【インタビュー】Unblock、ゼロから仕切り直した最新作『窓を開けたら』

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■「観て!」

──あと、明るい曲を聴いていた影響が出たというお話がありましたけど、今回のギターってエモの要素がちょっと強いなと思って。たとえば「escape」とか「24/7」はその感じがあるなと思ったんですが。

中村:その2曲に関しては、わりと実験的だったというか。元からエモとか、あとはポップパンクも好きでよく聴いていたんですけど、そこをもろに出してみようかなと思って、わざと出してみたんですよ。作っていた段階では、正直、この曲はUnblockでは使えないだろうと思っていたんですけど、歌詞を書いてくださいって投げて、帰ってきたらいけるやん!って。これなら何を書いてもいけるんちゃうかなって。なので、エモの影響はめちゃめちゃ受けてますね。

──お試しというと言葉がよくないけど、それこそ実験的だったんですね。これはさすがにどうだろう……と思いながら曲を渡して。

中村:そうです(笑)。「escape」を作っているとき、田口が『バイオハザード』をやってて。この曲を送ったら、「ぴったりやわ」って(笑)。

田口:『バイオハザード』のエンディングテーマに。

中村:そうそう。流れてきそうやな、この曲って。じゃあ歌詞書いてみるわって(笑)。自分たちも落ちていた時期ではあったけど、そういう楽しみはありましたね。

──あと、先ほど「誰か頼みの何か」ができなくなったというお話がありましたが、今作の歌詞は、自分は自分だから、自分のできることをやろうというニュアンスのものが多いですよね。1曲目の「CHAPTER 0」の〈それぞれの行く先で 輝けるように願っている〉というのも、自身がそういう状態だからこそ出てくる言葉なのかなとも思ったんですが。

田口:この曲は、あと1曲どうしようっていう話をしていたら、結局レコーディング前日になっちゃったんですよ。でもまあ、とりあえず5曲録ろうってことになって、明日に備えて10時ぐらいに寝て。で、朝の6時頃にパっと目が覚めたら、「曲できちゃった」って、全部オケが詰まっている状態の音源データがLINEで送られてきていて(笑)。そのまま布団から出ずに、1時間半ぐらいで歌詞は書きました。

中村:すごいなと思いましたよ。曲の場合は、こういう感じで!ってやっちゃえるところがあるけど、やっぱり言葉なんで。でも、すぐに「できちゃった」みたいな感じで送ってきたから。

田口:「できちゃった」に対して「できちゃった」で返しちゃいましたね(笑)。人に聴いてもらっても、僕ら自身もそうなんですけど、この曲、結構お気に入りになっちゃっていて。そういう瞬発力ってバンドのおもしろいとこやなと思いました。

──確かに。それに、瞬発力で書いたからこそ、思っていることが強く出たところもあるんでしょうか。

田口:たぶん、〈選びぬく〉みたいなワードを使いたかった時期やったと思いますね。バンドをどうしていくのかもそうやし、そもそも自分がどうやって生きていくのかってみんながそれぞれ考えていた時期で。去年の6月なんて、誰も何も全然わからない状況でしたけど、その中でも自分が何を選んで、どこに進んでいくのかっていうのを歌にしたくて。みんなそれぞれで考えて、みんなそれぞれが決めないと。政府頼みのどうこうも、なんか怪しいところあったし。

──ほんとですよね。いまはこういう状況かもしれないけれども、それぞれが輝けたらいいなと、自然と思えた。

田口:輝ける場所をみんなそれぞれ目指していくしかないような感じでしたからね。みんな輝いてなかったから。

──ああ、そうか。世の中全体が暗かったですからね。

田口:そういう意味では、自分たちもしかりなんですけど、マジでみんな元気なくない?っていうところからの反発の歌詞なのかもしれないです(笑)。タイトルの「CHAPTER 0」は(中村に)付けてもらったんですけど、世の中がどんな状況だろうが、今日昨日明日がどうだろうが、とりあえずは毎日がゼロ地点みたいな意味合いで。この曲からアルバムが始まるのも気持ちいいなと思います。

──ですね。イントロのギターが鳴った瞬間にテンションあがります。

中村:あれも本当に一瞬でしたからね(笑)。アコギをテキトーに弾いてたら、なんか今のよかった!って。そこからバー!ってやっちゃったんで、なんかもう、できてよかったっていう気持ちしかなくて。

田口:僕は起き抜け最悪でしたけどね(笑)。別にどこに責任があるっていうわけじゃないけど、全責任、俺にあるやん……って。

中村:無言の圧力みたいな感じで投げたんで(笑)。でも、練らずに書けたのがよかったのかも。

田口:確かに。

──その勢いがいい形で反映されてますよね。「夢の入り口で」は、2019年に作っていたそうですが、2020年に作った曲と精神的には近しいのかなと思いました。遥か遠くにいる〈君〉に向かって、自分は自分で〈少し頑張ってみるよ〉という。

田口:僕らはバンドを選んでずっとやってきているけど、学生時代の友達にはいろんなジャンルで頑張っている人たちがいて。で、その中の出世頭みたいな奴と電話したんですよ。2019年の前半やったから、新しいドラムが加入して、ここから何を仕掛けて、どうなっていくんやろうって不安になりまくっていたときだったんですけど、酔った勢いで電話して。

──お酒入ってたんですね。

田口:普段は高校の友達と電話したりしないんですよ。なんか、この歳までバンドをやっている自分を引け目に思っているのか、自分のやっている世界とは違う感じがしてしまうというか。で、その出世頭みたいな奴は、自分でしっかり選んで、その道をずっと突き進んできたタイプの人やから、言うこともやっぱりそういう感じがあったんですけど、そのときにもらったものを曲にしたいなと思って。

──それがキッカケになったと。

田口:「出世頭」という意味では、この10年で自分たちの横を通り過ぎていったバンドもいますけど、そういう人たちに対して、自分の中で卑屈になって、距離をとることが多かったんですよ。でも、いざ話してみると、その人達がそこにいる理由がわかったりして。別に何も頑張ってなくてそこにいるわけじゃなくて、そいつらなりにめちゃめちゃやってきたことがあったり、そこにいるなりのものを持ち得ているんだなって。だから、結局は「人」なんですよね。売れてるだの、有名になるだの、かっこいいだの、そういうわかりやすいタグばかり目に付くんだけど、そうなっている理由がその人にはあるんだなって。

──「夢の入り口で」もそうですし、「Blue」や「未来の種」はコロナ前に作った楽曲ではあるものの、コロナ以降に作った曲と並べても違和感がないどころか、作品の土台になっている印象もあるので、やはりその頃から少しずつ窓を開けようとしていたんでしょうね。

中村:そもそも2018年の10月にオリジナルメンバーが抜けてしまっていたので、コロナだからどうしようじゃなくて、そもそもメンバーがいなくてどうしようから始まってるんですよね。2人になったことで話したり、考えたりする時間が増えて、もっと自分らでやっていかないとね、みたいな感じになっていったので。それがコロナで地に落ちてしまったときに、2人とも下がっていたけど、僕としては、去年の夏頃にもうバンドとか考えられへんぐらいまで一瞬なってしまったこともあって。

──そうでしたか……。

中村:そこからライブを月に1本とかできるようになってきて、やっぱり楽しいなっていう気持ちが出てきて、そこでまた2人で話すことも多くなって。だから、2人でいる時間が多くなって、いろんな話をしていく中で自分らでやっていこうという気持ちが大きくなったし、田口くんの歌詞や書く曲もどんどん幅広くなって。以前は、ライブも曲も「刺せ!」みたいな感じやったけど、今は「観て!」みたいな(笑)。もっと観てほしいし、聴いてほしいし、やるからにはそういうスタンスでやろうって、自然と変わっていったかなと思います。

▲Unblock/『窓を開けたら』

──またここからいろんな広がりが出てきそうですね。先日、サブスクでプレイリストを解禁されて、それもいいきっかけのひとつになりそうですし。

中村:2人でびっくりしてたんですけど、新譜を出すことよりサブスクを解禁したときのほうが、反応がすごかったんですよ。

田口:そんな需要あったんや……みたいな。

中村:他のバンドはそういう声があったりして、じゃあ動こうかっていうところもあると思うんですけど、僕らはサブスクで聴いてもらうイメージが全然なかったので。CDを出すって言ったときもこれぐらい喜んでくれればいいのにと思ったけど(笑)、聴いてくれる人が増えるぶんには嬉しいなって。

田口:同時に解禁したんやったっけ?

中村:ほぼ同時。

田口:なのに、リリースの反応、薄くない? 新譜待ってないの?っていう。

──過去の曲ももちろんですけど、本当に素晴らしい新譜ですから。

田口:そうだと信じています。

──そこは間違いないですよ。きっかけとしては、サブスクは便利だと思いますしね。お客さんも自分の周りに広めやすいところもあるでしょうし。

中村:そういうところが手軽なツールではありますからね。「これ聴いてみてよ」が簡単にできるというのは、それはそれでいい世の中になったのかなって。でも、一番新しいものが一番いいと思って活動しているので、新しいアルバムを聴いてもらえるともっと嬉しいですね。

田口:サブスクがライブ会場とか新譜までの道のりになればいいなって。

──ですね。そして、少しお話にも出ましたが、昨年<未来ノ種 2020>というタイトルで、大阪城野外音楽堂でイベントを行なう予定でしたけども、残念ながら開催見送りになってしまっていましたが、今年、改めて<未来ノ種 2021>というタイトルで開催されます。去年参加する予定だったバンドが駆けつけてくれると。

中村:忙しい人たちばっかりなのに、二つ返事で。ありがたいです。

──1年越しのイベント、どういうものにできたらいいなと思います?

中村:去年開催できなかったのが悔しすぎたから、こんなふうになればいいなというよりも、とにかく開催したいです。その気持ちが本当に強いですね。無事に開催して、来てくれた人も安心して楽しんでもらって、何事もなく楽しく終われたらいいなって。全員が全員、来てよかったと思うのは難しい話かもしれないけど、限りなく全員がそう思ってもらえるようなイベントになってくれたらいいなと、僕らとしては思ってますね。

田口:去年の1、2月ぐらいまで、夢の中で野音で歌ってたんですよ。

──夢に見ましたか。

田口:もうホントにその言葉通りでしたね。これか!って(笑)。こんなこと初めてだったんですよ。いつもは当日までどうなるかわからんって思いがちだったけど、野音に立っている自分を想像しては、ニヤっとして目を覚ましたりしてたんで(笑)、どれだけ気持ちいいんだろうと思ってます。それに、集まってくれるバンドも、二つ返事だったのは仲間思いやし、人思いで優しい人らばっかりなんですよ。力強いし、優しいライブが、スタートから僕らまでちゃんと観れる日になればいいなと思ってますね。絶対間違いないと思うんで。

取材・文◎山口哲生


2nd Full Album『窓を開けたら』

2021年2月24日(水)発売
TNAD-0138
¥2,420(Tax in)
[収録曲]
1. CHAPTER 0
2. 未来の種
3. 夢の入り口で
4. ハートビート
5. Lump
6. escape
7. no title
8. 24/7
9. また生まれ変わっても
10. 海岸通り
11. Blue

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