています。「君のままでいい」のミュージックビデオは踊り手の方々に出演していただいたんですけど、H△Gは昔から“歌ってみた”ではなく“踊ってみた”界隈の方々からのリアクションが大きいんですよ。コロナ禍の影響で中止にはなってしまったんですが「H△Gの曲だけを踊るイベントをやってもいいですか?」というオファーもあったんです。H△Gはコラボレーションには積極的な集団なので、快諾しましたね。


峯松:音楽だけでなく映像やそれ以外の表現も大事にしたいので。『瞬きもせずに』をまずBlu-rayアルバムとしてリリースしたのも、映像と音源どちらも入れられるだけでなく、音源はハイレゾ仕様にできるので、同時にハイスペックなものを出せるということが決定打だったんですよね。

丹羽:『瞬きもせずに』はハイスペックにこだわった作品でもありますね。さっき峯松さんが言っていた声劇ライヴも収録しているので、それをサラウンドで聞いてもらいたかったですし。ちゃんとパッケージを手に取りたいという方々にはクオリティの高いものをお届けしたかったんです。

峯松:そして今回、CD化を望む声に応えるべく新曲3曲を加えた『瞬きもせずに+』をリリースするという流れですね。

──H△Gの市場は広がっているということですね。

丹羽:そうですね。タイアップをきっかけに、不特定多数な人たちにH△Gという存在が気付いてもらえた気がしています。ネットカルチャーは夜のイメージを纏ったアーティストが多いじゃないですか。でもH△Gは夜や闇だけでなく、昼間のイメージ、明るくて健全な部分も持っているので、それはタイアップによってリーチできている感覚はありますね。H△Gは塞ぎこんでたり病んでいる印象はないのに、別れの曲がすごく多くて。だから明るさのなかに寂しさやもの悲しさを感じさせる曲が多いんだと思います。

──ネットカルチャーは2010年くらいまで、パソコンと向き合う時間が長い人間の遊び場とし発展してきましたが、スマートフォンの普及によって特にこの10年はより間口が広がったと感じています。“昼”の要素をネットシーンで発信していたという意味で、H△Gは先駆けだったのだろうなと。

丹羽:女の子ボーカルが固定で、覆面のグループとなると、いちばん古いんじゃないかな?

峯松:“覆面”“女子ボーカル”“ネット”というキーワードは、ずっと真夜中でいいのに。とまったく同じですからね。先駆けだと言ってもらうことは多いですし、なんなら先駆けすぎたかなとも思っています(笑)。

丹羽:でもH△Gが動き出してからの9年でも、世の中のトレンドが少しずつ変わってきていて。ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。のあとにYOASOBIが出てきたことで、夜カルチャーがひとつのピークを迎えた気がしているんです。だからH△Gの持っている“昼”の成分が新しさやカウンターになれば……とも思っているんですよね。


──H△Gは流行に乗るというより、すべて裏を行くんですよね。2012年のバンドシーンは完全にフェスブームへ突入していたのに、ライヴハウスシーンからネットシーンに乗り込んでいますし。

丹羽:パンク精神が出てますね(笑)。だから峯松さんの仕事を増やしてしまってるなとも思いつつ。

峯松:あははは。丹羽さんもおっしゃったとおりH△Gは引き出しの多いアーティストではあるので、「こういうH△Gもアリだな」とチーム全体が思えるならば、また新しいアプローチができるとも思っています。どういうチャレンジをしていこうか、日々議論していますね。同じものを追いかけることも大事だと思うんですけど、模倣やコピーは通用しないし、逆を行くアクションはH△Gのマイノリティゆえだと思います。

丹羽:H△Gが夜系ど真ん中の人間たちではないことを、H△Gチーム全員わりとネガティブに思っていたんです(笑)。だから“僕らはなんなんだろう?”と壁にぶつかることも多かったんですよね。

峯松:夜系に寄せようとしたこともありましたしね。

丹羽:でも夜系アーティストのファンの方々がH△Gを気に入ってくれることも多いですし、中の人の要素を出していったほうが聴いてくれる方々からもいいリアクションをいただくことが多くて。僕らはこのままでいいんだろうなって。

──そうですね。無理はその場しのぎになったとしても、のちのち祟るものですし。

峯松:無理して装うんだったら、とことんアウトローというか、突っ張ったほうがいいなって(笑)。Yutaや石川さんの精神に賭けてみたいなとも思うんですよね。H△Gのクリエイティブを崩さず、怯まずやっていきたいです。

丹羽: H△Gは“生きたい”というメッセージを発信しているし、死にたい気持ちから見つけ出した生きたい気持ちを届けるのではなく、そこを経由せずに“生きていきたい”“生きていったほうがいいよ”というメッセージを届けられるアーティストだと思うんです。H△G が“ネットシーンの昼系”という立ち位置に進めるように、力を尽くしたいですね。

取材・文◎沖さやこ
写真◎釘野孝宏


■Full Album『瞬きもせずに+』


▲『瞬きもせずに+』

2021年2月24日(水) 発売
【初回限定盤】(CD+DVD)※スリーブケース仕様
MUCD-8148/49/3,500円+TAX
【通常盤】(CDのみ)
MUCD-1467/2,800円+TAX

[アルバム収録内容]
Track1. もっともっと遠くへ(グリコ セブンティーンアイス CMソング)
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium
Track2. 桜流星群
作詞・作曲:H△G 編曲:宮田“レフティ”リョウ
Track3. 宵待ち花火
作詞・作曲:H△G 編曲:宮田“レフティ”リョウ
Track4. 夏のまぼろし feat.ま に こ
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium
Track5. 青より蒼し
作詞・作曲:H△G 編曲:宮田“レフティ”リョウ
Track6. 赤い髪の少女
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium
Track7. 僕らはみんな生きている
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium
Track8. 瞬きもせずに(テレビ東京 木ドラ25『ゆるキャン△』オープニングテーマ)
作詞・作曲:H△G 編曲:宮田“レフティ”リョウ
Track9. 流星ダイアリー
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium
Track10. 友達の詩
作詞・作曲:H△G 編曲:宮田“レフティ”リョウ
Track11. 夢の轍(テレビ東京系TVアニメ『ゾイドワイルド ZERO』エンディング主題歌)
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium
Track12. 春を待つ人
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium
Track13. 5センチ先の夢(BSテレ東ドラマ『ハルとアオのお弁当箱』主題歌)
作詞・作曲:H△G 編曲:宮田“レフティ”リョウ
Track14. 君のままでいい
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium
Track15. 卒業の唄
作詞・作曲:H△G 編曲:Anthurium

[初回盤DVD収録内容]
「5センチ先の夢」Music Video
「君のままでいい」Music Video
(計2曲)

アコースティックスタジオライブ映像:
1.「アロー」
2.「星見る頃を過ぎても」
3.「瞬きもせずに」
4.「夢の轍」
5.「青空」
(計5曲)

【初回盤・通常盤 共通】
・封入特典:
2021年5月29日(土)東京・都内某所で開催される『瞬きもせずに+』発売記念イベントのチケット先行受付用「応募券」を封入

・先着購入特典:オリジナル「栞」
タワーレコード(実店舗):「青より蒼し」絵柄
タワーレコード(オンライン):「夏のまぼろし」絵柄
TSUTAYA(東海地区店舗限定):「赤い髪の少女」絵柄
オンラインショップ共通(タワーレコード オンライン・Amazon除く):「宵待ち花火」絵柄
イベント会場(2021年5月29日東京・都内某所):「瞬きもせずに」絵柄

・TSUTAYA(東海地区実店舗限定)絵柄 対象店舗
TSUTAYA 中島新町店
TSUTAYA 汐田橋店
TSUTAYA 三ノ輪店
TSUTAYA いまじん白揚ウイングタウン岡崎店
TSUTAYA いまじん白揚岡崎インター店
ヨシヅヤ津島北テラス TSUTAYA 新津島店
TSUTAYA いまじん白揚瀬戸店
TSUTAYA いまじん白揚春日井店

・Amazon先着購入特典:メガジャケ

※上記以外のCDショップでは特典は付きませんのでご注意ください。
※一部お取り扱いのない店舗もございます。特典の有無の詳細は各店舗までお問い合わせ下さい。
※いずれの特典も無くなり次第終了となります。

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